ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
真っ暗で静かな世界。ミューの意識はそんな暗闇の世界の中を漂っていた。
(……ミュー、何してたんだっけ……分かんないや……)
自分がどこで何をしていたかを何故か思い出せない。思い出した方がいいのかもしれないが心地よい眠気に考えが阻害される。
(ねむ……)
そのまま眠ってしまってもいいが、暗闇の中、遠くの方からなんだか妙に気になる音がする。
ミューはその音を聞くためだけに眠気に逆らいながらただただ耳を澄まし続けた。
●
「地下にこんな空間があったのか……」
大穴の中は、上にあった空間を遥かに超える巨大な空間になっていた。俺はゆっくりと着地をして周囲の状況を確認する。
上から流れ込んでくる水の影響で周囲の陸地の大半は水没しており、動き回るのは苦労しそうな地形という事が確認できる。
「イヴ、反応の方はどうなっているんだ?」
「すぐ近くで反応しているけど周囲に何かいる気配は……」
そこまで言ったところで近くの水面が盛り上がり、何かが飛び出してくる。それは水で出来た巨大な触手のようなものでうねうねと蠢いている。
「何だこいつは……!?」
「ジェイソン!来るわ!」
イヴの声と同時に俺はアクセルを踏み込んで急ハンドルを切る。その直後、元いた場所に水の触手が叩きつけられ、地面が大きく抉られる。
「俺達を攻撃してきたという事は……!」
「もしかしてゼオグが操っているって言うの!?」
イヴの読みに答えるかの様に周囲の水面からさらに何本もの触手が突き出してくる。
「やられっぱなしでいられるものか!」
俺は主砲で水の触手をどんどん撃ち抜いていく。だが、撃ち抜いても撃ち抜いても水の触手は次々と新たに生まれてきて俺達を追い込もうとして来る。
「くっ!キリがない!イヴ、どこに本体がいるか分かるか!?」
「ダメ、センサーの反応がおかしくなってるの!」
ゼオグが操る周囲の水に反応が出てしまっているのだろう。反応は色んな所を示しており、ゼオグの位置を探す事が出来ない。
「どうにか本体を見つけないと……!」
襲い来る触手を撃ち抜きながら視線を動かすと、1番奥の触手の中で岩の様な塊が動いているのが見えた。
「イヴ!1番奥の触手に何かがいるみたいだ!調べられるか!?」
「ちょっと待って……何だろうこれ、核の様に見えるけど……」
「他に狙う部分は無いんだ、とにかくそれを狙ってみよう!」
俺は触手の合間を抜け、その塊が入っている触手の前に辿り着く。そのまま他の触手がこっちを狙う前に素早く核を撃ち抜く。
「これでどうだ!?」
だが、弱点と思われる核を破壊されても大したダメージが入っていないのか、触手達は動きを一瞬止めた程度で再度襲いかかって来た。
「くそっ!核を破壊しても意味が無いのか!?」
「上!」
イヴの声に反応して再び急ハンドルを切って触手の叩きつけを回避する。だがそこからさらに驚きの事態が起きた。
「なっ!?次元断層!?」
先程までとは違い、今度は触手の通った軌跡を描く様に次元断層が発生していた。
発生してから少し経つと消滅していく様だが……そんな事よりもゼオグが次元断層を操って来た事に俺は驚いていた。
「以前は使う素振りなんて無かったはず……」
「もしかしてミューが情報を取り込んだミュータントの能力を使えるの……?」
「だがミューはディグローラーの情報をいつ取り込ん……」
そこまで言ってディヴィードでミューの様子がおかしかった事を思い出す。あの時表に出ていたのがミューではなくゼオグだったとしたら、俺達の気づかない内にディグローラーの情報を取り込んでいたとしてもおかしくない。
(あの時、ゼオグは俺達の様子を観察していたというのか……)
怒りの籠った瞳もジェニファーさん達を仕留められなかった事に対するものだったのだろう。
今更ながら色々と気づく部分が出て来る事に悔しさを感じ、ハンドルを強く握りしめる。
「ジェイソン!」
イヴの声にハッとして前を見ると、G-ソフィアの目前まで触手が迫って来ていた。
「しまった…!」
俺は咄嗟に『バーンスパーク』を発動させて水の触手を蒸発させながら前方へ突き進む。
その勢いのまま次元断層に突っ込むが、ジェニファーさんが用意してくれた『アンチディメンションバリア』のおかげで次元断層の中を水中にいるかの様に進む事が出来た。
「あ、危なかった……」
「凄い……本当に次元断層の中を進んでる……」
俺達が次元断層から無傷で飛び出すと触手達が狂った様に暴れ出す。おそらく次元断層で仕留める事が出来たと思っていたのだろう。
「水の触手はバーンスパーク、次元断層はバリアでどうにかなるが、ヤツにダメージを与える方法を考えないと……」
おそらくあの水の触手はギャザウィーラと同じ役割をしているのだろう。ただギャザウィーラと違うのは周囲に水がある限り無限に復活すると思われるという事だ。
「触手を狙い続けても意味が無いというのに……!」
「待って、触手達の様子が何かおかしいわ…」
イヴの言う通り触手達は先程までと違い、俺達の左右に回り込む様に動き始めていた。
「なんだ…?」
何が来るか警戒していると、正面の水面から水で出来た竜の様なミュータントが3体飛び出して来る。
「今度はメタルベロスの真似事か!」
「っ!?頭の上を見て!」
イヴが何に驚いていたのか俺も一目で分かった。中央の竜の頭部の中にはミューがうずくまる様な形で漂っているのが見えたからだ。
「ミュー!聞こえるか!」
外部スピーカー使って呼び掛けるがミューはこちらの呼びかけに反応する事なくゆっくりと漂っている。
その様子に最悪の事態を想像してしまうが、時折、身体を動かす様子を見て少しだけ安堵する事が出来た。
「あんな所にミューがいたんじゃ迂闊に攻撃が出来ない……」
「ミューがいる頭以外を狙うしかないわ。その間に私はなにか情報がないか調べてみる!」
「分かった。頼ん……」
俺がそこまで言った瞬間何かがG-ソフィアの上空を高速で通過していった。それと同時に俺達の背後にMAが着地する。
『なんだこいつは……水で出来たミュータントなのか?』
「ケイン!?」
俺達の背後に降りて来たのはケインの操縦する『メタルアタッカー』だった。ケインの登場に驚いていると左右に展開していた触手達が一斉に弾ける。
『なんだよ。全然手ごたえ無いじゃんか』
「ライプニッツも!?」
通信から聞こえて来た声に俺もイヴも驚く。ケインが追い付いてくる事は予想していたがライプニッツも付いてくるなんて思いもしなかった。
『とっくにゼオグにやられたと思って見に来たのに……つまんないなぁ』
「なんで2人がここに!?」
『知っての通り、お前達を地球離脱させに来たんだが……ゼオグと交戦してしまった以上ヤツに背を向ける方が危険だ』
ケインはそう言いながら新たに生えて来た触手を素早く撃ち抜く。
『ライプニッツの奴に足止めされた結果、引くに引けない絶妙なタイミングでの突入になってしまったな』
「ライプニッツが足止め……?」
アイツは俺達にチップを渡した後そのまま帰ってしまったと思っていたが、まさかケインの足止めをしていたとは……
『妙に時間を気にしながら足止めしてくると思えば、なんだかんだで……』
『あのさぁ!!変な事話してないでさっさとこっちの手伝いをしろよ!!』
3つの竜を1人で相手にしていたライプニッツがケインの言葉を遮って怒鳴りつけてくる。
急いで俺も竜のひとつへ攻撃をする。だが水で出来ているからか攻撃しても周囲の水を取り込んですぐに再生してしまう。
『ていうかさぁ、さっさとあのガキ叩き起こしてアクセルブラスト撃てよ』
「それが出来るなら最初からやってる。だけどスピーカーで呼び掛けても返事が無いんだ」
『チッ…めんどくさいなぁ』
俺達が話している間も水の竜と水の触手は攻撃の手を緩める事なく襲いかかって来る。
G-ソフィアは『アンチディメンションバリア
』のお陰で次元断層を気にしなくても良いが、2人は苦戦しながらどうにか攻撃を続けている。
「あっ、もしかしたら……ジェイソン!ミューに通信を繋いでみる!」
「ミューに通信?……そうか!その手があったか!」
以前モントイでミューが通信機を食べてしまった事でミュー自身に通信を繋げる事が出来る様になったのを思い出す。
「これで少しでも変化があれば良いんだけど……」
イヴは不安になりながらも通信をミューに向かって発信した。
●
(んん……)
微睡みの中、ミューは先程と変わらず遠くから聞こえる音に耳を傾けていたが、その音が徐々に大きくなって来ている事に気づく。
(なに……もぅ……)
ゆっくりと顔を上げて声のする方に目を向けるとそこには暗闇の中、小さな明かりが漂っているのが見える。
(なんだろ……?)
『ュー……ミュー……』
自分を呼ぶ声にミューはぼんやりとしながらそちらへと意識を向ける。
小さな明かりはゆらゆらと揺らめく炎であり、それは少しずつこちらへ近づいて来る。
(呼んでる……)
『ミュー……ミュー……』
呼び掛けに答えるようにミューが立ち上がり、そのまま炎に向かって進み出す。
『……!!………!!!』
(……?)
その瞬間、真っ暗な暗闇の奥から何かが聞こえて来た。暗闇からの音にミューは気味の悪さを感じたがなぜかそちらから目を離せない。
『ミュー』
炎からの呼び掛けも気になるが、何故か暗闇に意識が向いてしまう。炎は後回しにしても良いかなと思い、暗闇へと足を向ける。
『ミュー!!!』
その瞬間炎は大きく燃え上がり、ミューを飲み込もうと襲いかかって来る。
恐怖と嫌な予感に一気に目が覚めたミューは暗闇に向かって動き出す。それと同時に暗闇からの音はどんどん大きく、そしてハッキリ聞こえる様になって来た。
『ミュー……起き……!』
(そうだ……この声は……)
自身の脳内に聞こえる声の主の事をしっかりと思い出し、ミューは暗闇に手を伸ばしながら叫んだ。
「パパ!ママ!」
そしてミューの意識は暗闇の中から急速に浮上していった。背後に迫っていた炎から異常なまでに強い憎しみと敵意を感じながら……
今回も読んでいただきありがとうございます。
まず投稿の方を遅れてしまい申し訳ありません。内容の方も徐々に終わりに近づいて来ましたが、盛り上げられる展開というのがなかなか難しく悪戦苦闘しておりました……
このまま最後までお付き合いいただければ幸いです。
感想などありましたら是非よろしくお願いします!