そこまで重症ではないんですが、そのおかげで(?)暇ができたので次の話もそれなりに早く投稿する…はず。
今回から特に原作と離れていきます。
ナミが引き連れてきた大量のたんこぶが生えているルフィとゾロ。アラバスタ組のビビ、イガラム。そしてニコニコ笑っているミス・バレンタイン(とボロボロのMr.5)。
気まずい沈黙が流れる中、3グループの間を取り持とうと口火を切ったのはエアだった。
「全員揃ったからこれからの動きを纏めよう、と言いたいんだけど。
……そちらのお姉さんは、どうしてここに?」
「んー? そいつエアのファンだとか言ってたから、連れてきたんだ」
全然意味わかんない、と呟くエアにミス・バレンタインが近寄る。
そして、身構えるエアの片手を両手でしっかと握り締めた。
「サインください!!!」
「ぇー」
実は、こうやってファンを名乗る人間に出くわすことは初めてではなかった。
ただでさえ行き来が難しい偉大なる航路の島同士、しかも航路には海賊が居る可能性が大な現状、安定して素早く物を運べるというのはエアが想定している以上に有り難く、人気を集めていたのだ。本人はリピーターが増えた、くらいの感覚でしかないのだが。
しかし、こうして敵対している相手から、というのは初めてだ。
困惑しているエアを無視してペンを取り出そうと懐を探っているミス・バレンタインに、意識が戻ったらしいMr.5が怒鳴り出す。
「ゴホッ……お、おい……ミス・バレンタインッ!」
「何かしら。私、今ちょっと忙しいんだけど」
「お前、裏切る気か……!?」
「失礼ね。私がこの組織に所属したのは彼女に会うためよ?」
なっ、とMr.5が言葉を詰まらせる。どうやら彼も初めて聞く話らしかった。
「偉大なる航路に行けば会えると思ったけれど……彼女の行動域に合わなくて、中々遭遇できなかったのよね。だから組織に所属して移動手段を得たわけ」
「そ、そんなふざけた話が……」
「キャハハハ、アンタより上のMr.2だって私と同じ人探しが目的よ?
……まぁ、いいわ。目的の人物には会えたから、BWとの契約はここでお終い。
さ、エアさん! これにサインしてください! できればミキータって名前も入れて!」
「あ、うん……」
ミス・バレンタインはそう言い切ると、傘にサインをして貰えるようエアの方へと向かう。
若干引きながらもサインを終えたエアも、サインを貰って子供のようにはしゃいでいるミス・バレンタインを見て警戒心が薄れてきた。
「ファンって事だったけど、ちなみにどうして? さっきの口ぶりだと、会ったことも無いはずなんだけど……」
「運送業に多少なりとも関わってる人間でエアさんを知らない人なんて居ないわ! どんな依頼でも失敗しない伝説だもの!」
「え、えへへ……そこまで言われると照れるな……」
褒め言葉へ恥ずかしそうに頬を染めるエアへ、更に興奮したようにミス・バレンタインが語り出そうとする。が、そこをナミがグイと二人を引き離して遮った。
「はい、そこまで。アンタらがその調子じゃ、話が進まないでしょう」
「まだ話し足りなかったのに……」
「う、ごめんナミ」
不満げなミス・バレンタインと反省した様子のエアが落ち着いたところで、話はビビの行方──BWの真相、クロコダイルへと話が移っていく。
「……それで、そんな大物が相手だったってワケ? あー、やめやめ。折角偉大なる航路に入ったってのに七武海なんかに目付けられたらたまったもんじゃないわ」
「そんな大物相手に裏切っちゃったの!? ……私も暫くは身を隠さないといけないわね」
ボスの正体を知り、この話は無かったことにしようとナミが言い出す。それは仕方ない。彼女の立場になってみれば、ここで七武海と争うのは避けたいだろう。しかしそれではエアが困る。
「……ねぇ、ルフィくん」
「お? なんだ、エア」
クロコダイルの強さについて呑気に喋っていたルフィがこちらを向く。その瞳の奥に、どこかわくわくを感じるのはエアだけだろうか。
「ビビのこと、アラバスタまで連れて行ってくれない?」
「いいぞ」
「何頷いてんのよバカ!!」
笑顔で頷いてくれたルフィの頭をナミが蹴り飛ばす。へぶっ、と情けない声をあげて倒れ込んだルフィを尻目に、ナミが呆れた表情でこちらを見てくる。
「悪いけど、王下七武海なんかと関わってらんないのよ。アンタには何回か助けて貰ったけど、それとこれとは……」
話を遮るように、エアが一本指を立てる。
「即金で1000万ベリー」
「…………え?」
ピシリ、と固まったナミに対し、エアが2本目の指を立てた。
「“アラバスタまで送り届けるだけ”でいい。そうしたら追加で1000万ベリー」
「2000万ベリー…………」
突如提示された大金に、先程までの姿勢を覆しそうな様子を見せるナミ。
そこへ固まっていたビビが慌てて口を挟んだ。
「待ってエア! 貴女にそんな金額を出させるわけにはいかない……それに、彼らに頼まなくても貴女が運んでくれれば……!」
「それじゃダメってさっき話したでしょ。
……その行動は、きっとクロコダイルさんに予想されてるから」
エアには予感があった。この行動がクロコダイルに全て仕組まれたものではないか、という予感が。
そもそも、エアがウイスキーピークを訪れ、ビビ達を助けるための緊急連絡先を確保したことだって始まりはクロコダイルからの依頼なのだ。であればビビ王女をここで殺せないことはわかっていたはずである。
自分のファンだというミス・バレンタインを刺客の1人にしたことで、その予測は確信へと変わった。
「クロコダイルさんは、何らかの理由で私にビビ王女を助けさせたかったんだと思う」
「エア殿、その可能性は私も考えました。ですが、それだとビビ様が海軍に保護される可能性も……」
「国が危険なのにビビがじっとしていられるはずがない。それに、最悪ビビが戻らなくてもよかったんだよ」
そうだ。ビビが戻らなければ、クロコダイルを追い詰める存在はいない。たとえ海軍がやってきたとしても、巧妙に隠蔽されているであろう計画を抑え、なおかつ長い間信頼を積み重ねてきている彼を裁くことは難しいだろう。
大将格であれば話は別かもしれないが、七武海の中でも信頼があるクロコダイルを証拠もなく取り押さえることは現在の制度を揺らがせかねない。あの赤犬さんですらも、最低限の証拠は抑えてから動くだろう。
そして、
「私がこのことをビビに伝えれば、ビビは何がなんでもアラバスタへ向かおうとする。そして、きっと私も」
ここで疑問となるのが、なぜエアを使ったかだ。
ビビをアラバスタへ連れてきたいだけならただ放置してやればいい。そうすれば勝手にクロコダイルの存在を掴み、アラバスタへ帰ってくれるだろう。
そこへわざわざエアを絡ませたのは、そこにも狙いがあるということではないだろうか。
「このまま私とビビとイガラムさんでアラバスタへ向かっても、おそらくクロコダイルさんは止められない。
──だから、彼の予測の外にいるであろう人たち。ルフィくんに手伝って欲しいの」
基本矛盾がないように設定は練ってきたつもりだけどちょっと不安。でも書きたいことがあるから頑張れる……