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「ボクもね? こういうのは本意じゃないし好きじゃないと思ってるよ」
後ろ手で動きを制限され正座の上に重りを2つ乗せた女のまわりをゆっくりと歩く。
「ほら、お互いに誤解を解いてなかなおりしようじゃないか。良くないことをしたらごめんなさいして許しあう。子どもの頃はよくやったろ?」
正座の辛さか顔を赤らめ荒い息をつく姿は人によっては扇情的にうつるだろう。この場においては何の意味もないことだが。
彼女は首を左右に振り宣言する。
「イナバニキには……、竿役ゴブリンとしての、才能があるっ!!」
「ええいまだ言うか。もう1羽追加してやる」
ポンと出した一抱えほどのサイズのウサギを膝の上に追加。さらに周囲で好きに動いていたウサギたちに足を突っつかせる。野郎どもやっちまえー。
「ちょ、もう足が痺れて限界……ぬわーーっ!!」
「まったく。ヒドイ目にあいました」
足を崩した性欲魔神ネキがウサギをあやしながらボヤく。後ろ手に引っかかっていたウサギを落としてしまったので抗議されているところだ。
「せっかくのウサギメンタル、年中発情期の性の象徴と言っても過言ではないウサギのペルソナを持ってるんだから機会があればスカウトするのは当然じゃないですか」
年中発情期という意味では人間も同じだからね?
被捕食者のウサギの社会は食べられるのと同等以上の早さで増えればいいじゃないという命の大量生産大量消費社会である。食物連鎖(獣編)の底辺に君臨する以上出産タイミングより生産速度こそ求められる。その辺をあやかったバニーガールのように性欲を前面に出す姿もウサギの1面と言えるだろう。
でも善良な武器密輸業者にそんなイメージが付くのはよろしくない。受け取り主が安心して受け取れないじゃないか。
「そこまで嫌がられちゃしょうがないですね。
ところでイナバニキのペルソナが普通のウサギの大きさになった上に数が増えてるのはどんな事態です?」
部屋のあちこちを好きに動き回るウサギたちを見渡して性欲魔神ネキが尋ねてくる。
MAGを注ぎ込めば巨大化したんだから逆に減らせば小型化省エネ形態になるのは当然のことでしょ?
それと心が増えればペルソナの数も増えるのはなんの不思議もないでしょ。ああ、分裂症とかの意味ではなくてね。
どんなに楽しい趣味でも熱中してる自分とそれを冷めた目で見る自分がいる。恋人といて恋しさとせつなさと心強さが一人の心に収まってるなんてのはなんの不思議もない普通のことだ。
人の心が同時に複数の感情を出力できるんだからそれに
「ほうほう。む、大変ですイナバニキ!
この
他人の心の股間を何だと思ってるんだこの人は!
そもそも人の心にオスもメスも同居してるのは当然のことである。ペルソナシリーズで言えば1のリリム、3のアリスが男主人公から出てくるのがわかりやすいか。
げしげしとウサギに蹴られる嬉しそうな性欲魔神ネキはブレないなぁ。
「性欲魔神ネキ! 少し相談したいことがある!」
おやブルーローズニキ。性欲魔神ネキに会いに来るなんて珍しいね。
「ああ、イナバニキもいたのか。ちょうどいいから意見を聞きたい。単刀直入に言おう。
男型シキガミに女性器を付けたらそれは男か? 女か? それともふたなりか?」
ふむ。性欲魔神ネキと顔を合わせてから答える。
「
その答えにブルーローズニキは肩を落とすとこちらに礼を言い、どこかに電話をかける。漏れ聞こえる話からすると特製シキガミのボディ作製をキャンセルしたようだ。ガッツリとキャンセル料をとられている気配がする。
ブルーローズニキは前世において女性ストーカーに拉致監禁殺害というフルコースの被害を受けている。そのためか性的嗜好は優しくしてくれる少年系だ。ガイア連合においては同性愛など特に気にするほどの物ではない。
「これでしばらくはモヤシカレー生活だわ。お詫びに持っていく品って何かある?」
「丁度ここに配達されたばかりのステキな栄養ドリンクがありますよ」
そうだね。1週間ほどサルになってても大丈夫な栄養ドリンクだね。
まぁそれはそれとして。
少年型シキガミに女性器つけて子どもを孕めるようにしようとしたけど解釈違いで中止ってところ?
「だいたいあってる。男同士かつシキガミ相手だと難しいって聞いてなぁ」
性欲魔神ネキとアイコンタクト。じゃ~んけ〜んポンッ ボクの勝ち。明日までになんで負けたか考えといてください。
「突然じゃんけんしてどうした」
いや、丁度2つの説明だから順番兼内容の分担をね。
さて、まずは男同士で子どもをつくれるかを担当するね。
じつは人間同士ならともかく、
例えば日本神話における三貴子は男神であるイザナギが産んだよね。左眼からアマテラス、右眼からツクヨミ、鼻からスサノオが産まれたとされてる。他にもゼウスの額からアテナが産まれたなんてのもある。
最高神以外でもヒノカグツチの血や遺体から産まれた神というのも見方によってはヒノカグツチという男神が子どもを産んだと解釈できるわけだ。
うん、ここまでは
絵、マンガ、小説なんかを作者が産んだ子というのは間違ってないよね。ギリシャ神話では自分の生みだした彫像に恋をして彫像を人間にしてもらった職人の話なんかもそうだね。男が誰かを産むというのは字面に反してそんなに珍しいことではないんだよね。それが物理的な子どもじゃないだけで。
これらの話を基に術式を組み立てれば男が子どもを産む魔術くらいならできるね。今の環境だと通すのが大変だからルールが物質から概念よりになる終末後が前提の話だけど。
何でこの術式が研究されてないかって? そりゃ大抵の場合は片方が一時的に性転換するほうがよっぽどお手軽だからだよ。
では私が分担する話、シキガミとの子づくりについて話しますね。
まずはシキガミとの子が生まれない理由についてです。勘違いされやすいんですが、悪魔と人間の子だから生まれにくいというわけではないんですよ。
ギリシャ辺りなら
シキガミが子を孕めないのはシキガミという人工悪魔の『人間の道具』としての属性が強いからなんです。人間の普遍的無意識がそのイメージを持っているんですね。
今イナバニキの左右にいる一反木綿型シキガミ『スタンドくん』と特別製シキガミ『ジョーズマン』、シキガミと言われてどちらをイメージしますかって話なんです。
これは黒札がどうこうというレベルではなくて人間の無意識による多数決だと思ってください。ブルーローズニキも掲示板で知るまではシキガミと聞いたら陰陽師の道具だったでしょう?
時代を経てドラゴンカーセックスが一般性癖になったように、ヒューマノイドが搾精して人工授精するのが一般的になるまで科学が進歩していればシキガミちゃんが妊娠するのも可能だったでしょうね。
とはいえこれは現在のルールの話。終末後なら法則が曖昧になって魔術で干渉する余地も出てくるでしょうね。
「つまり……どういう事だってばよ」
男が妊娠するのもシキガミが妊娠するのも現段階では難しいけど、終末後ならなんとかなるよ。
「よし。終末を待ちながら費用を貯めればいいんだな」
「それ以前に今キャンセルしたから特別製シキガミの順番待ちが相当後回しになりません?」
「ちっくしょうめー!」
その後、メシア教過激派が世界を終末に導くべく世界中に打ち込んだミサイルはガイア連合たちによって一部不発となり、世界は半終末と呼ばれる状況になった。
「ち・く・しょおおおおおおっ!!!」
終末突入を防いでそんなに悔しがるのはメシア教過激派とブルーローズニキくらいだよたぶん。
ブルーローズニキ:どこからか盗んできた拳銃で「ア・イ・シ・テ・ル」の5発を撃ち込まれて苦しんで死んだのにストーカー本人はこめかみに1発で楽に自殺したのが納得いかない。片目隠れ健気な少年がタイプ。
性欲魔神ネキ:良い精力剤ないですかねぇとイナバニキに相談したら半月ほどでヤバめの薬を開発してきたので前々から目をつけてたこともありスカウトしてみた。
イナバニキ:かぐや姫の竹からおとぎ話の小道具ルートに入り原典桃太郎の桃を権能としてコピーしてきた。モルモットニキと協力して精力剤の部分を抽出して性欲魔神ネキに売った。抽出された残りを若返りの薬として売ろうとしたところ『一時的に肉体を全盛期に戻す』効能だったため「若返るかもしれない薬」として適当に売り払う。