タグを見ていただければお分かりいただけると思いますが、艦これにゴジラ映画とガメラ映画をミックスしたものになります。
個人的にすっっっごく書きたかった作品なので、構想してから書き出し、何度も文章の内容を改めてを繰り返してようやく1話目が完成しました。
では、本編をどうぞ。
※サブタイトルを1話からプロローグに修正しました
西暦2018年10月 サーモン諸島近海
敵から逃げなくては。ただそれだけを考えてひた走る。
周囲は海面しかなく、台風の暴風域にいるため波風が激しく吹き荒れていた。強い雨風が体を叩くが、それでも今より遠くにと先を急ぐ。
何かに終われるようにして海面を駆け抜けるのは、二人の少女だった。
先頭を走るのは薄い青色のセミロングの少女で、切り揃えた前髪が額に張り付いてるのも構わず、頻りに周囲を警戒するように見回していた。
それに手を引かれる格好で続くのは、ワンピース風の白いセーラー服を着たやや幼い容貌の少女だ。首から提げている双眼鏡が、肩から提げている主砲とぶつかって硬質な音響を奏でている。
「──ダメ、見失ったみたい! ユキ、気を付けて!」
悲鳴とも聞き取れる叫びと共に、手を引いて連れている少女に警戒を促した。
その声が届いているかは分からない。耳に届いてはいると思いたいが、協力出来なければここから先は危険だ。
「ユキ、お願いだから心を強く持って……! 奴等はまだ追ってくるんだから」
「……置いていってください」
「な、何を言ってるの! そんなこと出来るわけ」
絶望したような様子を見せる少女の口からそんな言葉が出て、それを否定しようとした時だった。
──キィイォオォーー!!
その鳴き声が耳に届いて、咄嗟に頭上を見上げた。
巨大な影が自分達目掛けて急降下してくる。忘れもしない。自分達がここまで遁走し続けてきた元凶、今まで目にしたことのない異形の怪物。それが獲物である二人を喰らおうと向かってきていた。
「くっ……!」
空いている手に健在な武装──12.7cm連装砲C型で向かってくる怪物を指向した。怪物は捕らえようと鋭い鉤爪のある両足を向けてきた。
「てーーっ!」
それを迎え撃つべく、携行する主砲を発砲した。砲撃に伴う衝撃波で雨水を吹き散らし、湿った大気を切り裂いて砲弾が標的に向かって突き進んでいく。
砲弾は吸い込まれるようにして頭上の怪物に迫り、確実に直撃すると確信した。
だが、
「──嘘っ!?」
着弾する寸前でそれを避けられた。皮膜のある両翼を翻し、砲弾はただ上空に突き進んだ後に爆発するだけの結果に終わった。
だが砲撃に牽制する程度の効果はあったようで、警戒するように離れた海面上で旋回していた。
これなら逃げられるかもしれない、そう考えて再び曳航している少女に協力するよう呼び掛けようと口を開いて、
「──?! ……な」
右胸に焼けるような激痛が走った。視線を下ろすと、光の筋が右上半身を貫いているところだった。
「あ……いつ、らっ。アレを……」
体に力が入らなくなった。自分達が追い詰められる一因になった攻撃を潜んでいたもう一頭から貰ったのだろう、被弾箇所は貫通して出血が止まらない。
アレを受けた僚艦が両断された事を考えれば、今のところ生きているだけでまだマシな程度か。そんなことを考えている間に海面に倒れた。
「初風ちゃん!」
今まで意気消沈していた少女が自分の名前を呼んできた。
「ユ、キ。貴女だけ、でも……逃げて」
「イヤです! 見捨てるなんて、もう……!」
自分はもう助からない。だから逃げ延びてほしいのに、今まで守ってきた少女──雪風は頑なにその場を動こうとしない。
「怪物が……! 私は、良いから……にげてっ」
でないと、約束が果たせなくなる。
自分は、初風は託されてここまで逃げてきたのだ。
今まで慕ってきた姉達の第十八駆逐隊、妹達を含めた姉妹は身を挺してでも逃がそうとした。
第二水雷戦隊の長だった軽巡洋艦は、二水戦を指揮して最期まで戦った。彼女を教えたその師である第1世代の戦艦もだ。
だからこそ自分もと、そう思ってここまで雪風を守ってきたのだ。
だがそれも叶わない。せめて雪風だけでも逃げてほしいのに、
「雪風は、もうイヤです! 初風ちゃんまで喪って遺されるなら、いっそのこと」
「ユキ……!」
それ以上を言葉にしてほしくない。
こんなところで心中したくて逃避行を続けてきたわけではないのに、雪風にそれを言ったところで届かないことも分かっていた。
怪物達はそんな自分達を嘲笑するように見下ろしていた。
既に抵抗する様子を見せない二人の上空で悠々と旋回している。先程の光線を放つなり、急降下してくる等出来る筈だがそれもしてこない。これ以上何が出来ると高を括っているのだろう。
「お願いだから、逃げてよぉっ!」
海面に立ち上がるだけの力も出せない体から、有らん限りの力を振り絞って叫んだ。
それを合図とするかのように、遊びは終わりとばかりに怪物達が再び急降下してくる。今度こそ仕留める気だ。
(このままじゃ私も、ユキも……)
すぐそこに迫ってくる怪物の動きが動画のスロー再生のように、酷く緩慢に見える。
体は動かなくても脳が動いているからだろう、生存の可能性を探るように走馬灯も見え始めた。
何かしないといけないのに、このままでは二人とも殺されるのに、自分の体はその意思に反して動いてくれそうにない。
(陽炎姉さん、ごめんなさい)
雪風を託して逝ってしまった姉に心の中で謝罪し、涙を頬から滴らせながら瞑目した。
生還の望みを捨てた二人に怪物がすぐ頭上まで迫ったその時、大気が震える。
遠方から青白い極太の光線が向かってくる。
それは進路上の嵐で波立った海面を円形に歪ませながら突き進み、初風達を喰らおうとしたギャオスに直撃して粉砕した。
「…………え?」
呆けたような声が漏れる。
突然起きた現象にただ戸惑った。常識を超えた能力で第二水雷戦隊を壊滅させた怪物が、さらに予想外の攻撃で撃破されていたのだ。攻撃の正体やその主が気になり、目を凝らして彼方を見つめる。
艦娘の艦船に由来する視力で捉えたのは、巨大な影だ。
既に重傷を負っている状態であるため、視界はボヤけ輪郭も霞んで分かりにくいが、見上げる程の巨大な上半身が海面から生えるように浮かんでいた。
「何よ、あれ……?」
「怪物を倒したようですけど、あれもその一種……?」
雪風の呟きを耳にして、初風の脳裏にかつて学んだ知識が過る。
(あれは確か、私が艦娘として顕現したばかりの頃に受けた座学。その時に天龍さんが戦後の歴史で教えてくれたことだったはず)
そんな事をぼんやりと考えていると、視線の端に一つの影を捉えた。
「──ッ、ユキ、逃げてッ!」
何時の間にか降下して海面スレスレを飛翔しながら向かってくる怪物に気付き、咄嗟に警告のため叫び声をあげてから、最後の力を振り絞るように庇おうとして動こうとする。
「──沈めェッ!」
怪物と自分達の間に割り込むように人影が現れ、銀色の軌跡が怪物を捉えた。右の翼手を皮膜ごと切り裂かれ、続けざまに砲撃を受けて爆散した。
「凄い……!」
その人影は艦娘らしかった。
鋭い穂先の槍が爆炎に照らされてその光を反射して輝いてるのが特徴で、背負い式の艤装を見る限り駆逐艦娘と言うのが分かる。
だが、今やって見せた事が異常だ。
自分達は、第二水雷戦隊はアレと戦って壊滅した。第十八駆逐隊は初風を庇った陽炎がヤツラの光線に切り裂かれ、朝潮型の霰と霞は食い殺された。第十九駆逐隊も浦波と綾波が同様の最期を遂げている。
第十六駆逐隊は、自分達二人を逃がそうとした天津風と時津風が殿になった。遁走中にその最期を見届けて、雪風はただ泣き叫んでいた。
神通は迫り来る怪物を数体、巻き込む意図を以て自爆を敢行した。それだけの覚悟を抱いて相討ちに持ち込んだのだ。
目の前にいる艦娘は違う、ただ割り込んで斬り伏せ、砲撃で仕留めた。神通程の強者が自己犠牲を選んだのにも関わらず。
「──既に敵は居ないわね」
ブゥン、と頭上に浮かぶ特徴的な艤装から駆動音を響かせ、こちらに振り向いた。
「アンタ達、艦娘よね? 助けてあげるわ」
「……貴女は」
「特型駆逐艦、五番艦の叢雲よ。付近を航行中にアンタ達を見付けて、教われて追い詰められているようだったから駆け付けたわ。──こちら叢雲、要救助者を2名救出した。2名は共に陽炎型の艦娘、護送の為に応援を要請する」
要救助者。それが自分達の事だと気付いて初風は安心した。それによって緊張の糸が切れたかのように、怪物の光線に体を貫かれてから繋ぎ止めてきた意識を手放した。
今回を投稿してから、なるべく早く更新したいですね。活動報告に各作品の更新の進捗などが上げてあるので、気になるならそちらもどうぞ。