横浜カップ、それは年に一度横浜にて開催されているポケモンバトルの大会だ。俺はこの大会に招待され参加した。そして…俺は今
「丈一郎、次のバトルまで少し時間がある。少し遅くなったけど今のうちに昼食を済ませておいてくれ」
「りょーかい」
お昼を食べようとしてます。
大会中とはいえ、腹は減る。食べられる時にちゃんと食べておかないとね。試合の影響もあり少し遅くなったけど、大会前にオクタン焼き食べておいたお陰で案外、ちょうどよかったかも。
俺はカバンの中から持参した弁当箱を取り出す。
「弁当持ってきたのか?」
「うん。あれ?だめだった?」
「いや、駄目じゃないけど…大会側が豪華な弁当を用意してくれてるぞ」
プロデューサーは控え室の脇にあるテーブルから二段の弁当箱を持ってくる。
弁当とかあんまり、詳しくないけど外観だけみても豪華そうなのは伝わってくる。
「おぉ、滅茶苦茶VIP対応じゃん。プロになるといつもそうなの?」
「いつもとはいかないと思うけど、今回は招待された立場だからな」
招待されるって、いいこと尽くしなんだな。だけど…
「じゃあ、俺は少し離れるよ。また、作戦会議するんだろう?」
「うん?まぁね」
「じゃあ、試合前になったら迎えに来るから、何かあったら連絡してくれ」
プロデューサーはそう言って控室から出ていく。
さて、この豪華な弁当どうするかな?
「今日は、透たちが弁当作ってくれてるんだよなぁ」
透たちは俺が大会に参加するときに毎回、弁当を作ってくれている。まぁ、大会の時以外にもたまに作ってくれるんだけど、大会の時は彼女たちの作ってくれた弁当を食べることが俺のモチベーションを大いに上げてくれている要素になっている。
そんな訳で、用意してくれた大会側の人には悪いけど、これには手を付けないでおこう。プロデューサーが飯食べてないなら上げてもいいし、ダメなら持って帰えればいいか。
「ロトム、ヒートロトムにチェンジして弁当温めて」
「ロト!」
ボールからロトムを出して、弁当を温めてもらう。やっぱり、ロトムって便利だよな。一家に一匹はロトムが必要だと思う。
「早く弁当食べて、次の対戦相手のデータ調べないとな」
この大会にはプロの選手が多く出ている。俺の次の対戦相手もプロの選手だ。お陰でデータは大量に手に入る。ある程度の対策はしておかないとね。
「…その前に試合の経過と弁当の感想の連絡入れておくか」
あ、でも彼女たちのレッスンの時間聞いてなかったな。電話じゃ出られないかもしれないしチェインでいいか。
***
「はい!それじゃあ、少し休憩にしましょう!」
「「「「ありがとうございました」」」」
ふぅっと軽く息を吐き呼吸を整え水分をとる。283プロに入って、それなりに練習を重ねた成果か初めてレッスンを受けた時と比べて私を含めた全員かなりスタミナが付いたと思う。最初はレッスン後、床に寝そべっていた浅倉や雛菜もそして一番スタミナの少なかった小糸も最後まで動けるようになっている。
…まぁ、私を含めて全員まだまだ、できていないことの方が多いけど
「あ~丈先輩からチェイン来てる~」
「あ、本当だ」
休憩に入り、スマホを見ていた浅倉と雛菜のセリフを聞き私と小糸もチェインを確認する。
『レッスンお疲れ!大会は無事勝ち残って、次は準々決勝みたい』
「わぁ、丈くん順調に勝ち残ってるって!」
「まぁ、そう簡単には負けないでしょう」
実際、あいつがバトルで負けてる所なんてほとんど見たことがない。小学生の頃は偶に負けてたけど、それもゲッコウガ…当時のケロマツの特性を理解出来てなかったことが原因みたいだし
『それとちょっと遅くなったけど4人が作ってくれた弁当食べたよ。お陰で午後も頑張れそうだ!』
「…相変わらずお弁当程度で大袈裟すぎる」
…まぁ、これからもお弁当位だったら作ってあげるのはやぶさかでもない。真田も頑張ってるみたいだし、これくらいのサービスはしてあげてもいい。
『これから先もずっと4人の作ってくれるご飯を食べさせて欲しいかな』
「…ふふ」、「っ!」、「ぴぇ!」、「あは〜♡」
あ、あいつは…本当に…どうしてこんなセリフを当たり前みたいにいつも…バトルの時は変化球みたいな事よくする癖に何でこういう…自分の好意をストレートな言葉しか言ってこないんだろう。
「見た?これからも私たちの作ったご飯食べたいって」
「う~ん、毎日ご飯作るの大変そうだけど丈先輩の為なら雛菜頑張るよ~」
そして、この二人も相変わらずだ。あのバトル馬鹿もそうだが、少しは自分の気持ちも隠すことをして欲しい。
「こ、これって…プ…プロポーズ?…で、でも、私たちまだ、高校生だし…でも、丈くんならお母さんも反対は…」
「小糸、お願いだから戻ってきて」
小糸、お願いだからあんただけは私と同じ常識ある人でいて…というか私を一人にしないで
「…真田、戻ってきたら覚えておいて」
…私がこんな思いをしてるのに、あいつはきっとバトルを楽しんでる。そう思うと何だか無性に腹が立ってきた。
***
な、何だ?今、一瞬凄い寒気が…き、気のせいだよな。
『さー、真田選手VS野村選手のバトルもいよいよ大詰めだ。真田選手はこのバトル、ボーマンダ1体のみで野村選手を圧倒しています。野村選手のポケモンは後1体のみ、もう後がありません!さぁ、野村選手最後のポケモンは?』
そ、そうだ。バトルの途中なんだし集中しないと…今の所、順調だ。ボーマンダも調子がいいし、このまま3タテを狙ってみるか。
「まだまだ、ここからだ!行けエアームド!」
『おーっと!野村選手最後のポケモンはエアームドだ!エアームドVSボーマンダ!空中戦での勝負を挑む模様です!』
ふーん、エアームドか。バトル前に調べた時には特にエアームドをバトルで使用したデータはなかった筈だけど…まぁ、いいか。空中戦は少し久しぶりだし面白くなってきたかも
『野村選手のエアームドは、事前のインタビューによると今大会の為に新戦力としてゲットしたとのことですが、既に自分の持つポケモンの中で最強であるとコメントしています』
ほぉ、そこまで言うのか。ボーマンダと相性もそんなに良くないし、油断せずに行かないとな。
『さぁ、野村選手のエアームド意地を見せられるのか?それとも真田選手のボーマンダ見事勝利を納めるのか?いよいよバトル再開です!』
「それではバトル開始!」
「エアームド!『はがねのつばさ』だ!」
試合開始、早々にエアームドが翼を鋼色に光らせながら、突っ込んでくる。結構早いな、それなら…
「『ドラゴンクロー』で受け止めろ」
ボーマンダは両前足を変化させ、正面から突っ込んでくるエアームドの翼を受け止める。
『なんと!エアームドの『はがねのつばさ』をボーマンダ、『ドラゴンクロー』で受け止めた!』
確かに、普通のエアームドよりも素早い印象を受けたけど、純粋なパワーならボーマンダの方が上だ。
「この距離なら躱せないぞ、ボーマンダ!『ほのおのキバ』だ!」
ボーマンダの牙が炎を纏い、エアームドを噛みつく。
『これは距離を詰めたことがあだとなったか!エアームド、効果抜群の『ほのおのキバ』を食らってしまった!』
「ボーマンダ、まだ逃がすなよ」
ボーマンダの牙からエアームドの体に炎が伝わっていく。上手くいけば、火傷の状態にできるかもな。
「頑張れ!エアームド、『ドリルくちばし』だ!」
エアームドのくちばしがドリルの様に回転しながら、ボーマンダに迫ってくる。ボーマンダは咄嗟に回避しようとするが距離が近すぎて回避できずに攻撃を受け、エアームドを開放してしまう。
『エアームド、『ほのおのキバ』から何とか逃れることに成功しました。しかし、ダメージは大きいここからどう戦うのか?』
うーん…ダメージは与えられたけど火傷には出来なかったか。『おにび』と違って火傷に確実にできるわけじゃないし、仕方ないか。
「かなりダメージを受けてしまったか…ならば、エアームド『ねむる』だ」
眠る?体力回復狙いか?
『エアームド、眠ることで体力の回復を図る模様です。しかし、その間は相手の攻撃に対して無防備になっています。大丈夫なのでしょうか?』
何か意図が…運任せで『ねごと』を使うつもりか?…いや、ただ、相手の回復を待つわけにもいかないか。ここは攻め時だ。
「いくぞ、ボーマンダ!『ドラゴンクロー』!」
ボーマンダが前足でドラゴンクローの構えをしながら、エアームドに突っ込む。しかし…
「今だ!エアームド、『こごえるかぜ』!」
「なに!躱せ!」
眠っていたはずのエアームドが突如目を開き、凍てつく冷気を放ってくる。
『あーっと!眠っていたはずのエアームドがいきなり目を覚まし、攻撃をしてきた!ボーマンダ、咄嗟に回避行動に出ましたが、ダメージを受けてしまった模様です』
…おいおい
「…『ねむる』じゃなくて寝たふりですか」
「悪いな、あまりだまし討ちの様で好きな戦法ではないのだが…君にはその様な遠慮は必要ないだろう?」
「…ええ、勿論。嫌いじゃないですよ、そういうの」
ここまでのバトル、正面から挑んでくる奴ばかりで少し飽きていたところだ。
「ならばいい。『はがねのつばさ』だ!」
また、『はがねのつばさ』か…なら、もう一度
「ボーマンダ、『ドラゴンクロー』で」
しかし、俺が指示を出し終わる前に鋼の翼がボーマンダに命中する。
「なに!」
『エアームドの『はがねのつばさ』がボーマンダに直撃した!ボーマンダ、先ほど受けた凍える風の影響か?動きが遅くなっているようです」
いや、違う。『こごえるかぜ』の影響で確かに動きは遅くなっているけど、それだけじゃない。明らかにエアームドの動きが早くなっている。
これは…そうか!
「『くだけるよろい』か」
「なんだ、知っていたのか?正解だ」
『くだけるよろい』とは物理技を受けると、防御ランクが1段階下がり、素早さランクが2段階上がるという特性だ。
くそ!エアームドの特性は『するどいめ』か『がんじょう』だと思い込んでしまった。俺の失態だな。こんなことならドラゴンクローや『ほのおのキバ』じゃなく『かえんほうしゃ』や『りゅうのいぶき』のような遠距離技中心でバトルをしていくべきだった。
相手が鋼の翼を多用してくるのも砕ける鎧で下がった防御を鋼の翼の効果で上げるのが狙いか。なかなか、考えてるな。
…ふぅ、まぁ反省は後にするとして、ここからどうするかだ。こちらは後2体ポケモンが残ってる。一旦交代するか?
偶然ではあるけどロトムは今、ヒートロトムになってる。相手のスピードが速いから攻撃を避けられるかもしれないし『でんげきは』をメインにして攻めて、隙を見つけたら『10まんボルト』と『オーバーヒート』を当てに行けば多分、勝てる。
「・・・・・・」
俺が交代を考えたのが伝わったのかボーマンダがこちらを睨んで来る…そんなに睨むなよ。分かった分かった。このバトルは最後までお前で行くから。
「よし、ボーマンダ一旦距離をとるぞ、全速力で飛べ!」
「逃がさん!追え!エアームド!」
『ボーマンダ、エアームドから距離をとろうとしますが、エアームド動きが早い!これはすぐにでも追いつきそうだ!』
「どうした?逃げるので精一杯か?」
確かにエアームドの早さは今のボーマンダよりも早い。スピード勝負じゃ、負けるのは承知の上だ。だったら、そこを逆手に利用すればいいだけだ。
「ボーマンダ、『ブレイク』だ!」
「…『ブレイク』?」
俺の指示を聞くと、ボーマンダは急激に曲線を描くようにして進路を変える。
「なに!」
『おっと!ボーマンダが空中にて急旋回を決めた!エアームド、ボーマンダの突然の行動に対応できず、ボーマンダを追い越してしまった!』
このブレイクとは本来はポケモンの技ではない。航空機が空中で行う機動の一つだ。ポケモンの事に詳しいトレーナーでも、というよりトレーナーだからこそ知っている人は少ないだろう。だからこそ、相手のトレーナーにもポケモンにも一瞬の隙ができてしまう。
「背後をとれ!」
「っ!しまった!エアームド後ろに注意しろ!」
飛行ポケモンとはいえ、空中で急ブレーキはかけられない。あのエアームドの早さならターンをして体勢を立て直すのにそれ程時間はかからないだろう。今しかないな。
「ボーマンダ、『かえんほうしゃ』だ!」
「くっ!『エアスラッシュ』で迎え撃て!」
ボーマンダの口から放たれた『かえんほうしゃ』とぎりぎりの所で体勢を立て直したエアームドの翼から空気を切り裂くように様に放たれた『エアスラッシュ』がぶつかり合う。その結果、巨大な爆発が起こり、2体を煙りが包み込む。
『火炎放射とエアスラッシュが相殺し、巨大な爆炎が起きています!一体中では何が起こっているのか?』
徐々に爆炎が消え去り、中の様子が見えてくる。そこには、爆炎でダメージを受けたエアームド、そして…
「…!」
『おや、爆炎が消え去りましたが、ボーマンダの姿がどこにもいない?これは一体?』
「どこに消えた?」
野村選手とエアームド、それだけでなく審判や実況までもボーマンダの姿を見失っている。
今だ!
「行け!ボーマンダ、『ほのおのキバ』だ!」
「なに?…上か!」
そう、今までバトルしていた空中よりもさらに上、ボーマンダは爆炎が起こっている内に上昇を続け雲の中
に隠れていた。そして、爆炎が消え去り、エアームドの位置を把握すると最後の攻撃の為に最高スピードで降りてきた。
凍える風で素早さは下げられたが、高度からの降下により勢いが付いている。今のスピードは通常時のボーマンダよりも早い。
「く!『ドリルくちばし』で迎え撃て!」
野村選手も回避が不可能と判断したのか、迎え撃つ体制に入る。
炎の牙とドリルくちばしがぶつかり合う。両者、互いにダメージを受けながらも先に相手を倒すことにのみ集中し、技をぶつけ合う。
その結果、1体のポケモンが先にダメージの限界に達し地面に落ちる。
「エアームド戦闘不能!ボーマンダの勝ち!よって勝者真田選手!」
『決まったーーーーー!激しい空中戦を制し、最後はボーマンダの『ほのおのキバ』が炸裂!真田選手、勝利をもぎ取りました!』
ふぅ…なかなか強かったな。中学や高校リーグではもっと楽に勝てたのに、流石に長年、プロで活躍してる選手のエースポケモンとなると簡単には倒せないか。
『真田選手、ここまでポケモンを一体も失わずに勝ち進んでいます。この勢いはどこまで続くのかー!』
…いや、単純にここまでの対戦相手に犠牲が必要な相手がいなかっただけで必要になったら、犠牲を厭わずに勝ちを狙いに行くつもり満々なんだけどな。
まぁ、いいか。俺のやることは変わらないし、ここまで来たら優勝して皆に言い報告をしたいな。
最低でも月1更新を目指したいと思います。