ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
軍事基地での出来事の後、俺達はケインから貰ったアクセスキーを使い、次元トンネルを抜けて地球へと帰って来ていた。
次元トンネルの出口が地球のすぐそばだったおかげで、行きに比べて帰りはあっという間だった。
「あれから2週間くらい経つけど、何の音沙汰もないな」
「……うん。メッセージが送られて来たり、通信が来ると思ってたんだけど」
俺達は地球に戻った後、周囲にイヴのミュータント反応を知られるわけにいけない事から、G-ソフィアを開発した地下施設で過ごしていた。
帰還した当初は、ケインからSFの動きや、状況が送られてくる事を期待していたが、先程言った様になんの知らせも無い。
もしかしたら明日にでもSFが乗り込んでくるかもしれない。そんな不安を抱えたまま日々は過ぎていた。
「お父さんに何もなければいいんだけど……」
2人して心配していると、G-ソフィアと連動している施設の通信機から呼び出し音が鳴る。
急いで通信回線を開くと、そこにはまさに今話題にしていた、ケインと見知らぬ女性が映っていた。
『お、繋がったか。ジェニファーの作った通信チップは問題無く動作してるようだな』
『もう、当たり前でしょ。簡単に壊れるようなものなんて渡さないわよ』
「お父さん!それにお母さんも!」
イヴが俺の隣に駆け寄ってくる。イヴがお母さんと呼ぶ女性、という事はこの人がジェニファーさんなのか。
『イヴ、久しぶりね。本当なら直接会って話したかったけど……』
「うん……でも、こうやってまたお話しできただけでも私は嬉しいよ」
そう言ってイヴが小さく微笑む。それを見て、ジェニファーさんも少し安心した表情になる。
『あなたがジェイソンね。あなたの事もケインから聞いているわ。イヴの事、私からもお礼を言わせてちょうだい』
「いや、俺だってソフィアゼロ送ってもらった事でも助けられた身だ。それで、イヴのDNAについては何か分かったのか?」
2人が連絡をしてきたという事は、きっと何か進展があったからだろう。そう思って尋ねると、ジェニファーさんは少し間を空けて話し始めた。
『……あなた達から貰ったDNAのサンプルを解析した結果、驚くべき事実が判明したわ』
先程とは違うジェニファーさんの真剣な表情に、俺もイヴも息を呑む。
『まず地球でミュータント細胞に侵蝕されたイヴは、超次元空間での戦いの果てに、それを克服した。間違いないわね?』
「ああ。だけど、イヴの身体の変化はそれだけじゃなかった……」
『ええ。あなた達も知っての通り、今のイヴの身体は有機生命体へと変化している……そう変化する事で侵蝕を克服したのよ』
有機生命体への変化、それがイヴ自身が身を守る為に起きた変化。あの時の浄化の力と想いの力が合わさって起きた、奇跡とも思える出来事だ。
『ミュータント細胞による変化。イヴの身体からミュータントの反応が出るのは、今のイヴは人間よりもミュータントに近い存在だからよ』
「イヴは……イヴはこれからどうなってしまうんだ?」
『おそらくだけど、今のイヴはその環境に適応した変化を続ける身体になってしまっていると考えられるわ。安定している今の状態なら、これ以上の変化は無いと考えても大丈夫な筈よ』
「そうなのか……良かった……」
ジェニファーさんの言葉に安堵する。再びミュータント細胞による影響が出たりしないか心配だったのだ。
『安心しているところ悪いが、ジェイソン、イヴ。大事なのはここからだ』
「どういう事だ……?」
ケインの言葉に身構える。イヴの身体の事は分かったが、まだ何か新たに判明した事があるというのだろうか?
『いいか、落ち着いて聞くんだ。ジェニファー、説明を頼む』
『あなた達は惑星ソフィアの宙域に到達する前、エリアΩでミュータントの王となる存在、ゼオグを倒したわね』
「あ、ああ。それがいったい?」
『その時、ゼオグにあった『王の資格』は、ゼオグを倒した『ミュータントに近い生命体』……イヴに移ってしまったの』
「王の、資格……?」
ジェニファーさんの口から告げられた言葉に嫌な予感が頭をよぎる。それはイヴも感じたのか身体を小さく震わせているのが見える。
『ええ。そしてその結果、イヴは『ミュータントの女王』として格付けられてしまったのよ』
「なっ!?女王だって!?……もしかして、あの時ミュータント達が、俺達をイヴから遠ざけようとしていたのは!」
『そうだ。仲間を守る為に現れたんじゃない。自分達の『女王』を護ろうとしたんだ。そしてミュータント達が退いたのも、イヴの影響なんだろう』
「たしかに、私はあの時どうにかしなきゃって……2人への攻撃を止めなきゃって、そう思ってた……だけど、そんな……」
ジェニファーさんが解析した事実によって、あの時のミュータントの行動の謎は解けた。だが新たに突きつけられた真実はあまりにも大きな衝撃を俺達に与えるものだった。
『それとお前らには悪いが、この事はすでにSFにも報告させてもらった』
「SFに!?」
『隠し続けるにはあまりにも大事で、深刻過ぎる事態なんだ……そして、俺達の報告と解析結果から惑星政府は、イヴをコア・ミュータントとして断定した。コードネーム『インベムクイーン』として、な』
「っ!あんた達にとってもイヴは大事な娘なんだろう!」
「ジェイソン、落ち着いて。私は、大丈夫だから……」
ケインの報告に思わず声を荒げてしまう。そんな俺を落ち着かせようとイヴが声を掛けてくれる。だが、そんな彼女の声も震えている。
『……それで、ジェイソン。お前は今の話を聞いても、イヴを護る気持ちに変わりはないんだな?』
「当たり前だ。俺は彼女を護ると誓った、どんな事があってもそばにいると決めたんだ」
「ジェイソン、駄目……お父さんとお母さんの話を聞いたでしょ?今の私は、私は……」
イヴは俺を止めようとするが、俺は彼女から離れる道を選ぶつもりは無い。軍事基地で彼女とそう約束したのだから。
『そうか……上の奴等は俺からの報告の直後、すぐにイヴを破壊するように命令を下した。そしてSFはすぐにでもお前達の元へ向かう……という予定だった』
「……?」
ケインの言葉に俺は疑問を感じて動きを止める。イヴも同じ様に感じたのか、顔を上げて画面を方を見る。
『ジェイソン、俺達がミュータントに襲われた時の事を覚えているか?もし、女王であるイヴに危害を加えようとすると……』
「……イヴを護ろうと、ミュータント達が現れてしまう!」
『そうだ。俺は軍事基地で起きた出来事を元に、イヴを命の危機に晒すと、10年前を超える大規模な戦いを引き起こす可能性があるという事を伝えた』
10年前を超える規模の戦い、そんなのは惑星ソフィアに住む者とっては悪夢としか言いようがない。
『それと同時にイヴの重要性を訴え、どうにかSFの出動を抑える事が出来た』
「私の、重要性……?」
『今までのミュータントは、お前達が出会ったゼオグの命令で星々を襲っていた。それならば、今のイヴが命令をすれば、ミュータントを止める事が出来る筈だと考えた』
『そしてそれを裏付ける様に、少し前からミュータントによる被害の報告が突然止まっているのよ。ゼオグがいなくなった事で、元の命令が消えた状況なのでしょうね』
たしかに、ゼオグは他のミュータントを使い、あらゆる次元宇宙からエネルギーを集めていた。
王の資格を持った今のイヴならば、同じ要領でミュータント達に指示を出せてもおかしくはない。
『誰も犠牲にせず、被害を出す事もなく、ミュータント達を無力化する事が可能であり、今までのミュータントとは違い、俺達と意思疎通が出来る存在』
「それが、今のイヴ……」
『こんな言い方をするのは不本意だが……今のイヴは惑星ソフィアに、いや、全宇宙にとって計り知れないほどの価値のある存在に変わったんだ』
「……ケイン、それで結局SFはイヴをどうするつもりなんだ?」
『惑星ソフィアに連れて帰り監禁する事も、ミュータントを刺激してしまう可能性を考慮して……護衛をつけ、安全な環境下に置いておく、そういう話で一応は落ち着いた』
「それって……」
『監視という名の護衛さえついていれば、イヴはそれなりに自由に行動する事が許されたという事だ。まあ、それでも色々束縛はされるだろうがな』
ケインの言葉を聞いて、絶望に包まれていた心に希望の光が差し込んでくる。
問題は護衛の件だ。いったい誰がやって来るのか……俺はSFの人間のことなんてケイン以外誰も知らないぞ。
『そして護衛についてだが、俺から依頼したい奴がいてな』
「ケインが依頼したい人物?」
『そいつは自分の星をミュータントの脅威から救い、さらにはミュータントの王を倒したという、実績も実力も十分な上、護衛対象とも非常に親密な関係を築けている奴でな』
そこまで聞いて俺とイヴはお互いに顔を見合わせる。
『もう分かっているだろう?ジェイソン、俺は護衛役をお前に頼みたい。この話は既にSF内にも通してあり、後はお前の意思次第だ。女王を、イヴを護る役目。引き受けてくれるか?』
ケインは真剣な表情で俺に尋ねてくる。その問いに対する答えに、俺は悩む事なんてあるはずがない。
「考えるまでもない。俺は彼女を護ると決めたんだ。俺に引き受けさせてくれ」
俺の返答に満足した様に、画面の向こうでケインは満足そうに頷き、隣にいたイヴは飛び込む様に抱きついてくる。
危うく倒れそうになりながらも、俺はしっかりとイヴを受け止め、抱きしめてやる。
『最初から結論を教えてあげればいいのに、随分と遠回りしながら説明したのね』
『状況は知っておいた方がいいだろうと思ってな。ジェイソン、さっきはああ言ったが実際のところ油断は禁物だ』
「まだ何かあるというのか?」
『イヴがミュータントに指示を出す事が出来る存在になった今、ミュータント関連の事件が起きた瞬間、疑いは全てイヴに向けられてしまうという事を忘れるな』
ケインの言葉を聞いて俺は気を引き締める為にも身体に力を込める。それと同時にすぐそばから小さな声が溢れるのが聞こえた。
「ジェイソン……少し、苦しいかな……」
「ご、ごめん!!」
イヴを抱きしめていた事を思い出して慌てて手を離す。
一息ついて落ち着いたイヴだったが、どこか残念そうな目でこちらを見ている気がする。
『やれやれ、俺達はこれ以上長居しない方がいいかもしれないな』
『そうね。私も2人が仲良さげなのを見れて一安心だわ』
「お、お父さん!お母さんも!」
2人がからかってきて、イヴは顔を真っ赤にしながら、怒った様に声を上げる。だが、その顔は先ほどまでと違って、希望に満ちた明るい表情だ。
『さて、からかうのはここまでにするか。そろそろ通信を終えて、今の話の内容を報告しないといけないからな』
「2人には色々調べてくれた事も、SFを止めてくれた事も本当に感謝している」
「私達だけじゃきっと、どうにもならなかった……お父さん、お母さん、ありがとう。私、今すっごく幸せ!」
イヴのその言葉に、2人はとても嬉しそうに笑った後、別れの言葉を告げて、通信を終えた。
静かになった室内でイヴがそっと寄り添ってくる。
「これで本当に、ジェイソンとずっと一緒にいられるんだね……」
「ああ、これからはずっと一緒だ。君との約束の為だけじゃない、ケインからの依頼の為でもない。俺が、君と一緒にいたいんだ」
「ジェイソン……ふふっ。私も同じ気持ちだよ」
こうして、俺とイヴの地球での新たな生活が始まる事となった。この平和で穏やかな時間がいつまでも続くのか、それともまた別の苦難が待っているのかは俺達には分からない。
それでも俺は彼女と一緒なら、何があっても乗り越えられると信じている。
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ーー地球の地下『エリア5:人工海エリア』のどこか
波の音が響き渡る岩場の奥。誰も訪れないその場所に、突如ワームホールが開かれ、何かが転げ出てくる。
「ぁ……う?あー……」
出てきたのは幼い顔つきの少女だが、その身体はあからさまに人とは違う。その手はスライムの様なもので作られ、足や肩は他の生物の顔がついている様にも見える。
その生物は、しばらく周囲を見回した後、ゆっくり立ち上がる。
「だれか……さがさーないとぉ……」
そしてポツリとそう呟くと、ふらつきながらもどこかへ歩き始めるのだった。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今回は遅くなってしまい申し訳ありません。詳しい事とオチは活動報告に書いておきました。
書いている最中に、なんかこの世界のSFの対応が優しくない?とか思ってしまった今回のお話。イヴの状況が最初から分かってたらめっちゃ貴重な存在になっていたと思うんですよね。
そして次回からオリジナルキャラを登場させて参ります。オリジナル扱いでいいのかちょっと首傾げていますが…
何はともあれ、引き続き頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。
感想などいただけると作者がいつものように喜びます。