ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
格納庫でのやり取りから2週間程経った頃、ケインから再び俺達に通信が送られて来た。
『待たせたな。そっちの準備はどうだ?』
「こっちはいつでも大丈夫だ。以前の様に地球にライプニッツが来るのか?」
『あー、いや。アイツなら……』
【なんで僕が最初から最後までアイツと一緒にいなきゃなんないわけ?勝手に向かってるからアイツらがついてこいよ】
『と言って、ひと足先にストランガへと向かってしまってな』
ケインの言葉に俺もイヴも大きくため息を吐く。いや、ケインに言われる前からもしかしたらと考えていた所はあったが……
「ライプニッツらしいと言えばそうなのだけれど……」
「行ってしまったのならどうこう言っても仕方ない。俺達もすぐにストランガへ向けて出発するとしよう」
『ああ、そうしてくれ。ところでミューはどうした?』
普段なら3人映っている所に俺とイヴしかいない事に疑問を感じたのだろう。ミューを探す様に視線を動かしている。
「ああ、ミューは今出発の準備をしているんだ」
「出発には間に合うと思うから大丈夫よ」
本当は、ミューは今も俺達と出来るだけ距離を置こうとしているからここにいないだけだ。
だがミューの抱えている悩みについてはまだケインには相談していない。SFであるケインに話してしまえばケインも動かざるを得なくなってしまうからだ。
『それならいいんだ。次の目的地はミュータントにとっては危険な場所だからな。十分に注意するんだぞ』
「ああ、分かっている」
内心ケインには申し訳ないと思いつつも通信を終了し、イヴの方に向き直る。
「ケインに黙っているのも気分が悪いが仕方ないな……」
「うん。話すにしてもミュー自身が落ち着いてからにしましょう」
イヴの言葉に小さく頷き、俺達は出発する為にもミューを探しにいく事にした。
●
「ミュー。大丈夫か?」
あっちこっち探して格納庫まで来てみるとG-ソフィアの側にしゃがみ込んでいるミューを見つけた。
近づいて声をかけてみるとミューは頷いてゆっくり立ち上がる。
「……うん、大丈夫。パパやママに迷惑かけない様に頑張らなきゃ!」
立ち上がったミューの表情は引き締められていて。一種の決意の様なものを感じられた。
「何かあったら俺達にすぐに相談するんだぞ」
「私達も力になるからね」
ミューは拳を握りしめて気合いを入れると、しっかりとした足取りでG-ソフィアに乗り込んでいく。
(力が入り過ぎて空回りしない様に私達も気を付けてあげなきゃ)
(ああ、そうだな)
ミューに聞こえない様に小声で話し合った後、俺達もG-ソフィアに乗って惑星ストランガへ向けて出発した。
●
「もうすぐストランガに着くけどカンナは元気にしてるかしら?」
ワームホールの中でイヴが懐かしむ様子でカンナ達の事を思い出している。最後に会ったのはゼオグと戦った時だと考えると確かに懐かしく感じる。
「カンナの事だからきっと元気にしてるさ。それより2人共、少しでも体調の変化があったら教えてくれ」
ジェニファーさんがくれたチップによってストランガでもイヴやミューに影響が出なくなっている筈だが念には念を入れておかなければならない。
俺の言葉に2人が気を引き締め直したのを見て、俺はワームホールの終わりに備えてハンドルを握り直した。
●
先程の会話から数分後、俺達は無事ワームホールを抜けてカンナが住むストランガへと到着していた。
見慣れた光景が広がると思っていた俺達を迎えたのは以前とは姿形を大きく変えたカンナの家だった。
「いったい何がどうなってこんな形に……?」
「さ、さぁ……?」
俺とイヴが困惑している中、ミューだけは目を輝かせて外を眺めている。ミューはあのデザインを気に入っているみたいだ。なんだか少し将来が心配になる。
「オッラァ!!」
そうこうしていると大きな声と共にカンナが窓から身を乗り出してきた。
「カンナ、そんなに身を乗り出すと危ないですよ」
そんなカンナを嗜める様にカンナの後ろからケンウッドも顔を覗かせる。
『カンナ!ケンウッド!』
『2人共元気そうで良かった』
「カンナちゃんはいつでもどこでも元気なのだ〜。というわけでごいっしょに〜……フーラワー」
外部スピーカーでカンナに呼びかけるとカンナは元気よく挨拶をしてくれる。
カンナの元気と勢いに気圧されているとミューが震えながら輝いた瞳でカンナの事を見ている。
「ミュー?いったいどうし……」
『フーラワー!!』
俺が何があったのか尋ねようとした所でミューが手を振りながら大きな声でカンナの真似をする。
カンナの居住を見てはしゃいでいた事を考えるとカンナとミューはセンスが似ているのかもしれない。
「ナイス挨拶〜!カンナちゃんが100点あげちゃいましょう!」
「パパ!ママ!あの緑の人凄い!凄い楽しい!!」
地球での出来事を忘れてしまうくらいの勢いではしゃぐミューを見て俺はカンナの明るい性格に心の中で感謝した。それと同時にミューの成長に悪影響は出ないだろうかともちょっと考えてしまった。
「なんか失礼な事考えない〜?」
『い、いやそんな事は……そうだ、ここにライプニッツが来なかったか?』
向こうからはこっちの様子が見えていない筈なのに考えている事を読まれてヒヤッとする。
とりあえず話題を逸らす為にも先に来ている筈のライプニッツについて聞いてみる。
「ライプニッツ様ならばジェイソン様達が来る少し前に来て、今はこの家の裏にいらっしゃいますよ」
ケンウッドの言葉を聞いて家の裏手へと回るとそこには自分のMAに寄りかかる様にしてこちらを見ているライプニッツがいた。
だが何より目を引くのはライプニッツのMAだ。以前見た時と比べてまるで違う機体になっていたからだ。
「おい。ずいぶんと遅い登場じゃないか」
『お前が先に来ただけじゃないか……』
「ま、いいや。その間にボクは『ライジングガルーダ』の調整も出来た事だし」
ライプニッツがそう言いながら自分のMAを見上げる。
『ライプニッツ、そのMAは一体どうしたの?』
「ガルーダを作った奴らに色々改造させたんだよ。あんなのハンドルで制御なんて出来るわけないだろ」
ケインが言っていた報酬というのはこの『ライジングガルーダ』の事だったのか。というかガルーダはハンドルで操縦していたのか……
「ジェイソン様。ここで一度採集についての話を致しますか?」
『ここでの採集についてケンウッド達はもう知っているのか?』
「はい。ケイン様よりジェイソン様達と共に調査をしてほしいという話をされております」
カンナとケンウッドには俺達からも応援を頼もうと思っていたから話が早く済むのはありがたい。
「このカンナちゃんとケンウッドに任せんしゃい!」
「ケイン様より伺った話ですと、次元断層に対して効果がありそうな植物を探してほしいとの事でしたので、それならば『ヌ・ナセ草』が良いかと」
「ヌ・ナセ草……たしか以前フロサンテまで回収しに行った草か」
あの時回収した『ヌ・ナセ草』はカンナの頭にさしていたという事を思い出し、カンナを見るがあの時さした草はどこにも見当たらない。
『カンナ、前に見つけたヌ・ナセ草はどこに行ったんだ?』
「あー、あれー?気づいたらどこかに飛んでちった〜。まさにイキが良いってやつだね!」
「植物が飛んでくってどういう事だよ……」
カンナの話を聞いてライプニッツが小声で呟くのが聞こえる。正直言いたい事は分かるがストランガではよくある事だと割り切るしかない。
『という事は飛んで行ったヌ・ナセ草を探しに行けばいいのか?』
「いえ、それには及びません。この時期であればヌ・ナセ草はストランガへ帰って来る時期なので」
『なんだか、里帰りみたい……』
『ミューの知ってる植物と全然違う……』
勝手に飛んでいき、時期になったら勝手に帰ってくる。ストランガの植物だから仕方がないとはいえあまりにも自由奔放すぎる。
『とにかくこの星でヌ・ナセ草を探せばいいのか。これだけ人数がいる事だしすぐに見つかるだろう』
「ヨッシャァ!それじゃあ私達も出発だー!」
「カンナ、窓から飛び出そうとするのはレディのする事ではありませんよ」
そんなやり取りから少ししてカンナとケンウッドは自分達のMA『エイル』に乗り込んで俺達のすぐそばまで来る。
『ストランガの道案内ならこのカンナちゃんにおっ任せなさーい!』
『最近ヌ・ナセ草の反応のあった場所を辿っていきますので皆様私達の後について来て下さい』
そう言って走り出した『エイル』を追う様に俺達が走り出し、それを見て心底嫌々といった様子でライプニッツも追いかけてくる。
ミューもイヴも今のところ何事もなさそうだし、このまま何事もなく順調に探索が進んでくれればいいんだが……
今回も読んでいただきありがとうございます!
ストランガへ到着してカンナとケンウッドの登場となりましたがこうして書いてみるとカンナの口調って本当に自由なんだなぁって思いました。
あとヌ・ナセ草は割と凄い扱い方でもなぜか納得できてしまう気がする…
今回も感想などありましたらよろしくお願いします!