異食だきます!入間くん   作:K/K

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13月の間に起こった出来事、という感じで書いています。


第3話

 〝13冠の集い〟から翌日。まだ13月は続き、各悪魔はこのお祭り期間でストレスを発散していた。

 そんな中でとある一室へと集められる三人の人物。

 一人は入間。

 もう一人は金髪に細目の少年。頭部には三角形を繋げた形の角を一対生やし、腰部から伸びる尻尾を足代わりにして宙で胡坐を組んでいる。

 少年の名はシャックス・リード。入間とは同級生であり苦楽を共にした仲で兄弟の様な関係であった。

 最後の一人は女性であったが、190もある長身であった。腰まである赤い長髪。頭部には猫の耳が生えており、時折動いている。

 アザゼル・アメリ。入間たちよりも一つ年上であり、入間たちが通う学校の生徒会長を務める圧倒的な実力と頭脳、カリスマを併せ持つ女傑である。

 とある人物によって呼び出された三人。連絡した人物はまだ来ていない。

 

「どうして僕たち呼ばれたんでしょうね? アメリさん?」

「あ、ああ。どうしてだろうな……」

 

 入間に話し掛けられアメリは顔を赤く染めながら言葉を返す。反応を見れば分かる様にアメリは入間に好意を持っていた。

 

(落ち着け私! 別に二人っきりで会っている訳では無いんだ! そう、二人っきりではない……)

 

 アメリの目がリードへ向けられる。落ち着かなくなるから居て欲しいと思う反面、外して欲しいとも思ってしまう。

 

「この面子……何か嫌な予感がする……」

 

 リードは集められた三人の共通点を見い出し、悪寒で身を震わせる。

 その時、ドアの開く音がした。

 

「ごめんなさい。待った?」

 

 入って来たのは眼鏡を掛けたボブカットの小柄な少女。大抵の悪魔は彼女に対する第一印象は地味、目立たないという印象だろう。

 彼女もまた入間のクラスメイトであり名はクロケル・ケロリ。

「レッスンしていたら少し遅れちゃった」

「いや、僕らが早く着いただけだし……って13月でもレッスンあるの?」

「当然。一日でも欠かしたら鈍っちゃうから」

「流石ぁ」

 

 当たり前の様に言うケロリにリードは感心と驚きを混ぜた反応をする。

 

「あの……ケロリさん? 僕たちは一体何の用で呼ばれたんですか?」

 

 ケロリが三人を集めたのだが集合場所を指定しただけで詳細は書いていなかった。

 

「それはね……」

 

 ケロリは部屋に置かれてあるテレビを操作し出す。電源が入り、映像が映し出される。画面に映ったのは──

 

『13月の月越しに~祭りをむかえる華騒ぎ~』

『男も女もよっといで。血湧き肉躍る! アクドル大武闘会(うんどうかい)!』

 

 スタジアムが映り、大勢の観客が一斉に騒ぐ。

 

「アクドル大武闘会の反省会をします!」

『んなあっ!』

 

 ケロリが眼鏡を外して宣言すると、他の三人は驚愕する。

 

「この時の為にちゃんと録画してきたから」

 

 眼鏡を外した途端、ケロリの雰囲気は一変した。全ての者が視線を、足を、息を止めて見惚れるだろう美少女がそこに居た。

 彼女のもう一つの顔。アクドルくろむとして顔が露となる。

 アクドルとは悪を取るを語源にしたもの。悪魔は暴力的、加虐的な思考が高ぶるストレス周期──悪周期というものが存在する。

 アクドルはそんな周期を抑える為の存在であり、煌びやかで可愛いパフォーマンスによって興奮させ悪意を塗り替えるのだ。

 入間たち三人がアクドル大武闘会を見るのを嫌がるのには訳があった。

 

『チームくろむー!』

 

 映像に映し出されくろむ。そして、露出の高いアイドル衣装を着たアメリと女装をしている入間とリードも映し出される。

 

『ま゛あ゛ぁぁぁぁー!』

 

 三人から絶叫が上がる。

 とある事情でアクドルくろむと共にアクドルの祭典であるアクドル大武闘会へ彼女と共に参加した三人。

 その時は勢いで何とかなっていたが、時間を置いて改めて自分の姿を客観的に見せられると恥ずかしくてしょうがない。

 

「やめてぇぇ! それ以上の僕の恥ずかしい姿見せないでぇぇ!」

「うあ、ああ、あああ……」

「あ、改めて見ると何という格好をしているんだ私は……」

 

 アクドルとしての自分の姿に恥ずかしさが最高潮となる。

 リードが映像を消そうとするが、くろむによって阻まれる。

 

「ダメよ! 一度はアクドルとしてテレビに映ったからには、ちゃんと見返して自分のパフォーマンスを反省する! それがアクドルとして義務なの!」

 

 大真面目に言うくろむ。

 

『そ、そうだったのか……!』

 

 真面目な入間とアメリは信じてしまう。

 

「ホントに~?」

 

 リードは懐疑的であった。

 

「ホントよ!」

 

 嘘である。確かにそういったこともするが、今回ばかりはくろむのほぼ私情である。

 アクドルとして活躍するくろむだが、彼女の原点はアクドル好き。好きが嵩じてアクドルとなった。

 こんな大勢のアクドルが集う番組を見過ごす筈が無い。

 ならわざわざ三人を呼び出したのか。単純にくろむが三人のアクドル姿を可愛いと思っており、本人たちと一緒に見たかったという私欲であった。

 一応三人に配慮して知人に見られない場所は用意した。くろむもアクドルとして活動していることは秘密にしている。

 

「じゃあ、そういうことなら……」

 

 入間は羞恥心を押し殺して鑑賞へと入り、アメリも入間が見るならと続く。他三人が見る事になってのでリードも一人抜けることが出来ず、参加することとなった。

 

「という訳でこれ。ちゃんと全員分用意してあるから」

 

 手渡されたのはペンライトと団扇。団扇にはそれぞれの名前が描かれてある。

 

「準備はいい?」

『お、おー』

 

 一時停止されていた映像が流れ出す。

 最初のうちは自分の姿に恥ずかしがる三人であったが、段々と慣れ始めると応援に熱が籠っていく。

 声援を送るのは自分たちが活躍する場面だけではない。他のアクドルたちが頑張っている姿にも自然とエールを送ってしまう。

 当事者の視点ではなく第三者として見るアクドル大武闘会。白熱とした戦いの中で見えるアクドルの可愛さと煌びやかさ。個々が自分なりに自分の魅力を最大限まで引き出そうとする。

 その光景に四人は興奮せざるを得なかった。

 やがて、大武闘会も折り返し地点へと入ると映像を一旦止める。

 

「あー! 案外面白いかもこれ!」

「そうだね。アメリさんはどうでした?」

「ああ。こういうのは初めてだが、思った以上に楽しんでいる」

「ね、ね? 偶にはいいでしょう?」

 

 アクドル応援を楽しんでいる三人を見てくろむも嬉しそうである。

 

「あー、何か飲み物無いかなー。あと軽く食べられるもの」

 

 応援に熱が入り過ぎて四人とも喉がカラカラであり、小腹も空いていた。

 

「ああ……ごめんなさい。用意していなかったわ」

「あ、大丈夫。もしかしたら役に立つかもと思って……」

 

 入間が白いテーブルクロスを出す。

 

「それって!」

「あの時の!」

「何だそれは?」

 

 知っているリードとくろむ。アメリは初めて見るので首を傾げる。

 

「凄いですよ、これ! とっても美味しいものを出してくれるんです!」

「美味しいもの?」

「はい! これで出したあのお肉、美味しかったな~」

 

 三人はその時の味を思い出し、恍惚とした表情になる。二度と味わえないかもしれない至高の味であった。

 

「そ、それ程のものなのか?」

『はい!』

 

 三人が力強く肯定する。その反応を見るとアメリも期待してしまう。

 入間はテーブルクロスを広げる。

 

「何か食べたいものはありますか?」

 

 ここ最近美味しいものばかり食べている入間は遠慮し、他の三人にリクエストを聞く。

 

「うーむ。私は特には……」

 

 アメリはパッと思い付くものは無かった。

 

「じゃあ、私はキラキラしたもの!」

「僕はパクパク食べれる軽いもの!」

 

 二人が希望を言った瞬間、テーブルクロスが反応し宝石の肉を出した時と同じ現象が起こる。

 アメリが驚いている間にテーブルクロスの上に二人が希望したものが二品置かれていた。

 虹色に彩られたゼリーと大きなポップコーン。

 

「うわぁ。キラキラしてる……」

 

 虹のゼリーは七色の輝きを放つだけではなく僅かに蒸発したものがゼリーの上に虹を生み出しており、くろむはその輝きに目を奪われていた。

 

「何これ!? でかっ!」

 

 拳大、もしかしたら赤子の頭ぐらいのサイズがあるポップコーンに驚くリード。

 

「見たこともない料理だ……」

 

 魔界では見ない料理にアメリの目と好奇心が惹かれる。

 

「た、食べちゃっていい?」

 

 リードが聞いてくる。入間も二つの料理に心惹かれていたが、望んだのはリードとくろむ。最初に食べる権利は二人にある。

 

「う、うん!」

 

 くろむは悪魔としての固有能力で冷気を操り、氷のスプーンを作り出して虹のゼリーを掬う。

 リードの方は手掴みで巨大ポップコーンを掴む。

 二人は同時に口の中に運んだ。

 虹のゼリーがくろむの舌触れた瞬間、そこで起こったのは味の爆発的な変化であった。

 脳が蕩ける様な凄まじい糖度が来たかと思えば、それを吹き飛ばす様な爽やかな酸味。それらが混ざり合い細胞が震える様な甘酸っぱさになったかと思えば、香ばしい味へと変わり、ほろ苦さが混じったビターな甘みが舌を撫で、それが大人っぽさを感じさせる味へと成っていき、最後には砂糖や果実とは全くことなる未知の甘味を舌に残して嚥下された。

 

「素敵……」

 

 虹色に相応しい七色の味の変化にくろむは涙を流して歓喜する。

 リードは巨大ポップコーンを一齧りして呆けた表情になる。

 

「え!? 今僕食べた!?」

 

 食べた瞬間に呑み込んだことに気付く。

 今度は注意して齧るが、やはりすぐに吞み込んでしまった。だが、その手は無意識のうちに別のポップコーンを掴んでいる。

 意識して咀嚼するリード。そして、分かったことがある。このポップコーンは美味し過ぎるのだ。

 嚙んだ瞬間に香ばしい香りが口一杯に広がり、咀嚼すれば口の中で解けて滑らかに喉を通って行く。

 後に残るは次も食べたいという欲求。

 手が止まらない。食べることが止まらない。無限に食べられそうなポップコーン。

 二人が夢中になって食べる姿に入間とアメリの喉が鳴る。

 

「ぼ、僕にもちょうだい!」

「わ、私も……!」

 

 暫くの間、アクドル応援上映は中断されることとなる。

 

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