春秋の恥さらしネタ帳 作:春秋
今度は憑依で一つ。
ありえない。
というか、有り得て欲しくない。これが現実であって欲しくない。そう思考する俺の姿は、
「どう見てもザビ夫です、本当にありがとうございました」
完全無欠に別人だった。
ってかFate/EXTRAの男主人公だった。鏡で見たから間違いない。
どうやら俺は岸波白野に憑依したらしい、まったく意味が解らないが。
(あ、詰んだ)
事情を悟った時に俺が思ったことである。だって、コイツはダメだろ。
聖杯戦争の予選で自我を取り戻さなければ死に、サーヴァントを召喚できなければ死に、対戦で負ければ死に、不参加でも死に、極めつけには優勝してもムーンセルに消されて死ぬ。何もしなくても死に、何をしても死ぬ。
ただ一つの可能性は、優勝して消される前に聖杯に生存を願うこと。
いや、それも実現できるかわからないけどね、二重の意味で。
優勝するのは原作見る限りってかやる限り大変だし、聖杯の機能で可能なのかも分からんし。
(いやそもそも、サーヴァントすら喚べない可能性が大きいんだが)
俺は確かに岸波白野である。
しかし、主人公ではない。憑依している所からしてもはや別人故に主人公補正というものはなく、こいつイカれてるだろっていう不屈の意志も俺にはない、協力してくれるサーヴァントがいるとも思えない。
だが、しかしまぁ、
(何もしなくても死ぬんだから、行動した方がいいか)
朝倉さんも言ってたし、やらない後悔よりやった後悔の方が良いって。
だったらまぁ、開き直って足掻いてみるのもいいかな。
Fate/EXTRA another
~月の玉座に至る路~
と、決意した俺ではあったが。
召喚したのがまさかの
「アサシン、か」
それもただのアサシンではない。
暗殺者としての性能だけ見れば、彼の李書文先生にも負けない当たりを引いた。
直接戦闘では頼りないかもしれないが、宝具の連発で十分に優勝を狙える。
ゲーム仕様による自サバの宝具封印がなければ、原作知識によって“彼女”の真名も知り得る俺だからこそ、その性能を発揮させることは可能だ。
「よろしく頼むよ」
「うん、マスター」
目の前の少女――銀の短髪にアイスブルーの瞳を持つサーヴァント――は、俺の運命共同体になったのだ。
“彼女”の名はジャック・ザ・リッパー。
霧の街ロンドンにおいて数多の女性を殺害した、正体不明の連続殺人鬼である。
その正体は人間に非ず。
堕胎され生まれることを拒絶された胎児たちの怨霊。その集合体が母を求めたことで起きた連続殺人事件の犯人として冠された名こそ、ジャック・ザ・リッパー/切り裂きジャック。
出自が魔性の者で正当な人間でこそないが、ジャック・ザ・リッパー張本人である。
「じゃあアサシン、これから君のことはジルと呼ぶよ」
「ジル? どうして?」
「クラスを特定されないタメさ。そして、君をサーヴァントと気づかせないタメでもある。アサシンのサーヴァントは気配遮断スキルを持ってるからそれも楽だろうしね。あ、名前の方はジャック・ザ・リッパーの女性版だからだよ」
アサシン故に暗殺万歳。
ユリウスみたく試合開始前に対戦相手を殺して不戦勝狙いというのもありだ。
ジルは「情報抹消」という能力・真名・外見的特徴を消失させる特殊スキルを所持しており、「霧夜の殺人」という奇襲用の先手必勝スキルを合わせて最高の暗殺者として活動できる。
「うん? うん、わかった。マスターの言う通りにする」
そして件のジルだが、原作とは色々と差異が出ている。
まず俺を「おかあさん」と呼ばないこと。これはまぁ、男の俺を母親とは認識しないよなってことで。
次に「精神汚染」スキルと「気配遮断」スキルが1ランク低下していること。これは恐らく召喚したマスターの差だろう。士郎と切嗣でセイバーの性格が違うみたいな。そのせいなのか、彼女が若干大人びているように感じる。物分りもいいみたいだし。
(まぁ、態度が軟化してくれる分には文句ないや)
さて、一段落したらアリーナへ行きますか。
って、その前に言峰か。対戦相手を教えてもらわないといけないし。
外道神父と話すのは少し楽しみだな。
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夜、自室、マイルーム。
ジルと共にアリーナを駆け巡った俺は、クタクタに疲れ果てていた。
「ぐぁああああ、もうダメぇ」
「わたしたち、疲れた……」
ジルも頑張ってくれた。
彼女の現在ステータスは、
筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具
E E C D E C
こんな感じ。
これでも敏捷と魔力は1ランク上がったんだよ。
吸血種としても当てはまるジルは、エネミーから少量ずつ魔力を補給して戦っていた。
ゴメンネ、魔力の少ない駄目マスターで。文句ならこの体の本来の持ち主に言ってくれ。
魂の改竄をしてもらえば、もうちょっとステータスが上がるかもしれない。
期待しておこう。