ブラスターマスターゼロ3 IFストーリー 作:通りすがりのヌ・ナセ草
「……という感じの内容になるんだけど、ここまでは分かった?」
「うん!ミュー、大丈夫!」
ミューの扱いについて、ケインが惑星ソフィアで話を進めている間、俺とイヴはミューについて色々調べていた。
数日間の調査の結果、ミューは一般的な知識、常識はそれなりに持っている事が判明した。疑問に思い、その知識をどうやって得たのかミューに尋ねてみたが、ミュー自身もよく分かっていなかった。
「それじゃあ、この字とかは分かる?」
「うん!分かるー!」
そしてミューの知識量をもっと調べてみようとなり、色んなデータを見せたり聞いたりしていたのだが……気づけばいつの間にかミューへの勉強会へと変わっていた。だが、ミューの学習能力は非常に高いようで、話し方も数日前に比べてハッキリとしてきている。
「ジェイソン、やっぱりこの子凄い!教えた事をどんどん覚えていっちゃうんだもん」
「ああ、まさかここまで飲み込みが早いなんて……」
俺とイヴの反応を見て、ミューは嬉しそうな顔で胸を張っている。
だが、この凄まじいまでの情報の吸収力、分析能力はいったい何の為にあるのか、まるで何かを得なければいけない目的でもあるのではないか、そんな考えが頭をよぎると同時に通信機から呼び出し音が鳴る。
「おっと、ケインからの通信か」
「あっ、そしたらミューは別の部屋に移動してもらった方がいいかな?」
「いや、今日はこのまま一緒に通信をしてもらおう」
そう言って俺は通信を繋ぐ、今まではケインとの通信の際はミューには、与えた個室に移っていてもらったが今日はミュー自身に関わってくる話があると考え、同席してもらう事にした。
『お疲れさん。2人共、調子はどうだ?』
「こっちはそこまで新しい発見は無いな。そっちは……なんだか疲れた顔をしてるが大丈夫なのか?」
通信を開き、現れたケインの顔はひどく疲れているのが一目で分かるほどであり、イヴも心配そうな表情で見ている。
『大丈夫だ、と言いたいところだが、正直参っているというのが本音だな。まあ、それも昨日までの話だがな』
「という事はミューについての話は決まったのか?」
『ああ、どうにかな。ミュー、か。まったく……すっかり家族の様に馴染んでいるな』
ケインは呆れた様にため息を吐く。最初にミューへの名付けの話をした時も、困った様な呆れた様な顔をされたが、大きな反対をされなかったのはイヴの事を考えての事だったのだろう。
「うんっ!ミューはね!家族なんだよ!」
『うおっ!?あ、ああ、例のミュータントか……』
ケインの言葉を聞いてミューが俺の背中に飛びついて、よじ登って来る。
「こらっ!邪魔しちゃ駄目でしょ!」
「あー」
イヴに引き剥がされてミューは大人しく俺から離れていく。
知識はあっても有り余る元気は抑え切れるものでは無い。その事はこの数日で散々経験済みなのでこんな行動でも驚きはしない。
『本当に子供みたいだな……それより、その子についての話だ』
「SF内ではどんな結論が出されたんだ?」
『お前達の元で監視を続行、そしてSFからの依頼への協力。その2つを守れると言うのなら観察対象として見てくれる、と言ったところだな』
「依頼?」
ミューへの依頼と聞いて俺達は考え込む。そんな俺達とは裏腹に、ミュー自身は何を任されるのかとワクワクした目でモニターを見ている。
『ああ、以前分析したデータがあっただろ?案の定、あのデータはSF内でも大騒ぎになってな……』
ケインがその時の状況を思い出したのか、先程よりも疲れた顔になって項垂れてしまう。
『もっとデータを要求しろ、ミュー自身を研究させろ、早急に始末すべきだ、貴重な存在なのだからもっと慎重に動けだ……様々な意見が飛び交いに飛び交い続け、最終的にデータの重要性が優先された感じだ……』
「た、大変だったんだな……」
『まったくだ。幸いだったのが女王であるイヴに懐いているのならば女王とも何か関わりがあると考えられてな。おかげで過激的な意見はすぐに消えてくれた事だな』
顔を上げてケインがミューの方を見る。その先ではミューがイヴに抱きついているのが見える。
たしかにイヴとの関係が全く無いとは思えない。その事がイヴが襲われた事に繋がっていなければいいのだが……
『それで依頼についてだが、お前達はミュータントのデータを集め続けてほしい』
「ああ、それは予想していたが、ミュータント達はイヴの指示で超次元空間に潜んでいるというのは分かっているはずだ。どうやって集めると言うんだ?」
『それについてはこの間の襲撃を利用するつもりだ』
ケインが言っているのは、ミューと出会った時にあった戦闘の事だろう。
結局あの件は原因が解明されておらず、再び襲撃があってもおかしくは無いとは言える。
「またミュータントが襲って来た時に迎撃、そいつらの死骸を使ってミューに情報を抜き出させるという事か」
『そうだ。超次元空間からミュータントを呼び出してそいつを使う話もあったが、イヴが襲われた原因が分かっていない事から、実行に移すのは危険だと判断された』
それを聞いて少し安心する。今のイヴにとってミュータントは家族の様なものだ。犠牲になってもらう為だけに呼び出すと言うのは、イヴ自身だっていい気分なわけが無い。
「だが、ミュータントが現れなかった場合はどうする気なんだ?」
『正直、俺もその可能性は十分にあると考えている。それならそれで普段通りに過ごしてくれればいいさ』
「ミュー、何もしなくてもいいの?」
ケインの言葉にミューが首を傾げる。本人はやる気に満ちていた分、やる事が無いかもしれないと聞いて拍子抜けしてしまったのだろう。
『もしかしたらの話さ。出番が来た時は君にも期待しているからな』
「うん!ミュー頑張る!パパとママと一緒に頑張る!」
なんだかんだでミューに優しく言葉を掛けてくれるケインにイヴと一緒に笑っていると、ケインが固まっているのに気づく。
「ケイン?どうしたんだ?」
『い、いや。パパ、ママって、ミューって実は本当にお前達の……』
そう言えばケインにはミューからどう呼ばれているとかそう言った話をした事が無かったな。
「も、もう!お父さんも変なこと言わないで!これはミューが出会った時にいきなり呼び始めたの!」
『あ、ああ。そうなのか。俺はてっきりミューの事を誤魔化す為に今まで……』
「お父さんっ!!」
ケインが変な方向へ考えが向いている事に、イヴが顔を赤くしながら怒鳴りつける。
さすがのケインもたじろぎながら、頭を下げている。
「……んー?んー」
ふと見れば、そんな2人の様子を気にする事なく、ミューが何かを考えているのに気づく。
「どうしたんだ?今の話で何か分からなかった事でもあったのか?」
「ううん、違うの。ママのパパ……あ!そっか!」
ミューの反応から俺は何を言おうとしたのか察したが、止めるよりも早くミューはその言葉を口にしてしまった。
「ケインおじいちゃん!」
『お、おじっ!?』
「ミュー!?」
突然呼ばれたその呼び方に、ケインは画面の向こうで固まってしまい、先程まで怒っていたイヴすらもその言葉に戸惑ってしまう。
『おじいちゃん……おじいちゃん、か。いや、間違ってはいないんだろうが……』
「お、お父さん。大丈夫……?」
「ミュー、彼の事はケインさんって呼んであげるんだ」
「そうなの?分かった!ミュー覚えた!」
ミューは俺の言った事をすぐに理解してくれたが、なぜこう言われたのかという事は理解していないんだろうな……
『俺、まだ25なんだけどなあ……』
ケインは少しの間、悲しそうに呟いていたが、色々と諦めたのかいつもの顔でこちらに向き直る。きっと内心、色々思う所があるのだろうが、触れないでおく。
『とにかくそういう話で落ち着きはしたが、肝心の女王、イヴが襲われたという理由については謎のままだ。こちらでも何か分かった事があれば伝えるが、お前達も十分に気をつけろ』
「分かった。一応、俺達の方でも調査は続けてみる」
『ああ、頼んだ。それじゃあ通信を終えるぞ』
通信を終える直前、おじいちゃんかあ…、そう呟く声が聞こえた気がするが、気のせいだという事にしておく。
「パパ、パパ!それでミューはどうすればいいの?」
「今はいつもの様に過ごしていれば大丈夫さ。もし、またイヴを襲って来る様な奴が来た時に手伝ってほしい」
「うん!ミュー、一緒に頑張って戦うね!」
「あ、いや。ミューは戦うんじゃなくて……」
説明しようとするが飛び跳ねながらはしゃぐ様子を見て、説明するのは後にしようと諦める事にした。
そう考えていると、少し悲しそうな表情をしたイヴが隣に寄って来る。
「……やっぱり色々不安なのか?」
「うん。もしかして私が女王として上手くできてないから襲われたんじゃないか、それが原因で結局ジェイソンを危険な目に遭わせてしまうんじゃないか……そう思っちゃって……」
いつもはそう思わせない様に明るく振る舞っていたんだろうが、先程のケインとの話を聞いて、不安な気持ちが強く出てしまったのだろう。
俺はイヴの頭をそっと撫でて気持ちを落ち着かせる。
「大丈夫さ。きっとすぐに原因も分かるし、そんな大事にはならないさ」
「……なんだか子供扱いされているみたいでちょっと複雑……でも、ありがとう」
「ママずるーい!ミューも!」
そう言ってはしゃいでいたミューが俺達の間に割り込む様に入って来る。
俺とイヴはそんな様子に苦笑しながら、ミューを撫でてやると、彼女も嬉しそうに笑ってくれる。
「ジェイソン、私考えたんだけど、みんなの元を訪れてみない?」
「みんな?」
ミューを撫でながら今後はどう動いたものかと考えていると、イヴも同じ事を考えていたのか、今後の案を出してくれる。
「うん。他のMAパイロット達の所。もしかしたら、みんなの所でもミュータントの襲撃があったかもしれないし、そうじゃなくても私の事を話しておかなきゃって思うの」
「なるほど……たしかにイヴの言う通りだな。俺達には超惑星間万能マーカーがあるから、みんなの元へ行くのは苦労しないしな」
「パパ、誰かと会うの?」
俺達の話を聞いたミューが、興味津々といった様子で顔を上げる。
ミュータントという事から、普段は誰にも会えない分、誰かと会うという事に敏感になっているようだ。
「ああ、俺達を助けてくれた仲間達に会いに行こうかって話をしていたんだ」
「ミューも行っていいの?」
「もちろんよ。と言うかミュー1人で置いてくのはお父さんとの約束を破っちゃうから出来ないんだけどね」
それを聞いて、ミューは目を輝かせながら身体を擦り付けて来る。余程楽しみなのだろうが、これではまるで犬のようだ。
「もー、少しは落ち着いて。それで誰から会いに行こっか?」
「そうだな……とりあえずはジョッキか、権兵衛のどっちかだな」
「あれ?カンナは?」
「ああ、カンナがいるのは『ストランガ』だから、ミューとイヴの事を考えるとすぐには難しいと思うんだ」
超環境惑星『ストランガ』。ミュータントすらも凌駕する植物が生息する惑星だ。俺は平気だとしてもミュータントに近い存在となってしまったイヴとミュータントのミューをそのまま連れて行くのはさすがに危険すぎる。
「あ、そっか……」
「そこについても色々調べて、ちゃんと行けるようにするから心配しないでくれ」
「うん。楽しみにしてるね」
そう言って笑うイヴの笑顔は、少しだけ寂しそうだった。出来るだけ早く、あの星に降り立つ方法を考えないといけないな。
あと、もう1人会いに行きたい奴もいるが、超惑星間万能マーカーも無いし、そもそもミューを見てどんな反応をするか分からない。とりあえずは保留にしておこう。
「ねーねー、出発しないのー?」
「さすがにすぐには出発は出来ないな。まず色々な所に話を通さないといけないしな」
「そっかー。じゃあミューそれまでいっぱいお勉強しておくね!」
「ふふっ。それなら私も手伝わなきゃね」
そう言うと2人は通信の前まで続けていた勉強を再開する為に、机の前に戻っていった。
その様子を見て、俺も負けられないなと思い、早速ストランガについての情報を集め始めた。
『惑星モントイのクエビコから救助を求める通信が届いた』
数時間後、ケインから届いたその知らせに俺とイヴは息を呑む事になった。
今回も読んでいただきありがとうございます。
ミューちゃんの役割である情報の分析。様々なミュータントをこれから分析してくれる事でしょう。そしてミューにしか出来ない味の分析もきっとしてくれる事でしょう!不味いが大半になる気もしますが。
感想の方もぜひお願いします。