俺の名前はピーター・ペティグリュー。   作:八重歯

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06 俺は少しだけ理解した。

1974.7.23

 

地獄だ。

3日目からもう、耐えられない。

夜にピーターの母親の泣き声が聞こえる。

 

とりあえず勉強して気を紛らわしてるが、精神的にハードすぎる…

 

最近身体中がいたい、うっすら記憶にあるこの痛みは…成長痛か?

身長伸びるのはいいけど、痛いのは筋肉痛だけにしてくれ!

 

 

 

 

 

 

1974.8.20

 

 

あと少しで4年目がはじまる。

はやくホグワーツに行きたい。

はやく、ピーター帰ってこいよ…。

 

これは俺の長い夢なんだろ?はやく醒めてくれ!

 

 

 

 

1974.8.31

 

これ程長く、苦痛な夏休みを経験したのは初めてかもしれない。

まぁピーターの両親の方が辛いかもな、せめて誇れる息子っぽく振る舞うよ。

明日からホグワーツへ行ける。楽しみだ。

 

 

 

1974.9.1

 

寝坊した!

特急乗り遅れるかと思ったぜ…。

適当に人の少ないコンパートメントを開けたらセブルスとリリーが居た。

 

そういや2人って家近くて、友達だったんだっけ?リリー近くで見たらまじで美少女。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「なぁ相席してもいいかな?」

「出て行け」

「セブ!…もちろんよピーター!」

 

 

扉を開ければすぐにセブルスからめちゃくちゃ嫌そうに睨まれた。ごめんなセブルス、リリーとの逢引を邪魔して!ジェームズ達の所探すの面倒なんだよ。

 

 

「ありがと」

 

 

不機嫌なセブルスとリリーに笑顔で礼を言えば、リリーは愛らしい笑顔を見せてくれた。外国人の女の子って、みんな可愛いし美人だけど、リリーはその中でも飛び抜けた美少女だ。…セブルスとジェームズだけじゃなくて他にもリリーの事が好きな奴はいそうだな。

 

さて、リリーの隣に座るべきか…セブルスの隣に座るべきか。少々悩んでいると、セブルスが盛大な溜息と苦々しい顔のまま隣の座席に置いていた鞄を自分の脚の上に移動させた。…リリーの隣に座られるくらいなら、自分の隣に座った方がまだマシだとその表情が訴えかけている。

 

なら、まぁ座るか。

俺はセブルスの隣に座って「ごめん、ありがとう」と言ったが、セブルスはむっつり押し黙ったまま返事はしなかった。

 

 

「…あなた、また背が高くなったんじゃない?」

「そうなんだ、この夏休みは成長痛が辛かったなぁ…」

 

 

リリーは俺の頭のさきから爪先までを眺める。半年前までは丁度良かった制服も、丈が足りず買い直す羽目になってしまった。ピーターの父親は成長を喜んでいたが、ピーターの母親は…どんどん変わっていく息子に、喜んでいいのか複雑そうな顔をしていたな。

 

俺はリリーとセブルスを見る。

うん、何度見ても美少女と美少年だ、俺の外見もそこそこだとは思うが2人は系統が違うな、まじ天使×2

 

 

「…2人は友達なのか?」

 

 

まぁ、俺は知っているが一応確認のため聞けば、リリーとセブルスは視線を交わし頷いた。

 

 

「ええ、そうよ。…ピーター本当に記憶喪失なのね…私の事も覚えてないの?」

 

 

リリーは悪戯っぽく笑い、俺の顔を覗き込んだ。その上目遣いはダメだリリー!隣にいるセブルスを見ろ!俺が呪い殺されるぞ!?

 

 

「え?俺…リリーに何かした?」

 

 

いやいや、何も無いだろう。だってピーターはチビでデブでノロマな子の筈だ。まさかこんな天使とアバンチュールなんてあるはずが無い。

内心冷や汗だらだらになりながらも、表情だけは涼しく取り繕う。うん、今の俺ならリリーに手を出していたかも知れないが…いやいや相手は子どもだ、俺の好きなタイプは歳上でリードしてくれる女の子だ!

 

 

「本当に覚えてないのね!授業で何度も手伝ってあげたし、居残りにも付き合ってあげたでしょう?…まぁ、記憶喪失になってからは必要なかったみたいだけど」

「そうだったんだ…ごめん、覚えてない。…ありがとう、リリー」

「いいのよ!…けど、ハニーデュクスの新作を奢る約束は記憶を失っても有効よね?」

 

 

リリーはくすくすと笑いながら小首を傾げる。俺は苦笑いをしつつ「降参」とばかりに手を上げた。

 

 

「勿論!今度奢るよ」

「ふふ!楽しみにしてるわ」

 

 

リリーが嬉しそうで、俺も嬉しい。

だが隣にいるセブルスはリリーと俺が楽しく話してるのが心から面白くないようで、その綺麗な顔がどんどん歪んでいく。

今からでも別の場所に行ったほうがいいか?と思ったものの、初めて俺としてリリーとまともに話している、この機会を逃したくはない。リリーについては小説ではあまり語られてないからなぁ。美人で主席になって…そしてジェームズと結婚し、ハリーを生み…命をかけてハリーを守り死ぬ。

 

 

リリーと俺が話しているとガラリとコンパートメントの扉が開き、女生徒が2人現れた。リリーを見てそして俺をちらちらと見ている。

 

 

「リリー、こんな所にいたのね!あっちでみんな集まってるわ、行きましょう」

「あー…」

 

 

リリーは少し困ったように眉を下げた。

きっとこの少女達は、リリーと仲の良い子なんだろう、その誘いは嬉しいが、セブルスといま居るしなぁ…でもセブルスを誘ってこの子達といくわけにもいかないし、どうしようかなぁ…って感じだろう。

 

 

「シャルルの話をしてるの!ほら、あの子…夏休みに…」

「まぁ!…私も聞きたいわ!」

 

 

しかし悩んでいたリリーは女生徒の一言で目を輝かせると弾かれるように立ち上がる。うん、この女子達の様子…何回か見覚えがあるな、間違いなく今からコンパートメントで行うのはいわゆる恋バナだろう。夏にそのシャルルちゃんは大人の階段登っちゃったのかもしれない。

 

セブルスは少し残念そうにしたが、扉へ向かうリリーを無理に引き止める事は無かった。

 

 

「セブ!ピーターまたホグワーツで!」

「ピーター、…またね」

「…?…ああ、またな」

 

 

リリーを迎えに来た女の子達は俺にも手を振り頬を赤く初めた。あの、女子特有の熱っぽい眼差しは見覚えがある。…俺モテ期到来?

 

 

リリーが去ったコンパートメントは一気に静まった。

セブルスは俺の脚を鞄で突く。なんだ、と見れば前の席を顎でしゃくっていた。

…隣に座るなって事だろう、──ま、野郎2人が仲良く隣で座っているのも不自然か。すぐにリリーが座っていた場所に座れば、セブルスは鼻でフンと小さく馬鹿にしたように笑い鞄から本を取り出した。

これはあれだな、本を読むから一切話しかけるなというポーズをするつもりなんだろう。

しかし、レアな2人きりのチャンスを逃す俺ではない。セブルスとは出来れば友好な関係を築きたいんだよなぁ好きなキャラだし!

 

 

「なあセブルス」

「…馴れ馴れしく名前で呼ぶなペティグリュー」

「まぁまぁそんな怒るなって!…セブルスは闇の魔術が好きなのか?」

「…、…学術的興味だ、好きとか、嫌いだとかではない」

 

 

ズバリ踏み込んで聞いてみたが、軽く流されてしまった。まあ、流石に闇の魔術に傾倒していることをグリフィンドール生で、さらにジェームズの友人の俺にははっきりと言わないか。

 

この世界に来て半年以上が過ぎて、俺は魔法界でいま起こっている戦争の真っ只中の時代を生きている。

それで、初めて気づいた…というか、理解したんだが。意外と闇の魔術を学ぼうとしている人は多い。勿論、殆どがスリザリン生だが、図書館で闇の魔術に僅かに書かれているギリギリ一般生徒も読める本などはいつ行っても貸出中だ。

 

俺は、ハリポタを読んだ時にヴォルデモートや死喰い人達は恐ろしい犯罪集団であり、忌み嫌われているのだとばかり思っていたが、今──少なくともこの年代では少々異なるようだ。勿論、多大な闇の力を持つヴォルデモートは恐れられている。

 

だが…今魔法界──いや、このイギリスという国で行われているのは、戦争だ。

ヴォルデモートは今のところ、弱いマグル達のために魔法族が不偏を強いられるのはおかしい。素晴らしい力を持つにも関わらず隠れ過ごす同胞達のために嘆き、魔法族のために立ち上がりたい──と、一応の大義名分を掲げている。ヴォルデモートは人の心を操り、心に響く嘘を吐き、掌握することなど容易いのだろう。一定の支持は得ているようだ。

 

勿論俺や、ある程度ヴォルデモートに近い人間はそれは目的のほんの表面でしかなく、その後待ち受けるのはマグル生まれの投獄、さらには残虐だ。

 

ヴォルデモートは、まぁ、ある意味革命家なのかもしれない。

 

戦争は、勝った方が正義となる。それは、俺がいた世界でも、そうだった。

今、ヴォルデモートが率いる勢力は力をつけている、きっと、もうすぐより熾烈な戦争が開始されるのだろう。

 

ヴォルデモートの勝利を確信し、その思考に賛同する物は今から死喰い人への道を歩んでいる。大声でそれを風潮する人は居ないが──かと言って、それがバレたところで今はまだ投獄されるわけではなく、必死に隠してはいない。

 

 

セブルスもまた、その1人なのだ。

幼少期マグルの父に虐待を受け、その恨みからマグルを心から軽蔑し、恨んでいる。

うーん、それでもリリーのことは好きなんだから、マグル生まれでもいい奴が居るって分かりそうな物なのになぁ。

まぁ、幼少期のトラウマを癒すのは…難しいからな。

 

 

「あー…まぁ、人を殺せるのは闇の魔術だけではないしな。俺も学術的興味、はあるよ」

「お前が…?…そうは見えんな」

「ま、俺にも色々あるって言う事で。…ついでにもう一個聞いていい?」

「断る」

「そう言わずに!…あのさぁ──なんでやられっぱなしなんだ?」

 

 

俺を見るセブルスの瞳がすっと細められた。

主語を明確に伝えなくとも、セブルスには俺が何を言いたいのかわかったようだ。暫く俺の顔を見ていたセブルスは、ため息を吐くと頭を窓枠にもたれ掛からせ、外の景色を見た。──流石に答えてくれないか。やり返したくても出来ないのなら、俺の質問はセブルスの自尊心を大いに傷付けた事だろう。

 

 

「──僕はスリザリン生だ」

「え?そりゃ──」

 

 

何当たり前の事を、と言いかけたが彼が意味のない事は言わないだろうと思い少し考える。

 

 

「──ははぁ、…成程」

 

 

成程。

スリザリン生だから、表立っての反撃はしないと?…いや、セブルスのこの少し嫌そうな表情はそうではないな。

セブルスは身の程を弁えている。ジェームズとシリウスが相手なら苦戦しやられてしまうとわかっているのだ。二人とも才能に溢れた魔法使いだから、流石に2対1では勝つ事ができない。ただ、彼らのように人の大勢いる前で自分から魔法をかけることも、スリザリン生だから、出来ない。

 

スリザリン生は狡猾で、目立つ事を良しとしない。闇からこっそりと確実に相手を仕留めるが、その痕跡さえ残さない。

 

 

セブルスはスリザリン生である事を誇りに思い、それに準ずるのだろう。…ま、そうしなきゃスリザリンでまともに生きていけないのかもしれない。同胞には優しいスリザリン生だが異物をかなり嫌う傾向にある。皆が同じ方向を向いていないと、その牙は簡単に自分の尾を切るのだろう。

 

 

「それに──…」

 

 

セブルスが何かを言いかけたがすぐに口を閉ざした。何か他にも理由があるのだろうか?セブルスは一瞬扉に視線を向けたが、俺が見ていることに気付くと何も無かったようなふりをした。

 

──ははぁん?

 

 

「なるほど?リリーか?」

「…、…」

 

 

沈黙は肯定ととろう。

たしかに、俺はこの世界でのリリー・エバンズを知らないが、小説を読んだ限りでは彼女は正義感に溢れ尚且つ闇をひどく嫌う、セブルスを何度か闇から救おうとしていたが、それも叶わずそして助けようとし、必死に悪名から庇っていた友人から最低の言葉を吐かれてしまう。

 

リリーの目の前で、リリーと同じグリフィンドール生の2人を自ら進んで堂々と呪う事は出来ないのだろう。…彼女に、嫌われてしまうから。

何ともまぁ、いじらしい純愛じゃないか!

まぁ、リリーが死んでも守護霊は雌鹿だし永遠に愛するって言ってたしなぁ、いやぁー…あのシーンはマジで泣けた…。報われないあたりが可哀想すぎるが。

 

 

セブルスはそれから俺が何を話しかけても無視する事に決めたらしく、鞄から取り出していた分厚い本を、俺の視線から避けるように鼻をくっつけるようにして読み出してしまった。

 

うーん、ガードが硬い!

ま、少しは話す事が出来たからいいか!

 

 

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