問題児たちと胡散臭い化物が異世界から来るそうですよ? 作:焼き魚
黒ウサギを先導に歩いている4人の中で不意に十六夜がナイルに話しかけてきた。
「なぁ、ナイル。ちょっと世界の果てまで行ってみねえか?」
それを聞いたナイルは微笑みを浮かべながら、
「面白そうですねぇ、行きましょう♪」
「ヤハハ。そうこなくちゃな」
「安心して十六夜君、ナイル君。私と春日部さんでなんとかしておくわ」
「…………任せて」
話を聞いていた飛鳥がそう言い、耀がそれに同意してきた。
「なら、よろしく頼むぜ。お嬢様、春日部」
「では行ってきますね」
十六夜、ナイルはそう言うと黒ウサギに気づかれないように忽然と姿を消した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ジン坊っちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性2人が?」
「はいな、こちらの御四人様がーー」
クルリ、と振り返る黒ウサギ。
カチン、と固まる黒ウサギ。
「………え、あれ?もう2人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方とずっとニコニコ微笑んでとても常識人そうな殿方が」
「あぁ、十六夜君とナイル君のこと?彼らなら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”“面白そうだから一緒に行ってますね”と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
あっちの方に。と指さすのは上空から見えた断崖絶壁。
街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を立てて2人に問いただす。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めくれるなよ”と十六夜君に言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか⁉︎」
「……“黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけ でしょう皆様方!」
「「うん」」
ジンと呼ばれた少年が話を聞くと蒼白になって叫ぶ。
「た、大変です!世界の果てには野放しにされている幻獣が……」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉 で、出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼らははゲームオー バーなの?」
「……ゲーム参加前にゲームオーバー?……斬新?」
「冗談を言っている場合ではありませんっ!!!」
ジンは彼らの身を案じているのか、ことの重大さを必死に伝えようと声を張った。
「ハァ……ジン坊ちゃん。
申し訳ありませんが、御二方のご案内をお願いしても宜しいでしょうか?」
「分かったよ。黒ウサギはどうするの?」
「……問題児様方をを捕まえに参ります。
……事のついでに《箱庭の貴族》と謳われるこの黒ウサギを馬鹿にしたことを骨の髄まで後悔させてやりますのでっ!!」
そう言った黒ウサギの水色の綺麗な長髪は桃色に染まり、ウサギ耳をピンと立てた。
跳び上がった黒ウサギは外壁の傍にあった門柱に 水平に張り付くき、飛鳥たちを見た。
「一刻ほどで戻ります!
皆さんはゆっくりと素敵な箱庭ライフを御堪能ございませっ!!!」
黒ウサギは壁に亀裂が入るほどの力で跳びだして行った。
その速度は一瞬で飛鳥たちの視界から消える程だった。
「……。箱庭の兎は随分早く跳べるのね……。素直に感心するわ……」
「黒ウサギは箱庭の創始者の眷属。
力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限 も持ち合わせた貴種です。
彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……」
黒ウサギの跳んで行った方角を心配そうな様子で見詰めるジン。
そんなジンに飛鳥は明るめの声で話し掛けた。
「……黒ウサギも堪能くださいと言っていた し、お言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。
エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」
「え……あっ!はい!
僕はコミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。
齢十一になったばかりの若輩ですが宜しくお願いします。
所でお二方の名前をうかがっても宜しいでしょうか……?」
ジンはその歳の幼さを感じさせない丁寧な口調で自己紹介をした。
「久遠飛鳥よ。そして、そこで猫を抱えているの が」
「……春日部耀」
「……さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。
まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」
飛鳥はそう言うと、ジン、耀を連れて箱庭の中に入って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いやはや、速いですねぇ~十六夜さん」
「ヤハハ、お前もなかなか速いじゃねぇかナイル」
そう言い合いながらも人知を越えた速さで走り続けるナイルと十六夜。
端から見たら只の化物である。
「おや?湖ですよ、十六夜さん」
「おう、湖だな。」
「あれは……蛇ですかねぇ?」
「蛇だろうな」
「大きいですねぇ」
「大きいな」
「「面白そうだな(ですねぇ)」」
走っているうちに湖にでた二人は、そこにいた巨大な蛇を見てオモチャを見つけた子供のように笑っていた。
『何故、人間の小僧どもがここにおる?』
「へぇ~この蛇喋るんだな……流石は箱庭ってか?」
「箱庭ってほんと凄いですねぇ♪あんな大きな蛇がいるんですから♪」
十六夜は多少バカにしたように言い、ナイルは多少小馬鹿にしたように呟いた。
どうやらこの大蛇(笑)は沸点が低かったようだ。
『貴様等ァァァァァア!!!誰に物を言っているのか分かっておるのかァァァァァア!!?」
怒り狂う大蛇(笑)
「テメェだよ蛇神(笑)」
「おぉ、こわいこわい(笑)」
十六夜は笑いながら、ナイルは小馬鹿にしたような笑みを浮かべ言う。
『良いだろう……貴様等が誰に喧嘩を売ったのかを解らせてやろう!!
貴様等には我の試練によってその身の程を教えてやる!!!!!』
大蛇(笑)が凄んでいるが
「……ハッ!!テメェごときが俺に試練だと?
寝言は寝て言えよ爬虫類。
……むしろテメェが俺を試せるのか試したい位だぜ?」
(安い挑発ですねぇ。まぁ流石に乗らないでs)
『もう良い小僧!貴様から引き裂いてくれる!!』
「うっわ、乗っちゃいますか(笑)笑いが止まりませんよ、ほんと(笑)」
ナイルは挑発にホイホイ乗ってしまった蛇神の態度に余程ツボにはまったのか、爆笑しながら地面を転げ回っていた。
蛇神はそんな彼の態度に青筋をたてながら
『この小僧の次は貴様だぞ!小僧……っていつまでも笑ってないで我の言葉を聞かんか!!戯け!!』
「誰がてめぇに引き裂かれるか!引き裂かれるのはてめぇだよ!蛇神ィィ!!」
そして両者はぶつかり合った 。
そんな中ナイルはまだ
「は、腹が痛い(笑)」
爆笑していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戦闘開始から幾ばくもたたずに
『がぁぁぁぁぁぁあッッッ!!!』
吹っ飛んでいく大蛇。
「おいおいどうしたぁっ!あんだけの大口たたいておいてテメェはその程度なのかよ?」
どうやら十六夜がぶっ飛ばしたようである。
「本当に十六夜さんって人間なんですかねぇ…?」
そんな光景を見ているやっと笑いから解放されたナイルは驚いたような口調で呟いていると
ズガァァァァァァァン!!!!!
十六夜があの大蛇を滝に叩きつけ決着が着いたようだ。
「お疲れ様です、十六夜さん」
ナイルは十六夜に声をかける。
「…口ほどにねぇなこの蛇神。もうちょい楽しませてくれると思ったんだが」
「十六夜さんが強すぎるだけだと思いますがねぇ…」
「それを言ったらお前だって強いだろ?なぁ…ナイル」
「嫌々御冗談を、私なんかが十六夜さんみたいな化物のような人とまともに戦えるわけがないでしょう。」
「ふーん……まぁ“今は”そういうことにしといてやるよ」
そんなことを言い合いながら二人が笑いあっていると
「こんの!問題児様方ぁぁぁぁぁぁ!!」
髪の色が何故かピンク色に変わっている黒ウサギが跳んできてた。
そして着地する
「おや?黒ウサギではありませんか」
ナイルは黒ウサギを見つけ、呟く。
「ん?……おぉ黒ウサギじゃん。どうしたんだよその頭」
と、十六夜が黒ウサギに笑いかける
肩をプルプルと震わせる黒ウサギ
「あ、貴方方は~~~~~~っ!!!!一体全体何処まで来てるんですかっ!?」
黒ウサギが怒った。しかし十六夜が、
「ヤハハ、世界の果てまで来てるんですよ、っと。まぁ、そんなに怒るなって」
ニヤニヤしながら言う。
「誰のせいだと思ってるのですか!!」
黒ウサギが十六夜に怒鳴る。
「すみませんね、黒ウサギ。本来ならば貴女に一言告げなければならないのに」
ナイルは微笑みながら、それでいて聴いているものを落ち着かせるような声音で黒ウサギに謝る。
「しっかし、黒ウサギ。お前なかなか来るの早かったな。幾分か遊んでいたとはいえ」
十六夜が感心したかのように言う。
「むっ、それは当然です。なんたって黒ウサギは《箱庭の貴族》と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギが――――アレ?」
黒ウサギが何か疑問に思ったようで腕を組んで考えている
「どうかしましたか?黒ウサギ」
ナイルは黒ウサギに尋ねる。
「……え?あ、いえ……それより、ナイルさんと十六夜さんが無事で良かったのですよ…幻獣達とギフトゲームをしたと聞いてビックリしたんですから…」
黒ウサギが本当に心配そうに呟いた
すると
『小僧ぉぉぉ!!まだ終わっておらんぞぉぉぉ!!』
滝の方から声が響く。
「じゃ、蛇神!?……って、どうやったらこんなにも怒らせられるんですか十六夜さん?!!!」
黒ウサギが問い詰めるように十六夜に言う。
「何、簡単だよコイツが何か偉そうに『身の程を教えてやる』なんて言うもんだからな。
その態度に出れるほどの力があるのかと思って俺が試し返した、って言う流れだよ。
まっ、大して強くもないし不合格ってところだな」
蛇神(笑)を指差し十六夜が言う。
『付け上がるな小僧ォォォォ!!これを食らうがよい!!』
そう言うと蛇神が滝の水を巻き上げて竜巻を作る。
「ほう…まだやる気が残ってやがったか」
十六夜が楽しそうに笑い戦闘を再開しようとするが
「十六夜さん、次は私の番ですよ?」
ナイルがにこやかに笑いながらそれを諌める。
「ちっ、仕方がねぇな」
「ありがとうございます」
「ナイルさん危ないでございますよ!十六夜さんも止めてください!!」
「じゃまするなよ黒ウサギ。これは俺等が売って奴が買った喧嘩だ」
「そうですよ黒ウサギ。それにこの程度の敵にやられるような私では有りません」
ナイルは自分が強く無さそうに見られているのが嫌なのか言葉に少しだが、怒気をはらませていた。ーーまぁ何時ものように笑っていたのだが。
『その心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を防げれば貴様の勝利を認めてやる』
「甘いですね。決闘とは勝者が決まって終わるものではなく、敗者を決めて終わるものなのですよ」
そんな台詞に黒ウサギも蛇神も呆れ果てた。
十六夜だけは獰猛そうな笑みを浮かべていだが。
『フン―――その戯言が貴様の最期だ!』
蛇神が作り上げた竜巻は計三本。時に嵐を呼び、時に生態系さえ崩す、“神格”のギフトを持つ者の力がナイルに襲い掛かってくる。
「ナイルさん!」
黒ウサギが叫ぶがもう遅い。
竜巻は川辺を抉り、木々を捻じ切り、ナイルの身体を激流に呑み込む―――――――――――――はずだった。
「おやおや、この程度ですか?」
竜巻はナイルの身体に届いた瞬間かき消されたのだ。
「「嘘(だろ)!?」」
『馬鹿な!?』
驚愕する三つの声。普通の人間ならバラバラになってもおかしくない……いや、バラバラにならなければおかしい程の力であった。蛇神は全霊の一撃をかき消されて放心したが、ナイルはそれを見逃さなかった。穏やかな微笑みを浮かべたナイルは、
「まぁそこそこ楽しかったですよ」
そう言いながらいつの間にか両手に握られていた二挺の拳銃を撃ち放つ。
それは反則だろ―――
十六夜は何か叫んでいたようだが蛇神の巨躯が川に倒れこんだせいで、ナイルには何も聞こえなかった。
ナイル君をチートにするつもりなんてなかったのに…