ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー   作:通りすがりのヌ・ナセ草

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乖離

 イヴが通信を使って呼び掛けを続けると動きの無かったミューの身体が水の中でもがく様に動き出した。

 

「ミュー!聞こえるか!?」

 

『……?……!?!?』

 

 目が覚めたが今の状況を理解出来ていないのだろう。ミューは周囲を見回し、混乱した様に狼狽える。

 

「イヴ!『アクセルブラストEB』の準備を!」

 

「え!?だけどミューが混乱している状態じゃ……」

 

「ミューの意識がいつまで表に出ているか分からない!やるしかない!」

 

 ゼオグは再びミューの意識を封じようとしてくる筈だ。その前に手を打たなければならない。

 

「ミュー!説明している時間は無い!今からお前とゼオグを引き剥がす!」

 

「私達とまた一緒にいたいと思うのなら私達を信じて!」

 

 通信越しに俺とイヴの言葉を聞いたミューは不安な表情を浮かべながらも小さく頷いた。

 そうしている間にもG-ソフィアは下部、側面に格納していた兵装を展開してミューに向けて照準を合わせる。

 

「エネルギーチャージ開始!」

 

 ただならぬ雰囲気を感じたのだろう。周囲の水の触手が一斉にG-ソフィアを狙い始める。だがミューの意識が表に出ている所為なのかその動きは先程までと違いあまりにもぎこちない。

 

『おい、こんなんじゃただの的当てと変わんないじゃんか』

 

『ジェイソン!この状態なら俺達だけでどうにかなる!お前達は発射に集中しろ!』

 

 ライプニッツとケインが動きの鈍った触手を次々と破壊していく。そのお陰で俺達は万全の状態でフルチャージへ辿り着く事が出来た。

 

「発射準備完了!ジェイソン、いつでも行けるわ!」

 

 イヴの合図を聞いて俺はミューへ狙いを定め、祈りを込めながらトリガーを引く。凄まじい衝撃と共に砲口から巨大な光線が発射され、一直線にミューへと到達する。

 

「ゼオグを引き剥がす事に特化しているとは言っていたが……」

 

「お願い……これでミューを助けて……」

 

 ジェニファーさんの言葉を思い出しながらも俺はミューの動きに注意する。何かあればすぐにでもアクセルブラストを止めるつもりでいたからだ。

 ミューは光線の中で胸を押さえながら動き回る。だが、それ以上に周囲の触手や竜の方が激しく暴れ回り始めた。

 

「これは……ゼオグが苦しんでいるのか?」

 

「ジェイソン!ミューが!」

 

 触手達からミューの方に視線を向けるとミューを取り込んでいた竜の頭が力無く倒れ、その衝撃でミューが外へと放り出されるのが見えた。

 俺は反射的にG-ソフィアから飛び出し、ミューの元へと走り出していた。

 

「ジェイソン!?」

 

『おい!なにをやっているんだ!?』

 

 イヴとケインの呼ぶ声が聞こえるが俺は止まる事なく暴れ回る触手を掻い潜ってミューの元へ駆け寄り、抱え上げる。

 ミューは意識を失っている様で腕の中でぐったりとしている。

 

「ミュー!大丈夫か!?」

 

「う……ぁ……」

 

 ミューに意識がある事を確認して俺はG-ソフィアに戻ろうと急いで引き返す。

 

『ジェイソン!上だ!』

 

 ケインの声に反応して咄嗟に後ろに飛ぶと目の前に触手が叩きつけられる。

 触手はおぼつかない動きでありながらも一斉に俺を狙い始める。

 

「ミューを奪い返すつもりか!」

 

 ミューを抱き抱えたまま俺はG-ソフィアに向かって走り出す。触手はどうにかミューを捕えようと狙いを定める事も無く、やたらめったらに叩きつけを繰り返してくる。

 

「くっ!滅茶苦茶じゃないか!」

 

 暴れ狂う触手達を前に足を止めた瞬間、触手が一斉に弾ける。上を見上げてみると『ライジングガルーダ』が触手へと一斉に攻撃を加えている様子が見えた。

 

『お前さぁ、無鉄砲でバカすぎじゃない?自殺行為したいなら1人でやれよ』

 

「ライプニッツ!すまない!助かる!」

 

 ライプニッツが作ってくれた隙に俺は急いでG-ソフィアに飛び込む。

 

「イヴ!ゼオグの反応は!?」

 

「まだ残っている!だけどミュー自身からは反応が消えているわ!」

 

 どうやらミューからゼオグを引き剥がす事は出来た様だ。一安心していると周囲の地面が揺れ始めている事に気づく。

 

「な、なんだ!?」

 

『ジェイソン!気をつけろ!』

 

 ケインの忠告と同時に正面の水が盛り上がり、見覚えのある形へと変貌していく。

 

「こいつはあの時の……!」

 

 その姿は超次元空間で戦った『ゼオグセブ』そのものだった。ゼオグセブは凄まじい敵意をこちらに向けているが、寄生元であったミューを失った影響なのか形を維持出来ずに所々その姿を歪めている。

 

「捨て身の覚悟でミューを奪うつもりか……」

 

『だが逆に言えばなりふり構ってられない状況になったとも捉えられる!』

 

 ケインが主砲で攻撃を仕掛けるとゼオグセブの身体の一部があっさりと弾けて水へと落ちていく。

 

「だいぶダメージが通りやすい様だ。これならすぐに……」

 

 そう思った瞬間弾けた部分に水が集まり、あっという間に再生して元通りになってしまった。

 

『へぇ、水で出来てるから良い再生能力持ってんじゃん。じゃあさぁ……こうしたらどうなるかなぁ!』

 

 再生の様子を見てライプニッツがゼオグセブに向けて大量の爆雷を投下させ、それを一斉に起爆させる。

 俺達すらも巻き込みかねない範囲でエネルギーフィールドが発生し、ゼオグセブを覆い尽くす。

 

「おい!俺達も巻き込むつもりか!?」

 

『当たらなかったじゃん。ウダウダ言わないでほしいんだけど』

 

 エネルギーフィールドが消えると中心点にいたゼオグセブの姿は跡形も無く消えていた。

 

『なんだよ。この程度で終わり……な、わけないか』

 

 ライプニッツの言葉が終わる前に周囲の水が集まり、再びゼオグセブはその姿を作り出していた。

 

「まさかここにある水全てをどうにかしないと倒せないというのか!?」

 

「そんなのさすがに出来っこないわ!」

 

『2人とも落ち着け!どこかに核となる本体がある筈だ!』

 

 ケインの言う通りだ。以前戦った事のあるスライム状のミュータントですら体内に核があったのだ。きっと同じ様にどこかに核がある筈だ。

 

「だけど、さっきライプニッツの攻撃で全身を吹き飛ばしても効果が無いってことは……」

 

「水中にあるというのか!?」

 

 周囲に広がる水の何処かに核が漂っていると考えて間違い無いだろう。だがここにある水はゼオグが操っている。飛び込んで核を探すのはただの自殺行為だ。

 どうすれば良いのか考えているとゼオグセブが身体を大きく震わせて巨大な水の塊を飛ばしてきた。

 

「水の塊?いったいどういうつもりだ?」

 

 念の為、回避すると水の塊は地面に当たって周囲に撒き散らされる。その瞬間、出来上がった水溜りから水で出来た槍や細長い次元断層が突き出てきた。

 

「危ない!」

 

「ザヴィーラが使って来た攻撃と似た様なものか!」

 

 俺は急ハンドルを切ってどうにか槍を回避する。G-ソフィアに次元断層は意味を成さないが、槍の攻撃は場所によっては致命的なダメージになりかねない。

 

『チッ、面倒くさい攻撃だなぁ』

 

『ライプニッツ!俺達は間違っても次元断層に触れるんじゃないぞ!』

 

 俺達が予想外の攻撃に戸惑っている間もゼオグセブはひたすらに水の塊を飛ばし続けてくる。

着弾する前に撃ち落とそうとするがその数はあまりにも多く、どうしてもいくつかはこちらに着弾して攻撃を仕掛けてくる。

 

「なんて厄介な攻撃をしてくるんだ…!」

 

 激しい猛攻の中、どうにかゼオグの核の反応を探そうとするが見つける事が出来ない。その間も降り注ぐ攻撃にイヴも俺も徐々に焦りが生まれ始める。

 

『ぐぅっ!?』

 

 ケインの悲鳴が聞こえた方を確認すると『メタルアタッカー』の車体の端を水の槍が貫いていた。

 

「パパ!?」

 

『心配するな!動けなくなるほどのダメージじゃない!』

 

 ケインはそう言うが『メタルアタッカー』の機動力は先程に比べてあからさまに落ちている。あのままではいずれ槍か次元断層に巻き込まれてしまう。

 

「ジェイソン!パパが!」

 

「くそっ!何か手掛かりはないのか!」

 

 少しでも手掛かりを見つける為にそこかしこに攻撃を仕掛けるが周囲の水が飛び散るだけで何も変化は無い。

 

「いったい、どうすれば……」

 

「……あー、頭がクラクラする〜」

 

 何か手段は無いのかと項垂れていると背後から声が聞こえて来た。イヴの声ではない事に気付いて振り返ろうとするが、声の主は自ら俺の横へと飛び出して来た。

 

「パパは前を見て!来るよ!」

 

 その声を聞いて俺は急いでG-ソフィアを加速させて水の塊を回避し、改めて俺の横に来たその人物を確認する。

 

「ミュー!大丈夫なのか!?」

 

「うん!アイツに意識とか色々持ってかれてて色々大変だったけどもう大丈夫!」

 

「……ミュー、あなたなんだか雰囲気が変わった?」

 

 イヴが驚くのも無理はない。俺達の知ってるミューはもっと幼い雰囲気だったが、真横にいるミューは見た目は変わっていないのにもっと大人びた雰囲気になっていた。

 

「アイツが抜けて色々自由になったからかな?それより私もサポートするよ!」

 

 ミューはそう言うと通信を弄ってライプニッツへと通信を繋ぐ。

 

「ライプニッツさん!そこから南西方面に爆雷をばら撒いて!」

 

『はぁ?なんだよ急に?ていうかお前起きーーー』

 

「いいから早くして!!」

 

『チッ。なんなんだよ、ウザったいなぁ』

 

 他に手掛かりが無いから仕方ないのだろうが、ライプニッツは露骨に嫌そうな雰囲気を出しながらもミューの言った通りに爆雷をばら撒く。

 爆雷が水中に音を立てながら沈むと同時にゼオグセブの視線がもの凄い速度でライプニッツの方へ向いた。

 

『ふーん、その反応。まるでここに何か沈んでいるみたいじゃんか!』

 

 ライプニッツが爆雷を起動させ、エネルギーフィールドを発生させると水中から蠢く小さな物体が飛び出して来た。

 

「あれが核か!」

 

 間髪入れずに主砲を撃ち込むが1度では倒しきれず、核は水の中へ再び逃げ込んでしまった。

 

「くそっ!見た目以上に頑丈なヤツだ!」

 

「だけど勝機は見えたわ!」

 

 イヴの言う通り先程とは違い、ゼオグの核を見つける方法も、引き摺り出してダメージを与える方法も見つかった。

 

「私とあなたは1つになってたから、どこに潜っても、どんなに反応を紛れ込ませても私には場所を察知できる……」

 

 ミューにはゼオグの場所が見えているのだろう。視線をゆっくり動かしながらミューは呟く。

 

「パパとママを……みんなを苦しめたあなたを絶対に許さない!!」




 今回も読んでいただきありがとうございます!

 最終決戦という事でガンガン盛り上げていきたいと思いながら書いてはおりましたが、なかなか上手くいかないものだと試行錯誤しながら頑張っております。
 もう少しだけお付き合いいただけたら幸いです。

 今回も感想などありましたらぜひお願いします!!
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