春秋の恥さらしネタ帳   作:春秋

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万仙陣をクリアしてから前の投稿を見て土下座したくなったので、こりゃいかんと軌道修正しつつ思い付いたネタを晒す。自己満足に変わりなし……。



邯鄲に差し込む朝日2

 

 

――第一盧生、甘粕正彦。

審判を司る人類の敵対者にして、邯鄲を最初に踏破した最強の盧生。

 

そう、彼こそが最強なのだ。

 

そこに疑問の余地はなく、ゆえに誰もが認める問題児。

この男と一体一で戦っても、勝てる見込みなど最初からなかったのだ。

 

「不甲斐ないとは言わんよ。知っていれば対処が出来る。そこに生じる当然の余裕を、高慢などと卑下するな。知っていたからと踏破できるほど、知識があったからと踏み入る事が出来るほど、邯鄲の夢は甘くない。こうして成し遂げたお前は、なるほど素晴らしい漢なのだから」

 

故に、容赦なく全霊でもって滅ぼそう。

ギラつく眼光に緩みはなく、苛烈な意思を隠すことなくむしろ叩きつける光の魔王。

 

素晴らしいと認めたからこそ、その輝きを引き立てるべく暴威を振るう。

甘粕正彦という魔人はそういう男だ。

 

ああそうだとも。

俺はこの結末を知っていた。

 

ここにいる統合された柊四四八は、邯鄲に洗い流される前の一週目の俺は、この光景に至る事を理解していた。

 

甘粕正彦は最強だ(・・・・・・・・)柊四四八では絶対に勝てない(・・・・・・・・・・・・・)

 

最強の敗北という結末を知るからこそ、その道筋を辿るだけでは届かない。

前代未聞を打破するならば、それに匹敵する空前絶後を持ち出さなければ太刀打ちできない。

 

だから、俺は邯鄲(ユメ)を捨てない。捨てられない。

 

仁義八行(しゅじんこう)の進んだ道は彼だけのもの。

俺という柊四四八は、俺自身の道を見つけ進まなくては。

 

しかし……。

 

「悩むがいい若人(わかうど)よ。物事に勢い良く踏ん切りを付けて、それでどうなる。所詮は威勢だけで出した答えなど、勇気ある決断では断じてない。壁にぶつかり悩み苦しみ、それでも足掻き続ける意思こそが勇気! 俺の楽園(ぱらいぞ)が誇る輝き! 嗚呼……俺はお前が愛おしくてたまらんッ!」

「……ッ、このぉッ!」

 

甘粕の戯れ言に反論すら出来ないとは、我が事ながら無様なものだ。

 

だがそう。

奴の言う通り、事ここに至っても俺にはそれが掴めない。

 

悩んでいる。苦しんでいる。それは確かに成長の糧になるだろう。

だがそうじゃない。そうじゃないんだ。

 

勇気っていうのは溢れるもので、作り出す物なんかじゃ断じてない。

愛は育まれるもので、誰かが生み出す物じゃないんだ。

 

そんな事も分からないような男が人類の代表など認められない。

――けれど、それは俺も同じことで。

 

邯鄲という(ユメ)を捨てられない小人物。

衝突する他者を排除することしか出来ない狭量な器。

 

奉じる(イノリ)は偽物で、紡いだ(マコト)は借り物で。

 

柊四四八という立場がなければ、何を成す事も出来なかった小物。

惨めだ。惨めで醜い自分に腹が立つ。

 

これは義憤ではなくただの癇癪。

 

ああダメだ、俺はこんなにも脆く弱い。

こんな俺がどうして邯鄲を制覇出来たのか。

 

オカシイだろう。道理に反しているだろう。

盧生とは前傾思考の塊で、こんな女々しく悩むような輩じゃないだろう。

 

なぁダレカ、頼むから俺に教えてくれよ……。

 

 

 

 

 

『――教えてやるよ。それは、お前が独りじゃないからだ』

 

何処からともなく響いたのは幼馴染の声。

それを皮切りに、次々と大きな想い(こえ)が流れ込んでくる。

 

『アンタって肝心な所で抜けてるのよね。しっかりしなさい柊、そんな様じゃ奴隷失格よ!』

 

俺はお前の奴隷じゃないよ。

しかも奴隷を失格って、いったいその下って何なんだよ。

 

鈴子(バカ)はほっとけ。だがまあ、言いたい事は分からんでもない。お前らは似た者同士だ』

 

俺とアイツが似てるって?

頭の良いバカとでも言いたいのかよ。

 

『間違ってないと思うぜ。だって四四八ってばお前、カッコ付けて大事なこと忘れてるじゃんよ』

 

よりによってお前にバカ呼ばわりされたくないぞ。

カッコ付けて大事なことを忘れてたのはお前だろうが。

 

『いくらホントの事だからって、そんなこと言ったら栄光くんが可哀想だよ。例えブーメランだとしても、今回は正しいこと言ってるんだから』

 

いや二度も追い打ち掛けてるのはお前だよ。

……でも、お前まで俺が抜けてると言うのか?

 

『だって柊くんてば本当に抜けてるし。んー、まだ分かんないかなぁ……』

 

だから何が言いたいんだよ皆して。

分からないんだからはっきりと教えてくれよ。

 

『このバカッ……』

 

晶が痺れを切らしたように声を漏らす。

そして続く親身な怒号が、曇りに曇った心の霧を晴らしてくれたんだ。

 

『――困ったことがあったら頼れって言ってるんだよ! あたしたちは仲間で、家族だろッ?!』

 

それは余りに当たり前のことで。

当たり前だからこそ忘れていて、当たり前だからこそ忘れてはならないことで……。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――………………ああ、そうだったな。

 

そうだ、そうだった。

俺は小物なんだ。自分ひとりでラスボスとバトルなんか柄じゃない。

 

忘れていた当然の事を思い出し、そこで夢は終わりを告げた(・・・・・・・・・・・・)

 

   ――第八層の試練を終了する。おめでとう柊四四八、君こそ盧生だ――

 

視界を開くと普遍無意識が語りかけてくる。

普通はそうでないのだろうが、俺としてはCV的な意味で非常に聞き覚えのある声だ。

 

そこは光の渦であり、意思そのものが空間と同義になっている。

即ち邯鄲の第八層イェホーシュアであった。

 

   ――君は自分に自信がなかった。偽りだと卑下し、醜いと憎悪し、見るに堪えないと直視しなかった。だがそれではいけない。君の眷属(なかま)も言っていただろう。自分は何よりも重いから、確固たる己を定義してこそ他者と本当に向き合える――

 

そうだ、だからこそ俺は盧生として至らなかった。

人類の代表者として、「継承」という賛歌を謳う者として、他者に誇れる己でなければ意味がない。

 

   ――では、第八層(アラヤ)の試練を開始する。それは君にとって最大の難関。君自身が不可能と思うこと。真実の己を見つけ出せ――

 

それが俺に架せられた試練。

獣化帝国(キーラ)の配下三千人という大所帯を抱え込んだせいで、時間の大幅な短縮と比例して困難となったアラヤの試練は、俺という人物の根幹を定めろというものだった。

 

曙光八百万という指針は構わないが、それが何処から来て何処へ向かう物なのか。

そういう己の真実を知った上で、その在り方を決めねばならない。

 

つまり偽物でも借り物でも芯を持って突き通せという事であり、これが悟りと言われればなるほど納得するしかない。

 

俺にとって真実など存在していなかったのだから、見つけ出すも何もない。

その考えがまず違っていたのだ。

 

俺自身が偽りならば、己の外に目を向ければ良かっただけなのだ。

 

柊四四八が第七天・天照に見ていたのは絆。

己をこそ絶対と定めた求道の神でありながら、他者と触れ合い繋がっているという事への羨望。

 

この大正から百年後の時代に生きていた者として、自分を定義せずとも生きていられたゆえに、強靭な個我と利他を共有し共存する姿が眩しかった。

 

 

それが起源。それが原点。

暗い微睡みの中でそれを思い出したからこそ、曙光曼荼羅は昇華した。

 

もはやあの終段は使えないし、それでいい。

 

俺の心に差す曙の光は、彼らに負けないと誇っているから。

さあ、夢から覚めて朝に帰ろう。今度こそ本当に。

 

眩しくて頼もしい仲間たちが待っているから。

 

 

 

 

 

邯鄲の第八層を思い返し、胸に宿った熱を滾らせる。

本当に向き合った現実の甘粕にそれをぶつけよう。

 

(イクサ)(マコト)(アマタ)(イノリ)に顕現する――仁義八行、如是畜生発菩提心」

 

そうだ。俺では甘粕に勝てない。

分かりきっていた事なのだから、何を迷う必要があるものか。

 

俺とて一応は柊四四八。

仁義八行とは違えども、仲間との絆で立っているのだ。

 

ああ認めてやるよ甘粕。

俺は弱い。一人ではお前に太刀打ち出来ない。

 

だが――俺たち(・・・)に、できない事などあるものかッ!

 

「――終段・顕ッ、象ォォッ!」

 

印を結び夢を回し(かたち)を組む。

思い描くのは曙光と同じく六名の英雄たち。

 

しかし先の六柱などよりよっぽど信頼している者たちだ。

等と呟く心情の何と厚かましいことか。勝手に引き合いに出しておいて、無礼にも程があるというものだ。

 

けれど、その本心は隠せないし隠さない。

変えられないし変えたくない。

 

これこそ俺の(イクサ)(マコト)で、柊四四八として胸を張れる(アマタ)(イノリ)たちだから

 

紡ぐのは仁義八行の勇士たち。

顕われ出ずるは曙光(あさ)に集った仲間たち。

 

それは最終最後の終段で、至上至高の顕象なのだと胸を張る。

 

相州戦神館學園(そうしゅうせんしんかんがくえん)八命陣(はちみょうジ)ィィ――ンッ!!」

 

 

 

 

 





(原作の)タイトル回収!
所詮は自己満足だけど、前の単体よりはマシになったと思いたい。
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