「成程、つまりあなたは、円香から何か光るものを感じたのでアイドルに正式にスカウトしたいというんですね」
「はい!出会ったときにすぐわかったんです。ダイヤの原石だと…」
俺はお兄さん、いやプロデューサーさんから詳しく話を聞いている。俺とも話をしたい様だが、まずは円香の事だ。
円香は俺の横で話を聞き、何とかしてくれと目で訴えている。任せておけ
「プロデューサーさんでしたね?言いたいことは一つです」
「な、何でしょうか?」
「あなたは見る目がある!」
「…は?」
「ですよね!私としては是非とも既にスカウトしたご友人の浅倉さんと組んでいただきたいと考えています」
「…ちょっと」
「それいいですね!二人は家が隣同士で、それこそ幼稚園に行く前からの付き合いでして、俺も二人とは長い付き合いなんですが、そんな俺から見ても二人は本当に息ぴったりなんですよ!」
「…いい加減に」
「おお!そんなに長い付き合いなんですか!いいですね、それを武器にしていけばきっと」
「本人を置いて話を進めないで!」
ドンッとテーブルを叩く。いかん、夢中になって円香の事忘れてた。怒ってるなーどうしよう?
あ、店員さん大丈夫です。スマホ置いて通報しないでください
「あーごめん、円香」
「し、失礼しました。でも、先ほどの言葉は本当です!あなたから確かな可能性を感じた。是非、うちの事務所でアイドルをやってみませんか」
「………」
悩んでるな。そうだなぁ
「いいんじゃないか?やってみれば」
「…でも」
「透と組む方向で行くんですよね?」
「ええ、是非」
うん、面白そうだし
「透と組めるならどんな仕事をするのか円香も把握しやすいだろう?本来の目的も果たせるし悪くないと思うぞ」
「…分かりました。そういうことであれば」
「!ありがとうございます」
「…よろしくお願いします」
浅倉透に続き、樋口円香がアイドルになりました。
「あの、真田選手にもお話を聞いてほしいのですが、宜しいでしょうか?」
あ、そうだった。俺にも何かあるんだっけ?
「はい、いいですよ」
「…私、帰ろうか?」
隣で円香がそう囁いてくる。うーん
「いや、一緒に聞いて行って。どうせ後で話すんだし、いいですよね?」
「はい。こちらは構いません」
「…そう言うなら」
「じゃあ、お願いします」
「は、はい!真田選手には是非、283プロ専属のプロポケモントレーナーになって欲しいんです」
プロポケモントレーナーとは、読んで字のごとくプロのポケモントレーナーである。ポケモンリーグは小学生の部、中学生の部、高校生の部、大学生の部、社会人の部、そしてプロトレーナーの部と分かれている。前の四つは一定の年齢を超えてさえあれば、だれでもエントリーできる。
ただし、プロトレーナーの部は違う。ここに入るためには、企業や事務所から正式にスカウト、オーディションで合格し所属した者しか参加できない。言うなれば実力を認められたものだけが参加できる。その為、プロトレーナーの部を上位リーグ、それ以外を下位リーグとも呼んでいる。
中学生リーグと高校生リーグを制覇してから、そういう話は俺にも来ている。正直、最初は嬉しかったが色々と条件を出してくることが多いのだ。俺が高校生ということもあり、少し足元を見ているとしか思えない様な条件を出してくるところも多い。
「…やはり、そういう話ですか」
「はい、是非お願いします!」
「いくつか確認させて貰いたいんですが、283プロの事は俺も少し調べました。でも、特にプロのポケモントレーナーのことは書かれていませんでしたけど?」
そう、透に名刺を貰った後、軽く調べた感じではアイドルメインの事務所でバトルとは無縁そうだった
「ええ、今まではそうだったんですが、283プロでも昨今のバトルブームに影響を受けて、本格的にバトル部門を作ろうと決まったんです。しかし、まだ、作ったばかりで、専属のトレーナーは一人もいないんです」
本当にただ作っただけっぽいな
「ですので、我々と一緒にゼロから始めてくださる方を探しています。何分、出来たばかりで色々と至らない点はあると思いますが、どうかご一考して頂けないでしょうか」
「では、所属した場合の条件の様なものは?」
一番大事なのはこれだ。以前来たスカウトには企業のマスコットにしているポケモンをメンバーに加えて欲しいとか、自分の会社で作った道具を持たせてバトルして欲しいとかバトルに口出ししてくるところが多かった。
一番の問題は俺のバトルスタイルだ。世間では、ポケモンバトルとは力と力の真っ向勝負という風潮がある。高校生リーグの決勝でも、相手がパワーファイトばかりしてきたのもそれが原因だ。
俺のエースであるゲッコウガはスピードと多彩な技と特性の変幻自在が武器だ。そのために、時には攻撃を回避し続けて隙を狙うこともする。この戦法が一部の層からの受けが悪いらしい。
283プロはどうなのか
「いいえ、特にございません」
…え、ないの?
「先ほど樋口さんにも説明しましたが、283プロでは、本人の資質と希望に合わせた活動を行ってもらうことをモットーにしています。ですので、真田選手は好きなポケモンで好きなようにバトルしてください」
・・・・・・・・・・
「私自身、真田選手のバトルを何度も見たことがあります。変幻自在で常識に縛られないバトル、真田選手は今のまま、余計なことを気にせずにバトルしてこそ輝く!そう確信しています」
………………………………きゅん
いや、きゅんじゃねえよ。そっちのケはねーから、まじで。俺の心はとっくに幼馴染みたちに奪われてるから
「詳しくはこちらの資料をご覧ください」
そう言って、プロデューサーはカバンから資料を取り出す。
「どうか、よろしくお願いします」
***
そうして今日は解散となり、俺と円香はカフェを出て家に向かっている。
「…どうするの?」
「専属の件か?結構前向きに考え中かな?」
条件なしというのは魅力的だ。
「…そう」
それに何よりも
「それに専属になれば、俺も二人と一緒にいられるし」
「…まぁ、何かあったときの為にボディガードが居てくれれば楽だけと」
円香は本当に小さく微笑みながら言う。長年の付き合いの俺には些細な表情の変化さえも読み取れる。あれは、割と喜んでる顔だ!
「ふふふ、そういうことにしておいてやろう」
「は?調子に乗らないで?」
「…すいませんでした」
俺って、彼女達の前になると本当に弱いなぁ
毎日投稿で私の倍近く書いている人たちのことを心から尊敬しようと思います