ガイア連合武器密輸課職員の日常   作:プルータス

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ポケマスの小説も書き始めたので良かったら読んでみてください。
今回は完全に別人視点の話です。


侵略性外来種と侵略性外宇宙神性とペルソナ使い

 ここはヨーロッパの外れの寒村だ。若者がおらず活気がなく、いるのは偏屈者と村から出ていくほど育っていない子供くらい。自然とよそ者への視線が厳しい排他的な環境である。

 邪神の影の情報を得て訪ねたはいいものの情報収集ができるようになるまで時間がかかるだろう。仲間から「裏切る裏切らないで言えば裏切る側の顔だよね」などと言われた顔だがこういった場面でコツコツ警戒心を緩めさせるには役に立つ。

 ガイア連合の連絡員と会うために村を歩く。いつもの仲間たちはデートに送り出した。目の効く転生者ならば彼らの正体に気付くかもしれないのでなるべく会わせたくないのだ。

 

 サメ。男。鮫。サメ男。

 村の寂れた公園の入口に見覚えのある式神がたたずんでいる。逆にイナバニキのジョーズマンじゃなかったらどうしよう。日本で密かに量産体制に入っててもおかしくない連中である。イナバニキとモルモットニキ、タキオンで怪しげに笑う姿を想像する。いや流石にやらないとは思うが。

「イエーイ俺の勝ち! 兄ちゃんよわーい!」

「いや左右で別のゲームを展開されてもできないってこれは。あと『兄ちゃん』じゃなくて『オジサン』な」

「いやー背伸びしたいのはわかるけど兄ちゃんがオジサン名のるにはまだまだじんせーけーけんがたりないよ」

「キミらの年なら成年越えたらオジサンだろ?」

「またまたごじょーだんを」

「にーちゃんうごかない! いま髪をむすんでるんだから!」

「ハイすみません。でも最近伸びてきたけど結うには短すぎるんじゃないかって痛い痛い痛い」

 小学生程度の年齢の村の少年少女に遊ばれているイナバニキ。パチっと目があいお互い一瞬硬直する。

「ほら待ちあわせしてた人きたから抜けるね。オジサン仕事あるから」

「ちぇー、ざんねん」

「またなー兄ちゃん」

「さよならにーちゃん」

「オジサンだって言ってるでしょうが!」

 

 グッタリとしたイナバニキを連れてセーフハウスに戻る。『イナバシロウサギ』を出してその上に転がるイナバニキを見るとSNSで見た『飼い主の孫たちに揉みくちゃにされるネコチャン』を思い出す。

「ペルソナが海外対応したから試運転に邪神アンチニキへ差し入れに来たらこのザマですよ」

 侵略性外来種という言葉が頭をよぎるが口には出さない。ちなみに天敵のいない環境だと兎は増え続け農家を脅かすらしい。

「やたらと懐かれてた、というか玩具にされてたね」

「5分前くらいにボールを投げ返してあげて、気付いたらあのザマですよ」

 邪神アンチニキ、子供たちはおそろしい生き物ですよ、などと愚痴るイナバニキ。僕が挨拶した時には結構警戒心の強い子達だったはずなんだけど。

 慕われているというより完全にナメられていた。自分を傷つけない生き物だと本能的にわかったんだろうか。

「ええい、気力も戻ったしとりあえず差し入れ渡しとくね。

 まずは『ヒノエ米のパックご飯詰め合わせ』チンして食べてね」

「普通にありがたいよ。てっきりネタに走ってるのかと思ってた」

「そして『レトルトロシアンガイアカレー』パックのうち1つだけ『ムドオンカレー』となっております」

 やっぱりネタじゃないか。

「味以外はガイアカレーと同じだから運試しだと思ってほしい。けして開発のために何杯も食べて意見出してたとかそのくせして売れ残ってるから抱き合わせ的に捌こうとかはあんまり思ってないよ。うん」

 そもそも何故ムドオンカレーを作ろうとしたのか。その後、細々とした日用品の補給を受ける。

 

「そうそう。公園で怪しげな地下への入口を見つけたから探索に行ってみない?」

 ホラこれと手帳に『マッパー』で印刷された公園の地図を差し出してくる。柱時計の下に入口の記号がある。

「ちびっこが複数いて時計の柱があれば周辺を走り回るものでしょ? やけに周りがキレイだし子供たちもそんな遊びはしないって言うからピンときたんだ」

 曰く、子供は無意味に走り回る生き物で複数人なら追いかけっこになり柱を活かした攻防をするのが本能だと言う。

 僕は今世では特殊な生まれと育ち方をしたせいで子供の遊び方には疎い。イナバニキはしょっちゅう変な言動をする男だけど仕事の本筋では(本人にとっては)真面目に働く。

 ならば探索の価値もあるだろう。荷物を置き、威力偵察の準備をする。探索用のスキルの多いペルソナを使うイナバニキがいる間に攻略の目処をたてておきたい。

 

 公園の柱時計から入る異界には多くの悪魔の気配がした。僕よりは格下だけど倒しながら進むとなると面倒な強さだ。

「はい、『エストマ』 これで邪神アンチニキよりレベルの低いモンスターはコッチからちょっかいかけない限りボクたちには気付かないよ」

 ついでに『リフトマ』もかけとくね、と続ける。つくづく便利な男だ。ついでに『マッパー』で周辺地図埋めてくねー、などとのたまうイナバニキ。慣れすぎると逆に怖いな。

「ではしゅっぱーつ」

「敵と何回か戦うか行き止まりにあたったら一度戻ろうか」

 一応悪魔の視界を避けるようにスニーキング。ダンジョン攻略の始まりだ。イナバニキ、僕、ジョーズマンの隊列で進むことにする。

 

 

 

 回避できない悪魔もおらず、どんどん異界をくだっていくとあからさまに人造物の扉と暗証番号によるロックを発見する。開かなければ破壊するかな。

「まあ暗証番号なんて覚えやすい番号に設定するよね。2863(ニャルさん)とかかな。あ、開いた」

「開いちゃうか」

 部屋の中にいたのは高校生ほどの年頃の少女。完全にリラックスしていたが、こちらを見るなり飲みかけのコーヒーをぶち撒けながら戦闘態勢に入る。直接見れば邪神ニャルラトホテプの化身のひとつであることは確信できる。

「うえぇいぃ??! ナンデ! 俺殺しナンデ!

 迷路になってるダンジョンと大量の悪魔で2週間は時間稼げるはずでしょ??!?!」

「よっぽどの『幸運』がついてたんじゃない?」

 焦る邪神の化身と平常運転のイナバニキ。そういえばこの男は『速』『幸』特化の成長だった。

「とはいえ何の準備もしてないわけではないザンス!

 おいでませ『ミサイルシャーク』 発射(てーっ)!!」

 壁からサメ型のミサイルが打ち出される。10本中2本が僕とジョーズマンに向かい、ジョーズマンの腕から展開したチェーンソーによって切り払われる。助かるけどあまり変な改造なら文句言うんだよ?

 残りの8本のミサイルがイナバニキに殺到し、爆発する。サメの形をしているから神話的因縁で攻撃が集中したんだろうか。

「あー危なかった。無害な一般ペルソナ使いになんてことをするんだ」

 ヒョコっと僕の背後からイナバニキが顔を出す。爆発の中心に居なかった? 爆風より速く走れば大丈夫? まあそれはそうか。

「まだまだ弾はありますよ! 『ミサイルシャーク』!!」

「なんの! ジョーズマン、『竜巻』! これで帰巣本能によりサメは竜巻の中に帰宅する!」

「く、その手がありましたか。なんてロジカルな戦法」

 再び打ち出されたサメのミサイルはジョーズマンの生み出した竜巻へと吸い込まれる。いやそうはならんでしょ。

 ある意味ニャルラトホテプの弱点である。トリックスターであり愉悦によって行動するこの邪神は自分が面白いと思った心には逆らえない。自分の有利不利よりもその場のノリを優先してしまうのだ。ある意味では邪悪で倫理観がなくて強大な力を持つヒーホー系とも言えるのでイナバニキと相性が良いのかもしれない。

「だが竜巻は爆発に弱い! ミサイルシャークよ自爆なさい!」

「しまった竜巻がやられた!」

 イナバニキと楽しく戦っている少女の背中をつつく。

「なんですか今忙し、い、しまった!!」

 イナバニキがミサイルへの対応をしている間に魔力を高めた僕が必殺の間合いで立っている。何をしてもペルソナによる全力の火炎魔法をブチ込める間合いだ。チェスや将棋で言う詰みである。

「えーと、焼き加減はレアでお願いします」

「当店の邪神焼きはウェルダンオンリーとなっております」

 

 

 

 邪神を焼いた後は部屋にあった資料を軽く回収して『トラエスト』で帰還した。『マッパー』によって印刷された地図もあるし、本格的な捜索は後日に行うことになるだろう。

 ちなみに費やした時間は3時間ほどであり、もうしばらくすれば夕方といった時間だ。異界の攻略時間としては早すぎる。

「イナバニキはこの後どうするつもりだい?」

「日本に日帰りかなぁ。まだ時間はあるし村をぶらついてみるよ。せっかくの海外だし」

 部屋に荷物を置いて二人で散歩しながら雑談をする。日本とは時差があるのでガイア温泉に浸かる予定らしい。先ほどの公園の前を通る。

「あ、兄ちゃんがでたぞ! ものどもかかれー!」

「わー!」

「にーちゃんしんみょーにせよ」

「うわー、なにをするきさまら」

 公園に帰ってきていた子供たちがイナバニキを襲撃する。ああ、僕はなんて無力なんだ。本人も楽しそうだからいいんじゃない。子供のひとりがこちらに来る。

「お兄さん、あの兄ちゃんのともだち?」

「うん、友達だよ。本人の望み通りオジサンって呼んであげたら?」

「あの兄ちゃんがオジサンになるにはまだまだくろーが足りないよ」

「僕が『お兄さん』扱いなのも?」

「お兄さんはいっぱいくろーしてそーだからオジサンでもいいんだけど、オジサンって呼ぶよりお兄さんのほうがうれしそうだからお兄さん」

「気を使ってくれてありがとう」

 そうか。苦労か。

「お兄さんは色々なやんでそうだからいっぱい走ろう。

 走りまわれば大体のなやみはわすれられるよ」

「じゃあお言葉に甘えて追いかけっこしようかな」

 童心に帰って無邪気に走り回る。今世ではそんな事をやっていないので前世の子供時代を思い出して走る。背負っていることを何も考えずに走るのは案外気持ちいい。

 その後、その場のノリでルールが変わったり人数が増えたりする子供達と遊んでいる姿を仲間たちに見られてしまうのだが、それはまた別のお話。




イナバ:巌戸台支部に転送室を作成。『トラポート』をサポートするのではなく、科学的呪術的に滅菌することで余計な物を持ち込まない持ち出さないようにしている。基本的には外国に行くときには転送室を経由する。普通に密入国密出国だが暗黒メガコーポの社員は気にしない。
邪神アンチニキ:ニャルラトホテプ絶対許さな委員会会長。邪神の噂を聞けば駆けつけて殲滅する。基本的には理性的で穏やかな男。
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