やっほー、ニュース・クー!   作:スイヨウ

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→女ヶ島

 

 凪の海にある女ヶ島にその本拠を置く国家、アマゾンリリー。

 代々九蛇海賊団の船長が皇帝を務めてきたこの国は世界的に有名である。

 ──なにしろ、国民が女性だけなのだ。

 男性が入ろうものなら問答無用で死刑という法があり、実際に流れ着いた海賊が哀れにも殺される事が過去にあった。もっとも、海賊であるが故に大きく取り上げられはしないのだが。

 

「マーガレット! まだ彼女は来てないわよね!?」

「ええ。予定だとそろそろの筈なのだけれど……」

 

 しかし、女だけで全てを自給自足している……というわけではない。食糧や服、武器程度なら(原始的ではあるが)賄えるものの、海賊として活動するための船や、外界と最低限の接触を持つための電伝虫など、必要な物は多岐に渡る。少なくとも、時折航海する九蛇海賊団──しかも貿易ではなく商船などへの攻撃──だけでは賄えない。

 では、誰がそれを持ってきているのか。

 

「来たわ! 彼女よ!」

 

 水平線の彼方からそれなりのスピードで飛んでくる少女──エアを、まず最初に発見したのはリンドウだった。狙撃手の面目躍如、といったところである。

 彼女が来訪を叫んだ瞬間、集団からわっと歓声があがった。

 

「九蛇の皆さーん! 広場を空けてくださいねー!」

「来たわ! 皆、下がりなさい!」

「ザハハハ、待ちくたびれたわ……!」

「ええ、本当に!」

 

 呼びかけ通りに並びながらも、興奮は隠せず。

 今回は何があるかと目を輝かせる九蛇の面々の眼前に、エアが降り立つ。──三つの、大きな木箱と共に。

 

「取り決め通りだ! クジが当たっていたやつは品出しを手伝え! 他は、貢献度順に並んで待つ! 破ったものは購入禁止と罰則だぞ!」

 

 キビキビと指示を飛ばすキキョウに逆らう者は居ない。熱狂の渦に包まれながらも、軍隊さながらの整然とした動きで彼女らはショッピングを始めた。

 

 そう、女ヶ島の月一イベント、輸入品のショッピングである。

 

 ある運送屋が提案し、皇帝が実施して、今では島民のほぼ全員が参加するようになった一大イベントであった。やはりいつの時代もショッピングが好きな女性は多いのである。

 貢献度での順番による平等性を設けたところ、国民全員のやる気が目に見えて違ってきたためにニョン婆がうるさく言うこともなかったという。

 

「ふむ、エアよ。ご苦労じゃったな」

「あ、ハンコックさん」

 

 騒ぎの中心から少し離れたところで木陰に座り、休憩していたエアの耳に聞き慣れた声が響く。現アマゾンリリー皇帝たるボア・ハンコックその人が、いつの間にか近くまで来ていたのだ。

 

「わらわが混じっては、あの者達も楽しみきれぬと思ってな。それに……今回も、持ってきたのじゃろ?」

「もちろん。はい、これ」

 

 あのハンコックが部下に気を遣い、あまつさえ可能な限り気配を抑えるという、ニョン婆が見たら泣き出すような光景を展開しているなか、エアが大きめの鞄から取り出したのは──厳重に封がされた瓶が何本か入った箱だった。

 ハンコックがキラキラと目を輝かせながら、そのうちの一本を抱きしめる。

 

「待っておったぞ、わらわのにごり酒!」

 

 余談だが、彼女は辛めの料理、特に火鍋が好きである。そこで、一年ほど前に無事友人という関係を勝ち取ったエアが、ワノ国より仕入れたにごり酒をプレゼントしたところ──どハマり。度々持ってくるようせがむようになったのである。

 

「今すぐに呑みたいところじゃが……夕餉までは我慢、じゃな」

 

 ひとしきり喜びを示した後は、名残惜しそうに見つめながら箱の中へ。その一連の動作さえ絵になるのだからズルいな、などとぼうっとハンコックを見つめていたエアの手に、ハンコックがそっと何かを置いた。

 首を傾げながら、その何かを見る──蛇モチーフの、首飾り? 

 

「あの、ハンコック、これ……」

「……友に贈り物をされたら、返すのがマナーじゃと聞いてな」

 

 恥ずかしそうにそっぽを向きながら小さい声を出すハンコックいわく、普段の贈り物に対するお返しらしくて。

 

「……ハンコック」

「…………なんじゃ」

 

 まさか気に入らなかったりでもしたのだろうか、と思うくらいには反応の薄いエアへ、思わず不安げな表情を浮かべたまま振り返ったところで──熱烈なハグが飛んでくる。

 

「ありがとう! めちゃくちゃ嬉しいよ、これ!!」

「そ、そうか……」

 

 どうやら静けさは、喜びが爆発する前の溜めだったらしい。満面の笑みを浮かべてスキンシップを図るエアをどうどうと宥めながら、でもその表情には同じく笑みがあって。

 やがて騒がしくなってきた二人に気付いた九蛇海賊団も巻き込み、陽が落ちるまで女ヶ島全体が盛り上がっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「それで、ハンコック姉様。どうだったの?」

「どう……とは」

「エアの反応よ。喜んでくれた?」

 

 一通りのイベントが終わり、城の最上階──自室へと戻ってきたハンコックを、妹のサンダーソニアが出迎える。

 今回、ハンコックが初めてできた友に贈り物をするからと相談したのがこのサンダーソニアであり、なんならハンコックよりも成功の可否を気にしていた人物でもあった。

 暗く沈んでいないからおそらくは成功したのだと思い、いや、願いつつも、話しかけた姉から返ってきたのは沈黙だけ。

 まさか、という思いでおそるおそるハンコックの顔を覗き……撃沈。

 

「…………♪」

 

 サンダーソニアは知っている。

 アクセサリーを贈るにあたって、自分が付けているピアスと同じデザインのものをハンコックが選んだことを。

 

 サンダーソニアだけが見た、ハンコックの緩みきった笑顔。

 それは、ある麦わらの海賊が訪れるまで、サンダーソニアの“姉様が見せた美しい表情ランキング”不動の一位を保ち続けたという。

 





ハンコックは対人関係初心者だという偏見をもとに書きました。
「解釈違いだぞコノヤロウ!」という方は自分の解釈でハンコックを書いてください。

よし、これでワンピースss増えるな……

[紹介コーナー]

・リンドウ
とんでもない服着てるけど面倒見が良さそうな九蛇海賊団の狙撃手。

・マーガレット
ヒロイン枠か!?と思わせるも、秒で出番が消え、ハンコックに全てを持っていかれた人。私は好きです。

・キキョウ
めっちゃイケメンな感じの纏め役。ハンコックが捕まったりすると、一部の戦士を率いてゲリラ軍的なのを作ってそうな見た目(偏見)。
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