とある喫茶店にて俺と幼馴染の円香は向かい合って座っている。
この喫茶店は透がスカウトされたアイドル事務所283プロダクションのすぐ近くにある店だ。
「…それでどうする?」
「さっき説明したでしょ?もう忘れたの?」
「いや、283プロを調べるのはいいよ。俺も気になったし、だけどもうちょっと具体的にどうするのかを決めないと」
そう、先日283プロにスカウトされた俺たちの幼馴染、浅倉透。彼女が所属する事務所が変な所じゃないか調べるというのだ。
「だから、浅倉をスカウトした事務所の人に会う」
「その後は?」
「取り合えず、事務所から出てくる人に適当に話しかける。アイドルに興味がありますとか言えば話くらい聞けるでしょ」
なるほどね、今回は結構真剣みたいだな。けれど、ないとは思うが危ない事務所だったら、円香にも結構なリスクだ。
「了解。円香は綺麗な顔してるからな、きっと食いつくぞ」
俺だったら絶対に食いつくもん。
「…別にお世辞とかいらないから」
「本心だって、鏡みてみる?顔面偏差値高めの子がそこにいるよ」
「…もういいから」
円香はそう言って紅茶をすする。あら、照れてる可愛い。耳赤いですよ、円香さん。口に出したら、怒られるから言わないけど
「それで、どこで話聞くんだ?事務所の中?」
「…ここに呼ぼうと思ってる。事務所の中は流石に不安だから」
まぁ、確かに円香の心配は杞憂だと思うけど、あれから何年も経っているし、あのお兄さんが悪い人になっている可能性はある。…そう考えると、やはり一人で来させなくて良かった。一人で行って何かあったらなんて想像したくもない
「そうだ、真田、名刺持ってる?」
「?ああ、持ってるよ」
「貸して」
俺は持っていたお兄さんの名刺を渡す。
「…うん、ありがとう」
受け取った名刺を睨みながら見ている。
「…そう、この人が」
円香は口調などに厳しいものはあるが、本当に身内を大事にしている優しい女の子だ。だからこそ、透をアイドルにスカウトして俺たちの関係を変える切っ掛けを作ってしまったお兄さんの事が気に入らないのかもしれない。
だけど
自然と手が円香の頭を撫でていた。
「ちょっと!」
「大丈夫だよ」
「…何が?」
「透がアイドルになっても何も変わらない」
「っ!」
「透は円香を置いてどこかに行ったりしない」
「…でも」
「透はそんなやつじゃない。分かってるだろう?」
「…うん」
そう、透は俺たちを置いて行ったりしないだろう。むしろ、知らない世界で困って今まで以上に頼ってくるかもしれない。
…なんか心配になってきたな。大丈夫かな?あの子結構考えなしで行動したりするし
「まぁ、確かに透の事心配になるのは分かるよ。事務所自体は安全だったとしても芸能界全体は違うだろうし、誰かにころっと騙されるかも」
「でしょう?」
「ああ、透には俺たちがついてないとだめだめなんだって思っておいた方がいいかもな」
「なにそれ?小糸の真似?本当に似てない」
円香はそう言い、先ほどより少し頬を緩める。
「・・・手そろそろどかして」
「ごめん、ごめん」
…髪サラサラだったな、もっと触っていたかった。どんな風に手入れしてるんだろう?
「じゃあ、そろそろ行ってくる」
「了解。俺はここから見てるから強引に事務所に入れられそうになったら、叫ぶなり、手を挙げるなり、少し大きめのリアクション頼む」
「ん…この子も一緒だけど、もしもの時はお願い」
円香は、自分のモンスターボールをみた後に俺に言う。円香のポケモンも結構強いから問題ない…はずだ。
いざとなったら、俺と俺のポケモンたちがいる。俺のポケモンに勝てる相手はそうそうはいないはずだ。それに俺自身、伊達に普段からうちの格闘ポケモン相手に組み手をしていない。
…そう言えば、最初の頃は俺が勝ってたけど、最近は手を抜かれているし、あいつの方がサンドバックを持ってくれてたりする。あれ?ひょっとして俺の方が育ててもらってる?···ま、まぁとにかくそこらの自称空手王程度なら余裕で倒せる程度の武力はある。
円香が事務所の傍でスタンバイしたので、俺もいつでも出られるように準備する。お金もテーブルに置いてあるし、ポケモンもいつでも出せる様に準備してある。これでいつでも行けるな。
すると事務所から出てきた男性に円香が声をかけているのが見えた。あれ?あの人見覚えがあるな。あの時のお兄さんかも。その男性と円香は少しその場で話した後、こちらの店に向かってくる。取り合えず、突撃はしなくてよさそうだな。
二人は店に来ると、俺の近くの席に座る。近くで見て確信した。この人があの時のお兄さんだ。久しぶりに会えて俺的にはラッキー、でもお兄さん的にはアンラッキーかも。円香、一応にこやかに話聞いてるけど相手の名前聞いてないのかな?聞いたうえであの態度なら問題ないけど
事務所の説明が終わったのか最後に名刺を貰っている。しかし、貰って名前を確認した瞬間、空気が凍ったのを感じた。
名前聞いてなかったのかーお兄さんドンマイ。その後も少しだけ二人は話していたがよく聞こえない。だが、話し自体は終わったのか円香は立ち上がる素振りを見せている。
まぁ、平穏に終わってよかった。そう思ったのだが、お兄さんが円香に何か話しかけている。
うん?何だろう?円香の表情が少し厳しめになったな。
「は…?ふざけないでください近寄らないで」
円香はそう言い、俺の方を見てくる。これって合図かな?仕方ない行くか
「すいません、少しよろしいですか?」
「!あ、あなたは!」
あ、やっぱりお兄さんだ。懐かしいけど今は円香優先で行こう
「すいません、彼女の知り合いでして、何かありまし「高校生チャンピオンの真田選手ですよね!宜しければ、お話を聞いていただけないでしょうか!」…はい?」
話を遮ったつもりが、逆に遮られてしまった。どうしよう、これ?
ポケモンネタは多少出してるけど、ポケモンをなかなか本編に出せてない