スランプとかリアルの忙しさが重なってこうなってました。あとワンピース新情報出すぎて書くの怖くなってきた…
言い訳は以上です。アラバスタ編までは骨組みが書き終わってるので、多分投稿します。
偉大なる航路の上空を、一対の翼を持つ少女が駆け抜けていた。
その表情は焦燥に染まっていて、速度は常の数倍にもなる。
「ねぇ、ビビっ! ……ダメだ、繋がらない……っ」
あまりの風圧にコードが千切れそうな電伝虫に呼びかけるが、動く様子はない。
先程まではビビとイガラムに繋がっていたのだが、爆発音と共にあちらの電伝虫が通信できない状況になってしまったようだった。明らかにただごとではない。
「……! 見えたっ!」
ようやく見えてきたウイスキーピークは、遠目からでも分かるほど戦闘の跡があった。もしビビが追われているなら、十中八九カルーに乗っているはずだから外に居る。もし、外に居なかったら──と、そこまで考えたところで見覚えのある空色の髪が目に付いた。オレンジ色の大きな鳥──カルーに乗り、二人の男女と対峙しているのは間違いなくビビだった。
「ビビ、こっち!」
「空から────エアっ!」
「ノーズファンシー……なにっ!?」
何かを弾き飛ばすような構えをしていたボンバーヘッドの男からビビを遠ざけるべく、上空から滑るように舞い降り、ビビの手を掴み上げて再上昇。的を小さくするためにそのまましっかと抱きしめ、この場から退避しようとしたところで気付いた。
「クエ──ッ!?!?」
「あ、カルー忘れてた」
既に攻撃を放っていたらしいボンバーヘッドが指で弾き飛ばした黒い何かがカルーに直撃する寸前、見覚えのある緑髪がその前へと降り立ち、それを斬る。
「だーっ! ハナクソ斬っちまった! ……って、あの時の羽女?」
「Mr.ブシドー……!」
「……あれ、ゾロさん?」
緑髪で三本の刀を腰に差す男の名はロロノア・ゾロ。
麦わらの一味の戦闘員であり、仲間のお願い(ナミの無茶振り)によってここまで駆けつけた援軍であった。
予想だにしない増援に焦ったか、連続して飛んでくるハナクソを嫌そうな顔で斬り続けるゾロが、意外そうな面持ちで口を開いた。
「お前、なんでこんな所に居るんだ?」
「依頼。この子を届け……いや、守っての方が正しいかな」
「それ運び屋の仕事か? ……まァ、いい。さっさと行け。コイツらは俺が倒しといてやるよ」
「……いいの?」
「……あァ」
もう一発飛んできた塊を嫌そうに斬り飛ばしたゾロが、こちらに背を向ける。
ビビが何か言いたげな表情をしていたが、生憎エアにはそれを気にする余裕はなかった。
「……よろしく! カルー、こっち!」
「クエーッ!!」
「クソッ……王女を逃すな! バレンタイン! ……おい、バレンタイン?」
「キャハッ……本物の、“運び屋”……サイン、貰えば良かった」
「……気の抜ける奴らだが、借金が帳消しになるってんだ。さっさと終わらすか」
背後で聞こえる喧騒を無視し、カルーとビビを連れて上空へと羽ばたく。
その上でどこを目指すべきか考えを巡らせていると、不意にビビが叫んだ。
「エア、イガラムを……!」
「……分かった。どっち?」
彼の生きている可能性、そこへ向かうことの危険性、ビビの願い。
悩んだのは一瞬だった。すぐに高度を落とし、ビビに従ってウイスキーピークを飛ぶ。
幸い、イガラムはすぐに見つかった。
「マ〜マ〜マ〜……ご無事でしたか、ビビ様!」
「イガラムっ……その人は?」
無事だったことに喜んでいたビビだったが、イガラムの側に座っているオレンジ色の髪の女性に警戒を隠せない様子だった。先程まで襲われていたところだったので、無理もないのだが。
にしてもあの女性、どこかで見た覚えがある。
「彼女は、昼間に来た海賊の一味だそうで。ビビ様を助けて頂けるよう願っていたところなのですが……」
「……どこかで会った気がするんだけどな」
「うん? ……エアじゃない! こんなとこで会うとは思わなかったわ!」
「…………あ、もしかしてナミ?」
記憶を辿るとすぐに名前は見つかった。
海賊専門の泥棒とやらを名乗っていて、盗みを終えて追われる彼女を何度か運んだことがある。もっとも、危険な依頼ばかりだったので心象はあまりよろしくないのだが。
「あなたも王女サマの護衛?」
「あなたも……ってことは、ナミも? ちょっと意外……」
「そう? だって一国の王女を助けるのよ?」
お金を表すように指で円を作るナミに苦笑する。かなり久しぶりの再会だったが、変わらない様子だった。
「となると、依頼のダブルブッキングになっちゃったのか」
「あら、いずれ来る運び屋ってエアのことだったの? でも譲るのはやーよ。大金を手に入れるチャンスなんですもの」
「うーん……こういうのは依頼主のビビとイガラムさんに聞くべきなんだろうけど」
右腕で抱き抱えているビビに目を向けると、こちらも困った表情でイガラムとアイコンタクトを交わしていたが、解決しそうな雰囲気はない。
「とりあえず、今ある危険をどうにかしてから考えない?」
「そうね、それがいいかしら。王女サマ達もそれでいい?」
「……ええ。助かるわ」
ひとまず全員の合意を得たところで、議題は刺客の方へと移っていく。
「で、ビビ。さっきの男達は?」
「Mr.5ペア。BWの中でも指折りのエージェントよ」
あのレベルで? と思うが、口には出さない。余計な茶々を挟むと無駄に長引くからだ。
悪魔の実を食べて多少の実戦経験を積んだだけ──といった感じの強さである彼がトップクラスにいる組織であるなら、平均レベルは随分低そうに思える。部下の育成が苦手といったわけでは無さそうなクロコダイルが、その辺りを怠るとも思えない。と、すると。
(使い捨ての駒がとにかく多いのかな。国取りが目的だから、スケープゴートにする役目を多めに確保してるって感じか)
そこまで考えて顔を顰める。分かっていたことではあるが、謀略に優れたクロコダイルに、アラバスタでの地盤と大量の駒、長い時間を掛けて練ってきた計画があるとなると、かなり手に負えない。こちらも備えはあるものの、最低限だ。
どうするべきか、と考えるものの、良い答えは出ない。仕方がないのでひとまずは後回し。
「まぁ、ゾロなら倒せるでしょ。寝てるルフィが起きれば一番いいんだけどね」
「あ、やっぱルフィくんもいるんだ」
つい最近懸賞金3000万ベリーとなった知り合いが来ていることは、ゾロが居ることからなんとなく予想が付いていた。
「言い方から察するに、ナミも麦わらの一味に入ったんだ。……最近海賊の知り合いが増えてって怖いよ」
「……まぁ、アンタってそういうアウトローな連中から好かれそうだものね」
「え!? 待って、どこが!?」
「ま、それは後で。……にしても、アイツら遅いわね」
どこか呆れた様子のナミが呟いた言葉に慌てるエア。余談ではあるが、イガラムとビビもそれを聞いて思わず頷いてしまっていた。
適当に誤魔化されて少し拗ねている様子のエアだったが、ナミにつられてウイスキーピークの方をチラリと見、あっと小さな声をあげた。
「どうしたの?」
「……なんか、ゾロさんとルフィくんが戦ってる」
「はァ!?」
大通りの奥、煙の隙間に見えたのは鍔迫り合っている足と刀。麦わらと黒手拭い。
「全く、あのバカども……ちょっと引っ叩いてくるわ」
「あ、行ってらっしゃい」
呆れたと言わんばかりに溜息を吐き、ルフィとゾロの方にドスドスと歩いていくナミを見送り、痛い目に遭うだろう二人に合掌。
──そして、場の空気に付いてこれていなかったビビとイガラムに向き直った。
「丁度よく三人になれたから。
これからの動きについて、先に話しておきたいことがあるんだ」
話自体は次で進む。