春秋の恥さらしネタ帳   作:春秋

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こんなフェイトゼロが書きたい。

 

 

場末の酒場といった風情の店内で、いつもカウンターの隅に座ってカクテルを飲む男。

この周辺ではあまり見かけない東洋人だが、整った容貌から女性客が色めき立つことも多い。

 

普段は陽気な態度を崩さない彼も、このカクテルを飲む時だけは寡黙になる。

 

青い月(ブルームーン)

ジンベースに菫のリキュールを使うこのカクテルは、薄紫の色彩が妖しさを掻き立てる非常に美しいひと品だ。

 

グラスに揺れる菫色を見つめながら何かに祈るように、届かぬ誰かに想いを馳せるして飲むその様は、さながら映画のワンシーンを思わせる。

 

「よぉジャック、今日は青い月(それ)の日か」

 

そんな彼に語り掛けたのは黒人の男。

初めにジャックという通称を定着させたのは、思えばこの男だったろう。

 

彼が名無しの男(ジャック)と呼ばれだしたのは、決して己の名を語らないからだった。

 

――ははッ、俺がジャックか。あっははははッ! イイね超COOLだよそれ!

初めにその名で呼んだ時は珍しく、軽くない動揺を見せてはいたが結局は認めていた。

 

名前なんてどうでもいいと言わんばかりの態度から、何か訳ありだというのは想像がつく。

いやそもそも、こんなところに来て酒を飲んでいる時点で脛に疵を持つのは分かり切っている。

 

その割に軽い態度で渡り歩く彼を見下す者は、往々にして現れるのが道理。

今しがた声をかけた男とて最初はそうだった。

 

――喧嘩を売った瞬間に叩き伏せられて、眼前にナイフを突きつけられるまでは。

 

体格で一回り二回りは勝る相手、それも相応に荒事慣れしている相手を軽々と転倒させる技術。

息をするようにナイフを抜き自然体のまま首筋を撫で上げる技巧は、ガンマンの早打ちにも通ずる芸術的な代物だった。

 

要は、そんな彼の強さに惚れ込んでしまったのだ。

 

文明社会の裏、民主政治の闇。

ありふれた安っぽい言葉がそのまま当てはまるスラムで、なおも注目を集める殺人技巧(・・・・)

 

切り刻み、刺し潰し、縊り殺し。

男は明らかに殺し慣れていた。

 

それも拳銃なんていう、言ってしまえば子供でも大した労力なく人を殺せる玩具によるものではなく、罠に嵌め、隙を伺い、真意を隠し、刹那の内に人生を断ち切るナイフの一閃。

 

今時古臭いようなそれが、その理想形が目の前に現れて憧れた。

言葉にすればただそれだけの事だった。

 

そしてそんな彼の技を見て、微かに香る生臭い鉄の匂いを感じればカクテルの意味にも見当はつく。

 

人殺し(ひとしごと)を終えた後の一杯ってことだろう。

男は順当にこう考え、同じような思考を辿ったものも一定数いる。

 

だが、この町で殺しなんてそう珍しい事ではない。

彼に言い寄る女連中の中には、そうと分かっていながら近付きたいと思う者とているのだ。

 

獲物が女性と定めているのだろう事も解っているというのに。

 

「にしても、なんでブルームーンなんだ? ブラッディ・マリーは安直にしても、他にそれらしいのは色々とあるだろうに」

「……なんで、か。そうだな」

 

問われた彼は大して悩むことなくこう返す。

 

「色がCOOLだから、とか?」

「んだそりゃ。それこそブルー・ハワイとか飲んでろっての」

「それもそっか。んー……」

 

再び目を伏せて考え込み、今度は時間を掛けて結論を出す。

 

「コイツには二つ意味がある。完全なる愛と、叶わぬ恋」

「失恋を噛み締めてるってのか?」

「ま、似たようなモンさ」

 

失恋、と言えばそうなのかもしれない。

 

これは彼女へ抱く愛の現れ。

同時に、決して叶わぬ(敵わぬ)事への恋しさ。

 

自分では至れない殺人のために身体を得た(・・・・・・・・・・・)故の、忘我の域での殺害衝動。

 

今でも鮮明に思い出す。

いや、一度たりとも忘れたことなどない。

 

あの無垢で冷たい蒼氷(アイスブルー)の瞳。

 

そして雨生龍之介は回想する。

己が目指す理想の殺意、ジャック・ザ・リッパーと駆けた血濡れの日々を。

 

 

 

 

 

 

 

――雨生龍之介は殺人鬼だ。

 

彼は探究心と好奇心が旺盛で、精一杯人生を楽しもうとする意思がある。

普段は会話すら億劫に感じる無気力さだが、建設的な思考をするポジティブさも併せ持つ。

 

しかし、生来の破綻した倫理観が人格をまっすぐに歪めていく。

持ち前の探求心は「死」の希求へと移り変わり、旺盛な好奇心は「殺人」という行為へ及ばせた。

 

――雨生龍之介が最初に殺したのは姉だった。

 

彼の姉は弟と違って真っ当な人間だった。

未来は希望に溢れ、人生を謳歌し、父母と弟を愛していた。

 

その満ち足りた家族愛が、弟の殺意を呼び覚ましてしまう羽目になる。

 

己に愛という理解できないモノを向けてくる姉を、だからこそ殺してみたい。

そんな子供染みた無邪気な残酷さが発端となり、雨生龍之介という稀代の殺人鬼は覚醒を果たす。

 

――雨生龍之介は快楽殺人者、ではない。

 

甘いマスクで女を惑わせ夢見心地で地獄に落とす。

生きたまま解剖したりと惨たらしい殺し方をする龍之介だが、彼はそこに快楽を見出している訳ではない。

 

拷問行為は芸術(アート)であり、その探求心からより高度な結果を求めているにすぎない。

 

雨生龍之介は殺人鬼だが快楽殺人者ではない。

彼の目的は「死」を理解することであり、人を殺すことは手段にすぎない。

 

それを間違えてはいけないし、忘れてはいけない。

この運命は、彼に忘れ果てた起源を思い起こさせる物語。

 

二十一世紀の切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)が打ち立てた、その伝説の前日譚である。

 

 





龍之介とジャックちゃんのコンビでZero行ってみようという話。

ジャックちゃんがガチャで召喚できなかったから八つ当たりで書き殴ってみる。
手に入らなかったから書きたいけど、書くには手に入れてボイスという資料がほしい矛盾。

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