ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー   作:通りすがりのヌ・ナセ草

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遭遇と帰還

 ケインとの通信から数時間ほど経った頃、俺達は軍事基地の格納庫に、G-ソフィアを隠して待機していた。

 しばらくしてG-ソフィアのセンサーが接近してくる存在を捉えた。

 

「イヴ、何かが近づいて来てるみたいだ。識別は出来るか?」

 

「これは……お父さんのMA!良かった、何事もなくこっちに来れたみたい」

 

「念の為、少し様子を見てから出ていこう。もし乗っているのがケインじゃなかったら、大変な事になってしまう」

 

 今のところ事情を知っているのはケインだけだ。下手な行動は、自分達の首を絞めかねない。そう考えていると、格納庫の内部に入ってきたMAから人が降りて来る。

 

「なるほど、用心深いのはいい事だ。2人共、俺以外は来ていないから、安心して出てきて大丈夫だ」

 

 MAから降りてきたのは数時間前にモニターで見たケイン・ガードナー本人だった。ケインの呼び掛けに応える様に、俺達は隠していたG-ソフィアを近くまで走らせる。

 

「これがG-ソフィアSVか。元のソフィアⅢから随分と変わったな」

 

「お父さんっ!!」

 

 G-ソフィアから降りたイヴがケインに向かって走っていく。久しぶりの再会を邪魔してはいけないと思い、俺は後からゆっくり歩いて行った。

 

「イヴ、色々と大変だったみたいだな」

 

「うん……でも大丈夫。ジェイソンがいてくれたから」

 

 イヴがそう言うとケインの視線がこちらに向く。モニター越しでは感じられなかった、落ち着いた雰囲気と佇まいに、少し緊張してしまう。

 

「ジェイソン、直接会うのは初めてだな。そして改めて礼を言わせてくれ。イヴを、俺達の娘を助けてくれて心から感謝する」

 

「いや、俺だけの力じゃないさ。みんなの協力があったからこそ助けられたんだ。それに、俺もイヴに助けられた身だしな」

 

「なるほど。イヴ、どうやらいい出会いに巡り会えた様だな」

 

 ケインがそう言うと、イヴは少し赤くなりながら満面の笑みで大きく頷いた。その様子に、俺も顔が熱くなるのを感じる。

 

「まったく、仲も良いようで何よりだ。ほら、本題に入るぞ。早速だが、G-ソフィアの今までの活動データを俺のMAに入れてくれ」

 

 俺とイヴの様子を見たケインが呆れと安心の混じった表情をしながら俺達に作業を支持する。俺とイヴは恥ずかしさを誤魔化す様に、慌てて作業に取り掛かる。

 

「データを移すのは構わないが、一体何に使うんだ?」

 

「何が解決の手がかりになるか分からないからな、情報は多いに越したことはないだろ?」

 

「ああ、たしかにな。ところで、このMAはあんたの機体なのか?」

 

 作業をしながら、ケインの乗ってきたMAを見上げる。シンプルな形状だが、ソフィアⅢを思い出す形だ。

 

「ん?あぁ、そうだ。この機体の名は『メタル・アタッカー』。お前のかつての乗機ソフィア-Ⅲや他の『MAシリーズ』の基礎となった最初の機体だ」

 

 最初の機体、つまりは俺達が乗る機体よりもずっと古い機体だという事だ。それでも乗り続けているのは、それだけ愛着があるという事だろう。

 そしてそれは同時に、ケイン自身がその機体でも周りに遅れを取らない強さと、経験を持ち合わせているということになる。

 

「どうした?」

 

「いや、あんたが敵じゃなくて本当によかったと思ってただけさ」

 

「なるほど。それは俺も同感だ。さて、データを移してる間にこっちの作業に移るか」

 

 ケインはそう言うと、大きめなアタッシュケースの様な物を取り出した。蓋を開けると、中にはいくつかの銃の様な器具が入っていた。

 

「これはいったい?」

 

「ジェイソン、これは惑星ソフィアで使われているDNAの採取キットよ。でも、こんなの一体どこから持ってきたの?」

 

「衛星ノーラだ。お前らには悪いがイヴの事はジェニファーにも話させてもらった」

 

 イヴの事を他の人物に知らせたというケインの言葉に、俺は驚きと焦りを露わにするが、イヴの方は何か納得した様子で頷いている。

 

「お父さんが言ってる人は、私のお母さんよ。衛星ノーラで色々研究をしている人なの」

 

 俺の表情を見て察したのか、イヴがジェニファーという人物について話してくれる。そういえば、地球に送られてきたメッセージの宛先で、ケインと一緒に書かれていた人の名前を思い出す。

 

「……ケインの奥さんなのか?」

 

「あぁ。さすがに俺だけでは調べようがないからな。彼女に協力をしてもらった。安心しろ、他人に秘密を漏らす様な人間じゃないさ」

 

 ケインもイヴも信用している人物。2人が心配ないというのならば何も問題は無いのだろう。

 

「それで早速だが、この採取キットでイヴのDNAを採取する。それを調べればイヴが今どんな状態で、どんな変化を起こしているかが分かるはずだ」

 

「まさか私がこういう器具を使う時が来るなんて思ってもいなかったから、少しワクワクしちゃう」

 

「まあ、ガイノイドはこういう器具を使う事なんてないからな。とはいえイヴ、これは少し痛いらしいから我慢するんだぞ」

 

「え?」

 

 ケインの忠告にイヴが固まる。たしかに銃口の様な部分から、何かを差し込む構造なのが見て分かる。注射器の様な物なのだろうか?

 

「だ、大丈夫!少しくらい我慢できるもの!」

 

「まるで子供の注射だな。ほら、首から採取するぞ」

 

 ケインがイヴの後ろに立って器具を首に押し当てる。イヴは目をギュッと瞑って、今から来るであろう痛みに備えている。

 そんなイヴの様子を見守っていると、不意にケインの背後の空間が歪む。

 

「ケイン!イヴ!後ろっ!!」

 

 俺が叫ぶと同時に、ケインが危険を察し、イヴを抱えて横に飛ぶ。

 その直後、ケインのいた場所に何かが飛び込んできた。

 

「なっ!?こいつは……ミュータント!?」

 

「馬鹿な!何故、こんなところにミュータントが!?」

 

 俺たちの目の前に現れた大量の楕円形の物体や目玉だけの生物、それらは紛れもなくミュータントだった。

 ミュータント達が何も無い空間から現れる、それは他の宙域でも見た光景だ。だが、ここは何度も見回りが行われている施設だ。いきなり大量のミュータントが現れるのはおかしい。

 

「ケイン!イヴを頼む!俺はこいつらをどうにかする!」

 

「ジェイソン、どうやらそうもいかないみたいだ」

 

 その言葉を聞いてケイン達の方を見れば、2人の方にもミュータントが現れているのが見え、俺はすぐさま2人のそばに移動した。

 

「何で急にミュータントが……」

 

「考えるのは後だ!来るぞっ!」

 

 ケインの掛け声と同時にミュータント達が一斉に突っ込んでくる。

 

「私に任せて!」

 

 イヴがそう言うと同時に、周囲が淡い光に包まれ、ミュータント達の動きが鈍くなる。

 

「アンチェインD.D.F!少しだけの間なら、ミュータントの動きを抑制出来るから今の内に!」

 

 『アンチェインD.D.F』についてはイヴ自身から話は聞いていたが、実際目の当たりにすると、驚くほど強力な能力だ。

 

「助かる!ジェイソン!行くぞ!」

 

「ああ!」

 

 俺は2人を巻き込まない様に、『ラッシュウィップ』でミュータントの数を減らしていく。

 ケインと俺でイヴを守りながら戦い続けるが、ミュータント達は次から次へと現れ続ける。

 

「こいつら、いったいどれだけ現れるんだ!?」

!?」

 

「このままだといずれ押し切られる!どうにかMAまで戻るんだ!」

 

 ケインの提案に従い、俺はイヴと共にG-ソフィアに向けて動き始める。だがそこで俺はふと違和感を感じた。

 

(何かミュータントの動きがおかしい気が……?)

 

「ジェイソン!危ないっ!」

 

「しまった!イヴ!」

 

 イヴの声が聞こえたと同時に突き飛ばされる。その直後、俺とイヴの間に割り込むようにミュータントが飛び込んできた。

 

(俺は何をやっているんだ!カウンターチャンスのマーカーにも気づかないなんて!)

 

 俺はすぐにイヴのそばに移動しようとするが、ミュータントがそれを阻んでくる。

 その間に他のミュータントが集まってくるが、ミュータント達はイヴに見向きもせず、執拗に俺とケインを狙い続ける。

 

「こいつら、イヴと俺達を引き離そうとしているのか!?」

 

 違和感の正体に気づくと同時に、そんな事はさせるものかと、俺はイヴの元へ向かって大きく踏み出す。

 だが、焦りから生まれたその行動は大きな隙を晒す愚行だった。その事に気づく前にミュータントの体当たりを喰らい大きく吹き飛ばされ、床を転がる。

 

「ぐっ!まだだ…!」

 

 すぐに体勢を立て直さないと、そう思って顔を上げた視界に映ったのは、攻撃を今にも放とうとしている大量のミュータントの姿だった。

 アンチェインD.D.Fのサポートを使ったとしても、起き上がり、全てを回避するのは出来ない。そう悟ってしまう状況。

 視界の端でイヴとケインが何かを叫んでいる気がする。

 

(間に合わない……それでも、最後まで諦めるわけにいかない!イヴとの約束を守る為にも!)

 

 俺は少しでも回避しようと、その場から転がるように動く。

 だが、着弾音どころか発射音すら聞こえてくる気配がない。おかしいと思い、身体を起こすと柔らかい感触が身体を包み込む。

 

「ジェイソン!ジェイソンッ!良かった……!」

 

 最初は何かと思ったが、すぐにイヴに抱きしめてられているという事に気づく。周囲を見回せばミュータント達は攻撃どころか、動く事すら止め、ジッと俺達を見ているだけの存在になっていた。

 

「イヴ、これはいったい……」

 

「分からない……突然、ミュータント達が動きを止めたの……」

 

 ミュータント達はしばらくこちらを見ていたが、再びワームホールを開くと1匹、また1匹と消えていってしまった。

 俺達が困惑していると、何かを考え込む様子を見せながらケインが近づいてくる。

 

「ケイン。いったい、何が起きたんだ?」

 

「分からない。ただ、もしかしたら……いや、それよりも2人とも身体は大丈夫か?」

 

「うん。私は平気」

 

「こっちも大丈夫だ」

 

 俺達が頷くと、ケインはイヴにDNA採取キットを差し出してくる。イヴはケインと器具を交互に見つめて首を傾げている。

 

「イヴ、採取はイヴ自身でやってもらいたい」

 

 ケインの言葉にイヴが驚いた表情で俺の方を見る。突然のケインの言葉に戸惑うのは俺も同じだ。

 

「ケイン、どういう事なんだ?」

 

「さっきイヴにこの器具を使おうとした時にミュータントが現れたのは見たな?そして、お前もミュータントの動きに気付いたことがあるはずだ」

 

「……あいつらはまるで、俺達をイヴから遠ざけようとしていた」

 

 俺の言葉にケインが大きく頷く。俺が気づいていた位だ、ケインが気づいていないとは考えにくい。

 

「そうだ。俺にはまるで、守るかのようにも見えたくらいだ。もしかしたら器具を持った俺が、奴らには仲間に近づく危険な存在として感知したのかもしれない」

 

「ミュータントが仲間の為に動く……そんな事がありえるのか?」

 

「俺だってそんな事例聞いた事がない。だが、俺達はミュータントの全てを知っているわけじゃない」

 

 たしかにケインの言う通りだ。まだ俺達の知らないミュータントだっているだろうし、特別な動きをするミュータントもいるかもしれない。

 

「うん、そういう事なら分かったわ。あ、2人とも少し離れていて。またミュータントが現れたら大変だもの」

 

「だけど……」

 

「採取するだけよ。だから、そんなに心配しないで。それよりも……」

 

 そう言ってイヴは俺の身体を触ってくる。突然の行動に驚くが、彼女が何を言いたいかはすぐに察する事ができた。

 

「心配をかけてごめん……でも、俺はなんともないよ」

 

「うん、良かった……本当に」

 

 俺の無事を確認すると、イヴは小さく微笑み、少し離れる。その手にはケインから受け取った採取キットが握られている。

 イヴは何度か深呼吸して、ゆっくりと器具を首に押し当てる。ミュータントは……現れない。

 

「っ!くっ、ぅ……」

 

 小さく声を上げるイヴに思わず駆け寄りそうになるが、グッと堪えて採取が終わるのを待つ。

 少しして、イヴがゆっくりと器具を首から離す。採取は無事終わったらしく、ケインが周囲を警戒しながらイヴから器具を受け取る。

 

「イヴ!大丈夫か!?」

 

「う、うん。少し、すこーし……結構?痛かったけど何ともないよ」

 

「こっちも確認したが採取は問題なく終わったようだ。さて……」

 

 そう言うと、ケインは俺達に何かを渡してくる。それは宇宙を旅する間に、何度も見た物だった。

 

「これは、アクセスキー?いったいどうしたんだ?」

 

「これはこの宙域から、地球へと繋がるワームホールを開く事が出来るアクセスキーだ」

 

 地球へと繋がっていると聞いて俺とイヴはお互いに驚く。

 その様子を見て、ケインはさらに説明を続ける。

 

「ソフィアゼロを送った時の事を覚えているか?実はあの時フレッドにかなり無理をさせて繋げてもらってな」

 

 ソフィアゼロが姿を現した時の事を思い出す。たしかに今思うと、あの時のフレッドはいつも以上に頑張っていた気がする。

 

「いつか、俺とジェニファーがフレッドなしでもお前達に会いに行ける様に開発した物だ。だが、まさかこういう形で使う事になるとはな……」

 

 そう言われてみれば、たしかに惑星ソフィアから地球へ繋がる道自体は、既にあったと言える。

 そしてこのキーは俺達にとって、とてもありがたい物だ。だが、今ここで渡してくる理由が気になる。

 

「ケイン、いったいどういうつもりなんだ?」

 

「お前達はすぐにこの宙域から離れろ。ミュータントが現れてしまった以上、俺はSFにここで起きた事を報告をしなければならない」

 

「……俺達の事も話さないといけない、という事か」

 

 SFに今回の事を報告するのであれば俺達の事を黙っておくというわけにはいかないだろう。

 

「イヴの事はDNAの詳しい鑑定結果が出るまで誤魔化しはきく。だが、いずれはバレる事は間違いない」

 

「そんな!バレたらお父さんはどうなるの!?SFでの立場だってあるんでしょ!?」

 

「俺の心配はいらないさ。元々、色んな無茶をしていたんだ。誤魔化し方の手段なんていくらでも知っているものさ」

 

 そう言って小さく笑うケインに俺達は別の意味で不安を抱く。

 だが、ケインがこうして時間を稼いでくれるというのなら俺達はそれに甘えさせてもらおう。いや、甘えるしかないのだ。

 

「ケイン、すまない。あんたを巻き込んでしまった上に、こんな……」

 

「だから、心配はいらないと言ってるだろ。それよりもイヴの事を頼むぞ。今、全宇宙でもイヴを一番守ってやれるのはお前なんだ」

 

「ああ。分かっている。彼女を悲しませる事なんて絶対にしないと約束する」

 

 そう言ってイヴの手を握りしめる。イヴもそれに応えるように、握り返してきてくれる。それだけで俺達の絆の結びつきを感じられた。

 

「ほら、急いで出発しろ。時間は無駄に出来ないぞ」

 

 ケインにそう急かされ、俺とイヴは急いでG-ソフィアに乗り込む準備を始める。

 

「おっと、忘れる所だった。ジェイソン、これも受け取れ」

 

 準備の最中、ケインからエンブレムの様な物とデータの入ったチップを渡される。

 

「これは、ケインのMAの超惑星間万能マーカー?」

 

「持っておけば役に立つ事もあるだろう。そっちのチップはジェニファーからの贈り物だ。フレッドのワームホール機能を活用して、次元を越えて通信が出来るものらしい。ソフィアに組み込んでおけ」

 

「本当に何から何まですまない。大事にさせてもらう」

 

「ジェイソン、こっちの準備は大丈夫。いつでも出発出来るよ」

 

 準備を終えたイヴが駆け寄って来て、そのままケインの前まで走っていく。

 

「……お父さん。また、会えるよね?」

 

「戦いに行くわけじゃないんだ。また会えるさ」

 

 ケインのその言葉を聞いて、イヴは小さく頷き、G-ソフィアに走っていく。俺もケインに小さく礼をしてG-ソフィアに乗り込む。

 そして俺達は、ケインに見送られながら廃棄基地を後にして宇宙に飛び出した。

 イヴを救う為に地球から始まった旅は、再び地球へと帰る形で続く。

 俺達の出発地点である地球。まさかそこで新たな出会いが待ち受けているとは、俺達は考えてもいなかった……。




今回も読んでいただきありがとうございます。

投稿ペースが上がらないのに文字数は増えていってる作者です。
今回の展開の通り、この先の舞台は地球へと移ります。地球でイヴとジェイソンが暮らす様子を書きながらこの先の話は進んでいく予定です。(日常回を書く土台が出来たとも言える)
これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。

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