283プロでプロデューサーをからかった……いや、事情説明をした後、俺達は自宅付近のスーパーまで来ていた。
「よし、じゃあ、俺は基本的な食材取ってくるから、カレーに入れたいものや欲しいものどんどん持ってきていいぞ」
昨日、円香がキングドラを引き取りに来た時に話した、先日のハンバーグのお礼とCDデビューのお祝いを兼ねてカレーをご馳走するために材料を買いに来ていた。
「やは~いいの?丈先輩太っ腹~」
「それじゃあ、何かないか探しに行ってくるね」
透と雛菜はそう言うと、スーパーの中へ駆けていく。
こらこら、危ないぞー走るんじゃない
「2人は行かなくていいのか?」
「わたしはいいかな。それに、今回の事でみんなにも迷惑かけちゃったから」
「私も別にいい。それに、私がいない間に浅倉と雛菜が持ってきたものをあんたが何でも買っちゃいそうだから、ここで見張ってる」
「いやいや、俺だって何でも買ったりはしないよ……多分」
「「………」」
やめて!そんな呆れた目で俺を見ないで!
「確かに丈くん、わたし達のことすぐに甘やかしちゃうもんね。この間も、多摩デパートで小咲にとんでもない数のゴージャスボールをプレゼントしようとしてたし」
「また、そんな事したの?あんまり、皆のこと甘やかさないようにって前にも言った筈だけど」
「い、いや、あれは折角のお祝いだし、小咲ちゃんとも久々に会ったからつい…もう、小糸から散々怒られたし反省もしたから勘弁して」
「…分かった。じゃあ少し様子を見てあげる」
有罪判決、ただし執行猶予付きってところだな。
でも、いい加減俺も学習しないと駄目だな。ただ、甘やかしてばかりだと良くないのは間違いない。分かってはいるんだけどなぁ。それでも無意識にやってしまう……仕方ないよ、人間だもの
***
「丈くん、材料揃った?」
「ああ、大体はね」
カゴの中にはにんじん、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉とカレーに使う基本的な食材が揃っている。あとは、折角お祝いと言う形で作る訳だし普通のカレーとはちょっと違う感じのカレーを作りたい。何か特別な食材でもあればいんだけど、どうするかな……家にヤドンの尻尾が人数分あるけど、量的にも見た目的にもあんまり4人から受けが良くないしな。
「ただいまー」、「おまたせ~」
おっと、2人も戻ってきたか。4人の意見を聞いてみるか
「おう、おかえりー…って、滅茶苦茶持ってきたな!」
声のした方に振り向くと結構な量の木の実をかごに入れた雛菜と透が戻ってきていた。
「ちょいちょい、なにそのたくさんの木の実」
ざっと見た限りでもモモンの実、マゴの実、ソクノの実……見事なまでに全部甘い木の実ばっかりだな。取り合えず、甘口カレーになるのは確定したな。
「これ~?甘い木の実だよ~丈先輩が好きなもの持ってきていいって言ってたから、たくさん取ってきた~」
い、いや、流石にこの量はちょっとな。絶対、今回のカレーじゃ使いきれないしポロックやポフィンに使うにしてもこの数が多すぎる。
どうするかな?確かに何でも持ってきていいって言ったけど……いや、甘やかし過ぎないって決めたばかりなんだし、ここははっきりと言うべきだよな。
「えへへ~丈先輩、ありがとね~雛菜、甘い木の実大好きなんだ~」
「よし!じゃあ、これ全部買いに」
ギロッ!
「い、いや流石にちょっと多いかな?雛菜、悪いんだけど10個位に絞ってくれないか?」
「え~」
「半分はカレーに入れて、残りでポフィン作るとそれくらいがちょうどいいんだ。頼むよ」
「う~分かった~」
ふぅ、危ない危ない。円香の『にらみつける』がなかったら、早速やらかす所だった。
本当に無意識で甘やかそうとしてしまうな…
「それで、透が持ってきたのは…おー『ボブのかんづめ』か」
「うん。この間食べてさ、すっごく美味しかったから。行けるかなって思って」
ボブの缶詰とは、イギリスにある『ボブのレストラン』というステーキハウスから売り出された缶詰だ。イギリスでかなりの人気を得て、日本にも何年か前から売り出されていた。
「いいな。面白い」
「でしょう?」
よし、これが食材が決まったな。でも『ボブのかんづめ』を使うなら豚肉はいらないな。あの缶詰だけでも結構ボリュームあるし、後で返してこよう。
「ちょっと待って、それもカレーに入れるの?」
「え、駄目?」、「駄目か?」
「その缶詰、私も食べたことある。実際、美味しかったけどカレーに入れるなんて聞いたことないんだけど」
ああ、そういう事ね。
「これは、なかなかカレーに合うんだよ」
実際に、既に何度か作ったことがある。レストランのシェフ兼オーナーのボブ秘伝の食材で驚きのボリュームと強いコクが楽しめるカレーとなることは既に実証済みだ。
「本当に?」
「ああ、ちゃんと美味しいカレーを作るからさ」
「…はぁ、あんたがカレー作り上手なのは知ってるからいいけど。ちゃんと食べられるのを作ってよ」
「了解!任せてくれ!」
***
「それじゃあ、俺はカレーの準備してるから部屋でのんびりしてていいぞ」
「…何か手伝う?」
「今日は4人のお祝いなんだから、俺に任せてくれ」
「それじゃあ、任せたー」
「美味しいカレー作ってね~」
買い物を終えた私たちは、そのまま丈一郎の家に来ていた。
特に家に戻ってもやることがないし、丈一郎の部屋は私達のたまり場所のような面もあって、漫画、映画やアニメのブルーレイディスク、ゲームなど丈一郎が個人で買った物から私たちが全員で遊ぶために持ってきたものまでかなりの数存在している。暇をつぶすなら自分の部屋よりもこっちだ。
「本当に何も手伝わなくてよかったのかな?」
「真田がいいって言ったんだから構わないでしょ、カレーなら任せても問題ないし」
ポロックやポフィンもそうだが、本当に丈一郎はカレー作りが上手い。
私もあいつのお弁当なんかを作るようになってから料理の腕はかなり上達した自負はある。それでもカレーだけは勝てる気がしない。
「…まぁ、それ以外は全然だけど」
「あ、あはは」
ほら、小糸ですら否定できない。長い付き合いだけど、あいつの謎すぎる料理スキルが解明される日はこの先も来ないのかも
「あー……でもさ」
「?」
「なんか…新しく出来るようになったって言ってた」
「なんかって、何?」
「うん?えっと………何だっけ?」
「…………」
「ごめん、ごめん。すぐ思い出すからにらまないで」
「……別ににらんでない」
本当ににらんでるつもりはない。ただ、少しイラっとして見つめただけだから
「円香先輩、目つき悪いからそう見えちゃうんだよ~」
「…雛菜」
「あは~怖ーい、小糸ちゃん助けて~」
「ぴぇ!雛菜ちゃん」
余計なことを言い出した雛菜を見るとそのまま小糸の背中に隠れてしまう。……全然隠れられてないけど
「え、えっと…円香ちゃん、落ち着いて…ね」
「だから、別に怒ってないから」
小糸は純粋なんだから、あんまり悪ノリしすぎると本気で信じちゃうんだからやめて欲しい。
「あ、思い出した。サンドイッチ作れるようになったって言ってた」
透は透で本当にマイペース過ぎる……まぁ、今に始まった事じゃないけど
「…サンドイッチ?あいつが言ってたの?」
「うん、少し前から出来るようになったって言ってた」
何でサンドイッチ?
いや、確かに作るだけなら簡単だけど、今までおにぎりもろくに作れなかったのに何で急に出来るようになるんだろう
「私たちの知らない所で練習でもしてたの?」
「練習はしてないらしいよ。なんか、ある日急に出来るようになったんだって」
…まぁ、最近じゃ、バトルの特訓にポケモンたちの世話、休みの日は私たちと過ごす、これを繰り返してた丈一郎にそんな料理の特訓をする時間があったとは思えないから嘘はついてないと思う。
「そういえば、『あと、何年かしたらまた、新しい料理かお菓子が作れるようになる気がする。よく分からないけど、そんな予感がする』とか言ってた」
「…どういう意味?」
「分かんない」
透もそうだけど丈一郎も時々、よく分からないことを言う。
ポケモンに関することだと、種族値、個体値、努力値、特性とかの話しは単純に私の知識が足りてない面があるから仕方ないこともあるけど今回は本気でよく分からない。
「ね~透先輩、ついでに円香先輩もゲームしようよ~」
私たちが話している間に雛菜はいつの間にかゲームの準備をしていた。あの子も負けず劣らずの自由さだ。
「透先輩は雛菜と同じチームね~」
「ふふ、いいよ」
勝手にチームを作るな
「じゃ、じゃあ円香ちゃんよろしくね!」
「…うん、よろしく小糸」
…まぁ、小糸と同じチームになることに対して不服がある訳じゃないし別にいいけど
次回は後編を予定しています。今回よりもさらに短くなるかもしれませんが、よろしければ読んでください。
ちなみに、丈一郎の作れる料理は今まで発売されたゲーム内で作れるものだけです。今後、発売される最新作で新しく料理をするようなことがあれば丈一郎の料理スキルは自動的に更新される仕組みになっております。