ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー   作:通りすがりのヌ・ナセ草

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平穏と兆し

「ライプニッツと一緒にストランガに行くって……お前はこの事を知っていたのか?」

 

「あのさぁ、お前なんかと一緒に行けって言われてボクが来ると思ってるわけ?」

 

 相変わらず嫌な言い方だがライプニッツの言う通りだ。コイツが俺と一緒に行動するなんて余程の事情がない限り絶対にあり得ない事だろう。

 

「ケイン・ガードナー。ボクはそんな話一言も聞いてないんだけど」

 

『当たり前だろ。伝えたら絶対に手伝わないという事なんて、ここにいる全員が分かってる事だろうが』

 

 ケインの言葉にライプニッツは心底面白くなさそうに舌打ちをしてそのまま黙ってしまう。

 

「ケイン、この調子で本当に大丈夫なのか……?」

 

『心配はするな。手伝う事はコイツにとっても悪い話ではないからな』

 

「どういう事だ……?」

 

「おい、さっさと話を進めろよ」

 

 俺がケインに詳しい事を聞こうとしたところでライプニッツが割り込んでくる。遮られた事にいい思いはしないが、確かに本題を聞きたい所だ。

 

「それでケイン。何で一緒に行く必要があるんだ?」

 

『モントイとディヴィードでの事を考えると今回もまたミュータントが現れてもおかしくない。ストランガにはカンナもいるがそれでも戦力は多い方いいだろう』

 

 ケインの言う通り今までの事を考えると戦えるメンバーは多い方がいいだろう。ライプニッツの操縦する『ガルーダ』の強さは俺達が身をもって体験しているから強さの保証もある。

 

「……分かった。そういう事なら協力するにこした事はない」

 

「おい、何ボク抜きで勝手に話を進めているんだよ。ボクはまだ協力するなんて一言も言ってないんだけど?」

 

 ライプニッツは先ほどと変わらない不機嫌な様子で否定的な言葉を放つ。正直コイツが喜んで協力してくれるとは最初から思っていない。

 

「まあ、報酬の件を先にやってくれるっていうのなら考えてやらなくもないけどさあ」

 

 説得するのは無理だと考えケインを頼ろうと考えた所でライプニッツがケインに向けて何かを提案する。

 ライプニッツの提案を聞いてケインが難しい顔で考え始める。

 

『……いいだろう。どの道今回の任務が終わったら約束を果たす予定だったし大して変わらないしな』

 

「チッ……つまんないなぁ。もう少し悩むのかと思ったのにさあ」

 

 ケインが大して悩まずに報酬の話を承諾すると今さっきまで楽しそうにしていたライプニッツは再び不機嫌そうな様子に代わり、そのまま出口に向かって歩き始める。

 

「おい!どこに行くんだ!?」

 

「お前にいちいち報告する必要があるわけ?どうしても聞きたいんならケイン・ガードナーに聞けよ」

 

 それだけ言うとライプニッツはさっさと立ち去ってしまう。後に残された俺達は揃ってケインの方を見る。

 

『はぁ……アイツは今から惑星ソフィアに戻って来るだけだ。心配はするな』

 

「惑星ソフィアに?今から準備をしてストランガに向かうんじゃないのか?」

 

『さっき言った報酬の件が関わっているんだ。それについては説明しなくても後々分かる事だから気にするな』

 

 ケインがそう言うのならあまり追及する必要もないだろうと考え、イヴとミューの方を見る。

 イヴも同じ考えなのか小さく頷き、ミューに至っては何が何だかよく分かっていないのかキョトンとした顔で見回している。

 

『ライプニッツの方の関係もあるからストランガに向かうタイミングについてはこっちから指示を出す』

 

「具体的にはいつ頃になるんだ?」

 

『恐らく1ヶ月後くらいだろう。それまでは日常生活を送ってもらってくれて構わない』

 

 ケインの言葉に俺達が顔を見合わせると同時にミューが大喜びでくっついて来る。

 モントイといい、ディヴィードといい、あっちこっちに飛びっぱなしだったから、こうやって落ち着けるのは久々だから嬉しいんだろう。

 

「パパ!ママ!何するの!何やるの!?」

 

「こら、まだお話の途中でしょ?いい子にしてなきゃ」

 

「はーい!」

 

 俺から離れたミューは嬉しそうにその場でくるくる回っている。

 そんなミューの姿をケインも微笑ましく眺めているが咳払いをして空気を戻す。

 

『とにかくそういうわけだ。万が一こっちで何かあった時は連絡を入れるからゆっくりしておけ』

 

「うん。それじゃあ、またねパパ」

 

 最後に挨拶を交わしてケインとの通信を終了する。そうなるとやっと一息ついたという感覚が体に出て来る。

 

「お疲れ様。私の方で片付け作業をやっておくからジェイソンは先に休んでて」

 

「そんなわけにはいかないさ。俺も手伝うからさっさと終わらせてみんな一緒に休もう」

 

「ミューも手伝うー!頑張るー!」

 

 イヴ1人で頑張らせまいと俺とミューが張り切るとそれを見てイヴが小さく笑ってくれる。

 

「それじゃあみんなで一緒に頑張ろっか」

 

「おー!」

 

「こらっ!危ないから走っちゃダメ!」

 

 1番張り切るミューとそれを追いかけるイヴを笑いながら眺める。

 これからの1ヶ月はきっと疲れるけど楽しい事になる。そう考えながら俺も2人を追いかけた。

 

 

 

 

 夜も更けて誰もが寝静まった暗い夜。

 先日までの戦いや今日の片付け作業で疲れ切ったのかジェイソン、イヴ。2人とも自身の部屋で静かに寝息を立てて眠っている。

 そんな中、イヴの部屋に誰かが音も無く入って来る。

 

「………………」

 

 そしてイヴの側に静かに近づくと顔に手を被せる様にかざし、そして……

 

 

 

 

「……ん?何か、いたような……気のせいかな……」

 

 ちょっとした違和感にイヴが目を覚まし周囲を見回す。だが月明かりに照らされた周囲に人影は無く、おかしな所は何も無い。

 

「ふあ……明日も早起きしてジェイソン起こしてあげなきゃ……」

 

 そう呟くと彼女は再び布団に潜って寝息を立て始めた。

 

 

 

 

 走った。ひたすらに走った。滑って移動する事が出来ることすらも忘れ、人がいない森の中へとただただ走り続けた。

 私は何をしようとしていた?あの人に何をしようとしていた?さっきまで楽しく仲良く一緒に作業をしていたあの人に何をしようとしていた!?

 

「なんで…なんで…なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!」

 

 考えがまとまらなくて転ぶ様にその場に崩れ落ちる。月明かりに照らされた自分の両手を見るがそこにはいつも通りの透き通った水の様な体しか見えない。

 

「やだ!やだやだやだやだ!なんでこんな考えが浮かんでるの!?」

 

 あの時咄嗟に逃げ出さなかったら私は何をしようとしていたのか、なんとなくだがそれが分かってしまう自分がいる。

 そしてそれはきっと今までも自分の気づかない内に行われていたのだろう。

 そうでなければいつの間にか自分の中に増えていた仲間のミュータント達の情報に説明がつかない。

 それと同時にうっすらと私の中に残っている考えを振り払う様に頭を振る。

 

「ママは大好き!!大好きなの!大好きなのに……なんで……」

 

 そっと立ち上がったその表情はいつもの笑顔はどこにも無く、泣きじゃくる子供の表情しかなかった。

 

「ママを……殺さなきゃって考えちゃうの……ミュー、おかしいよ……」

 

 突然湧き上がった自分のものとは思えない感情とハッと気づいた時には手をかざしていた時の恐怖を思い出して自分自身で抱きしめ震えを抑える。

 

「どうしよう……パパ、ママに相談……ううん。きっと困らせちゃう……」

 

 ミューは悩みながらもゆっくり元来た道を引き返して家へと向かう。自分が家にいなければきっと2人に心配をかけてしまう筈だと考えて。

 

「そうだ……ミューがこうやって抑えていればいいんだ……大丈夫、ミューは強いもん……だから、だから……」

 

 自身が抱える秘密。それを打ち明ける『勇気』と『覚悟』はまだミューの中には無かった。

 抱えている秘密はあまりに危険で大きく、辛いものだから……




 今回も読んでいただきありがとうございます!
 ストランガ編に入る前にジェイソン達にはちょっと休憩を挟んでもらいました。とはいえまたすぐにライプニッツと共にストランガへ出発ですが……
 ミューの身体にも異変が起こっていますがこの先どうなるのかは引き続きお楽しみいただければ幸いです。

 今回も感想などがあったらぜひよろしくお願いします!
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