ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
G-ソフィアの車内で私はジェイソンに今の自分の身体の変化について語っていく。その間、彼は言葉を発する事なく、真剣な表情で私の話を聞いてくれた。
「……私自身、分かっているのはこれくらいかな。ごめんなさい、いきなりこんな話をされても信じられないよね」
「いや、信じるよ。むしろ俺の方こそすまない。君がこんなに苦しんでいたというのに、何も気づいてやれてなかった」
「ジェイソンは悪くないよ。隠していたのは私なんだもの」
話す事の出来なかった私を責めたりする事もなく、彼はまるで、自分の悩みかの様に真剣な面持ちで受け止めてくれた。
「これからは、俺もどうすればいいか一緒に考えるよ。現時点では何か出来る事はないか?」
「……それなら、一つお願いしても良いかな?」
そう言って、私はソフィアのシステムを起動させ、画面を切り替えていく。
「今から私が外に行くからジェイソンには見ていてほしいの」
「見る?いったい何を?」
「ソフィアのレーダーには、周囲のミュータントの反応を調べる機能が備わっているのは、知ってるよね?まあ、そこまで正確ではないけど……」
そこまで話して、ジェイソンが驚きの表情を浮かべる。流石に、私が何を頼むのか察したのだろう。
「まさか、ミュータントとしての反応を調べるのか!?」
「うん。今までずっと怖くて避けてた道。苦しみや痛みから、少しでも逃げたくて踏み出せなかった」
ミュータントとして反応してしまえば、今まで通りの生活は、きっともう送る事ができない。それが分かっていたから、私は調べる事が出来なかった。
だけど今は違う。彼の約束を支えにして、踏み出す事が出来る。
「ジェイソン。私がもし、ミュータントとして反応してしまっても……」
「大丈夫、心配はいらないよ。約束しただろ、どんな事があっても、君のそばにいるって」
「うん……ありがとう」
私はG-ソフィアから降りて少し距離を取ると、G-ソフィアの中でジェイソンが準備を終えたのか小さく頷くのが見えた。
反応を調べる作業は一瞬で終わる。だけどその一瞬が、こんなにも重く感じたのは初めてだ。
ジェイソンが調べ終わったと思われるタイミングで、私がG-ソフィアの中に戻ると、そこには拳を握りしめて俯く彼の姿があった。
「微弱だけど、ミュータントの反応が……」
「そっか……でも、なんとなく分かってはいたから……」
「イヴ。すぐに修理を終えて、惑星ソフィアに向かおう。惑星ソフィアに降りて事情を説明すれば、きっと力を貸してくれる筈だ」
「ううん。多分それは難しいと思う。惑星ソフィアは10年前の襲撃があってから、ミュータントに対しての警戒が、とても強くなってるの」
10年前に惑星ソフィアを襲ったミュータントの大襲撃。今でも、惑星ソフィアの各所では、その被害からの復旧作業に追われている場所があるほどだ。
惑星ソフィアの住人の、ミュータントに対する恐怖と、怒りは私達が想像するよりも遥かに大きいだろう。
「きっと、惑星に降りる前に私のミュータント反応を検知されてしまう。そうなったら、どうなってしまうか私にも分からないの」
「そんな……何か、何か方法は……」
「……ジェイソン。一度、休憩して落ち着きましょう。そうでなくてもあなたは操縦や調査とかで疲れているんだから」
「いや、だけど……」
私の為にこうしてくれているのは嬉しいが、どこかで一度休んでもらわないと、倒れるまで動き続けてしまいかねない。
「今、頭を悩ませ続けても、きっと答えは出ないと思うの。それだったら、せめていつでも万全に動ける状態にしておかなきゃ」
「……そうだな。すまない、焦りすぎていた」
「私は外で、G-ソフィアの様子を見てるからゆっくり休んでて」
彼にそう告げ、私は外に出た。彼の負担を少しでも和らげる為、自分の中の不安を紛らわす為にも、いつも以上に集中してG-ソフィアの点検を始めた。
●
イヴに言われてG-ソフィアの中で少し休憩を取るが、正直落ち着いてはいられない。少しでも先へ進む為の方法を考えないと。
イヴの言う通り、このまま降り立つ事は難しいだろう。それならば誰かに協力を頼みたいところだ。
(他のMAパイロット達に相談してみるか?いや、下手すれば惑星ソフィアに睨まれかねない問題だ。巻き込むわけにはいかない)
「誰か、協力を頼める人物……」
ここに来るまでに、何か手がかりになるものがなかったかと思い、今までの道のりを思い返していく。その中で、俺はあの時のメッセージを思い出す。
『私達の大切な娘を、この機体を使って守ってあげてほしい』
「そうだ!もしかしたら……!」
俺はG-ソフィアから飛び出して点検作業をしているイヴの元へ走る。
「ど、どうしたの!?」
飛び出してきた俺に、イヴが驚き、慌てるが、今はそれどころではない。
「イヴ、ソフィアゼロを地球に送ってくれた、あの2人に連絡はとれないか?」
「お父さんとお母さん?たしかに、G-ソフィアから、お父さんに通信を繋ぐ事は可能よ。だけど問題があるの」
「問題?」
「お父さんはSF所属の人なの。だからお父さんとの通信記録は、全てSFのデータベースに残ってしまうの」
ミュータントを警戒しているSFが、イヴの今の状況を知ってしまえば、放っておくわけがない。
「通信機に細工をして記録を残させない方法もあるんだけど、G-ソフィアの通信機では、その細工をするという事も難しいの」
「そうなのか……いや、待てよ。それならこの施設の通信機を使う事は出来ないか?電力が生きているんだ。通信機だって動くかもしれない」
もしかするとSFにバレてしまうという危ない橋を渡る事になってしまうかもしれないが、その先に光があるのなら渡るしかない。
「基地の通信設備……うん、それならもしかしたらいけるかもしれない」
「今、思いつく方法は他に無いんだ。やってみる価値は十分にある。イヴ、通信設備の場所は調べられるか?」
「ちょっと待ってて……多分、ここだと思う。G-ソフィアですぐそばまで行ける場所にあるみたい」
「よし。それなら急いで修理に取り掛かろう!」
俺が意気込むと、イヴがジッとこちらを見ている事に気づいた。俺は自分の身体を見てみるが、何もおかしい所は無い。一体どうしたのだろうか?
「ところでジェイソン。ちゃんと休憩して体力は回復出来たの?」
「あ、いや。急いだ方がいいと思って……」
「もー!言ったそばからまたすぐ無茶しようとするんだから!手伝いが必要な部分と、最終チェックの時はちゃんと呼ぶからそれまでしっかり休んで!」
イヴにそう言われながら背中を押され、俺は大人しくG-ソフィアの中に戻った。頼りっきりな気がして申し訳ないと同時に、少しでも元気を取り戻してくれた事が嬉しく思えた。
●
「イヴ、各システムに異常は見られないか?」
「うん。今のところ何も無いかな。今度こそ大丈夫だと思う」
修理を終えた俺達は、イヴが調べてくれた場所までG-ソフィアに乗って移動していた。道中は障害がないおかげで、苦労する事もなく目的の場所付近まで辿り着けた。
「ここからは歩いていかないといけないみたい」
「それじゃあ、俺が行ってくるからイヴはここで待っていてくれ」
「うん。通信機をハッキングしたら私に繋いで。お父さんに通信をしてみるから」
俺はG-ソフィアから降りて細い通路を進んで行く。途中で何枚かの扉があったがどれもロックは掛かっておらず、すぐに最奥まで辿り着いた。
通路の奥の部屋には、イヴの読み通り、通信機が設置されていた。電源を探して起動させ、早速ハッキングを試みる。
「イヴ、聞こえるか?今、通信機にハッキングをしている。そっちも通信の準備をしてほしいんだ」
『こっちはいつでも大丈夫。……私達、なんだかテロリストみたいだね』
「ま、まあ、状況が状況だから仕方ないと考えよう。よし、ハッキング完了。これでしばらくの間は誰にもバレずに通信が可能だ」
やっている事はなかなか大胆な事だが、イヴの為だ。仕方ないと割り切るしかない。
そんな事を考えていると、イヴが通信を始める。
『もしもし、こちらEARTH MA-001 GAIA-SOPHIA SV。聞こえてたら応答してください。繰り返します……』
イヴが何度か通信を試みるがなかなか通信が繋がらない。G-ソフィアをの名前を出してはいるが情報を隠した相手の通信をすんなり受け取ってはくれないか。
『お願い、応答して。私達を助けて、お父さん……!』
強く助けを求めるイヴの願いが届いたのか、遂に通信が繋がり、モニターに男性の顔が映る。
『……こちら、ケイン・ガードナー。驚いたな、本当にイヴだとは思わなかったぞ』
『お父さんっ!』
「良かった。無事、繋がったんだな」
『そっちのお前は、ジェイソン・フラドニックか?』
「ああ、はじめまして。あんたの事はイヴに聞いてる。地球でソフィアゼロを送ってくれた事は感謝してもしきれない」
『礼を言うのはこっちも同じだ。いや、それよりも、お前達は今どこにいるんだ!?発信源を隠した上での通信なんて……もしかしてイヴかって思わなかったら、SFの調査案件として報告していたところだったんだぞ』
ケインの言っていることはもっともだ。あまりに怪しすぎる通信。普通なら回線を開かずに何者からの通信なのか調べられて当たり前だ。
『ごめんなさい。でもどうしてもSFには知らせられない話なの』
「ケイン、俺からも頼む。イヴの為にあんたの力が必要なんだ」
『……分かった。とりあえず話を聞こう。その後のことはそれから考えよう』
俺とイヴは地球を出発してからの事を順を追って話し始める。イヴの侵蝕の事、他のMAパイロットの事、プラネイドGの事、エリアΩとゼオグとの戦いの事。そして今のイヴの身体の事。
『……有機生命体、か。エリアΩやゼオグにも驚かされたが、イヴの身体に起きた変化が正直、一番の驚きだな』
「信じてくれるのか?」
『わざわざ、嘘を言う為に、ここまで入念な準備はしないだろう。そうでなくとも、俺たちの『娘』が助けを求めているんだ。疑う必要なんてどこにもないさ』
ケインのその言葉にイヴが少し羨ましく思える。家族の絆というのは、こんなにも素晴らしいものなんだなと、それを改めて感じられた。
『ところでジェイソン。惑星ソフィアがインベム、いや、ミュータントに対しての警戒が凄まじいという事は知っているか?』
「ああ、イヴから10年前の襲撃の影響だってことは聞いている」
『そうだ。お前達が直ぐに降下しようとせず、こうして連絡を取ってきたのは、賢明な判断だった』
「……もしも、そのまま降下していたらどうなっていたんだ?」
『イヴのミュータント反応を検知した時点でお前達を攻撃、捕縛していたのは間違いないだろう。まあ、その事態は避けられたがな』
ケインの真剣な雰囲気に息を呑む。そんな事になれば、イヴとはまた離れ離れになってしまっていただろう。
『さて、話が長くなってしまったな。イヴの事も調べる為に合流したいんだが、先程言った通り、惑星ソフィアに降り立つのは不可能だ。そっちに合流する形にしたいんだが、お前達は本当にどこにいるんだ?』
『私達は今、惑星ソフィアの近くにある廃棄された軍事基地にいるの。座標を送った方がいい?』
『廃棄された軍事基地……?ああ、あそこか。座標は大丈夫だ。しかし、なるほど。これは都合がいい』
ケインはどうやら俺達がいる場所が分かったようだ。しかし、都合がいいというのがどういう事か気になる。
『その廃棄基地は、ミュータントが住み着いていないかたまに見て回っているんだ。そろそろ見回りのタイミングでな、それを理由にすれば怪しまれる事なく、お前達に合流出来そうだ』
「なるほど、たしかにそれは都合が……いや、という事は運が悪かったら、俺達はSFの人間と鉢合わせしていたのか!?」
『あはは……私達、本当に運が良かったんだね』
イヴの身体の事を知られてはいけない、そんな状況で鉢合わせしていたかもしれないという事を考えるとゾッとする。
早いところケインに合流して、イヴの事について詳しく調べてもらいたいところだ。
「ところでケイン。調べると言っても何をするつもりなんだ?」
『そこら辺については合流してから話そう。ハッキングをしているとはいえ、そろそろ怪しまれる可能性も出てくる』
「分かった。俺とイヴはあんたが来るまで大人しくしているよ」
『ああ、そうしておけ』
そう言うとケインとの通信は切れた。念の為、ログも調べてみるが俺達が通信をしていた形跡も、ハッキングをした痕跡もなにも残っていない。
やっている事が本当にテロリストそのものだと言われても、ぐうの音も出ない。
『ジェイソン?どうかしたの?』
「あ、いや。なんでもない。今からフレッドと一緒にそっちに戻るから、ケインが来るまで最初の場所で待っていよう」
ケインとの繋がりを持つ事が出来た。この一歩が、イヴを元に戻せる道への一歩だと、そう信じながら俺はG-ソフィアへ繋がるワームホールへ足を踏み入れた。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今回、もう少し展開を進めたかった思いがあったのですが、ただでさえ遅い投稿がさらに遅くなってしまいそうなので投稿させていただきました。
投稿ペースをあげられる様に頑張っていきますので生暖かい目で見守ってください。
感想などいただけると嬉しいです。