ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー   作:通りすがりのヌ・ナセ草

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決戦への準備

 ジェニファーさんの口から出たゼオグという言葉は俺達の誰もが微塵も予想していないものだった。

 

「そんな、私達はあの時たしかにゼオグを倒したはずよ!」

 

「それにもしゼオグが生きていたというのなら王の資格はイヴに移ってない筈です!」

 

『ええ、その通りよ。だから私もその点について出来る限り調べてみたの』

 

 俺達の問いに答える為にジェニファーさんは画面に資料を映し出す。そこには俺達が過去に戦ったゼオグのデータとミューに寄生しているというゼオグのデータの情報が表示されていた。

 

「これがミューの中に……あれ?でも、なんだか私達と戦った時とはデータが変わっているような……」

 

「ああ、俺達と戦った時と比べると弱い気が……」

 

『そうね。あなた達の戦ったゼオグに比べてあまりにも弱体しすぎているのよ。私はこれをゼオグ自身が生み出した分体だと思っているわ』

 

 分体と聞いて俺もイヴも、画面の向こうにいるケインですら困惑した表情を浮かべる。

 

「分体って……どうして?」

 

『惑星ソフィアと地球で起きたミュータントとの戦い。その2箇所での敗北からゼオグはもしもの時の為に自身の保険を用意したのかも』

 

 ジェニファーさんに言われ地球での激戦を思い出す。まさかあの戦いの結果からゼオグは自身が敗北した場合に備えていたというのだろうか。

 

『そして自身の一部から分体を作り、それをどこかへ飛ばした。自身が倒される事があってもその分体を起点に再び蘇る為に……』

 

「そしてその分体は偶然にも地球にやって来た、という事ですか……」

 

『ええ、ミューちゃんが他のミュータントと違うのはゼオグの影響なのかもしれないわ』

 

 俺達がミューと共に色んな惑星で戦っている間、ゼオグはミューを通じてその様子をずっと見ていたのかもしれない。

 今の今まで何も気づけずにいた自分に苛立ちを感じていた。

 

『ジェイソン、あまり自分を責めるな。俺達だって気づけていなかったんだ……それよりもこれからどうするつもりだ』

 

「どうするって、もちろんミューを救い出しに行く以外ないだろう!」

 

『まあ、そうだろうな……だが、俺は協力出来ないぞ』

 

 ケインの言葉に俺とイヴは驚きで動きを止める。だがジェニファーさんは分かっていたかのように落ち着いている。

 

『ゼオグが関わっているとなればSFに報告をしないわけにはいかない。そうなれば必然的に俺がSF側につく事になる』

 

「それは、だが……」

 

『分かっている。ジェイソン、SFの方は俺がどうにか足止めをする。その間にジェニファーと協力して解決に進めるんだ』

 

「SFを足止めって……パパは何をする気なの!?」

 

 イヴがケインの身を案じて心配そうな声をあげる。いくらケインとはいえSF相手に行動するのはあまりに無謀だ。

 

『そう心配するな。何も直接軍とやり合うわけじゃない、作戦を遅らせるだけなら色々やりようがあるものさ』

 

 ケインはそう言って小さく笑ってみせるが、それでも無茶には変わりない。俺達がいかに早くゼオグを倒せるかが重要となるのは間違いないだろう。

 

『ジェイソン、イヴ。私はミューちゃんとゼオグを引き剥がす方法を探してみるわ。あなた達はどうにかミューちゃんの居場所を探してちょうだい』

 

「分かりました。イヴ、急いで調査を始めよう」

 

「ええ。ママ、パパ……2人も無理はしないでね」

 

 イヴの言葉を受け取って2人は頷いて通信を切った。

 ここからは時間との勝負だ。SFが動き出せばミュー自身もだがイヴに対してもどんな指示が下されるか分かったものではない。

 

「ミュー、必ず助けてやるからな……」

 

 俺は拳を強く握り締め、ミューを助け出す為にも急いで調査を開始した。

 

 

 

 

 調査を開始して3日が経った。いまだにミューの居場所がわからない事に焦りを感じてくるがどうにか自身を落ち着かせて作業を続ける。

 

「初めてミューに出会った時の強い反応……あれはミューじゃなくてゼオグの反応だったかもしれない……」

 

「えっ?あぁ……あの時か」

 

 調査を続けている最中、イヴの言葉でミューに出会った時のことを思い出す。

 あの時は人工海エリアに現れた生命反応を確かめに行き、そしてミューに出会ったのだ。

 

「あの時、あの反応をミューの物だと思ってたけど、もっとちゃんと調べていればこんな事にはならなかったかもしれない……」

 

「いや、あの時はそう思い込んでもおかしくないさ……」

 

 落ち込むイヴを慰めるが、そこで俺はある事に気づく。

 

「そうだ!イヴ、あの時反応していたデータを使えばミューの場所をセンサーで探る事が出来るかもしれない!」

 

「でも、あの時のデータは反応が一瞬すぎてほとんど情報が拾えなかった筈よ……」

 

「それでも何も無いよりはずっとマシな筈だ。とにかく今は使える物はなんでも使っていこう!」

 

 俺達は手当たり次第に情報を探すやり方から過去の反応について調べ始めた。それが正解かどうかなんて分からないが、少しでもミューに近づけるならどんな手も試すしかない。

 

「……これ、もしかして……ジェイソン見て!」

 

 しばらく画面と向き合っていたイヴに呼ばれて駆け寄ると、彼女の画面のセンサーにはとても微弱ながらもミューと思われる存在の居場所を示していた。

 

「あの時ほど強大な反応ではないけど観測する事が出来たの」

 

「ここは……人工海エリアか」

 

 現在ミューがいるのは偶然か意図的なのか分からないが初めてミューと出会った場所だった。

 すぐにでも向かいたい所だが何も備えずに行ったところでゼオグに返り討ちにされてしまう可能性もある。

 

「まずはジェニファーさんに一度報告して向こうの進展を確認しよう」

 

「ええ、それとSFに通信を気付かれないように注意しなきゃ」

 

 通常通信を使ったらSFに話している内容が全部筒抜けになってしまう。俺はジェニファーさんが使っていた秘匿回線を使って再度連絡を取る。

 数回のコールの後通信が繋がり、画面にジェニファーさんが映し出される。だがその表情はいつもの明るい物ではなく疲れ切った物だった。

 

「マ、ママ!?大丈夫!?」

 

『大丈夫……ちょっと疲れているだけ。それよりミューちゃんの居場所が分かったの?』

 

「はい。場所は俺達とミューが初めて出会った場所。人工海エリアです」

 

 俺達の報告を聞いたジェニファーさんが満足そうに頷く。

 

『無事見つけられて良かった……あなた達ならきっと間に合わせてくれると信じていたわ』

 

「間に合わせる?……まさかSFに動きがあったんですか!?」

 

 俺が驚くとジェニファーさんは小さく首を横に振る。

 

『いいえ、そうではないわ。私が作ったチップ。それがそちらに届く前に調べ終えてくれた事ですぐ次の行動に移せるわ』

 

「作ったって……ママ、一体いくつの作業を同時進行していたの!?」

 

『あなた達がこれから命を賭けて戦ってくれる事、宇宙の命運に繋がる事……それらと比べたら私の苦労なんて大した事ないわ』

 

 ジェニファーさんは自身の頬を両手で叩いて気合いを入れ直す。

 

『ケインはSFにゼオグの情報を報告して戦いの準備を進めているところよ。どうにか遅らせてはいるけど猶予はあまり無いものと考えてちょうだい』

 

「はい。地球にSFが来るその前にゼオグとの決着を付けなければいけない、そういう事ですね」

 

「だけどママ。ミューからゼオグを引き剥がす方法は何かあったの?」

 

『ええ、さっき言ったチップはそれを可能にする物よ』

 

 先程ジェニファーさんが送ったと言ったチップの存在を思い出す。引き剥がす方法を1人で調べながらチップの制作も行っていたというのはさすがとしか言いようがない。

 

『チップが届くのはそこまで時間は掛からないでしょうから今の内にチップについて説明しておくわ』

 

 ジェニファーさんは画面に2種類のチップについての詳細を映し出す。

 

『この2つのチップはあなた達が持って来てくれたヌ・ナセ草のデータから作り出されたものよ』

 

「あの草のデータがまさかこんな形で役に立つなんて……」

 

 重要なものではあると理解してはいたがここまで重要な役割を持つとは思ってもいなかった。

 

『まず1つ目は『アンチディメンションバリア』ね。これは周囲の次元断層を相殺するバリアを車体周囲に発生させる事で次元断層の中を進む事が出来るようになるものよ』

 

「次元断層の中を!?す、凄い……」

 

 新しいゼオグが次元断層を使ってくる可能性は十分にあった事からこれだけでもかなりの手助けになる。

 

『そして2つ目……こっちが本命の『アクセルブラストEB』よ』

 

 アクセルブラストと聞いて俺もイヴも画面を注視する。そこには今使っている『フルアクセルブラスト』とはまた別のアクセルブラストが映し出されている。

 

「これが本命って……今まで以上の火力が出るという事ですか?」

 

「そしたらミュー自身も危ないんじゃ……」

 

『いいえ。『アクセルブラストEB』はゼオグとミューちゃんを引き剥がす事に重点を置いた特殊な兵装よ』

 

 ジェニファーさんはそう言うと先程表示した詳細よりもさらに細かい物を映し出した。

 

『難しいかもしれないけど『アクセルブラストEB』を当て続ければゼオグの寄生を阻害してミューちゃんから剥がす事が出来るはずよ』

 

「その場合ゼオグはどうなるの?」

 

『そのまま消滅してくれればいいのだけれど……ごめんなさい。詳しい事までは分からないわ』

 

 試験をするデータも時間も無い中ここまで作ってくれただけでもありがたい事だ。

 

『それと注意点としてミューちゃん自身の意識がある程度起きていないと引き剥がすのは難しいわ』

 

「ゼオグが身体を操っている今の状態で撃ち込んでも効果はないと言う事ですか……」

 

『無いとまではいかないかもしれないけどかなり薄いと思って頂戴』

 

「まずはミューを呼び起こさないとダメか……何か方法は無いか……?」

 

 そう考えていると外から何かが着陸した様な音が鳴り響く。

 

「な、なんだ!?」

 

「まさか、もうSFが……!」

 

『いいえ違うわ。でも、ちょうどいいタイミングで来てくれたみたいね』

 

 ジェニファーさんの言葉と同時に扉が開く。

 

「お前らさあ、ボクの事を運送屋か何かって思ってない……?」

 

 そこに立っていたのはストランガで別れたライプニッツだった。




 今回も読んでいただきありがとうございます!
 まずは更新が遅れてしまい申し訳ありません……いまだに仕事の方が忙しくあり執筆作業が思うように進んでおりません……

 今回はゼオグとの戦いに向けての準備を進めるお話となりましたが決戦はもうすぐとなるでしょう。遅筆ながら頑張っていきますのでよろしくお願いします。

 今回も感想などありましたらよろしくお願いしますー!
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