春秋の恥さらしネタ帳 作:春秋
俺が本来の柊四四八と異なる点のひとつ。
精神面が
原作に倣ってゲーム的な表現をするなら、ヒロインルートで階層を突破する合間合間に別の周回が挟まっている状態。
フラグ管理をミスって友情ENDとか、逆に上手く行きすぎてハーレムENDを迎えたりとか、あまりに身も蓋もない表現だがまあそんな感じである。
つまり、邯鄲の周回中のこと。
俺が彼女を名前で呼んでいる事からも窺えるように、
それは同時に、彼女が俺に心を開いたという事であり、己の真を曝け出したという事でもある。
「なあ世良――世良水希。確かに俺は弱い人間だよ。そこに関しては言い訳できない、負い目というのが俺にはある。そういう意味ではお前が一番俺という人間の本質を見抜いていたんだろう。でもな、お前は同時に
人は本質だけの生き物ではない。
建前がある。見栄がある。偽り、欺き、嘘を吐き、欺瞞に満ちて虚飾する。
裏があり表があり、骨があるなら肉があり、虚栄だって実が伴えば真実だ。
「弱いから強さを求め、成長していく事ができるんだ。強さに掛ける男の思いは狂気だと? ああ、そうかもしれない。だが死に物狂いで強さを追い求める姿勢は、弱さを自覚するから生まれるものだろう。
我も人。彼も人。故に対等。それが基本のはずだろう。
男女平等ではなく男女
男には男の立場があり、女には女の矜持がある。
それを互いに理解し、尊重し、信じて助け合うのが仲間というもの。
ならば男たる俺が女の水希を頼りにして何の不都合があるというのか。
第四節『彼女の
――諦めなければきっと夢は叶う。
甘粕正彦の代名詞とも言える言葉。
本人が口に出したように、彼は微塵も諦めていない。
歩美によって阻止された終段など前座に過ぎないとばかりに、力一杯に両手を伸ばして天を仰ぐ。
否、奴が見ているのは更にその先。
雲を越え空を越え成層圏を越えた宇宙空間。
「……このッ、バッカ野郎がァ!」
核爆弾に匹敵すると言われる程に驚異の破壊力を有する超兵器。
天より下る神の鉄槌が
最強の盧生たる面目躍如、とは言いたくない。
邯鄲の夢による後押しを得た神の杖は、一発でも地表に激突すれば関東どころか日本列島が割れる恐れすらある脅威なのだから。
……無茶苦茶な真似をしやがってと甘粕に憤る反面、数十万にまで上る万仙陣よりマシじゃないか、とか思ってしまう自分が憎い。
「裁きの杖よ降り注げェィッ――ロッズ・フロム・ゴォォォッドォォォッッ!!」
天上より襲い来る猛威に対抗すべく、主柱ゆえに後ろに控えていた俺も前に出る。
「――破段顕象ォッ! 犬江親兵衛・仁ァし!」
正史の
自分の能力資質を変動させるという効果は同じだが、俺のそれは更に奇異なものとなっている。
この破段は以上であれ以下であれ、本来不動である能力合計値すら変動させうる。
例えば俺の合計値はオール7の70だが、歩美のステータスを反映させれば数値が下がって46に。
或いは仲間内で最も優秀な水希に化ければ、合計値は78に上昇する。
これは八犬伝における犬江親兵衛が、儒教の徳目全てを体現する完璧なヒーローであることに起因している。
全ての徳を体現するという点から、仁義八行の面々を完全に模倣する異端。
場合によっては短所であり長所ともなり得るそれは、己自身を確と持っていなければならないという五常楽の前提に反して、根底にあるべき芯がブレている奇怪な夢であるとかつて壇狩摩に指摘されたこともある。
俺の真実を鑑みれば指摘はまさしくその通りと言えよう。
だが、これでいい。
仁義八行、曙光曼荼羅――柊四四八は仲間あってこその盧生なのだから。
「犬山道節――忠与ッ!」
そして今回変化させる相手は我らが
最終決戦に入ってから大活躍な忠の犬士は、この局面でこそ更に輝く。
故に出るのはその代わりになれる俺だ。
創法によって空中に足場を作り駆けあがる。
見上げた景色は、まるで流星群に向かって突き進んでいるかのようで。
それは、存外に美しいと思える光景だったのだ。
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甘粕正彦の暴威に敗れ、ただひとり残った世良水希が立ち上がる。
それは邯鄲第一周目の再現であり、ゆえに訪れる
もうあの時とは違うのだからと、自信を持って。胸を張って。
「――
これにて終幕、芝居は終わり。
ならば次は、新世界に始まる物語を紡ごう。
――急段・顕象――
柊四四八の筆頭眷属が希望を胸に夢を回す。
「犬飼現八、信道ッ!」
四四八曰くのチートその3にして、最高最難のチート能力。
尋常ならざる創法の才能によって回帰の世界が流れ出し、決着の寸前まで時間が巻き戻っていく。
そして、ことはそれだけに留まらない。
ここで一つ、五常楽について話をしよう。
それは邯鄲の夢を扱う習熟度。
序・詠・破・急・終からなる五段階の夢。
戟法・楯法・咒法・解法・創法の五種類を掛け合わせ、顕象させる術こそが五常楽。
内の二種を納め固有の夢を形にするのが破ノ段であり、それらを極め三種以上の夢を掛け合わせたのが急ノ段である。
通常は夢の扱いに慣れていく内に順々と段階を引き上げるものだが、やはりというか例外と言うものが存在する。
例えばそれは辰宮百合香、夢は傾城反魂香。
彼女は三つの夢を同時行使できる玄人であるが、使える夢は破段で止まっている。
しかし、それは他に劣っている事を意味しない。
彼女は患い捻じ曲がった幼い精神性から、他者を区別するという事が解からない。
故に急段の条件付けがそもそも成り立たず、夢を三つ混ぜ合わせた驚異の破段が出来上がったのだ。
それとは逆に、破段を会得せずして急段に至る例も存在している。
彼ら彼女らは胸に巣食う願いが強すぎて、割り切る潔さを持たない頑固者たち。
柊聖十郎が健常者への嫉妬心に凝り固まっていたように。
世良水希が弟との確執により己を戒めていたように。
だが、水希はその過去を清算した。
巻き戻し、やり直し、そして罪を雪ぎ洗い流した。
故にここで、彼女は初めて自分の意思で夢を描いた。
蝕んでいた
それは即ち、この愛おしい
「
人の身でありながら卓越した創界の才。
盧生に伍する
「――
蛇の継嗣が世界を顕象せしめた。
「
原作からして、鈴子とかは名前呼びになっていてもおかしくないと思うんですよ。周回中に添い遂げているのに苗字で呼び合っているのは、ロートスの顔的に「急に変わっても混乱するから」という神の思し召し故ではないかと。
水希の破段については非難殺到しそうですね。
でも急段がちゃぶ台返しなので、破段が時間停滞というのは理屈として通るとは思うんです。水銀と刹那の関係性的を差し引いて、時間逆行の前段階という意味で。