ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
「ふーん……何?結局あのガキがなんかやらかしたってわけ?」
ライプニッツはここに来るまでに部屋の様子を見て来たのだろう。やって来て早々、その物言いに俺は怒りが込み上げる。
「まあ、どうでもいいけど……ほら、さっさと受け取れよ」
俺の様子なんて気にする事もなくライプニッツは小さなコンテナを投げ渡してくる。中を覗いてみるとそこには2種類のマニューバチップが入っていた。
「これは……先程言っていた2種類のチップですか」
『えぇ。無事に届いたようで良かったわ』
「もっとボクに感謝して欲しいんだけど。わざわざこんな所まで届けてやったんだからさあ」
ライプニッツが俺に視線を向けながら言い聞かせる様に言葉を飛ばしてくる。
「分かってる。助かった」
「……うえ、お前に感謝されると気持ち悪いな」
相変わらずのライプニッツの態度にため息が出るが、今はそんな事で時間を消費している場合じゃない。
「ジェイソン、私はすぐにこのチップをG-ソフィアに装着してくるわ」
「あぁ、頼む」
イヴは俺からチップを受け取って格納庫へと向かう。部屋に残ったのは俺とライプニッツ、そしてモニター越しのジェニファーさんだけだ。
「ライプニッツ、お前は今何が起きているのかは知っているのか?」
「は?知ってるわけないじゃん。いきなりさっきのチップを渡されて、説明も無しにここに向かわされたんだからさ」
ライプニッツはその時の状況を思い出しているのか不機嫌になる。
『無理強いをさせた事は謝るわ。だけど今は一刻を争う状況なの……』
ジェニファーさんはライプニッツにミューの中にゼオグがいる事、それをどうにかする為に皆で奮闘している事を伝えた。
「ふーん、そういう事になってたんだ……で?お前はやれるのかよ」
「やれるって、なにが……」
「この作戦、絶対成功するってわけじゃないんだろ?もし失敗した時は、あのガキごとゼオグを吹っ飛ばせるのかって聞いてるのが分かんないかなぁ?」
「それは……」
ライプニッツの言う通り、もしミューを呼び戻せなかったり引き剥がせなかったとなれば俺達自身、もしくは地球へやって来たSFがミューごとゼオグを倒さなければならない。
その覚悟が今の俺にあるかと言われると……
「ま、頑張ってみれば。ボクは折角ここまで来たんだしお前が苦労する様を見させてもらうからさ」
「っ……イヴがそろそろチップの取り付けを終える頃だと思うので俺も出発の準備を整えに行きます」
『分かったわ。ジェイソン、あなた自身もだけどイヴにも決して無理をしないように伝えてちょうだい』
「はい。分かりました」
俺はライプニッツの問いに答える事が出来ないまま格納庫へ向かった。
●
『ライプニッツ、あなたは本当に手伝ってくれないの……?』
部屋に残されたライプニッツに向けてジェニファーが声をかける。相手が相手だけに少しでも戦力は欲しい。
「さあね。ボクが興味あるのはアイツの苦しむ姿だし、それ以外は好きにやらせてもらうよ」
だがライプニッツはそっけない言葉を放つと来た道を戻って行き、ライジングガルーダへと乗り込んでしまう。
「好きなように、さ」
ライプニッツは空を見上げながらそう小さく呟いた。
●
「こうやってまた地球の底を目指して進むのも懐かしいな……」
「ミューを探しに来た時以来だから結構久しぶりだね」
あの後、チップの装着やその他の準備を終えた俺達はミューの反応がある人工海エリアへ向けてG-ソフィアを走らせていた。
「「…………」」
俺達は少し言葉を交わして、またすぐに黙ってしまう。俺もだがイヴも不安に思う部分が大きく、どうしても色々考え込んでしまっている。
(俺達は本当に無事にミューを助けられるのか……?もしかしたらライプニッツの言ったように……)
一瞬嫌な想像をしてしまうがすぐにその考えを振り払う。俺がそんな気持ちではミューを助けることなんて出来ない。
「……ジェイソン。ミューを助けたら、前と同じような生活に戻れるのかな」
「それは……」
調査や準備などでゴタゴタしていた事もあって戦いが終わった後のことについては考えていなかった。
だが冷静に考えれば、もうミューはSFから特殊な存在だと認識されてしまっただろう……
「ゼオグを取り除けても多分SFはミューを以前と同じように見てくれないと思うの」
「……最悪、俺達と一緒にいる事は出来ないかもしれない」
「……そう、だよね」
この戦いはたとえ勝ったとしても俺達にとっては満足のいく結果にはならないかもしれない。だがそれでも出来る事をやるしかない。
重たい空気の中、俺は黙ったままG-ソフィアをさらに深部へと進めて行った。
●
「…………ん?」
居住エリアへと差し掛かった辺りでG-ソフィアに通信が届く。誰かと思いながら相手を確認してみるとそこには予想外の人物が表示されていた。
「これは……ケイン?」
「パパから?まさか、何かトラブルが……?」
イヴが通信を開くとそこには真面目な表情をしたケインが映っていた。
「パパ、どうかしたの?」
『……2人ともよく聞け。つい先程SFが地球へ向けて出撃する事が決定した』
「なっ!?」
SFが動くというのは予想していた事ではあったが俺達が考えていたよりもずっと早い。
「そんな……それじゃあSFの部隊が地球に来るっていうの!?」
『いや、一気に押し寄せる事でミュータント達がイヴへの防衛反応を起こすかもしれない、という事で出撃を一時的に止める事は出来た』
ケインの言葉に俺とイヴは胸を撫で下ろす。だがケインの表情を見る限り未だ楽観視出来る状況ではない事を察せられる。
「他に何かあるのか……?」
『ああ、出撃を止める代わりに俺はお前達を地球から離脱させる任務が下された……例え戦闘になったとしてもだ』
俺達はSFにとって邪魔な存在なのだろう。それ故にケインを使って俺達を戦場から取り除こうという事か。
「……つまり、俺達と接触した場合交戦は避けられないという事か」
だが俺達は何を言われても止まるつもりはない。そうなるとSFの一員としてケインは俺達を止めなければならない。
『俺はもうすぐ地球に辿り着く。お前達は急いで……うおっ!?』
ケインが通信の向こうで身体を大きく揺らす。どうやら何か強い衝撃を受けたようだ。
『なっ…お前、どういうつも…………』
「パパ!?パパ!どうしたの!?」
突然ケインとの通信が切れてしまい、イヴが慌てて呼び掛けるが返事はない。最後に聞こえた言葉から何かに襲われたようだが……
「ジェイソン、どうしよう……!」
「……ケインの事だ。無事であると信じるしかない」
こんな状況で俺達は引き返す事は出来ない。不安になるイヴを落ち着かせながら俺は今まで以上にG-ソフィアを加速させて進んで行くしかなかった。
●
もうすぐ地球に着くという所でケインの操縦する『メタル・アタッカー』は突然飛んで来たMAによって近くの小惑星へと連れ去られてしまっていた。
『まさかお前が立ち塞がるとはな……』
ケインが目の前のMA…『ライジングガルーダ』を眺めながらライプニッツへと通信を送る。
ケインの言葉を聞いてライプニッツは何も言わずに『メタル・アタッカー』を見下ろしている。
『ライプニッツ、今はお前と遊んでいる暇は……』
「知ってるよ。ゼオグが復活したんだろ?で、お前はSFとしてアイツらを止めに行こうとしてた……そんなとこじゃないの?」
『分かっているのならなぜ……!』
ライプニッツはケインの問いかけに答えずしばらく黙っている。
『ライプニッツ……?』
「……ここでお前をボコボコにすればこき使われた礼にもなるし、ジェイソンの奴にも借りを作れて一石二鳥じゃん」
『……どうあっても邪魔をする気か』
『メタル・アタッカー』が主砲を『ライジングガルーダ』に向けるとそれに答えるかのように『ライジングガルーダ』もブースターを噴かして高速移動を開始する。
(……あーあ、何やってんだろ……まぁ、別にいっか)
ライプニッツは小さくため息を吐き、それと同時にかつて自分と共にMAに乗っていた女性の事を思い出しながら戦いを開始した。
●
「あれ以降パパから通信が無いけど……大丈夫かな……」
さっきの通信を終えてからケインからの連絡は来ていない。追いつかれてはいけないとはいえ心配になる。
「あ……ごめんなさい。もう人工海エリアなんだから気を引き締めなきゃ……」
「いや、家族の事だ。心配になって当然だろう」
だが今イヴが言った通り、つい先程俺達は人工海エリアへと辿り着いていた。ここまで何も無かったがミューの反応も徐々に近づいてきており、俺の緊張も高まっていく。
「ジェイソン、以前ミューと出会った場所まで進んで。ミューの、ゼオグの反応はその先にあるわ」
イヴの指示した場所を目指して俺は以前来た時よりも慎重に進んで行く。
いつどこからゼオグの不意打ちが来るのか注意しなければいけない。だが、そのようなものは何もなく、俺達は無事に目的の場所へと辿り着いた。
「なんだ、これ……」
「こんな大穴、無かったよね……?」
以前ミューが倒れていた場所には見覚えの無い大きな穴が空いており、ゼオグの反応もその穴の中から発せられていた。
「ジェイソン、気をつけて……」
「ああ……イヴ、行くぞ!」
俺は意を決してG-ソフィアをその大穴目掛けて発進させた。今度こそゼオグを倒し、ミューを取り戻す決意と共に。
今回も読んでいただきありがとうございます!
ついに決戦前までやってきたこの話。もっとクライマックス感を出したかったけどなかなか難しい…この決戦がどのような物になるか少しでも楽しんでいただければ幸いです。
今回も感想などありましたらよろしくお願いします