ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー   作:通りすがりのヌ・ナセ草

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修理と変化

「おっじゃましまーす!」

 

 ミュー自身についてとミューに関係する説明を終えたところで、イヴがミューを連れて戻って来た。

 玄関を潜ると同時に、ミューは元気よく声を上げながら家の中に飛び込んで来る。

 

「こら!キチンとしなきゃダメでしょ!」

 

「ごめんなさーい……」

 

 イヴに怒られて落ち込むミューを権兵衛とタエは驚いた顔で眺めている。

 

「おぉ、マジで言葉を話すミュータントなんているんだなぁ……」

 

「ジェイソンから聞いてはいたけんども、実際に目の当たりするとビックリだべさ」

 

「あっ!はじめまして!ミューはね、ミューだよ!」

 

 見られている事に気づいたミューがにっこり笑って、権兵衛とタエに向けて手を振りながら挨拶をする。

 

「おう。俺ぁ権兵衛。このモントイの百姓で、クエビコのパイロットだ」

 

「オラはタエっちゅうだ。クエビコのサポートロイドをやってるだよ」

 

 ミューに対して2人とも普通に挨拶を返してくれる。ミュータントという事でもっと警戒されると思っていたが、ミューを受け入れてくれたようでなによりだ。

 

「でだ、ジェイソン。さっき聞いた話の通りなら、イヴを襲ってきたミュータントの調査と、ミューに他のミュータント達の情報を解析させるっつぅのがお前ぇらのやる事なんだよな?」

 

「あぁ、そうだ。まぁ今回はクエビコの救助信号について調べる事が最優先目標だったんだが……」

 

「うぐっ……そ、それでなんだけどよぉ、お前ぇ達はこの後、あの島に向かうって事だよな?」

 

 痛い事を指摘されて顔を引き攣らせながらも権兵衛は話を進める。

 救助信号の件は一旦置いておくとして、たしかに権兵衛の言う通り、俺達は後で島にいるというミュータント達を調べに行くつもりだ。

 

「そんだったらよぉ、俺達も一緒に行って構わねぇか?万が一、島ん中に入るってんなら俺達は中の構造をある程度は把握してるしよ」

 

「それは助かるけど……良いのか?」

 

「今回の件と言い、一揆の件や小判の件もあるしなぁ。俺ぁまだまだ借りを返し切れてねぇんでな」

 

「……そういう事なら、権兵衛達の好意に甘えさせてもらうかな」

 

 正直、俺としてはエリアΩに助けに来てくれた事で十分な程返してもらったと思っているが、それだけでは権兵衛自身が納得がいかないのだろう。

 

「っつー事だけどよ。タエ、問題ねぇよな?」

 

「オラも問題無いだよ。だけんども、そんなら早いとこクエビコさ直してあげんといけねえだ」

 

「あ、それならG-ソフィアに予備のパーツを多めに積んで来てあるからすぐに直せるかもしれない」

 

「おお!そりゃ助かるだ!以前といい、今回といい、世話んなりっぱなしで申し訳ねえだ」

 

「それじゃあ、俺ぁクエビコを修理スペースに持ってくっからよ!」

 

 そう言って権兵衛はさっさと外へ向かっていってしまう。

 救助信号があるなら修理も必要だろうと考えて、色々と持って来ておいて良かった。とはいえ通信機関係のパーツがあったかどうか……

 

「権べさは本当に忙しねえだ……さて、修理スペースっつっても以前クエビコさ修理した場所ん事だから、落ち着いたら来てほしいだ」

 

 俺達にそう伝えると、権兵衛の後を追う様にタエも急ぎ足で外へ出ていってしまう。

 とりあえず考えるのはクエビコの様子を見てからにしよう。もしかしたら他にも修理しなければならない箇所があるかもしれない。

 

「それじゃあ一度G-ソフィアに戻って工具を取ってこよう。俺はケインに報告もしなきゃいけないし」

 

「そうね。それじゃあミュー、手伝ってくれる?」

 

「うん!ミュー、頑張る!」

 

 報告を終えるとケインは呆れた顔でため息を吐き、俺達にクエビコの修理を手伝う様に依頼を出した。

 元からそのつもりだった俺達は、G-ソフィアから必要なものを持って、少し不安に思いながらもクエビコの元へ向かった。

 

 

 

 

「こ、これは……何というか、凄いな……」

 

「この修理は、ちょっと時間が掛かるかな……」

 

「本当に、本当に申し訳ないべ……」

 

 権兵衛とタエと共にクエビコの中の様子を見てみれば通信機であったであろう部分は大きく凹み、場所によっては中のパーツが見える程割れていた。

 

「これはいったい、なにで叩いたんだ……?」

 

「あー、そんときゃ……担いでいたクワだったような気がぁ……」

 

「クワかぁ……」

 

 素手ですら無かったとは。しかし、ここまで大きな破損だとさっきイヴの言っていたようにだいぶ時間が掛かるだろう。

 

「とりあえず解体していってみよう。イヴ、出来そうか?」

 

「うん、大丈夫。あと、調べてみたらパーツの方もどうにかなりそう」

 

「はぁ……一時はどうなるかと思ったけんども、2人のお陰で助かっただよ……」

 

「俺達も手伝うからよ、遠慮なくコキ使ってくれやぉ!」

 

「ミューも!ミューも頑張るっ!」

 

 安堵のため息を吐くタエと意気込む権兵衛とミューを見て俺とイヴは苦笑しながら作業を始めた。

 

 

 

 

「これを繋いで……イヴ、どうだ?」

 

「うーん……あ、そっちの線をこっちに繋いでみて」

 

「こう、か?」

 

「……うん!反応した!これで蓋をして終わりだと思う」

 

 イヴの声を聞いて俺はそばに置いてあった蓋を取り付けていく。

 数時間にも及ぶ修理作業を終えると、そこには元通りでは無いが、しっかりと機能を取り戻した通信機が取り付けられていた。

 

「G-ソフィアのパーツを使ったから少し形に違和感があるかもしれないけど、機能の方は問題ないから安心して」

 

「そこは仕方ないだよ。いや、本当に良かったべ……イヴとジェイソンには感謝しかねえだよ」

 

「お役に立てて何よりだ。他の所も色々メンテしておいたから後で確認しておいてくれ」

 

「俺もちったぁ勉強しねぇと駄目かぁ……」

 

 権兵衛の呟きにみんなで笑っているとふとミューの姿が見当たらない事に気づく。

 周囲を見回してみれば、外した廃棄部品の山のそばにしゃがみ込んでいるミューの姿が見えた。

 

「ミュー?そんな所でどうした……はぁっ!?」

 

「ジェイソン?どうし……えぇっ!?」

 

 ミューが何をしているのか確認する為に近寄った俺の驚きの声を聞き、イヴが駆け寄って来る。そしてそのイヴも同じ様に驚きの声をあげた。

 

「パパ〜、これ美味しくない〜」

 

「いや、それ、MAのパーツじゃないか!?」

 

「た、食べちゃった、の……?」

 

 ミューは外した細かいパーツを手に取っては口の中に入れて転がしていた。

 ミュータントであるミューとはいえ、こんな物を食べてどうなってしまうのか想像もつかない。

 急いでミューの口の中を確認するが、すでにパーツの形は無くなっており、回収は諦めるしかなかった。

 

「おいおい、大丈夫なのか?」

 

「オラ達、ミューの事は分からねえけんど、変な影響とか無いんだべか……」

 

「食べてしまったのは……通信機のパーツか。ミュー、身体に変な所は無いのか?」

 

「う、うん。大丈夫……ごめんなさい、勝手に食べちゃって……」

 

 ミューは怒られる事を心配してか、いつもの様な元気な姿は無く、落ち込んだ様子で素直に謝ってくる。

 

「心配しないで、怒ってなんていないわ。でも、今度からちゃんと声をかけてね?」

 

「うん……ミュー、気をつける」

 

「権兵衛、タエ。すまない、パーツの一部が無くなってしまった……」

 

「いやぁ、まぁ俺達にとっては捨てるもんが減ったからよぉ、その、問題はねぇんだわ」

 

「権べさの言う通りだべ。むしろミューの事を心配するだよ」

 

 たしかに処分の手間は減ったのはありがたいが……とりあえず、しばらくはミューの様子に気を配るしかない。

 

「だけど、どうして今回はこんな事に……今までG-ソフィアのパーツを食べたりなんてしなかったでしょ?」

 

「えーと、なんか急に気になって、我慢出来なかったの……」

 

 G-ソフィアとクエビコは同じMAではあるが細かい所に違いはある。もしかしたらミューにしか感じられない何かがあったのかもしれない。

 今はそれが何か分からないが、機会があったら調べてみた方がいいかもしれない。

 

「あっ!と、ところでよぉ、クエビコの新しい通信機を実際に使ったりしねぇのか?」

 

「ん?あぁ、そうだな。念の為G-ソフィアから通信を送ってみよう」

 

 場の空気を変える為だろう。権兵衛が試運転の提案を出してくれる。簡易的なテストはしたからおそらく問題はないだろうが、やっておくに越したことはない。

 俺とイヴはG-ソフィアに移動し、来る時のワームホール内の時と同じ様に通信を行う。

 

「こちらG-ソフィア、どうだ?問題なく聞こえるか?」

 

「…………」

 

「あれ?取り付け方がおかしかったのか?」

 

「そんなはず……あ、ジェイソン。これ通信先が古い方の通信機になってる」

 

 外した通信機に通信していたのか。それでは反応なんてある訳がない。ちょっとしたミスをイヴと一緒に笑っているとG-ソフィアにミューが入ってきた。

 

「今、パパの声が聞こえたー」

 

「えっ……?」

 

 今日何度目の驚きになるのだろう。俺とイヴはお互いに顔を見合わせるのだった。

 

 

 

 

「つまり、以前のクエビコの通信機に通信を送るとミューに声が届く。そういう事なのか……?」

 

「うん、何回か試してみたけどそうみたい。ちょっと距離が空くと聞こえなくなっちゃうみたいだけど」

 

 クエビコの新たな通信機の動作テストも終えた後、俺達は再び権兵衛の家に集まり、ミューの身に起きた事について話をしていた。

 まさか通信機のパーツを食べた結果、受信機能を身に付けるとは思ってもいなかったが、機械に寄生するミュータントもいる事を考えれば不可能ではないのだろう。

 問題はミューが攻撃系のマニューバチップや兵装を吸収した時、どうなってしまうのかという事だ。

 兵装の機能をそのまま使えるとなったらSFからの見られ方も大きく変わる可能性がある。この事は慎重に取り扱わないと危険な事になりかねない。

 

「タエはこういうミュータントは見た事ねぇのか?」

 

「オラも初めて見るだよ。そもそもミュー自身が色々と例外的だべ。オラ達の持ってる情報もどんだけ役に立つもんだか……」

 

 しかし、ミュー自身があまりにも前例のないミュータントの為、これといった情報は誰も出す事は出来なかった。

 

「うーん、いったい何がどういう……」

 

「なぁ、ジェイソン。このまま悩んでても仕方ねぇしよぉ、一度切り替えて別の事してみねぇか?」

 

 進展の無い状況に唸っていると、心配してか権兵衛が提案してくれる。たしかにこのまま頭を悩ませていても状況は進展しないだろう。

 そして権兵衛の言う別の事とは、海の向こうの島へ行ってみるという事だ。

 

「……そうだな。ミューの事は気に掛けておくとして、明日は海の向こうの島へ向かってみるか」

 

「そんだったら今日はウチさ泊まってくといいだよ。クエビコさの修理で世話んなったんだ。遠慮するこったねえだ」

 

「いいの?迷惑にならない?」

 

「むしろこっちが迷惑かけちまったお詫びだ。そういうわけで気にすんなって」

 

 2人の好意を無碍にするのも気が引けるので、俺達は権兵衛達の家で休み、翌日に島へと向かう事にしたのだった。

 

 

 

 

「ここが2人の言っていたミュータントが発生していたという島か」

 

 翌日、出発の準備を済ませた俺達は、協力を申し出てくれた権兵衛達と共に島へと辿り着いていた。

 島に来るまでの道のりにはやはりミュータントの姿は無く、何事も無く辿り着く事が出来た。

 

「2人がこの島に乗り込んでいた時もこんなに静かだったのか?」

 

『いや、俺達が来た時はもっと激しい攻撃が飛んできてたもんだな』

 

『んだ。こんな風に何もなく上陸するなんて夢にも思わなかっただよ』

 

 やはりイヴの指示の効果が出ているのだろう。だが、2人の話を聞きながら俺達がレーダーを見てみると、レーダーは複数のミュータントの反応を検知していた。

 

「だとすると、このミュータント達はいったい……」

 

「ミューは何か感じたりとかっていうのは無いの?」

 

「んー、なんかみんな困ってる様な、困惑してる様な感じ……」

 

「困惑?ミュータントがか?」

 

 ミュータントがいったい何に困惑するというのだろうか。ミュータントは指示に従うだけで、その意味について考えるという事はしない筈だ。

 いや、俺達がそう思い込んでいるだけで、知らない何かがあるのかもしれない。幸い、こっちにはミューに聞けばいくらか情報を得られるのだ。思い込みで動く事は避けていかないと。

 

「とはいえ何かが起きているのは間違いないんだ。警戒は怠らずに進んでいこう」

 

 権兵衛とタエにもミューの言っていた事を伝え、何が起こってもいい様に俺達はゆっくりと慎重にMAを走らせ始めた。




 今回も読んでいただきありがとうございます。

 投稿がいつもより遅くなってしまい申し訳ありません。
 今回はクエビコの修理とミューの新たな能力についてのお話になりました。本編のミュータントにはいない(記憶違いだったら申し訳ない)後から能力を追加していくミュータントです。
 何の為にこんな能力があり、何に活かされるのかはこれからのお話の中で……

 感想の方もぜひよろしくお願いします!
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