なかなか難産でした‥…。
というわけではなく、単純に執筆時間がなかなか取れなかっただけです。
今回はデスゲーム宣言前のひと時の話です。
それでは、大分誰かの影が薄くなっていますが、気にしないで行ってみましょう!どうぞ!!
Side.アオシキ
武器屋で私は曲刀――
フィールドには、Mobと思われる青いイノシシと戦闘をしているプレイヤーが幾らか見える。
その中で目立っているのは、少年と青年と思われる2人組。
手に持つカトラスを滅茶苦茶に振り回し、イノシシに回避されて、反撃に突進されて草原をころころと転がっている青年。
それに比べて、イノシシに向かって拾った小石をグリーンに光らせて投げ、眉間らへんに命中させる少年。
恐らくは、少年が青年にレクチャーしているのだろう。
青年がソードスキルと思われるものを発動させてイノシシを倒したのを見計らって、私たちは彼らに声を掛ける。
「ちょっといいかな?」
「ん?」
「なんだ?」
私が声を掛けると2人揃って振り返った。
「私はアオシキ。こっちの少女は」
「オトオリだ」
「俺はクラインだ。でこっちは」
「……キリトだ。それで何か用か?」
私たちが名乗るとすぐに返事をする青年――クライン――、少し間を置いて少年――キリト――が名乗る。
「藪から棒で悪いんだが、私たちにもソードスキルのレクチャーをしてくれないか?」
「生憎、私たちはこういったものは初心者でな。剣の振り方とかは少し齧っているから大丈夫なんだが、勝手がわからなくてな」
「それならキリト。こいつらにもソードスキルのモーションをレクチャーしてやってくれよ」
「まぁ、それくらいなら構わないけれど。それじゃ、ポップしたフレイジーボアを探すか」
そう言うとキリトは、歩き始めた。それを見て私たちもついていく。
少し歩くとポップしたばかりと思われるフレイジーボアに遭遇した。
「さっきクラインにも説明したが、大事なのは初動のモーションだ。それさえしっかりやればソードスキルは発動して、システムが勝手に技を当ててくれるよ」
「そうか。曲刀の基本技の初動モーションはどんなだ?」
「肩に担ぐように持ち上げるようにすれば【リーバー】が発動するはずだ」
キリトのアドバイス通りに、左手に持つカトラスを左肩に担ぐように持ち上げると、刀身にオレンジ色の光が宿り、体が勝手に動きフレイジーボアに【リーバー】が命中する。
「なるほど。これがソードスキルか」
「すげーなアオシキ。俺なんて、発動させるのにあんなに手こずったのに、一発かよ」
「キリトのアドバイスがよかったからだよ。それにまだHPは削れきってないからこっちにくるぞ?」
私がそう言った次の瞬間には、オトオリがフレイジーボアの目の前に出て手に持ったダガーナイフに青色の光を宿らせて、眉間に突き刺した。
「アドバイスもしてないのに、短剣のソードスキルを発動させるなんて見事な手際だな」
「なに、アオシキに対するアドバイスを元に短剣に合わせたモーションを考えてみただけだ」
流石はオトオリといったところか。戦闘に関してはやっぱり天才だな。
それから暫く、4人で狩り続けた私たちは一息ついていた。
「大体のことはレクチャーできたと思うけど、勘を掴むためにもう少し狩るか?」
「そうだな……。私たちは大分掴めたからそろそろ2人で行動しようと思う」
「俺はもう少し狩りてぇな……と言いてぇんだけど……」
そう言うと右方向に目線を動かすクライン。キリトに説明受けていなければ、視界の端に時間が表示されていることに気付くのはもうちょい先になっていたことだろう。
「……そろそろ一度落ちて飯食わねぇといけねぇんだよな。ピザの宅配、五時半に指定してっからよ」
「そりゃ準備のいいことで」
それを聞いて、呆れ声を出すキリトに向かって、おうよと胸を張るクライン。何かを思いついたのか、クラインは続けた。
「でよ、飯食い終わったあとに、他のゲームでの知り合いと【はじまりの街】で落ち合う約束してんだよ。お前らを紹介したいから、そいつらともフレンド登録しねぇか?いつでもメッセージ飛ばせるから便利だし」
「私は構わない」
「私もだな」
「え……うーん」
淀みなく答える私たちと違って、少し口籠るキリト。
「別に無理にとは言わねぇさ。そのうち紹介する機会もあるだろうからよ」
「……ああ、悪いな、ありがとう」
「おいおい、礼を言うのは俺のほうだぜ?キリトのおかげで大分ソードスキルの感覚も掴めたしな。この借りはいづれ精神的に返すからよ」
そう言うと、もう一度時間を確認するクライン。
「……ほんじゃ、俺は一旦落ちるぜ。マジ、サンキューなキリト。アオシキとオトオリはまた後でな。これからもよろしく頼むぜ
3人とも」
クラインが差し出してきた手を私たちは順番に握り返した。
「ああ、こっちこそ宜しくだ」
「宜しく頼む」
「また訊きたいことがあれば、気軽に言ってくれ」
そう言葉を交わすとクラインは一歩下がり右手を振りメニューウィンドゥを呼び出した。
キリトも近くの岩に腰掛けてウィンドゥを開いていた。
「……おい。ログアウトボタンがねぇぞ」
「ボタンがないって……そんなことあるわけないだろう。もう一度確認してみろよ」
クラインの一言でキリトは操作していた手を止めて顔を上げた。
「やっぱり見当たらねぇよ。キリトたちも見てみろよ?」
「そんなわけないっての……」
私たち3人は確認のためにウィンドゥを開いて一番下までスクロールさせる。
そこにはLogOutボタンが――――
――――なかった。
「まぁ、正式サービスの初日なんだ。バグ出るだろうさ。更にこんな大規模なゲームなら尚更な」
「今頃GMコールが殺到して、運営側は半泣き状態だろうな」
「そんな余裕でいいのか?折角のピザが不味くなるぞ?」
「うおっ、そうだった!!」
オトオリの言葉で一層喚き始めたクラインは、時間も時間なのか他のログアウト方法をキリトに聞きはじめていた。
リンゴーン、リンゴーンと鐘のような音が鳴り響いたのは、丁度その時だった。
Side.out