ガイア連合武器密輸課職員の日常   作:プルータス

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前回のTSJKは(T)トライ(S)ソウル(J)自衛(K)官の略称です。
何がトライ(3)ソウルなのかは本家様の外伝を見てみよう(露骨な媚)


因幡法螺吹兎詐欺

 イナバシロウサギの逸話をざっくりおさらいしてみる。独断と偏見まみれになりそうだが、有名な話なので誰でも聞きかじったことくらいはあるだろう。

 

 むかしむかし、因幡の離島に島での退屈な生活に飽きたウサギがいたそうな。本土へ渡るためにサメ(ワニの場合もあり)を騙し、その背中を足場にぴょんぴょん跳んでいったそうな。

 最後の一頭の背中に乗り移ったウサギは我慢できなくなりついサメを騙していたことを口走ってしまうのです。

「え〜、まだ気付かないの~? キミたちはボクに騙されてたんだよ♥

 ざぁこ♥ ざぁこ♥ 脳みそスカスカ♥ うわなにするやめ」

 怒ったサメはウサギをボコボコにし、ウサギの皮の一部を剥いでしまいます。いやそりゃそうだろという気持ちしか湧かない。肉食なのにその程度で済ませてるサメが優しく見えるくらいである。

 ズタボロになったウサギのもとに近くの姫を見物に行く八十神(やそがみ)、この後に登場する大国主(おおくにぬし)の兄たちが通りがかります。ヤソガミは面白がって傷を癒やす方法と偽り傷が悪化する方法を教えます。ロクでもないなコイツら。

 あっさり信じたウサギは当然傷が悪化し、もがき苦しんで泣いている所にヤソガミに荷物持ちを押し付けられたオオクニヌシが現れます。よっ、主人公!

 事情を聞いたオオクニヌシが教えた治療法によってウサギはすっかり治り、お礼に「この先に困難はあれど姫とオオクニヌシが幸せに結婚しますよ」とウサギが予言して別れます。

 終わり。

 

 いやホントにウサギの出番はコレで終わりなのである。こういった話でよくある『実はウサギは姫の父が化けていてヤソガミとオオクニヌシを試した』とか『ウサギと姫が友達でオオクニヌシを推した』などの裏は全く無い。

 ついでにその後の再登場による出番とかもない。その癖して因幡の白兎といえばコイツの事というくらいの人気者なのだ。

 もちろんオオクニヌシの物語はここからが本番なのだが、別にこのエピソードを入れる必要ない気がするレベルでただの通りすがりの関係なのだ。

 評価するならば『本編とほぼ関係ないけど妙に人気のある通りすがりのウサギ』なのである。何だコイツ。連載作品の読切版ゲストヒロインか?

 ちなみにオオクニヌシと姫の予言をしたことから縁結びの神として祀られていたりもする。ホントに何なんだろうこのウサギ。

 

 

「はい背中向けて」

 背すじをぴしりと伸ばしたイナバシロウサギの背中に先生が聴診器を当て、ふむふむとうなずいては別の位置に当てる。

「前向いて口を大きく開けてねー」

 ペンライトで口内を照らしながら上下奥と隅々まで観察し、手元のカルテに何やら書き込んでいく。

「過去に餅つきの経験などは?」

「正月に実家の町内会で少々……」

 カリカリと書き込んでいたペンが止まり、沈痛な表情で先生はボクと向き合う。

「先生、正直におっしゃってください。ボクのペルソナの状態はどうなんですか……?」

「うん、色々な概念(たべもの)習合(ひろいぐい)してるねコレは」

「おまえー!」

 先生――ショタオジの言葉に思わずイナバシロウサギの肩を掴んで揺さぶる。拾い食いっておまえなー!

 

 

 陸将殿から「お前のペルソナおかしくね?(意訳)」と指摘されたのでペルソナに詳しくて説明好き(図解は苦手)なショタオジに相談しに星霊神社を訪れた。いやたぶんモルモットニキあたりでもわかる気はするけど、自分の中で完結しがちな人なのでボクに理解できるように上手く解説できるか不安だからね。

 獣医さんごっこ(ガチ)の結果が拾い食いである。自分の精神とはいえ一言いいたくもなる。

「落ち着いたようだから詳しく説明するね」

「はい。お手数おかけしました」

 後でおぼえとけよこのウサギ野郎。鼻で笑って返される。お前ボクのくせに生意気だぞ。

「まず前提として、イナバシロウサギという器はイナバニキという転生者パワーの才能を受け止めきれるほど強い存在じゃないんだよ。本来は。

 軽自動車にレース用モンスターエンジンを積むようなものだね」

 イナバシロウサギは何かを成し遂げたわけでも戦う存在でもないただのウサギだ。そこに強い負荷をかければどうなるか。

 骨に衝撃を加えられた場合、身体はその衝撃に耐えられるように骨を強くする。筋肉に強い負荷をかけた場合、筋肉はそれに応じて強くなろうとする。

「それと同じようにイナバシロウサギも概念的に強くなろうとしたんだ。

 具体的に言うと世界中の逸話に出演する兎を指して『これ実はボクが演じた』と言い張ってその概念(ウサギ)を習合していったみたいだね。『固有名有り』の兎や方向性の違い過ぎる兎には手を付けなかったみたいだけど。

 例えば『虎の威を借る狐を遠巻きに見るモブウサギ』や『干支の(とら)(たつ)の間に挟まる()』だったり『直接攻撃(ダイレクトアタック)決闘王(デュエルキング)を追い詰めた兎』あたりの概念で補強してる。

 その結果、因幡のグランドシロウサギとでも言える存在になったのがこのイナバシロウサギだね」

 

 基本的に概念の世界は『言ったもん勝ち』の世界である。血筋や神話関係で力を引き出すならまだいい方で、名前や逸話などの共通点が欠片でもあれば縁があると言い張ることができる。

 時間神クロノスと名前が似てるという縁から農耕神クロノスが時間干渉を起こしたり、チンギス・ハーンがヨシツネとの縁で『八艘跳び』を継承したりといった形だ。

 『逸話の兎は大体ボク』というのは一見無茶に見える。しかしイナバシロウサギがオオクニヌシと別れた後の足跡を知っている者はおらず、神話のウサギで一応神の立場から寿命の問題もスルーできてしまう。強く否定するための材料が無いためそのまま通ってしまったのだろう。

 そしてもう一点、『よほど興味のある人でなければ兎の違いがわからない』という認知世界の常識もこの無法の後押しをした。挿絵がニホンノウサギでもユキウサギでも普通の人はまとめて兎扱いなのだ。

 

「ふむふむ。あちこちの兎と同一化されることで転生者エンジンに耐えられる車体になったと。

 あれ? 結局トラポートの話が有耶無耶な気が」

「それはもう一歩先の話だね。よし、結論から言おう。

 イナバニキは『月までの距離なら大体の場所にトラポートできる』というのが診察の結論だね」

 は?

 話が突拍子もなさ過ぎて理解できない。月ってあの月?

「論より証拠。まずは月に行けるかイメージしてみてよ」

 言われるまま目を閉じて上を向き(昼なので月は下なのだがイメージしやすいのだ)月の表面を探る。そして確信する。これイケるわ。

「帝釈天の試練で自ら火に飛び込んだ兎は帝釈天の手によって月へと運ばれ、月の兎の玉兎となったのです、ってね。

 まあ、その話を自分だと言い張ったうえ、竹取物語での月の都の使者の一人は月で化けた自分とまで言い出してる」

「無茶苦茶にもほどがありません?」

「人間や神の領域なら袋叩きにあっててもおかしくない暴挙だけど、兎の領域だからねぇ。誰も手を出してないブルーオーシャンってやつかな」

 兎だもんなぁ。興味がないかニンジンの一本でもあれば許してくれそうである。

 

「本来はせいぜい月への限定瞬間移動の権能くらいなんだけど、アポロ計画による人々の月旅行への認識の変化、世界旅行へのハードルの下がり方、転生者の才能パワーが重なった結果が『月までなら』ってやつだね」

「それ、地球上なら大体行けるって意味では?」

 まさか海外にまで対応できるとは。よくわからんウサギである。

「それはそうと、月に行くなら注意点がいくつかあってね」

 ペルソナ使いの裏技で月での行動自体は支障ないだろうけど、と前置きをして。

「ワイルドのペルソナ使いを連れたり影時間に月に行ったりするとニュクスとバトることになるから気をつけてね」

「いきなりのラスボス戦。

 あれ、それなら地獄のタルタロス登るより強襲したほうが良いのでは?」

「いい質問ですねぇ」

 ショタオジに曰く、タルタロスを登っての挑戦は道場破りがマナーの通りに訪問する方法。

 対してトラポートで直接乗り込むのは寝室の窓から土足で家に上がり込むような方法。なのでガチギレが予想されるし、最悪ニュクスの絶対殺すリストに載るらしい。そりゃいかんわ。

「まあ影時間以外の時間帯やワイルドでない一般ペルソナ使いなら反応されることは無いよ。玉兎の属性を得てるから月に立つのは正当な権利だし。

 ガイア連合の旗とか立ててみる?」

 旗は貰っときます。

 ところでもしや、タルタロス攻略ができなくてもう他に方法はないって状況になったらペルソナ使い上位勢を抱えてトラポートしなきゃいけなくなる?

「可能性は大いにあるね。月の使者を運んだなら十数人程度ならイケるだろうし」

 頑張れー! ファイトだハム子ネキ!

 イナバシロウサギはいつでもタルタロス攻略を応援しています。

 だからね。ほら。非戦闘員を最終決戦に連れて行くような真似はね? ね?

 

「さて、最後に習合によるデメリットだね」

「あ、やっぱりあるんですね」

「デメリットというか仕様でね。似たウサギ概念を大量に使って強化した以上その影響を受けやすいんだ。つまりステータスの伸びがウサギ的になる。

 簡単に言うと『足は速いけど非力な小動物』イメージに沿った成長になるから、もう『力』や『魔』ステが上がるのは絶望的と言っていい」

 ほわっつ?!??

 ただでさえ低くて覚醒当時から1ミリも増えてないこの『力』と『魔』が?

 『魔』はともかく非覚醒者に勝つのがギリギリの『力』はコイツが原因だったのか。ああ、いくら殴っても悪魔が倒れてくれないこれまでの苦い戦いの記憶がフラッシュバックする。

「ちなみにもしかしてボクの背が伸びないのもその影響ですかね?」

「影響が皆無とは言わないけど、覚醒時点でそもそも大学生じゃなかったかい?」

「あと少し、160に辿り着く可能性は有ったって信じたいんですよ!!!」

 あと0.5、ほんの少し伸びるだけで良かったんですよ!!

 夢をみる権利はあるんじゃないですか?

 熱弁に対してショタオジが生ぬるい視線を送ってくるが、ボクにも譲れない一線はあるんですよ。がっでむ。

 

 

 

 あ、地球は青かったです。




イナバシロウサギ:本体の出力に対してペルソナの概念が弱いところに2話の地獄に放り込まれる。概念を補強するためにあちこちの兎概念をかき集めて『これボクだから』と因幡の白兎に後付する。
取り込む兎の種類によってスキルツリーが異なり、今回は移動能力とスキルの拡張性の高い成長をしている。
他には『憎悪の炎のかちかち山』『首ハネクリティカルとトラップのキラーバニー』『時間と概念とマッカビームの時計兔』『ヤースカヤ』などのルートがあったが本人の無意識によって玉兎ルートが選ばれた。
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