春秋の恥さらしネタ帳 作:春秋
お陰でこんなネタばっかり浮かんできて、嫁アテナが進まない進まない。
かつて何処かであった一幕。
「いつか必ず」
――私が必ず
「あなたを解き放ってみせると誓おう」
――その空虚なる
「その時まで眠っていておくれ」
――その時が来れば、君には恨まれるかもしれんがね
云わば歌劇のタイトルコール。
神の台本による舞台演劇。
俺がフランスの地で出会ったのは、
その日、藤井蓮の人生は一変した。
否、彼の人生はその日に終わったのだ。
そして生まれ変わった。
人類から畏怖と忌避を向けられる、神殺しの魔王へと。
もはや姿が見えない美しい少女は言う。
――一緒にいきましょう
行きましょうなのか、生きましょうなのか、どちらにせよ同じ事だ。
俺にはもう、これしか選択肢がないのだから。
この選択肢しか、俺には選べないのだから。
さぁ詠おう、頭に鳴り響く血のリフレインを。
さぁ叫ぼう、魂にまで根付いたこの祈りを。
「
その祈りは響き渡り、そして聞き届けられた。
色は黒、装飾は赤。型は処刑刃、力は断頭。名を
生き物の命を奪い、輪廻の果てに巡らせる。
これこそが少女の在り方、その具現。
「
――
「
――
断頭のリフレインが交差する。
これより先は、新たな神殺しの英雄譚。
かくして、喜劇の幕が上がる。
「卿が、新たな王か?」
瓦礫と火災を背景に、一人の男が語りかけて来た。
棚引く長髪は獅子の鬣が如き黄金。此方を睥睨する瞳もまた、黄金。
圧倒的な存在感で以てそこに在るのは、墓の王と呼ばれる男であった。
「ああ、藤井蓮だ。アンタも
「然り。ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ、卿の先達だ」
ラインハルト・ハイドリヒ。
そう詳しい訳ではないが、蓮もその名を聞いた事くらいはある。
黄金の獣と呼ばれた、戦時中のドイツにおける秘密警察の長官。
才気溢れる彼の経歴は、見るも見事と言わざるを得ない輝かしさ。
そんな男が、神殺しの魔王だと? ならば、暗殺されたという情報は――
湧き上がる困惑と懐疑を視線から汲み取ったのか、男は穏やかに、されども凄みを感じさせる笑みを浮かべた。
「私は私以外にこの名を名乗った者を知らん。あの日、暗殺に遭った私はいい機会と表舞台から身を引いたのだ。更なる闘争を、更なる充足を、私の渇きを癒すに足る強敵を求めて――」
ああ。
だから。
だからこの男は此処に来たのだ。
俺に会いにやって来たのだ。
「ふっ、ざけんなぁ!」
その為に、それだけの為にこの地獄を生み出したのか。
俺を試す為に、俺を怒らせる為だけに、彼らの日常は壊されたのか。
「――っらぁ!」
思考が進むと同時、俺は既に刃を振り抜いていた。
そこに、誰とも知れぬ影がいた。
神とは人を塵芥としか感じぬ存在だが、これほど人に縛られ屈服している存在もない
影は人知れず語りかける。
神とは出来る事しかやれず、出来ぬ事は出来ぬ存在だ
影は神と呼ばれる存在。
故に、君が必要だったのだよツァラトゥストラ
古の世に神と呼ばれていた存在。
さぁ、見事彼を降し私を降し、新たな神話を築き上げておくれ
黄金を築き、刹那を生み、一人の女を愛した男。
我が親愛なる
影は、水銀と呼ばれていた。
では、今宵の
この刹那に、愛を
彼が演じたその神話の先に――
「ああ、我が女神を害そうなどという愚挙は許さぬ。疾く消し飛ぶが良い」
名も亡き水銀の王が、
「然り、これほどの難敵に私が駆けつけぬ訳が無い。さぁ、砕け散る程に愛させてくれ」
黄金冠す墓の王が、
「背中を預ける気はない、お前らはお前らで勝手にやってろ」
永久無間の凍土の王が、
「此処にある命の輝きを、あなたのような
慈愛の権化たる黄昏の女神がそこにいた。
来るならば来い三眼の邪神。
至高の未知があると願って――