問題児たちと胡散臭い化物が異世界から来るそうですよ? 作:焼き魚
「観戦すると言ったな。あれは嘘だ」
「なぁ黒ウサギ暇潰しは何かねぇのか?」
十六夜が突然そういった。
確かに長い時間待っているが、暇になるのが早いような気がする。
「無茶言わないで下さい!!」
黒ウサギは困ったように叫んだ。
――ウォォォォォオンッッ!!!!
屋敷がある方から獣の咆哮が響いてくる。
「!!!……今のは……」
「虎になった春日部だな」
「なるほど…………って違いますよ!!!」
黒ウサギは一瞬納得しかけたものの、持ち前のツッコミスキルで切り抜けた。
「じゃあ虎を従えたお嬢様だな」
「地味にありそうなことを言わないで下さいっ!!!」
「じゃあアレだ御チビだ」
「ボケ倒すのもいい加減にしなさいっ!!」
スパァンと、ハリセンで叩かれる十六夜。
…良い音がなるものだ。
と、そんな中十六夜は目を輝かせながら、黒ウサギに近づくと
「俺たち見に行ったら不味いのか?“審判権限”とそのお付きってことでよ」
よっぽど暇なんだろう……
すると、黒ウサギは自らの耳に手を当てながら喋り始めた。
「黒ウサギの素敵耳はここからでも大まかな状況は分かってしまいます。
ですから、最初の“契約書類”にないかぎり見学は許されません」
十六夜はこの言葉にたいして、ため息をひとつつくと、わざわざ聞こえるような声で不満を露にした。
「……貴種のウサギさん、マジ使えね」
「聞こえないように言って下さいっ!!
わりと本気で凹みますからっ!!」
黒ウサギはウサギ耳を左右に振り、情けない声で十六夜に言った。
「大変ですねぇ、黒ウサギ」
ナイルはその光景を見ると、つい苦笑いしてしまった。
――しばらくすると、辺りがいきなり明るくなり、周りのまがまがしい雰囲気も無くなる。
「あっ……十六夜さん!ナイルさん!!」
「……一気に明るくなったな」
「ゲームが終わったのですかね?」
十六夜達がそう呟くと、門についていた“契約書類”が消え去った。
この様子で、やはり飛鳥たちが勝ったのだろうと分かる。
そして、黒ウサギに飛鳥たちの所へ案内して貰おうと顔を向けると、そこには血の気が抜けたような顔をした黒ウサギがいた。
「……黒ウサギ?一体どうしました?」
「た、大変なのですよっ!!
耀さんが耀さんがっ!!!」
ウサギ耳を激しく動かし慌て始めた黒ウサギをナイルは落ち着かせる。
「落ち着きなさい、黒ウサギ。耀さんがどうかしたのですか?」
肩を掴み黒ウサギの目を見詰め、落ち着かせるようにナイルはゆっくりと聞く。
「は、はい……実は先のギフトゲームで耀さんが怪我をしたようなんです……」
「チッ……!最悪の予想が的中しちまったな……」
十六夜はそう呟くと猛スピードで跳んでいった。
ナイルも、黒ウサギと共に十六夜に続いて行く。
耀は案外早く見つけることが出来た。
ジンが傍に居り、十六夜達に叫んで自らの場所に呼んだのだ。
「大丈夫ですか耀さん!?」
既に最低限の応急処置はしているのだが明らかに耀の顔色は悪い。
「すぐにコミュニティの工房に運びます‼︎皆さんは飛鳥さんと合流してから共に帰ってきて下さい‼︎」
耀を抱えると、黒ウサギは全力で工房へ向かった。
「おい御チビ。黒ウサギは春日部を救えるギフトを持っているのか?」
「いえ、工房に置いてある治療用のギフトを使います。しかし扱いが難しいため、彼女しか使えないんです」
「ふぅん…やっぱりアイツも面白いな。俺並みには程遠いも、“ノーネーム”じゃ明らかに別格だ」
十六夜のアイツ“も”が指している他のメンバーは勿論ナイルである。
いつもニヤニヤ気味悪く笑っているが、白夜叉との戦いで強さは見た。
機会があれば戦ってみたいと飛鳥を出迎えているナイルを見ながら十六夜はそう思い、昨夜話した作戦を進めるためにもう一仕事するのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゲームが終わり、大勢のコミュニティに旗を返しながら打倒魔王を掲げる自分達“ノーネーム”を売名していった。
目的の魔王を誘き出しつつ、他に誘き出された魔王を隷属させてコミュニティを強化し、他の打倒魔王を思うコミュニティと連携を取っていく。
これが十六夜が考えた作戦である。
まず第一歩は成功と言えるだろう。
その日の夜に談話室で黒ウサギと十六夜、ナイルでこれからのことを話していたのだが、
「ゲームが延期?」
「はい……申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるそうです」
「ゲームとは何のことですか?」
「昔の仲間が商品に出される“サウザンドアイズ”のギフトゲームの事だ。黒ウサギ、白夜叉に言ってどうにかならないのか?」
「どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手が付いてしまったようですから」
十六夜の表情が目に見えて不快そうに変わった。
「チッ、所詮は売買組織ってことかよ。エンターテイナーとしちゃ五流もいいところだ。“サウザンドアイズ”にプライドはねぇのかよ」
「仕方がないですよ。“サウザンドアイズ”は群体コミュニティです。今回の主催は白夜叉様のような直轄の幹部ではなく傘下コミュニティの幹部、“ペルセウス”。双女神の看板に傷が付く事も気にならない程のお金やギフトを得れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう」
達観したような物言いの黒ウサギだが、悔しさで言えば二人の何倍も感じている。
しかし仲間を取り戻すにはギフトゲームしかない。
だから今回は純粋に運がなかったと諦めるしかない。
「こっちから殴り込みに行くのは駄目なのか?」
「“ペルセウス”は“サウザンドアイズ”の幹部を務めているコミュニティです。万が一揉め事を起こしてはただでは済みません」
「次回を期待するしかねぇか。ところでその仲間ってのはどんな奴なんだ?」
「そうですね……一言でいえば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くに居るのならせめて一度お話ししたかったのですけど……」
「おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
三人ははっとして窓の方を見た。そこにはにこやかに笑う金髪の少女が浮いていたのだ。飛び上がって驚いた黒ウサギは急いで窓に駆け寄る。
「レ、レティシア様!?」
「様はよせ。今の私は他人に所有される身分。“箱庭の貴族”ともあろうものが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」
「それで、レティシア様はどうしてこちらに?」
黒ウサギはレティシアに質問する。
相応のリスクを負ってこの場に来ているはずだ。
「大した用件ではない。新生コミュニティがどの程度の力をもっているのか、それを見に来たんだ。結果的にお前達の仲間を傷つける事になってしまったが」
黒ウサギはガルドが鬼化していたことにより予想はしていたが、ガルドを裏で操っていたのはやはりレティシアだったようだ。
「実は黒ウサギ達が“ノーネーム”としてコミュニティの再建を掲げたと聞いた時、なんと馬鹿な真似を……と憤っていた。それがどれだけ茨の道かは分かり切っているからな」
壊滅に追い込まれた魔王を相手に戦うということは、今度こそ完膚無きまでに魔王に滅ぼされる可能性がある。
「コミュニティを解散するよう説得するため、お前達と接触するチャンスを得た時だ……神格級のギフト保持者が複数同士としてコミュニティに参加したと耳にした」
「そこで私は試してみたくなった。その新人達がコミュニティを救えるだけの力があるかどうかを。生憎、ガルドでは当て馬にもならなかったし、そちらの二人は参加していなかったがな。………さて、私はどうすればいいのか」
レティシアの自分の気持ちが分かっていないような言葉に十六夜がなんでもないように答える。
「お前は仲間が心配だったから助けたくて来たんだろ?」
「………あぁ、そうかもしれないな」
他人の所有物になろうとも、自分の仲間を助けたかった。
今回の突然の訪問はそういう事なのだろう。
しかし、“フォレス・ガロ”を倒した後の売名を考えればもう手遅れだ。
そんなレティシアに十六夜が提案する。
「その不安、払う方法が一つだけあるぜ」
「何?」
「実に簡単な話だ。魔王と戦えるのかが不安ならその身で、その力で試せばいい。ーーーどうだい、元・魔王様?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
十六夜とレティシアが決闘の話を進めているとき、ナイルは
「……あれが吸血鬼?馬鹿な……吸血鬼なのに人間の仲間の心配をしているだと……?」
大きく見開いた目でレティシアを見つめていた。
新しいメガネになるまで投稿が不規則になるやも知れません。
レティシアちゃんとナイル……絡ませにくいな……