ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
「ミューの様子がおかしい?」
ケインのとの通信から2週間ほど経った頃、俺の部屋を訪れたイヴから小さな声で相談された。
「うん。ここへ帰って来た翌日辺りからよそよそしいというか、私達を避けているような気がして……」
たしかにミューの動きは以前に比べてぎこちない部分があった。気になってはいたが、むやみやたらに踏み込むのもどうかと思って気にするだけで留めておいたのだ。
「てっきり俺だけにそういう反応かと思ってたけどイヴにも同じような反応をしていたのか」
「ジェイソンにも?一体どうしちゃったのかしら……」
「何か思い当たる事はあったりしないか?」
俺の言葉にイヴが考え始める。俺自身も何かなかったか考えてみるが何か変な事をしたとかされたとかそういう記憶は思い浮かんでこない。
「うーん……ごめんなさい。何も思いつかないわ」
「ミュー自身に聞いてみるのが1番確実なんだろうが……」
「今の調子だと聞いても正直に答えてくれなさそうよね」
俺達を避けるような動きをしているのなら正面から行ってもいい成果は得られないだろう。
「ところでミューは今どうしているんだ?」
「あの子なら掃除をしてくるって言って格納庫の方へ向かった筈よ」
いつもなら俺かイヴの所へ飛び込んできて一緒に作業をしようだなんて言ってくるのが定番だというのに……やはり何か抱えているのだろうか?
そう考えた所で少し前のイヴを思い出す。あの時のイヴも自分の身体の変化について打ち明ける事も出来ず、自分1人で抱え込んでしまっていた。
「多分、ミューはあの時の私と同じような状況なのかも」
イヴも同じ事を考えていたのだろう。俺の考えに答えるように小さく呟く。
「だとしても何を抱え込んでいるのか……もしかして出会った時に言っていたやらなきゃいけない事っていうのを思い出したのかもしれないな」
「でも、それなら私達に話に来てもおかしくない筈よ?それとも私達には話せない内容なのかな……?」
俺達に話せない内容。ミューの性格からすると地球、もしくは俺達になにか大きな被害を及ぼしかねない事なのだろうか?
「とりあえずここで考えていても仕方ない。一度ミューに話を聞いてみよう」
「うん。だけど無理して聞き出さないでミューの判断に任せてみましょ」
「ああ。勿論だ」
知る事よりもミュー自身の気持ちを尊重しなければならない。まだ話してくれないというのならばゆっくりと時間をかけて少しずつでも相談してもらえるように努力するつもりだ。
そう考えながら俺はイヴと一緒にミューがいるという格納庫へ向かった。
●
あの日の晩のことを考えながら格納庫の隅っこでパーツの山を少しずつ整理整頓していく。
幸いママやパパには何があったのか気づかれてはいないみたいだがあの時の衝動がいつ襲って来るか分からないからこうやって距離を取ってしまう。
「ミュー、自分の事が怖いよ……なんであんな事考えちゃったんだろ……」
手のひらを前に向けて色々念じたり振ったり変なポーズを取ったりするがあの時みたいに何かが放たれそうな感覚はやって来ない。
「訳分かんないよ……」
あれ以降ママを前にしてもあの時自分の中に湧き上がって来た殺意は微塵も感じられない。その正体が何か分からないまま頭を抱えていると格納庫の扉が開く音がした。
誰が来たかなんて考えるまでもない。ママかパパ、もしくは2人揃ってだろう。
「多分ミューの事聞きに来たんだよね……」
私は不安と恐怖でぐちゃぐちゃになりそうな心を必死に押さえつけながら2人の元へ足を運んだ。
●
「ミュー。どこにいるんだー?」
「ちょっと聞きたい事があるの。掃除を中断して来てもらっていい?」
イヴと共に格納庫へ入り、ミューを探し始める。ここで出て来てもらえなかったらどうしようかと考えたがミューは俺達が呼んですぐ荷物の後ろからミューが恐る恐るといった感じで顔を出して来る。
「何かあったのか?」
「う、ううん。ミューに聞きたいことってなにー?」
いつも通りを装ってはいるがやはり様子がおかしい。とはいえどう聞いた方がいいか考えているとイヴがミューのそばに近づいてしゃがみ込む。
「ねえ、ミュー?多分なんだけどあなたは何か抱え込んでたりしない?」
「えっ?あ、う……それは……」
イヴが諭すように優しく問いかけるとミューはあからさまな様子で動揺している。その様子を見てイヴはそっとミューの手を取り目を見つめる。
「ミュー、あなたが抱えている悩みは私達には分からない。だから私達に教えてほしいの」
「………………」
ミューはイヴの言葉に困ったような表情を浮かべてどうしたものかと狼狽えている。
「私もね。ミューと出会う前にジェイソンに秘密にしてた事があったの」
「えっ?」
「今ミューが話せないのは私の時と同じなのかは分からない。でも、ミューは私達の事を信用してくれてないというわけじゃないのよね?」
「信用してる!信頼してるよ!!でも、でもっ……」
今にも泣き出しそうな顔で声を詰まらせるミューをイヴは優しく抱きしめる。ミューはそれでも何かを口にする事はなかった。
「それを聞いて安心した。大丈夫、ミュー自身が話せる様になるまで私達は待ってるから」
「ああ、焦らなくてもいいんだ」
「…………うん」
そう言ってミューはイヴから離れる。その顔は先程と変わる事なく不安げなままだ。やはりこの状態で聞き出す事は出来ないと考え、一旦戻ろうとイヴに目配せをする。
イヴもそれを汲み取ってくれたのか小さく頷いた。
「それじゃあミュー、私達はまた上で別のお仕事してるから何あったら呼んでね?」
「………マ、ママッ!」
戻ろうとした所でミューが大きな声でイヴを呼び止める。何事かと思って振り返るとミューが強く目を瞑って口を開いている。
俺もイヴもミューを急かす事なく次の言葉をゆっくりと待つ。
「も、もし……もしもミューがママやパパに危ない事しちゃうかもしれないって分かったら……どうする?」
「どうするって……ミューはそういう事をしたいわけじゃないのよね?」
「勿論だよ!でも、もしもそういう事になったら……」
ミューはそれ以上次の言葉を紡ぐ事なく俯いたまま黙ってしまう。
「ミューがしたくないっていうのならそれを回避する方法をみんなで考えてみようかな」
「1人だと思い付かない事や解決できない事もみんなで考えれば解決出来るかもしれないしな」
「ママ達が危険な目に遭うかもしれないのに……?」
「ミューは大事な家族だからな。見捨てたり、突き放したりなんてしないさ」
ミューは俺達の言葉を聞くと少しだけ安心したような嬉しそうな表情を浮かべて小さく笑ってくれた。
「うん……ありがとう。もう少し、もう少しだけしたらきっと話せるかもしれないから……」
ミューの言葉に俺達が頷くとミューは再び格納庫の奥に向かっていってしまった。恐らく格納庫内の整理整頓を再開するのだろう。
その様子を見て俺とイヴは少しだけ安心して部屋に戻った。
●
「少しだけミューの気持ちを明るくさせられたみたいだけど……やっぱり私達に関わっている事なのかな?」
「さっきの言い方だと自分でも制御出来ない何かがあるのかもしれないな」
「私達もただ待っているだけじゃなくてミューについて少し調べてみましょう」
イヴの言う通りだ。ミューが勇気を出すのを待つのは当然だがその間に少しでも調べておけばミューの力になれる事があるかもしれない。
そう思って俺とイヴは何か分かる事がないかその日から少しずつ調べ始めた。
●
「まさかあんな形でボスミュータントに出会うなんて思いもよらなかったわ。イヴ達がいなかったらどうなっていたか……」
そんな事を呟きながらジェニファーが扉を潜る。ディヴィードで次元断層について調べていた彼女だったが少し前に調査もひと段落して今は衛星ノーラへと戻って来た所だった。
「さて、と。ディヴィードで調査出来た事を元に色々と調べてみなきゃいけないわね」
そう言って彼女がデータを弄り始めるとふと見えたデータに目が止まった。それは今までミューの協力によって得られた数々のミュータントのデータだった。
「そういえば、ミューちゃんがくれたミュータントのデータ。色々と細かい情報があって助かるけどミューちゃん自身についてはあまり情報が無いのよね……」
無論これまでに何度もミュー自身の事について調べようとはしている。だが今まで得られた情報はスライム状のミュータントのデータとイヴを真似したという事ぐらいである。
(だけどただのスライム状のミュータントがイヴの真似をしたからといってあんな特殊な個体になるなんて……あら?)
それでも何か新たな情報を得られないか何度もデータを精査し続けている。そしてその甲斐があったのか表示されているデータ欄には今まで見た事が無いデータが表示されていた。
ディヴィードに行っている間に自動で研究させておいたのは正解だったようだ。
「これで何か新たな情報を得られればいいんだけど……えっ?」
そこに表示されていたものはあまりにも予想外のもので思わず何度も確認をしてしまう。
だが何度見直してもそこの書いてある事が変わる事はない。
「どういう事……なんでミューの身体にミューとは別のミュータントの反応があるの?」
新たに発見されたミュータントの反応。それが何かはさらに精査しなければいけない。だがそう考えると同時に彼女の中には不安が渦巻き始めていた……
新年あけましておめでとうございます!
今回も読んでいただきありがとうございます!
前回のお話から引き続きミューの謎について触れていく事となりました。果たしてミューはどうなっていくのか……
いつもの如く感想などありましたら是非是非よろしくお願いします!