シャニマス×ノクチル×ポケモン   作:malco

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なんとか一か月以内に更新できました。
今回は完全にバトル回です。バトルのクオリティには期待しないで下さいね




横浜カップ(後編)

「それじゃあ、父さん交換よろしく」

『ああ、任せろ』

 

ここは、横浜スタジアムにある通信施設だ。俺は手待ちのポケモンを入れ替える為にここに来ている。

通信相手は俺の父親で、東京の郊外でポケモンの育て屋を経営している。普段、俺のポケモンたちを預かってもらって、必要な時にはこうして転送してもらっている。

 

『よし、確かに届いたぞ』

「こっちも届いた。それじゃ、バシャーモのことよろしく」

 

今回は、手持ちにいたバシャーモとあるポケモンを交換してもらった。相手との相性的にもバシャーモを出すことは恐らくないと判断したためだ。

 

『おう、大会頑張れよ!中継見ながら応援してるぞ!』

「ああ、頑張るよ。……って仕事中じゃないの?いくら経営者でもサボってるとまた怒られるじゃね?」

『またって言うなよ。それなら気にするな!うちでは、お前のバトルはBGMって扱いになってるから』

「おいおい」

『職員たちもお前のポケモンたちもバトル見たがってるからな。普段口煩い秘書も特別に許してくれるんだよ』

「…また、秘書さんの悪口言ってるよ。いい人じゃんあの人」

 

あの人は、何年か前から偶にうちに来るけど俺にとっては、色々と面倒を見てくれた優しいお兄さんっていう印象だ。

 

『お前は仕事の時のあいつを知らないからそんなことが言えるんだよ。あいつと来たらちょっとした書類ミスまでネチネチネチネチと、そのくらいお前の方で直しておけってんだ!』

 

父さんが、秘書さんの悪口で一人盛り上がっていると画面の奥の扉が開きそこから眼鏡をかけた顔見知りの男性が入ってくる。

 

『おい、聞いてるか?それ以外にもあいつには色々と言ってやりたあことがあってだな。口煩いし、細かいしで本当に苦労してて』

「あーごめん。父さん、そろそろ戻って作戦たてないといけないからさ」

『うん?そうか…じゃあ、頑張れよ。さっきも言ったけど皆応援してるからな』

「了解、皆によろしく言っておいて」

『おう』

「それから、秘書さんも父のことよろしくお願いしますね」

『おい、待て………ひょっとして後ろに居るのか?』

「じゃあ、俺忙しいから」

『待て!まだ切るな!』

「応援ありがとう!必ず優勝するから!」

 

俺はそう言って通信を切る。

ふぅ、父よ、どうか安らかに………

 

さてと、それはさておきバシャーモと交換したこのポケモン、状況次第だけど、こいつが次のバトルの要になるかもな。

 

「控え室戻って、作戦立てるかな」

 

 

 

準々決勝を終え、次の準決勝でも危なげなく勝利し次の決勝戦の相手である谷阿坤選手の情報を纏めている。

 

谷阿坤選手

プロ歴22年のベテランのプロのトレーナーであり北海道に本社を持つ鉱山企業の社長をしている。「鉱山王」の二つ名を持っていて、その業界では有名人らしい。この大会の主催者とは古い付き合いで毎年招待されている。

 

地面タイプのエキスパートでバトルのスタイルは正面からの力押しが多い。よくいるタイプではあるけど、プロで長年活躍している所から、そこらのトレーナーよりはるかに優れているのは間違いない。

ここまで、使用したのはフライゴン、ガマゲロゲ、ワルビアルの3体のみでエースとされているドリュウズは一度も使用していない。

 

「できたら、生でドリュウズのバトルを見ておきたかったけど仕方ないか」

 

映像を見る限りエースのドリュウズは他の個体より大型で自慢のパワーと見た目以上のスピードで押してくるタイプだ。どれほどの物なのかは戦いながら判断するしかないか。

 

それで、他のポケモンたちでは、どんなバトルをしていたかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「丈一郎、そろそろ時間だ」

「うん。準備完了、いつでも行けるよ」

 

今回の大会に出てきた相手のメンバーへの対策はある程度できあがった。まぁ、準々決勝の時みたいにデータがないポケモンを出されたら臨機応変に対応するしかないけど

 

 

 

***

 

 

 

『さぁ、いよいよ横浜カップ決勝戦です。果たして優勝するのは真田選手かそれとも谷阿坤選手か、間もなく試合開始です』

 

「真田選手、準備お願いします」

「分かりました」

 

スタッフさんに返事をしながら、軽く柔軟する。

 

「…いよいよだな」

「プロデューサー、緊張してるの?」

「……はは、分かるか?」

「まぁね」

 

それで隠せてるつもりだったのかな?丸分かりだけど

 

「いや…すまない。こういう大舞台は他のアイドルの付き添いで慣れてるつもりだったんだけどな」

「まぁ、俺も初めての大会の時はそうだったよ。でも、心配しないでいい。勝つのは俺だ………多分ね」

 

その為の準備は既に済ませてある。後は実行するだけだ。

 

「…なんか、最後がちょっと不安が残るな。……まぁいいか、信じてるぞ!頑張ってきてくれ!」

「うん、行って来る」

 

俺はそう言って、選手入場口からフィールドに向かう。

どうでもいいけど、誰かに勝利を約束したのなんて幼馴染以外では初めてかもな。

 

『先に現れたのは、今大会において最も注目されている真田選手だ!中学、高校リーグチャンピオンとなり、今大会でも圧倒的強さでここまで勝ち上がってます。』

 

『続いて、反対サイドより谷阿坤選手も入場です。今大会の出場回数及び優勝回数共にトップの実力者となります。果たして2人はどのようなバトルを見せてくれるのか?目が離せません』

 

さて、やっと決勝か。ここまで来た以上、ちゃんと優勝しないとな!

 

「よろしくお願いします」

「………ああ」

 

……なんか、間があったな?

 

「あの?なにか?」

「……フン、はっきり言っておくぞ。俺はお前のことが嫌いだ!」

「…え?」

「お前のバトルは相手を状態異常にしたり、妙な変化技で相手を混乱させるようなことをよくするだろう。そういうのが好かんのだ!その曲った根性叩き直してやる!」

 

あーそういうことね

 

「…望むところです」

 

 

 

「これより決勝戦を開始します。両者、同時にポケモンを出してください」

 

 

 

「さぁ、仕事だ!」

「頼むぞ!」

 

互いにモンスターボールを投げると谷阿坤さんはフライゴンをそして俺はバシャーモと交換して手持ちに加えたエルフーンをフィールドに出す。

 

やはり、エキスパートタイプの地面タイプのポケモンで来たな。父さんに頼んで入れ替えをして正解だった。だけど…

 

「エル♪」

 

エルフーンはモンスターボールから出ると、その場で一回転し観客に向かってポーズをとりながらウィンクをする。

 

「「「「『キャアーーーーーーーーカワイイ‼』」」」」

 

…こいつ、いきなり観客に向かって『メロメロ』使わなかったか?技はともかく、あのポーズを教えたの絶対雛菜だろ。

 

しかもエルフーンの『メロメロ』を使った瞬間に女性の歓声に合わせて実況の野太い声も聞こえてきたような気がするんだけど

 

『…た、大変失礼いたしました。谷阿坤選手はフライゴン、真田選手はエルフーンでのバトルです!』

 

気のせいじゃなかったよ。

 

『フライゴンとエルフーン、相性ではエルフーンが有利ですが果たしてどのようなバトルになるのか!』

 

「フン、相性だけではバトルは決まらんさ」

「…えぇ、その通りです」

 

まぁ、それでもこちらが有利な状況になったことは事実だ。俺は、それを最大限利用すればいい。

 

「それでは、横浜カップ決勝戦、試合開始!」

 

審判のコールと共に、まず、谷阿坤さんが動く

 

「ドラゴン技だけがフライゴンの技じゃない!行け『かえんほうしゃ』だ!」

「エルフーン、『ひかりのかべ』だ」

 

フライゴンの口から放たれる『かえんほうしゃ』をエルフーンが作り出した『ひかりのかべ』が防ぐ。

 

「ちっ!小癪な!ならば『はがねのつばさ』だ!」

「今度は『コットンガード』だ」

 

エルフーンは背中の綿毛が体全体を包み込む。

フライゴンはエルフーンに正面から突っ込み、『はがねのつばさ』をぶつける。

 

ぼんっ

 

そんな音と共に見た目は完全に綿毛となっているエルフーンは『はがねのつばさ』の衝撃を吸収してフライゴンを弾き返した。

 

「何だと!」

 

『おおーっと!フライゴンの連続攻撃を、エルフーン『ひかりのかべ』と『コットンガード』で完璧に攻撃を防いでいます!』

 

『かえんほうしゃ』、『はがねのつばさ』確かにエルフーンには効果抜群の技だけど、所詮はタイプ不一致の副砲だ。ダメージは多少あるけど防御に徹すれば防げないものじゃない。

 

それに、エルフーンの特性『いたずらごごろ』によって、変化技を相手より優先的に使える。変化技を多く持つエルフーンには理想的な特性だ。

 

「…だが、守ってばかりでは勝負には勝てんぞ!」

「もちろん、分かってますよ」

 

だけど、相性のお陰でドラゴン技は封じているわけだし、もう少し色々やっておきたいな。

 

「では、今度はこちらから行きますよ。エルフーン、『しびれごな』だ!」

「そうはいくか!フライゴン、ふきとばせ!」

 

フィールド全体にばら撒かれる『しびれごな』をフライゴンは自身の翼を羽ばたかせ、吹き飛ばそうとする。

 

それなら

 

「エルフーン『おいかぜ』だ。そのまま押し返せ!」

 

直後、フライゴンにとって向かい風となる強力な風が巻き起こる。フライゴンは対抗しよう翼を必死に動かすが、風の勢いに負けてしまい、そのまま風に乗った『しびれごな』が命中する。

 

「なに!」

 

この結果もある意味当然かもな。そもそもフライゴンは『ふきとばし』を覚えない。さっきやっていたのは『ふきとばし』みたいなものであり正確には技ではない。

 

それに対し『おいかぜ』は攻撃技ではないが、自然に働きかける技だ。いくら強いポケモンでも一匹で自然そのものに勝てるやつは決して多くはいない。

 

『エルフーンが起こした『おいかぜ』に乗り『しびれごな』がフライゴンに命中したー!真田選手が得意とする相手を状態異常に追い込む戦法が見事に決まりました!』

 

…まぁ、得意というか単純に状態異常が好きなんだよね。バトルやりやすくなるし、状態異常にさせたら気持ちいいし

 

「気に入らん!小癪な戦法ばかり使いやがって、男なら正面から来い!」

「…それは失礼」

 

こういう反応も慣れてきたな。まぁ、やる方は楽しいけど、やられるのは嫌だよな。

 

「それじゃ、次はリクエストに応えて攻撃技で行きますよ。エルフーン突っ込め」

「フライゴン、『かえんほうしゃ』で迎え撃て!」

 

フライゴンは突撃してくるエルフーンを『かえんほうしゃ』で迎え撃とうとする。だが

 

『エルフーン早い!早い!見かけ以上のスピードです!』

 

さっき使った『おいかぜ』の本来の効果が出て素早さが上がっているからな。そのまま、エルフーンは『かえんほうしゃ』を避け攻撃の射程圏内まで近づく。

 

「エルフーン『じゃれつく』だ」

 

エルフーンはフライゴンへと飛び移り、そのまま激しいスキンシップを行いもみくちゃにする。

 

…この技、言葉にして説明すると全然怖く感じないけどフライゴンの様子を見ればどれほど強力で恐ろしい技なのかが伺えるな。

 

「しっかりしろ!振り払え!」

 

谷阿坤さんの声に応えるようにフライゴンは力を振り絞りエルフーンを振り払おうとするが、麻痺状態が邪魔をして上手く体を動かせていない。麻痺状態+効果抜群の技をくらっている状態から抜け出すのは簡単じゃない。

 

暫くすると、フライゴンは目を回して地面に倒れ込む。戦闘不能だな。

 

 

 

「フライゴン、戦闘不能!」

 

 

 

「くそ!くそ!くそ!」

 

おぉ、リアルで地団駄踏んでる大人なんて初めて見た。

 

「猪口才な小僧め!ワシはお前の様に小細工するバトルは好かんのだ!」

「…なんと言われようとこれが俺のバトルですから」

 

そう、恥じることなんて何もない。出来ることの全てやり、バトルをする。ただ、それだけのことだ。

 

『フライゴン敗れました!やはり、相性の差には抗えなかった模様です。決勝戦の初戦は真田選手が取り、選谷阿坤手のポケモンは後2体、果たして次のポケモンは?」

 

「渇を入れてやる!仕事だ!ワルビアル」

 

『ヤーコン選手2体目のポケモンはワルビアルだ!しかし、これは…』

 

相性が悪すぎる。ワルビアルは地面・悪タイプのポケモンだ。草・フェアリータイプの攻撃を受ければ大ダメージを受けるのは免れない。

 

「相性の差など無理やりひっくり返すだけだ!」

「…面白い。受けて立ちますよ」

 

 

 

「それでは、試合再開!」

 

 

 

「エルフーン『エナジーボール』」

「受け止めろ!」

 

ワルビアルは手をクロスし『エナジーボール』を正面から受け止める。

まだ、『おいかぜ』の効果が残ってるうちに攻めに行くべきか。

 

「一気に行くぞ!『じゃれつく』」

「『あなをほる』で地面に潜れ!」

 

さらなる攻撃の為に接近してきたエルフーンをワルビアルは地面に潜り回避する。

やっぱり、そう来るよな。

 

ワルビアルはエルフーンの前方、左右、後方の様々な場所に穴を掘り、一瞬だけ顔を出しすぐに身を潜める。まるでモグラたたきだ。

 

『エルフーンの攻撃を警戒したのか、ワルビアル地面の中に退避しました。はたしてどこから現れるのか』

 

ここまでの展開はある程度予想通りだ。既に倒す算段はついてる。問題は、どのポケモンで実行するのかだ。

 

相手の最後のポケモンが絶対的エースのやつだとすると、エルフーンにはまだ、無理をさせたくないな。

 

それなら、ここは

 

「もどれエルフーン」

 

『真田選手、エルフーンを戻します。今大会初のポケモン交換となります』

 

だから、そういうの別に拘ってないって

 

「なんだ?戻すのか?」

「ええ、1体のポケモンや戦術に拘っていたらバトルが手遅れになりますから」

「…フン」

 

俺の事は気に食わないようだが、俺の意見には賛成なのか先ほどの様な悪態をついてこないな。

 

『さぁ、真田選手の次のポケモンは?』

 

そうだな。この状況ならやっぱりこいつだろ。

 

「行け!ゲッコウガ!」

 

「コウガ!」

 

『真田選手、2体目のポケモンはゲッコウガだ!真田選手の絶対的エースとして知られるポケモンをここで出してきました!」

 

「…もう出してきたか」

「頼むぞ!ゲッコウガ」

 

 

 

「試合再開!」

 

 

 

「ゲッコウガ!『みずしゅりけん』」

「地面に隠れろ!」

 

ゲッコウガの『みずしゅりけん』を先ほどと同じように地面に潜り回避する。

 

「そう来ると思ってましたよ。ゲッコウガ、お前も穴に入れ!」

 

『ゲッコウガ、ワルビアルが潜った穴に自分も入りました。これは、一体?』

狙いは一つだ

 

「ゲッコウガ『ハイドロポンプ』だ」

「い、いかん!穴から出ろ!」

 

狙いに気づいたみたいだが、もう遅い!

穴の中でゲッコウガの放った『ハイドロポンプ』がフィールド上にあった全ての穴から一気に噴き出し、穴の中に潜んでいたワルビアルも一緒に外に飛び出してくる。

 

「見つけた!ゲッコウガ『みずしゅりけん』」

 

『ハイドロポンプ』が命中し、穴から無理やり追い出されぐったりしている所に追い打ちをかけるように『みずしゅりけん』が襲う。

 

「ワルビアル!」

 

ワルビアルは避けることができずに効果抜群の技を連続で受け、目を回しながらワルビアルは倒れてしまう。

 

「ワルビアル戦闘不能!」

 

『ワルビアル倒されました!ゲッコウガの『ハイドロポンプ』と『みずしゅりけん』の連続攻撃は耐えられませんでした。これで、真田選手は残り3体に対して谷阿坤選手のポケモンは後1体のみ、もう後がありません!」

 

よし、追い詰めた。相手は残り1体で恐らくエースのあのポケモンだ。勢いはこっちにある。行けるかな?

 

 

 

 

「はははははははは」

 

 

 

 

 

…………なんだ?

 

「…何か?」

「いや、ななかなか根性のある攻めだったと思ってな。お前とこんなバトルができるとは思ってなかったから嬉しいと思ったまでよ」

 

遠回しに貶されてる?…いや、この人はそんなことしないか。これは、この人なりの誉め言葉なのかも

 

「だが、最後のこいつは今までのポケモンとは比べ物にならんぞ。行け!休日出勤だ!ドリュウズ」

 

『谷阿坤選手、最後のポケモンはやはりエースのドリュウズだー!』

 

…予想通りだからいいけど、休日出勤って出さずに勝つつもりだったのか?

 

「真田選手のゲッコウガ、谷阿坤選手のドリュウズ、最後の戦いは両者の絶対的エースでのバトルだ!果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか!』

 

…………うーん

 

「さぁ!存分にやろうじゃねぇか!」

 

…うん。気合入ってるところ申し訳ないんだけども

 

「…戻れ、ゲッコウガ」

 

俺は若干のためらいを感じながらもゲッコウガをモンスターボールに戻す。

 

「な、なんだと!」

 

『真田選手、ゲッコウガを戻してしまいました!』

 

…全く、やりにくいな。実況が盛り上げたせいでゲッコウガを戻しにくいったらないよ。

 

「てめぇ!どういうつもりだ!」

「いや、どういうつもりも何も…一応作戦がありまして」

「何が作戦だ!ここは互いのエースポケモン同士を戦わせる流れだっただろうが!」

「…そっすね」

 

俺だって、そういう流れだったのは分かってますよ!でも、空気に流されてらしくないことをするのにも抵抗があるしなぁ

 

「だったら、ゲッコウガで戦わんか!自信がないのか!」

「…自信はありますよ。そうしてもいいんですけど、まず、そのドリュウズがどれくらいの強さなのかある程度見極めてから勝負したいんですよね」

 

この大会では谷阿坤さんはドリュウズを使っていなかった。そのせいで直接その強さを見ることも出来てない。過去のデータを見た限り、かなりパワーファイトが得意という印象が強いけど、あくまでそれは過去のデータだ。

 

どうせなら、今のドリュウズのデータも参考にしたい。折角、ゲッコウガを含めて3体も残してるんだ。この数の差を利用しないのはあまりにももったいない。

 

「この!この!この!どこまでも生意気な小僧だ!全く気に入らん!」

 

本日2度目の地団駄踏んでるよ。この人、俺とは色んな意味で相性が悪いのかもしれないな。でも…

 

「俺は谷阿坤さんのこと、結構好きですよ」

「……ば、馬鹿にしやがって!さっさと次のポケモンを出さんかー!」

「はいはい」

 

別に馬鹿にはしてないんだけどな。…でも、なんでだろう?何か嫌いになれないんだよなこの人、説教臭い大人って嫌いなはずなのに…まぁ、いいか。後で考えよう。

 

「悪いな。もう一度頼むぞ」

 

次に出したのは1試合目と2試合目でフライゴンとワルビアルとバトルを行ったエルフーンだ。

 

『真田選手、続いて出したのは、またしてもエルフーンだ。先ほどフライゴン相手に見事なバトルをしていましたが、今度はどのようなバトルを見せてくれるのか!』

 

予想よりも早くワルビアルを倒せてしまったから、あまり休めてないかもな。本当は、もう少し休ませてあげたかった。だけど、次のバトルにつなげる為にはここはエルフーンが適切だ。

 

「エルフーン」

「エル?」

「…頼んでいいか?」

「エル!」

「そうか…ありがとう」

 

エルフーンは自分の役割を分かってくれている。だったら、こっちも変な遠慮はしない。俺たちにできる全ての手をうって勝ちに行くだけだ。

 

「そいつで俺のドリュウズに勝てると思ってんのか」

「さぁ、やってみないと分からないですよ」

「…生意気な小僧め」

 

 

「それでは、試合再開!」

 

 

「攻めるぞ!『エナジーボール』だ」

「『こうそくスピン』で防げ!」

 

エルフーンの『エナジーボール』をドリュウズは両手を回転させた『こうそくスピン』で防ぐ。

 

「…成程、大したパワーだ」

「フン、当然だ!」

 

攻撃は最大の防御か、正にそれを体現してる感じだな。『エナジーボール』を完全に受けきっていたし、あれじゃ、ほとんどダメージが入っていないな。

 

「今度はこっちの番だ!『ドリルライナー』」

 

ドリュウズはドリルのように体を回転しながら体当たりをしてくる。パワーだけじゃなくスピードもあるみたいだな。

 

「『コットンガード』、そしてそのまま『わたほうし』だ」

 

エルフーンは『コットンガード」で綿毛状態になり、突っ込んでくるドリュウズを正面から受け止め、体中の綿毛からフワフワの胞子をドリュウズに纏わりつかせる。

 

 

「ぶちかませ!」

 

エルフーンはドリュウズのパワーに押し負け弾き飛ばされる。

 

「エルフーン!」

「…エ…エル…」

 

エルフーンは立ち上がるが、そろそろダメージが危険ゾーンに入ってきた。効果が今一つである筈の『ドリルライナー』でこの威力か。

 

「…だけど、想定の範囲内だ」

 

確かにエースと言うだけの事はある。フライゴンやワルビアルとではパワーもスピードもまるで違ったが、このままゲッコウガでバトルしても倒せない相手じゃない。

 

しかし、その上であらゆる手を打ち勝ちに行く、それが俺たちのバトルだ。

 

「とどめだ!『スマートホーン』」

 

ドリュウズは自身の角を突き立てるように突進してくる。あのパワーで効果抜群の攻撃が当たったらエルフーンは確実に倒される。それなら…

 

 

 

 

「『おきみあげ』」

 

 

 

 

ドリュウズの『スマートホーン』が命中し、エルフーンはフィールドの外まで吹き飛ばされる。

 

 

 

「エルフーン、戦闘不能!」

 

 

『エルフーン敗れました!やはりバトルのダメージが残っていたのか!真田選手、今大会において遂に初めてポケモンを失いました!』

 

「戻れ、エルフーン…ご苦労様」

 

…充分だよ。よくやってくれた。

 

「フン!当然の結果だ!」

「ええ、本当に凄いパワーとスピードでしたね」

「やっと分かったみたいだな!さぁ、次はどうする」

 

次か…下準備は出来た。

 

「行け!ゲッコウガ」

 

『真田選手、再びゲッコウガを投入だ!両者のエース対決!果たして勝つのはどちらになるのかー!』

 

「フン…それで、作戦はもういいのか?」

「ええ、勝つ準備は出来ました」

「…言ってくれるな、小僧め。やれるものならやってみろ!」

 

 

 

 

「それでは、試合再開!」

 

 

 

 

「ゲッコウガ『ハイドロポンプ』」

「ドリュウズ『こうそくスピン』で防げ!」

 

ゲッコウガの口から放たれる『ハイドロポンプ』をドリュウズの『こうそくスピン』で防ごうとするが、貫通してドリュウズを吹き飛ばす。

 

「な、なんだと!」

 

谷阿坤さんは驚愕している。彼はエルフーンの『エナジーボール』と同じように防ぎきれる自信があったんだと思う。『こうそくスピン』で技を防ぐあの戦法は強い攻撃力があるからこそ成立するが、今のドリュウズは攻撃が2段階下がっている状態だ。

 

これもエルフーンが倒れる前に最後に使った技『おきみあげ』のおかげだ。あの技は自分が戦闘不能になる代わりに相手の攻撃、特攻を2段階さげることができる。バトル中に自分のポケモンを使いつぶす技の為、トレーナーが指示することは滅多にない。だけど、だからこそ、使う価値があの場ではあった。現に今のドリュウズの攻撃が下がった状態では、効果抜群の技を防ぐことは出来ていない。

 

「追い込めゲッコウガ!『みずしゅりけん』」

「穴に逃げ込め!」

 

『みずしゅりけん』がぶつかる寸前にドリュウズはワルビアルが掘った穴の中に逃げ込む。

でも、どうして穴に?その戦法はもう通じないと分かってるはずなのに、ただ逃げ場をなくすだけだぞ

 

「ドリュウズ『すなあらし』だ!」

 

ドリュウズの入った穴から、大量の砂と一緒にドリュウズが飛び出しフィールドを砂嵐が覆う。

 

「…これは」

 

『ドリュウズによってフィールド全体が砂嵐で覆われてしまったー!これでは互いに相手の位置の特定ができません!』

 

いや、たぶん違う。

 

確かに、視界が悪くてこちらからはドリュウズの場所の特定は難しいけど、わざわざ『すなあらし』を使用してこの状況を作る辺り相手にはこっちの居場所が分かってると思った方がいい。

 

「ドリュウズ『ドリルライナー』だ!」

 

姿は見えないが、ドリュウズはゲッコウガに向かって突っ込んできているはずだ。

 

それなら…

 

「ゲッコウガ、地面に向かって『ハイドロポンプ』だ」

 

『ハイドロポンプ』を地面に向かって放つことでゲッコウガは、フィールドの上空へと上がっていきドリュウズの攻撃をかわす。

 

『なんとーー!ゲッコウガが空へと飛んだー!』

 

さて、まずはこの面倒なフィールドからどうにかするか

 

「ゲッコウガ『かげぶんしん』そしてそのまま地面に向かって『みずしゅりけん』を叩きつけろ!」

 

『かげぶんしん』により、10体近くに増えたゲッコウガたちが全員『みずしゅりけん』を地面に叩きつける。その結果…

 

「こ、これは…」

 

複数の『みずしゅりけん』が叩きつけられたことで、大きな水しぶきが上がりフィールドを覆っていた砂嵐は水しぶきとともに消え去る。

 

『何という力技だ!『かげぶんしん』をしたゲッコウガの『みずしゅりけん』によって、『すなあらし』を無理やり封じ込めました!』

 

「…やってくれたな」

「相手に有利なフィールドならフィールドそのものを作り変える。ただ、それだけですよ」

 

単純に『あまごい』を使って、天候を変えることも出来たけど…そうなると、互いに有利な天候になるまで何度も天候を変えあう根比べみたいな展開になったかもしれない。さすがに、それは面倒だしね。

 

「くそ!ドリュウズ『つのドリルだ!』」

「『くさむすび』で足を止めろ」

 

形勢逆転を狙い、ドリルを回転させながら突撃してこようとするが、直前で足元に草が生え足を絡ませ、そのまま転倒してしまう。

 

「てめぇ!」

 

谷阿坤さんの性格上、ここまで追い込まれれば突っ込んでくることは予想できた。どれだけ強力な技でも来ることが分かってれば技が当たる前に防ぐことは簡単だ。

 

そして、俺たちは一瞬でも隙を見せたら絶対にそれを逃したりはしない

 

「決めるぞ!最大パワーで『みずしゅりけん』だ!」

 

通常の倍以上のサイズとなった『みずしゅりけん』を今だに倒れているドリュウズに向かって投げつける。ドリュウズは防御も回避することも出来ずに正面から食らってしまう。

 

 

 

 

「ドリュウズ戦闘不能!よって勝者真田選手!」

 

 

 

 

『決まったーーー!最後はゲッコウガの巨大な『みずしゅりけん』が見事にドリュウズを捉え、勝利をもぎ取りました!』

 

ワーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

実況に続くようにスタジアム中の観客たちが声援が上がる。

俺は、片手を上げその声援に応える。幼馴染みたちが勝利を喜んでくれること以上に嬉しいことはないけど、ファンの声援も悪くないな。

 

 

 

***

 

 

 

決勝戦が終わり、次いで閉会式が終了し、俺は控室で着替え少しだけ休憩をしていた。

ポケモンバトルで戦うのポケモンたちだが、バトルが終わった後はトレーナーの俺にも疲れはたまる。まぁ、作戦をたてるときには頭を使うし実際にバトルをすると精神面でも結構消耗するから仕方ない。

 

「準備できたか、丈一郎」

「ああ、いつでも行けるよ」

「じゃあ、車回してくるから待っててくれ」

 

そう言って、プロデューサーが楽屋から出ようとする。

すると、扉からコンコンとノックの音がしてきた。

 

「はい、どうぞ」

 

扉が開くとそこから谷阿坤さんが入ってくる。

 

「失礼する」

 

何だろう?説教なら勘弁してほしいけど

 

「閉会式が終わったばかりなのにすまんな」

「構いませんよ。もう帰り支度も終わってるので」

「そうか…一つ聞きたいことがあってな。教えてくれ、お前さんは…さっきのバトルもそうだが、あの戦い方で勝ち方で満足なのか?」

「はい」

 

俺は迷うことなく答える。

 

「…躊躇いがないな」

「ええ…ここで迷ってしまったら今回嫌な役を引き受けてくれたエルフーンに申し訳ないですから」

「『おきみあげ』のことか?」

「あ、気づいてました?」

「正確にはバトルが終わって頭が冷えてから気づいたが正しいがな」

 

正しくは、その前に使った『わたほうし』や『おいかぜ』にもちゃんと意味がったけどね。

さっきのバトル、エルフーンが谷阿坤さんのエースであるドリュウズの能力を大いに削ってくれたからこそ、あの勝ち方ができた。

 

もちろん、最初からゲッコウガを出して万全のドリュウズと戦う選択肢もあった。正面対決でも負ける気はしない。だけど勝つために可能な限りの手を打つのはバトルの相手への礼儀だし、何よりそれを実行する能力があるエルフーンに申し訳ない。

 

「フン…だが、やはり気に入れん」

「…そうですか」

 

まぁ、こればっかりは仕方ないな。自分のポケモンに戦闘不能になる技を指示するなんて普通はしないだろうし

 

「ああ…お前は若いくせに本物の実力を持っとる。」

「・・・・・・・」

「しかも、自分のバトルを見出し、誰に何と言われようとそれを貫く心の強さもある。認めるのは癪だがお前に可能性を感じ、期待する奴がいるのも分かるってもんだ」

 

…何だろう?貶すような言い方なのに滅茶苦茶褒められてる?

 

「一度しか言わねぇからよく聞け…優勝おめでとう、こからも頑張んな」

「!…ありがとうございます」

「フン」

 

俺が俺を言うと谷阿坤さんは顔をそらしてしまう。あれ?この感じどこかで覚えがあるような気がする。どこでだ?なんか普段からよく見てるような気がする。

 

「あ!」

 

そうだ、円香だ。そうか…この人、どことなく円香と似てるんだ。容姿とかではなく性格…いや、この場合、本質かな?上手く言えないがツンデレの匂いがする。成程、そういう所が円香に似てる気がしたんだ。道理で嫌いになれないわけだよ。

 

「…なんだ?」

「あ、すいません。なんだか谷阿坤さんが俺の知り合いに似てて」

「ほー、この俺様に似てるのか?そいつはきっと逞しくい、いい男なんだろうな?」

「いえ、その子は女の子でツンデレな所がそっくりです!」

「馬鹿にしてやがんのか!」

 

 

 

***

 

 

 

現在、俺たちはハマスタを出て車で移動している。

 

「…丈一郎、あれはないだろう?」

「…うん、本当そうだね。やらかしちゃった」

 

あの後、谷阿坤さんは俺の頭に一発拳骨を落としてからぷりぷり怒りながら帰ってしまった。

…ああいう所も円香っぽいんだよな。もう言わないけども

 

「まぁ、その内また会う機会もあるだろうからその時に謝っておくよ」

「そうしてくれ」

 

とは言っても一発殴ったから、案外もう許してくれてるかもな。

 

「丈一郎、今回の大会はどうだった?」

「面白かったよ」

 

プロの選手も結構出てたし、参加した甲斐があった。俺のバトルはプロでも通用する。それが、確かに証明できただけでも出た甲斐があったと思う。

 

「そうか、じゃあ、今後も大きな大会があったら積極的に申し込んでもいいか?勿論、出るかどうかは丈一郎が決めていい」

「その辺は任せるよ。俺も個人的に出たい大会とかあったら連絡するからさ」

「ああ、ポケモンリーグ本番までまだかなり時間がある。出来るだけ多くの大会に出てプロとの対戦の経験を積んでくれ」

「ああ、分かってる」

 

こうして、俺のプロデビュー戦は無事、優勝という形で終わった。今後の事も考えるといい経験を詰めたと思う。しかし、俺のプロトレーナーとしての道は始まったばかりだ。これで調子に乗らずにもっと多くのプロトレーナーと勝負してもっと強くならないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お土産買ってなかった。プロデューサーちょっとどっか寄ってくんない」




次回は日常回を予定しています。

8月までにもう1回更新するつもりではいますのでよろしければ読んでください。

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