ガイア連合武器密輸課職員の日常   作:プルータス

11 / 27
今さらながらハム子への呼び方
イナバ→ハム子ネキ
それ以外→ハムネキ
イナバはハム子が掲示板で有名人になる前に知り合ったのでハム子ネキ呼びなのです。


成功率0%

「どうぞ、山吹色のお菓子でございます」

 そっと菓子箱の蓋を開け、中のハトホルサブレーを見せる。

「フッフッフッ、イナバニキ。おぬしもワルよのぅ」

「いえいえ、スライムニキほどではございませんよ」

 ハッハッハとふたりして笑う。

「ふたりして何やってんです?」

「「聞いたなコイツ!?」」

「裏ジュネスのフードコートでやってる方が悪いだろ。常識的に考えて」

 あ、混世魔王くん。エジプト土産は木刀と千年の盾どっちが良い?

 

「ああ、いたいた。おーいハム子ネキ。エジプト土産どうぞー」

「イナバニキじゃんやっほー」

「お久しぶりであります」

 朝に支部で見かけなかったので後回しになってたハム子ネキに土産を渡す。消え物系として多めに買ってあったハトホルサブレーだ。

「おやつがわりにフードコートで開けようか」

 いいね。不死鳥推しネキから何とか一箱守りきったフェニックス温泉まんじゅうも開けちゃおう。フェニックスを描いたパピルス(もどき)だけでは満足しなかったのは誤算だった。

 ボクとハム子ネキとアイギスとジョーズマンでフードコートへ向かう。ジョーズマンがエジプト土産の入った袋を複数引っ掛けてるのがシュール。ピラミッド模型や千年の盾がかさ張るので仕方ない。許せジョーズマン。

 

「ぺるそなー」

 ボクの顔から仮面が1枚剥がれ落ち、地面につく前に分解され人間大のウサギへ再構成する。そしてそのままイスに座らせる。

「じゃあ飲み物注文したらここに集合ってことで」

「ペルソナを便利に使いすぎだよねこの男」

 そうかな? 荷物置くのと変わらないじゃない。

 まんじゅうとサブレーなら抹茶系が合うかなー。

 

「イイねぇおりこうさんに座るその姿ホントキュートだよー。イスにおすわりしてるから足がつかなくてブラブラしてるのも胸きゅんポイントたかたかだよぉ。うんうん。耳をピクピク動かしてマジカワイイですねぇ」

 戻ってきたら変態がいた。高身長、高学歴、高レベル、イケメンで性格良しとモテる要素を詰め込んでいるのに異様なまでの動物好きが長所を打ち消している男のモフモフスキーニキだ。磐戸台支部に来てたのか。イナバシロウサギのまわりを音もたてずに動き回り堪能している。

「コレが不審人物でありますか。なるほどなー」

「ほら、イナバニキのせいでアイギスが変なこと覚えちゃったじゃない」

「それホントにボクのせい?」

 若干理不尽な物を感じる。訴えたら勝てるんじゃなかろうか。ジョーズマンもそうだそうだと言っています。

「おや、イナバニキにハムネキ。こんにちは」

「うわっ、急に冷静になるな!」

「何度見ても変貌レベルが高すぎる」

 でもハム子ネキも勧誘時は似たようなものでは? 思った言葉をそっと胸にしまい込む節度は持ち合わせている。虎の尾を踏まないのが世渡りのコツよ。

「ところでイナバニキ。どうか写真撮影の許可をいただきたいのですが」

「キミは撮影すると止まらなくなるからダメ」

「そんなー」

 前に許可した時に何時間もつきあわされたの忘れてないからな。それはそれとしてモフモフスキーニキも飲み物買っといで。

 

「わざわざ巌戸台でキャンプだなんて珍しいねモフモフスキーニキ」

「ペルソナ使いとして目覚めるためにはまずその地に居なければいけないらしいので。資質なしと診断されましたがワンチャン賭けてみようかと思いまして」

「モフモフスキーニキがペルソナ使いになったら心強いとは思うけどね」

 普通の覚醒者としては順当に強いのでそこまでしてペルソナ使いになるメリットはほぼ無い。デビルバスターにペルソナを足してパワーアップという単純な足し算ではないのだ。色々バグってるショタオジですら自前のペルソナを使ってもワイルドとしてのペルソナは使っていない。

 スポーツ、例えば野球で想像してほしい。次々と変化球を覚えようとするピッチャーと2、3種類程度の変化球とストレートを磨きあげるピッチャーならどちらが厄介だろうか。

 道具で能力の穴を補えるデビルバスターならなおさらである。それがわからない男ではないハズなのだが。

「オレ、動物が好きなんですよね」

「どうした急に」

「うん知ってる」

「ですが、オレの動物の愛で方って、こう、動物に対して圧が強すぎるというか嫌がられてしまうんですよね」

「なら抑えてみたら?」

「抑えてコレなんです」

 マジか。モフモフスキーニキの顔に冗談の色はない。本人的には真剣な悩みのようだ。

 曰く、仲魔や獣型式神でも相手が我慢してくれるだけで嫌がられる事に変わりはない。相手が嫌がるのであれば本意ではない。

 自分自身を変化させても何か違う。ならばどうするか。

「自分の獣系ペルソナを愛でればいいじゃない。そう結論付けました」

「そうかー。イナバニキのせいだったかー」

「ひどい風評被害だ」

 たしかに手が空いた時とかにモフるけどね。ペルソナに覚醒できるかも怪しいのに獣系狙いは厳しくない?

「そんなアナタにオススメのアイテムがこちら。本来はイナバニキに押しつけるつもりだったんだけどね」

「おおハムネキ。何か解決策が?」

「嫌な予感しかしない」

 ハム子ネキが取り出したのは携帯音楽プレイヤーと青系のカツラ(ウィッグと今は言うんだっけ)である。わかりやすく言えばキタロー(ペルソナ3男主人公)へのコスプレアイテムだ。そのままモフモフスキーニキに装着する。

「うーん。キタローと言うには背が高すぎるかなー」

「おお残念。イナバニキなら良い感じになるのでは?」

「絶対イヤ」

 下手に装備するとキタローの役割を押し付けられそうなので断固拒否する。

 たかがコスプレと侮ることなかれ。魔術の世界では形を似せるというのは大きな意味を持つのだ。わら人形を相手に見立てる「丑の刻参り」が有名なところか。変身ヒーローの変身ポーズを真似る事で自身が強くなった気分になるというものの規模をスケールアップしたのが魔術の手法の一種である。

 何が一番マズいかというとボクが『ワイルド』になりかねないことだ。色々なペルソナを使えるようになると言えば聞こえはいいがデメリットが大きい。攻撃スキルは魅力的なのだが。

「端的に言うと、その格好をするとイナバシロウサギが使えなくなる可能性があるから絶対しない」

「よし、ではこの悪しきアイテムは貰っていきますね」

「そんなー」

 世の中からモフモフがひとつ消えるとなればモフモフスキーニキの行動に躊躇はない。ハム子ネキの邪悪な目論見はここで潰えた。

 後天的にペルソナ使いが『ワイルド』に変化する数少ない例がエピソードアイギスにおけるアイギスだ。『戦車』から『愚者』へとアルカナ変化し、ペルソナも『アテナ』から『オルフェウス』になる。ゲーム的には新規エピソードのための初期化なのだが、これがボクにも起こらないとは言い切れない。

 

「そろそろキャンプ場に行かねばならないのでオレにここで失礼します」

「はいよー」

「あ、エジプト土産渡しとくね」

 モフモフスキーニキにはスフィンクスぬいぐるみが良いかな。デビチルデザインだが天使感ある羽根を排除したら某ジャングル大帝の子供時代に似すぎてしまった。故にこのサンプル品しか存在しないレア物だ。

 イナバシロウサギに抱えさせてモフモフスキーニキに手渡そうとする。

「モフモフが……モフモフがモフモフを抱え込んで……」

「あっ、泣いちゃった」

「せんせー。イナバニキが男の子泣かせてまーす」

 男泣きとはこのことか。感極まって涙を流しつつもイナバシロウサギを凝視している。

「イナバニキ。どうか撮影を。撮ることを許していただきたい」

「後で良いもんあげるから早く受け取りな」

 ウサギには肉球が無いので物を持つには不適切なんだよ。ドラえもんハンド的な感じで掴むこともできるが、今回は動物感を優先して挟み込む力だけで保持している。

 

 イケメンはぬいぐるみを抱えていても様になるからズルいよな。上機嫌で去るモフモフスキーニキのスマホにある動画を送る。

「何あげたの?」

「イナバシロウサギが(がま)の上を転がってる動画」

 前にモルモットニキと一緒に逸話再現で薬効が上がるかを実験してみたのだ。結果は本来の薬効+皮膚の再生と毛生え効果の軟膏だ。どっちも式神移植と被るのでそのまま完成品を何個かガイア連合のオークションに流して打ち上げ代にして終わった。

 支部の出入口の方で妙な奇声がした気がするが気のせいだろう。そのままハム子ネキと駄弁っているとスマホに着信。スライムニキからだ。

『イナバニキ!? なんか菓子箱の二重底から大量のマッカが出てきたんだけど!?』

「えー? ちゃんと山吹色のお菓子って言いましたけどー?」

『あれ、そういう意味なのかよ!!?』

 こんな大金受け取れないと言うスライムニキの抗議を通話終了して打ち切る。そして一時的に着信拒否。

 前にオールで呑んだ時に翌日動けなかったであろうことへの補填だ。こっちは一人身なので自由がきくが、スライムニキは亀を除いて四人パーティだ。1日動けないだけでも大きなマイナスだろう。

 それが原因でパーティ不和などが起きてもマズい。普段どれくらい稼いでるかわからないので、とりあえずボクのちょっと頑張ったときの日給に多少色を付けて仕込んでおいた。

「で、本音は?」

「一度やってみたかったので口実つけて実行した。今も反省していない」

 ハッ、誘導尋問か!?

 それはそれとして菓子箱を探ってどうしたの?

「いや私の分はあるかなーって」

「うーん、ペルソナ攻略班への援助はいいんだけどね」

 タルタロス攻略してるハム子ネキを支援すること自体は問題ないが。スッと右手をハム子ネキに差し出す。

「アイギス加入からの武器防具の明細。出して」

「わ、わかんないッピ」

 ほらー、どうせ使わない物でもコレクションしてるんでしょ。そんな子は支援抜きです。

 でも一通り揃えておきたい気持ちはわかってしまうのがコレクター魂だよね。




ウサモル印の「ガマの軟膏」
伝説となった毛生え薬がついにオークションに出てきました。
開封済です。
現在 178人が入札に参加しています。
¥5,000,000より
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。