ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
廃棄された軍事基地。その内部で俺達を待っていたのは、防衛設備や侵入防止の為の認証プログラム……などではなく、誰もいない、静かな空間だった。
基地内部の設備は殆ど稼働しておらず、空気循環設備や電力設備など、最低限の設備だけ辛うじて動いているという様子だった。
「廃棄されたといっても、案外綺麗なままなんだな」
「ミュータントに襲われて廃棄した、というわけじゃないのかな……あっ、周囲の生命反応、ミュータント反応共に無し。大気の汚染とかも心配無いみたい」
「ありがとう、イヴ。一応、俺は念の為に周囲を見てくるよ。修理はその後、一緒にやろう」
「うん。じゃあ私は、ジェイソンが周りを調べている間に修理箇所をまとめておくね」
俺はパイロットスーツのヘルメットを被り、G-ソフィアの外に降りた。後を追う様にフレッドも飛び出して、俺の肩に乗って来る。
「ゲコゲコ」
「お前も頼りにしてるぞ。フレッド」
任せろ、と言うかのようにフレッドはもう一度鳴いた。相変わらず何の生物かは分からない不思議な存在だが、頼もしい事には変わりない。
『ジェイソン、どう?通信はちゃんと聞こえてる?』
「ああ、問題ないよ。ちゃんと聞こえてる」
『よかった。G-ソフィアの事もあったから、パイロットスーツにも何かトラブルが起きてないか心配だったの』
通信ごしに聞こえるイヴの声から、安心した様子が感じ取れる。俺は彼女の作ってくれた装備に、心配する所なんて無いと思ってはいるが、作った本人は色々と心配のようだ。
『ねえ、ジェイソン。今、私が作ってるんだから大丈夫!なんて、思ったりしてなかった?』
「え!?ま、まぁ……」
『もー。信頼してくれるのは嬉しいけど、今回のG-ソフィアみたいに、万が一って事もあるんだからね』
「ご、ごめん。何か気づいた事があったら、すぐに伝えるよ」
まさか通信の向こうから考えている事を読まれるとは。これも一つの信頼の形と考えると嬉しい様な、なんとも言えない気分だ。
『ジェイソン?どうかしたの?』
「いや、なんでもない」
『そう?あっ、装備の説明もどんどん行くよ!覚える事はいっぱいあるから頑張って覚えてね!まずRG-ライフルとR-キーライフル。これは……』
その後、イヴから装備の説明を一通り受け、基地の中を進んでみるが、最初の反応通り、何者かが潜んでいたり、ミュータントが現れたりするという事もなく、調査は順調に進んだ。
ある程度調査をしたところで、俺はイヴの方の準備の進み具合を確認する為に通信をした。
「イヴ、こっちは大丈夫そうだ。イヴの方は大丈夫か?」
『……………』
「イヴ?……おかしいな、さっきまでは問題なく使えていたのに……」
万が一って事があるかもしれない……イヴが言っていた事を思い出す。
この不具合がヘルメットの不調なのか、それともこの施設に何かがあるのか。ここは戻った方がいいのか、進んだ方がいいのか、どちらにするか悩まされるな……
●
ジェイソンに装備の説明を一通り終え、通信を終える。彼が帰ってくる前に修理箇所の内容をまとめておかないといけない。私はG-ソフィアのシステムデータを開き、目を通していく。
「この修理を終えたら、惑星ソフィアに……」
少し前の私なら、懐かしい故郷の事、お父さんやお母さんに会える事、ジェイソンを紹介出来る事を喜んでいただろう。
だが、今の自分の身体は普通ではない。この身体のまま故郷となる星に帰っても大丈夫なのだろうか……ソフィアの技術なら私の身体の変化を解明してくれる。そう信じてはいるが、拭えない不安も一緒に襲ってくる。
「ミュータントの侵蝕から変化したこの身体……何の関係もない、なんて楽観的すぎるよね……」
『ガイノイドから有機生命体への変化』
この変化に気づいたのは、エリアΩで改修作業をしていた時からだった。最初はミュータントに侵蝕されていた時の影響で、まだ調子が悪いだけだと思っていた。だけど、そうではないとすぐに気付いてしまった。
自分の変化に気付いた私は出来る事が限られている状況とはいえ、すぐに色々調べ始めた。
機械としての反応、有機生命体としての反応、G-ソフィアで調べられる事は全て調べようとした。だけど、ミュータントとしての反応だけは調べる事ができなかった。もし、ミュータントとして反応してしまったら……
「大丈夫……きっと、大丈夫だから……」
不安を振り払うように自分に言い聞かせる。それなのに嫌な考えは、次から次へと溢れ出してくる。気づけばキーボードから手を離し、私は俯いたまま動けなくなっていた。
ジェイソンに助けを求めたい。だが口にする覚悟が私には無い。ガイノイドが有機生命体へと変化した……それも、ミュータント細胞が関係している可能性がある。前代未聞のその事実について調べるという事が、彼にどれだけの負担を掛けてしまうのか想像もできない。
もしかしたら、エリアΩでの戦い以上に彼を危険な目に遭わせてしまうのではないか。今度こそ彼が私のそばからいなくなってしまうのではないか。
考えれば考えるほど、私の胸が苦しくなっていく……誰か、助けて……お父さん、お母さん…
「助けて……ジェイソン……」
私の口から絞り出すように出た小さな、助けを呼ぶ声に返ってくる声は存在しない…………筈だった。
「イヴ!?どうしたんだ、何かあったのか!?」
ハッと顔を上げ、外を見ればG-ソフィアのすぐそばまでジェイソンが戻ってきていた。慌てて、通信の履歴を調べると彼から何度も通信が届いていた事が確認出来た。私はいったいどれだけの間、塞ぎ込んでいたのか……。
彼はG-ソフィアの中に戻って来ると、私の元へ駆け寄ってきた。
「イヴ!大丈夫か!?通信が繋がらないから、もしかしてヘルメットのチェックをした方がいいかもしれないと思って戻ってきたんだ。そしたら君の様子がおかしいのが見えて…」
「だ、大丈夫!落ち着いて!……侵蝕されてた時の事を思い出しちゃって、ちょっと不安になっちゃっただけだから……」
彼を落ち着かせる為に私は嘘をつく。ズキリと感じる心の痛みを堪えて、なんとか笑顔で誤魔化す。
「……イヴ」
「そ、そういえば私の言った事覚えててくれたんだね。ヘルメット、すぐに調べるから貸してほしいな」
彼は、少しの間黙った後、そっとヘルメットを脱ぎ……それを座席の上に置き、私の手を優しく握ってきた。
「ど、どうしたの?」
「……イヴ、君に地球で約束した事、俺は今でも覚えてる」
「地球で?えっと……なん、だっけ?」
嘘だ。彼がなんの事を言っているのか。私は分かっている。それでも分からないフリをしてしまう。まだ誤魔化そうとしてしまう。
「何度でも言うよ。君の力になりたい、君を支えたいんだ」
「……だ、大丈夫だよ。いつもあなたは助けてくれてる。支えてくれてるもの」
心から信頼している彼の手の温もりが、優しい言葉が、私の心を揺さぶる。今すぐに全てを話してしまいたい。全てを打ち明けてしまいたい。だけど……
「イヴが本当に大丈夫だと言うのなら、俺は君を信じる。だけど、そんな辛そうな顔をしているイヴを放っておくなんて、俺は出来ない」
彼の真剣な眼差しに私は何も言えず、黙ってしまう。ひたすらに甘えてしまいそうになる自分を、強く抑え込むしか出来ない。
「イヴ、頼む。何かを抱えているのなら教えてほしい。君を助けたいんだ」
「……ダメ、だよ……私が甘えたら、ジェイソンが、また無茶をしてしまうから……エリアΩでの時みたいに、あなたが私の隣からいなくなってしまうかもしれないから……」
声を震わせながらも私は少しずつ、胸の内を語っていく。頭では言ってはいけない、黙っていないといけないと思っていても、止める事が出来ない。
「貴方と離れてしまう可能性のある未来…その方向へ歩む覚悟なんて私には……」
「……イヴだけじゃない。俺もさ」
「えっ?」
ジェイソンの言葉に私が驚くと、彼は優しく微笑んだ。
「エリアΩで、イヴと離れ離れになった時、俺の心は不安と恐怖で押し潰されそうだった。君の存在が俺の中で、どれだけ大切なのか改めて思い知ったんだ」
「ジェイソン……」
「イヴを失う未来。そんなの考えたくもない。そんな未来へ歩む覚悟、それは俺にも無いんだ。だけどその未来に怯える君がいるのなら、今、君に約束する」
彼が私の目をまっすぐ見つめる。そんな彼の姿から私も目を離す事が出来ない。彼の手から、言葉から、流れてくる温もりがあまりにも心地良いから。
「これからどんな事があっても君から離れて行ったりしない、ずっと君のそばにいる。だから、安心して頼って、甘えてくれていいんだ」
私の中で何かが堪えきれなくなり、蓋をしていた感情が、涙が溢れ出してくる。
「……っ、ごめん、ね。また、胸を借りても、いい、かな?」
「ああ……」
私は彼に抱きつき、大声で泣いた。ずっと、抱えていた、胸の痛みと苦しみを洗い流すように。
長い間泣き続け、震え続けている私を彼はずっと優しく抱きしめてくれていた。
そして、落ち着きを取り戻した私は、ゆっくりと少しずつ、自分の抱えていた秘密を彼に打ち明けた…
今回も読んでいただきありがとうございます。今回から後書きも少々書いていこうと思います。
イヴが抱えている内容が内容だけに明るい雰囲気を作る事が難しいなぁ…。話が進んでいけば軽い雰囲気や明るい雰囲気の展開になっていくはず…!
あ、キャラの話し方など何か違和感を感じるところがあったらすみません。
あと、感想いただけると嬉しいです。