やっほー、ニュース・クー!   作:スイヨウ

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お待たせしました。


アラバスタ・中

 

「う……結構やってるなぁ」

 

 消え掛かっていた前世のトラウマを刺激する光景に口元を押さえる。

 エアがやってきた場所、広場は戦火に包まれていた。

 

「とりあえず、ビビかイガラムさん、あとはコーザさんとか……? いいや、とりあえず高いところから探そ」

 

 戦闘を止める発言力がありそうな人物を脳内でリストアップしながら飛び立つ。仕事柄目は良く、遠くのものでもよく見える。人探しなんて得意中の得意だ。

 ──だから今、時計塔の下から飛び出した人影にも見覚えがあった。

 

「ビビと……ミキータ!?」

「キャハ、エアさん! 良いところに!」

 

 爆発のような音と共に日傘をさしたまま打ち上がってきたミキータが、小脇にビビを抱えていた。よく見れば、塔の中にサンジも見える。

 

「なんで空を!?」

「時計塔の上に行きたいの!」

「上って……いや、了解!」

 

 上に何があるのかと思わず聞き返しそうになったが、文字盤が開き始めたのを見てとりあえず異常は察したエアがミキータに翼を授ける。

 加速力を失いかけていたミキータが羽ばたきを一つ。傘を閉じ、空へと速度を上げていく。

 

「キャハ、これよこれ。王女サマ、しっかり掴まってちょうだいね!」

「ケロケロ、ちゃんと狙うわよMr.7!」

「Ok、ミスファーザーズデイ!」

「──まずい、狙撃手ペア!」

「ちょ、ちょっと待って……流石に細かい軌道変更はまだ無理よ!?」

 

 瞬間的に速度を増した二人へ気付いたのか、狙撃手ペアが時計台から二人を狙い出す。

 思わず顔を青ざめさせるビビとミキータだったが、その横をもう一対の白い翼が駆け抜けた。

 

大風羽(たいふう)!」

「人が飛んで……ケロ!?」

 

 ミキータ達より早く文字盤と高度まで辿り着いたエアが取った行動は、羽ばたき。

 時計塔の横幅と張り合う大きさに広げた翼を素早く動かし、風圧で狙撃手ペアを吹き飛ばす。二人が壁に激しく打ち付けられてノックアウトした頃にミキータ達が時計台の中へと入り──そこで気付いた。

 

「あ、Mr.7に潰されて導火線も消えてる……」

「えっ…………」

「あ、でもこれ時限式よ! エアの出番!」

 

 ミキータ達が上がってきた意味が消失している。

 一瞬ものすごく微妙な空気が流れかけるが、ビビがすぐに時限式に気付いた。

 しかしこれも能力でハネを生やし、遙か上空へリリース。大爆発が上空で起きるのを確認して一息。

 

「何が何だかよく分かっていないけど……次にやって欲しいことは!?」

「もう一回私を降ろして! 急いで皆を止めなきゃいけないの!」

「いやいや、降りてどうするの! 下は戦場だよ!?」

「だからこそよ!」

「そんな危ないことさせられないよ!」

 

 無茶な提案をするビビに反論するエア。ヒートアップしそうだった二人を止めたのは、何か考え込んでいたらしいミキータの一言だった。

 

「キャハ……エアさんが抱えればいいんじゃないかしら?」

「……それよ! エア!」

 

 何か思いついたような顔をしたビビの次の言葉に、エアの表情が引き攣った。

 

「その翼、できるだけ大きくして!」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 最初にそれに気付いたのは不安げに時計塔を眺めていたナミだった。

 地上の全員が目を覆うほどの風を伴って、それは空中に現れた。

 

「皆、上見て!」

「マジか……」

 

 ナミが指さした先──空に浮かぶのは、広場を埋め尽くさんとするほどの巨大な翼。

 横の大きさだけならばかつて見たクリークのガレオン船に匹敵するその大きさに、サンジのぽっかり開いた口からタバコが落ちた。

 

「戦いをやめてください!」

 

 同じ衝撃を受けたのだろう。音が一気に減った広場にビビの声が響く。

 大きな翼の中心──エアに抱き抱えられるような形でビビはいた。

 

 同時に、地上の一部が崩壊する。

 吹き飛ばされてきたコートの男は見間違えるはずもない。アラバスタの英雄だった、内乱の首謀者。溢れそうになる涙を堪えて、ビビは言葉を紡いだ。

 

「悪夢はもう、終わりましたから……!」

 

 二言目を絞り出した時には、もう戦いの音は止んでいた。

 ポツポツと降り始めた雨に打たれながら、ビビは懸命に声を上げた。

 

「今降っている雨は、また昔のように降ります……!」

 

 静まった戦場に、コーザが、イガラムが、コブラ王が現れる。

 もう武器を持っている人物は居ない。今ここに、アラバスタの内乱は終わったのだ。

 

 緊張が解けたのか、脱力するビビを再度支えてほっと一息を吐き出す。

 

「ふぅ……長かった依頼も、これで完了かな?」

「……いいえ。この国が復興するために、エアにはまだいっぱい運んで貰う物があるんだから」

「確かに。まずは、あそこでぐっすりな人たちからかな。シュライヤもルフィくんたちも、動く気がないほどぐっすりらしいから」

 

 莞爾として笑うビビに笑顔を返して、二人は仲間のもとへ降り立った。

 




アラバスタ内乱は完結です。あともう一話、宴会を挟んだらまた運び屋記録に戻ります。
一年も失踪してたせいか何をどこまで描写したかが怪しいので、添削してくれた身内に聞かれたことを載せておきます。

Q、クロコダイルはどうなった?
A、原作通りのタフさを見せたルフィ、排撃貝を持っていたシュライヤ、海楼石の十手で隙を作ったスモーカーにより敗北しました。スモーカーが隙を作る→シュライヤがリジェクトする→ルフィが暴風雨の形ですね。しかしクロコダイルにボコられて、皆軒並み瀕死。
スモーカーの扱いが悪い?そりゃ、モクモクしちょるから………ごめんね、スモーカー推しの皆。

Q、なぜ爆弾を一つしか用意しなかった?
A、強さを取り戻してるので、防がれてもアルバーナ全体に流砂を発生させて全員生き埋めにすればいいという脳筋思考を持っていたためです。本作のクロコダイルは王で満足しきれないクロコダイルだったので、「計画は途中までやっているし完遂まで動く。しかしメインはプルトン」という考えです。なので国の損耗も原作より許容量が大きいです。

Q、なぜスモーカーは原作と違ってアラバスタで戦ってるの?
A、エアの根回しで、黒檻のヒナとプリンプリン“本部大佐”が人工降雨船の発見に回っていたからです。

Q、エアがいた意味は?
A、原作読み返すとよく分かりますが、あんまりないです。ただビビの声が届く理由にしました。原作のあれもドラマチックでものすごく好きなんですが、運び屋のお話なので。ちなみにシュライヤの方が活躍度は高い(酷)

Q、ペルが居ないのは何故?
A、エアが大砲をどうにかしてくれそうだったので、コブラ救出のために葬祭殿へ向かったため。この作品だとペルはクロコダイルと戦っています。覇気が使えなくてもできることはあるからネ。負傷者の移動とか、戦闘後の皆の救出とか。

Q、他に原作との違いは?
A、クロコダイルの強化に伴いMr.1が微強化を受け、獅子歌歌後も戦う羽目になったゾロのダメージが大きく、塔に来れてません(今作だとどうでもいい)。
ツメゲリ部隊が事前にペルから運び屋を通した海軍(スモーカー)参戦の連絡を受けているため、クロコダイルと戦わずに反乱軍鎮圧に向かっており、生存してます(今作だとどうでもいい)。
サイクロンテンポでウソップの股間が爆発せずに済みました(どうでもいい)。
ビビの声が原作より早く届いたので、若干死者が減っています。
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