ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー   作:通りすがりのヌ・ナセ草

32 / 32
戦いの終わり

 ミューがサポートに加わってから何度目かの爆音が響き渡る。ミューが位置を探知し、ライプニッツが爆雷を落とし、俺とケインが飛び出して来た核を攻撃するいう戦法で着実にゼオグにダメージを与え続けていた。

 

「ジェイソン、攻撃が激しくなってきた!ゼオグも苦しくなっているのかも!」

 

 ゼオグへのダメージは着実に蓄積しているがそのまますんなりと行くわけもなく、ゼオグの攻撃はゼオグゼフからの水の塊に加え、そこら中の水溜りから狙いも定めずにがむしゃらに水の槍や次元断層を生やし始めた。

 

『くそっ!さっきより厄介さが増したぞ!』

 

 攻撃のランダム性が大きく増した所為で先程より回避に専念しなければいけなくなり、俺もケインも攻撃どころではなくなってしまう。

 

「そっちが出来るなら……私だって!」

 

 ミューが手を大きくかざすと荒れ狂う様に突き出ていた槍や次元断層がピタリと止まった。

 

「まさか、ミューが止めたの!?」

 

「私が……吸収した、能力を……アイツが使える、なら……私だって……!」

 

 互いの使う能力は同じものらしくミューがゼオグの攻撃を止めていた。

 だが、ミューから離れてなおゼオグの抵抗が強いのかミューはかなりツラそうだ。

 

(今の内にさっきの状況を打開出来る手段を見つけなければ)

 

 ミューの体力が尽きると同時に再びゼオグの猛攻が始まるはずだ。このチャンスを無駄にするわけにはいかない。

 しかし、さっきまでと違い、ミューが探知をしている余裕がないという事が問題だ。

 

『おい。水のヤツを吹っ飛ばせる攻撃はなんか無いわけ?』

 

 ライプニッツが俺とケインに尋ねてくる。G-ソフィア最強兵装の『フルアクセルブラスト』はミューを助ける為に攻撃能力をほとんど無くしてしまっている為頼りになるのはケインだけだが……

 

『一応、こういう事も想定して俺のMAには『アクセルブラスト』を備えつけてはある。火力に関してはどうにかなるがあいつに撃ったところでなんの効果も無いぞ』

 

「核が無事な限りまたすぐ再生してしまうのは分かっているはずだ」

 

『だからさあ、核がそこに逃げ込む様にすればいいんだろ?』

 

 そう言うとライプニッツは辺り一面を埋め尽くすかの様に物凄い勢いで爆雷をばら撒き始める。

 

「おい、そんなに撒き散らして残数はあるのか!?」

 

『あるわけないじゃん。どうせあのままだとジリ貧になるんだろ?だったら逆転出来る方法に賭けた方がよっぽどマシじゃん』

 

 ライプニッツの考えはすぐに理解出来た。たしかにこうすればゼオグの逃げ込む所はゼオグゼフの内部しかない。

 だがこれで倒せなかった場合、俺達の攻撃手段は新たに探さなければいけなくなる。『メタルアタッカー』の車体ダメージを考えるとそんな余裕すらないかもしれない。

 

『ジェイソン、ライプニッツの言う事も一理ある。あの状況を続けるよりも打破できる手段に賭けた方がいいだろう』

 

「……分かった。それならケインは『アクセルブラスト』の準備を!」

 

『ライプニッツ!お前の方はどうなっている!』

 

『大声でうるさいなぁ…アイツが逃げられそうな場所にはあらかた爆雷を仕掛けたからそろそろそっちに行くんじゃない?』

 

 ライプニッツの報告を聞いてケインは『アクセルブラスト』を起動させ、MAを変形させてチャージを始める。

 

「あとは核が出て来た所を狙い撃てば……」

 

「ジェイソン!ゼオグが!!」

 

 イヴの声を聞いて視線を向けると、チャージが終わる前にゼオグゼフの内部に核が移動して来ていた。

 

「爆雷の投下が終わる前に移動して来たというのか!?」

 

「まさか、こっちの行動を読んでいたというの!?」

 

 ゼオグゼフは水の触手を操り、チャージ途中の『メタルアタッカー』目掛けて振り下ろす。

 

「くそっ!」

 

 『バーンスパーク』を使い触手の1本を蒸発させる。だがその隙に新たな触手が何本も生み出され、一気に振り下ろされる。

 爆雷の投下を終えた『ライジングガルーダ』も援護に回るが全ての触手は対処しきれていない。

 

「パパ!」

 

 イヴの叫びを聞いてもケインはチャージを止める事をしない。俺も諦めずにもう一度『バーンスパーク』で対処しようとするがとても間に合いそうにない。

 

(駄目なのか……!)

 

 諦めそうになった瞬間、ゼオグゼフと触手が淡い光に包まれる。それと同時に全ての動きがゆっくりになる。

 

「これは……アンチェインDDF!」

 

「ようやくまとまってくれた……そんなに集まれば全部巻き込む事だって出来るんだよ!!」

 

 ゼオグの攻撃も意識もこちらに向いた事でミューが自由になりサポートが間に合ったのだ。

 触手攻撃が届かないと悟ったのか核はゼオグゼフの内部からゆっくりとだが逃げ出そうとする。

 

『別に逃げてもいいけどさぁ……散々食らったソレの事忘れてない?』

 

 ライプニッツの撒いた爆雷の存在を思い出したのか核の動きが一瞬止まる。

 そしてその一瞬の隙は俺達にとって大きなチャンスとなった。

 

『チャージ完了!いくぞ!』

 

「これでトドメだ!!!」

 

 俺達がゼオグゼフから離れると同時に『メタルアタッカー』から巨大な光線が放たれ、周囲の触手ごと核を飲み込んでいく。

 凄まじいエネルギーが落ち着いた時にはゼオグゼフの姿は跡形も無くなり、周囲には静寂が訪れていた。

 

『イヴ、ゼオグの反応は?』

 

「ちょっと待って……まだ残ってるわ!だけど、これって……」

 

 イヴが何かに戸惑っていると目の前の水溜りから再び触手が出てくる。だがそれは今までのと比べてあまりに細く小さい物だった。

 核が無くなった事でもう形を保つのも難しいのだろう。触手は少しずつ崩れ始めており、その様子を俺達は眺めていた。

 

「……あなたのお陰でパパとママに会えた、その事は感謝するよ。でも……それ以外の全ては大っ嫌い」

 

 ミューがそう呟くのとほぼ同時に触手は完全に形を崩してただの水へと姿を変えた。

 

「……ゼオグの反応、完全に消失。念の為もっと細かく調べてはみるけど多分もう大丈夫だと思うわ」

 

 イヴの報告を聞いて俺は大きく息を吐きながら姿勢を崩す。

 こうして復活を企てたゼオグによる危機は幕を閉じる事となった。

 

 

 

 

「ケインはこの後どうするんだ?」

 

「まずは惑星ソフィアに戻って今回の報告だな。まったく、上からの小言を覚悟しないといけないな」

 

 ゼオグの完全消滅を確認した後、俺達は地上に戻って来ていた。ゼオグという最大敵が消えた事でこれからどうするか話し合っていた所だ。

 

「ライプニッツはどうするんだ?」

 

「……なんでお前に話さなきゃいけないんだよ」

 

「ミューの事で協力してもらったんだ、何かするというのなら俺も協力を……」

 

「ボクがお前の手なんか借りると思ってんの?」

 

 いつも通りのライプニッツの様子にため息を吐きながら会話を打ち切る。とはいえライプニッツにもケインにも本当に感謝している。

 俺達だけではゼオグをどうにかするというのは難しかっただろう。

 

「色々と大変だったがみんなには本当に感謝している。これでまた元通りの日常に戻れる」

 

「……パパ、ごめんね。多分それは無理だと思うの」

 

「……えっ?」

 

 ミューの言葉に俺は耳を疑う。聞き間違いだと思い、ミューの表情を確認するがミューは申し訳無さそうな表情を浮かべながらこちらを見ていた。

 

「ゼオグが、アイツが私を使って復活したって事実は看過できない事だと思うの。そうでしょ?ケインさん」

 

「……そうだな。ゼオグが消えたとはいえ今後SFはミューの見方を変えるだろうな。特に王女であるイヴとの接触は今まで通りとはいかない筈だ」

 

「そんな!もうミューには危険なんて……」

 

「確実に、と言い切れる保証がどこにあんのさ」

 

 ライプニッツの言葉に俺もイヴも言葉を詰まらせてしまう。実際ゼオグが行動に移すまでその存在に気づく事が出来なかったのだ。俺達以上にSFが気にするのは当たり前の事だろう。

 

「しょうがないよ……それに私も超次元空間に帰らなきゃって思ってた所だったし」

 

「ミュー……」

 

「あ!嫌になって帰るとかそんなんじゃないよ!?……大事な事を知っちゃったの」

 

 ミューの顔つきが真剣なものになり、俺達の間に漂っていた穏やかな空気が一瞬で張り詰めたものになる。

 

「『ライトニングビーイング』……この名前を知っている人はいる?」

 

「いや、俺は知らないな……ケインは知っているか?」

 

「俺も初めて聞く名前だ。SFの中でも耳にした事がないぞ」

 

「ゼオグが表に出ていた時アイツの持つ知識が私にも共有されたの。どうやらママの指示の影響を受けない危険なミュータントみたい」

 

 ミューの説明を聞いて俺達は驚きを隠せなかった。誰もがイヴのお陰でミュータントと戦いはもう起きないと思っていたのだ。

 

「そいつらは超次元空間に生息しているの。だから他のミュータント達と一緒にちょっと警戒しておかなきゃいけないかなって」

 

「もしその敵が攻めて来た時はどうするつもりなの?」

 

「その時は、まぁ私達で頑張ってどうにかするしかないかな」

 

 ミューは苦笑しながらふざけた感じに言っているが本当は笑っていられるような相手ではないのだろう。

 その様子を見て俺はある事を考え、イヴに視線を向ける。イヴも俺と同じ事を考えていたのだろう俺と視線が合い、小さく頷く。

 

「ミュー、そいつらは俺達でどうにか出来る相手なのか?」

 

「えっ……ま、待って!私達が住む超次元空間だよ!?そんな所に居続けたらママだけじゃない、パパだって身体がおかしくなっちゃうよ!そうなったらもう帰ってきる事だって出来ないかもしれないんだよ!?」

 

 俺達が超次元空間に乗り込もうとしている事を知ってミューは大慌てで止めようとする。ミューも俺達がこんな事を言い出すとは思っていなかったのだろう。

 

「ミュー達が危険な目に晒されるかもしれないというのに俺達だけ平和に暮らしてなんていられない」

 

「それにそんな相手を放置していたら宇宙がどうなってしまうか分からないもの」

 

「それは、そうだけど……」

 

 俺達の様子を見てミューは困った様に狼狽えてしまう。

 そして心配するのはミューだけではない。

 

「イヴ、お前は……」

 

「パパ、ごめんなさい。でも私はジェイソンと一緒に行きたいの」

 

 親としてケインは色々不安に思う所があるのだろう。しばらくの間ケインは悩んでいたがやがて小さくため息を吐いてイヴの頭を撫で回す。

 

「本音を言えば行かせたくはない……だがそれがお前達の選んだ道だというのなら俺はそれを尊重しよう」

 

「パパ……ありがとう」

 

「やれやれ……また寂しくなるな」

 

 イヴはケインに撫でられながら嬉しそうなそれでいて寂しそうな表情を浮かべる。

 

「あー、もう……2人の性格をもっと考えるべきだったぁ……だけど本当にいいの?」

 

 そんな穏やかな光景の中、ミューが心配そうな表情を浮かべながら尋ねてくる。向かう場所が場所だけに心配が拭えないのだろう。

 

「もちろんだ。俺達が必ずこの宇宙を守ってみせる」

 

「ミューは他のミュータント達と一緒にあなた達の住む場所をどうか守ってあげて」

 

 ボスミュータントの能力を使えるミューはきっとみんなの助けとなるだろう。それに他の異変があってもミューがいればきっと大丈夫だと信じることが出来る。

 

「パパ、ママ……」

 

 俺達の答えを聞いてミューは俯きながら小さく肩を震わせ、勢いよく俺達の間に飛び込んでくる。

 

「本当に、本当にありがとう……」

 

 ミューはしばらく俺達の胸で泣いていたが、ゆっくりと離れていく。そんなミューの表情は……今まで過ごしてきた中で1番の眩しい笑顔だった。

 

「ねえ、パパ、ママ……私ーーーー2人に伝えたい事があるの!」




 今回も読んでいただきありがとうございます。最終回という事もありあとがきがいつもより長くなりますがお付き合いいただければ幸いです。
 去年の2月から思いつきで書き始め、非常にゆっくりとしたペースでの執筆でしたが感想やお気に入り登録など様々なものを励みにここまで来ることが出来ました。
 ブラマス2の後もっとジェイソンとイヴが過ごしている時間を多く出来ないか、ミュータントと何か接点を作れないかなど色々考えながら書いてきましたが、1本の作品を作り上げるという事の難しさを改めて思い知りました。
 場面の盛り上げ方や展開の引き方など、いざ書いてみてうまく書けない部分が多数出てきて、色々な作品を書いている方々は本当に凄いんだなと書きながらしみじみ思っていました。
 本編に関してですがまず最初に……フレッド、出番ほとんど無くてゴメンよ……はい。
 オリジナル設定キャラのミューや他のMAパイロットとの絡み、難しいと感じながらもこういった部分は書いていて凄く楽しかったです。このキャラはこの時こういう感じに話すのかな〜、どんな反応するのかな〜、と色々想像しながら書けるのは二次創作の醍醐味だと感じました。
 終わり方に関してはブラマス3の最後へと繋げて締めくくろうかと思いましたがそこまで伸ばすと蛇足になりかねないと思い、今回の様な形で書かせていただきました。ミューにあのセリフを言わせて締めたかったというのもありますが……

 色々と感じた事はまだありますがこれにて【ブラスターマスターゼロ3IF】完結とさせていただきたいと思います。拙い作品でしたが最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
 最後に感想などありましたらよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。