1975.04.02
俺たちは自在にアニメーガスになれるようになった。獣の姿で動くことにもなれた。
夜にこっそり寮を抜け出して禁じられた森を獣の姿で走ってみたけど、うん、自在に動物になれるし、人間にも戻れる。
ネズミじゃ無いのは、もう考えないでおこう。俺は俺だ。──ピーターであり、ピーターではない。
1975.04.28
明日は満月だ。
リーマス驚くだろうなぁ!
小型の俺が暴れ柳のコブを抑える役をすることになった、ちょっと緊張する。
リーマスから、暴れ柳にはコブがあってそこを押したら大人しくなるんだよ、と教えてもらったし、うん。まぁ知ってたけどさ!
この日までにかなり走り込みの練習したし、大丈夫…なはずだ!
1975.04.29
最高の一日だった。
ただ、めちゃくちゃ眠い。
ーーー
「じゃあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「おー行ってこい」
「
満月の日の夕方、リーマスは土気色の顔色のまま、寮を出た。
この後マダム・ポンフリーに連れられてこっそり暴れ柳の先にある叫びの館に向かうんだろう。
俺たちはにっこり笑ってリーマスを見送った後、視線を交わしニヤリと笑った。
「いよいよだな」
「ああ…まじで長かった…!」
「決行時間は…夜の10時だ、いいね?」
ジェームズがちらりと腕時計を見る。今は6時ごろ、あと4時間か…。
ジェームズは声を顰めていたが、その声には隠しきれないほどの喜びと興奮が滲み出ている。顔だって真剣な顔をしようとしてるけど、どう見てもにやつきが抑えられてない。
ああ、わかるぜ、今まで本当に大変だったもんな!でもリーマスの為だ、大変だったけど、苦ではなかった!
夜の10時、俺たちは透明マントを羽織りそっとグリフィンドール寮を抜け出した。自由時間が終わった後のホグワーツ城は静まり返っていて、見回りの教師が杖先を灯しながら残っている生徒がいないか注意深く廊下を歩く。
玄関ホール前で我が物顔で歩くミセス・ノリスの側を通過し、俺たちは校庭へ出ると寒い風に身を寄せ合いながら、暴れ柳の近くまで走った。
自然と心臓がバクバクうるさくなる。
ちらりと隣にいるジェームズとシリウスを見れば、興奮で目を輝かせているのが見えた。ああ、わかるぜ。きっと俺たちは今同じ気持ちだ!
「ピーター、頼んだぜ!」
「任せとけ!」
透明マントを被ったまま猫に姿を変える。
暴れ柳が俺の存在に気がつき枝を振るい襲い掛かるが──遅い!
猫ってこんなに早かったのか!軽い足取りで暴れ柳の根元までいき、コブに前足を置いた。
途端、ぴたりと暴れ柳は止まり大人しくなる。
がさがさと芝生を踏み締める音だけが聞こえるから、きっとジェームズとシリウスはマントを被ったまま近づいているのだろう。
さっと何か見えないものが風と共に横切り、虚の中に消えた気配を感じて俺も人の姿に戻りその後に続いた。
「成功だね!」
嬉しそうな声と共に、透明マントを脱いだジェームズとシリウスが現れる。
「第一関門突破だな!」
ジェームズが拳を挙げたのを見て、俺とシリウスがコツンと同じように拳を合わせにやりと笑う。
「俺たちの友人の元へ行こうぜ!」
シリウスの声に頷き、俺たちは低い洞穴のような道を走った。
すぐに真っ暗になり、ジェームズがルーモスで道を照らす、20分も走っただろうか、曲がり角を超えると丸く風景を切り取ったような穴が空いていて、その先は──叫びの館だ。
「…ここだね」
ジェームズとシリウスは走り慣れてないのか息が上がっていた。俺は勿論こんなの準備運動にもならないレベルで、少しも呼吸は乱れていない。
「お前ら、体鍛えたほうがいいぜ?」
「…たしかに…」
「前向きに、検討するよ…」
額に滲んだ汗を服の袖で拭いながらシリウスとジェームズは頷いた。おお、これで身体を鍛える悦びに目覚めてくれたらいい。シリウスなんてたっぱもあるし、イケメンだし、これで身体バキバキだったら死ぬ程モテるぞ。
古い館の中を歩く、かなりぼろぼろで、まじでお化け屋敷みたいだ。こんなところで独りで過ごすのは…寂しいだろうな。
居場所だけ提供されるだけで、リーマスは何年も独りで耐えていたんだ。
先頭を歩いていたジェームズが手を広げて俺たちに止まれとジェスチャーをする。俺とシリウスはぴたりと止まり、真剣な顔でジェームズが顎で指す扉を見た。
扉が閉められていても、獣の呼吸と、唸り声、何かを壊す音が聞こえる。
この先にいるのは、間違いない──
俺たちは顔を見合わせ、頷く。
シリウスが小声で「アロホモラ」を唱えれば、カチリと解錠の音が響く。
俺たちはすぐそれぞれの動物に変身し、牡鹿となったジェームズが体当たりをして扉を開け放った。
その先にいたのは、口元や大きな爪から血を垂らす
「リーマス!今夜はいい夜だね!」
「うわっ…ひっでぇ怪我だなぁ」
「部屋もボロいなぁ」
「なっ……だ、誰…!?」
爪や牙だけでなく、リーマスの体の至る所に傷跡や噛み跡があり、壁や床に血が飛んでいる。
壮絶すぎる現場に、俺とシリウスとジェームズは──多分、眉を顰めた。動物だからわかりにくいけど間違いなくそうだ。
ああ、そうか動物の姿だったら流石に誰だかわかんねぇか?声もノイズ走ってるしなぁ。
「わかんねぇか?毎日会ってるだろ?」
「昨日ルーン語の宿題一緒にやったじゃねぇか!」
「さっき、またねって言っただろ?」
「えっ、…まさか…ジェームズ…シリウス…ピーター…?」
リーマスの驚愕の声に、俺たちはそれぞれの動物の鳴き声を上げて笑った。
「な…なんで、なんで…?動物…?」
「アニメーガスさ。この姿だったら…リーマスとずっと一緒に居られるぜ?」
俺は大きなリーマスの前足の上にぴょんと乗った。
リーマスは小さな俺を見て、目を見開き──獣なのに、泣きそうな目をしていた。
その後、月が沈み夜が明けるまで俺たちは共に過ごした。
朝になり、人間の姿に戻ったリーマスはずっと「ありがとう」と言って涙を流していた。
俺たちも人間の姿に戻り、ジェームズが肩を組み、シリウスが頭をぐしゃくじゃと撫で、俺は背中をぽんぽんと叩いた。
そしてその日の授業は4人仲良く爆睡し、減点される事になった。