昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~   作:大回転スカイミサイル

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桃山玻璃は転生者である!
彼を転生させたものは未だに闇に包まれている!
桃山玻璃は最強怪人グランザイラスの力を得て、この世界にいる石ノ森ヒーローたちの助けになるのだ!!

※不定期更新です。


第1話「転生者、桃山玻璃は―――」

-1-

 

―――少し転寝をしていた。

 

それはいつ眠りについたのか、わからないほど微かな眠り。

 

いつ起きたのかも知れないほど、浅い眠り。

 

その中で思う夢は、確かな憧れ。

 

目の前に、いるのは。

 

「待ていショッカー!!」

 

それは一人のヒーロー。

 

緑の仮面、紅いマフラーをまとった男。

 

この姿に、私は見覚えがある。

 

いや、ないはずがない。

 

彼は、そう。

 

「始まりの男」だ。

 

唐突だが、私は特撮作品を大人になった今でも愛好している……

 

そんな子供向けの特撮ヒーロー作品においてエポックメイキングとされるヒーロー、怪獣はいくつかある。

 

例えばそれは東宝が送り出した核兵器によって変異した怪獣王であり。

 

それは顔を隠した謎のヒーローという概念を生み出した月の人であり。

 

それは特撮の神様とその弟子たちが生み出した光の巨人であり。

 

また、五色の衣装をまとったチームであるし、銀色のスーツを纏った銀河の刑事であったり。

 

紛れもなく目の前の彼は、その一つ。

 

そう、その昆虫を、飛蝗を模したその仮面は見間違えようはずもない。

 

「か、仮面ライダー……1号?な、なんで……?」

 

思わず自分はそんな言葉を漏らしていた。

 

「仮面ライダーを知っているだとぉ!」

 

そして、私に背を向ける仮面ライダーと対峙するもの―――それは。

 

「え?蝙蝠男?どうして?」

 

私はひたすらに混乱し、一歩後ずさった。

 

「仮面ライダーだけではなく儂の名前まで知っているとは、貴様何者だ!ヒヒヒヒヒヒヒ……」

 

「いや、そんなん特撮クラスタなら常識だし……って……は?」

 

後ずさった自分が、思ったよりも全然後ずされてなくて思わず手を見る。

 

そこには、紛うことなく幼児の手。

 

「は?」

 

「は?ではないわ!ショッカーを知るものを生かしてはおけん!儂の吸血ビールスを喰らえ!」

 

「させん!早く逃げるんだ!」

 

紛れもない藤岡弘、の。

 

いや、仮面ライダーの、本郷猛の声が響いた。

 

その頼もしい言葉に、私は全力で彼らへと背を向けて走り出した。

 

遅い。

 

体が小さくて、思ったように動けない。

 

ドゴォン!バガァァァ!!

 

自分の後ろから、とんでもない破砕音がしている。

 

ああ、大野剣友会アクションがリアルになるとあんな音するんだ。

 

その合間に聞き覚えのある効果音が聞こえてくるのだから、全力で逃げながらも頭が混乱していく。

 

なんで?どうして?

 

自分は部屋で転寝してただけなのに。

 

なんで、こんな夜に。

 

ビルの屋上で走り込む羽目になっているんだろう。

 

それにこの体は。

 

どうしてこんな子供の体になってるんだ?

 

わからない。わからない。わからない。

 

何もかもがわからないまま、逃げる。

 

ヒュー、っと風を切る音が響いて、次に破砕音。

 

―――戦闘員が投げ落とされて死んだんだ。

 

その思考に怖気を震い、屋上から階下へ降りる階段を見つけて―――運良くそこは開いていて―――

 

「ライダー投げ!!」

 

「ヒィヒヒィ―――!?」

 

後ろから、仮面ライダーが蝙蝠男にとどめを刺す声が聴こえる。

 

そんなこともう気にすることも出来ずに私は階段を降りていく。

 

そして、そこには―――

 

「シュシュシュシュ……シュシュシュッ……」

 

空気が漏れるような鳴き声を出す、戦闘員が、一人。

 

「ひっ!?」

 

私の口から悲鳴が漏れる。

 

戦闘員は目撃したものを消せと命じられているのだろう、その手のナイフをこちらへ向けて―――

 

「いやだっ!!」

 

死ぬのは嫌だ。

 

こんな訳のわからない事態で死ぬのは嫌だ。

 

咄嗟に私は手を突き出した。

 

真っ直ぐに、右腕を。

 

ドン。

 

何かが発射される音がして、そして。

 

戦闘員はその頭を吹っ飛ばされていた。

 

断末魔の叫びすらない一瞬の出来事。

 

その一瞬で、自分の腕は―――いや、違う。自分の腕じゃない。

 

現実を認められないそんな怪物の腕。

 

右腕は先端に穴の開いた大きな爪。

 

左腕はブツブツとした突起が痛々しい水棲生物のようななにか。

 

その腕に私は見覚えがある。

 

そうだ、この姿は―――

 

階段の踊り廊下に鏡があるのが見える。

 

そこに映ったその姿。

 

それは間違いなく―――

 

ザシッ、ザシッと足を動かす。

 

『なんだこれは……どういうことなんだ……?』

 

私はその―――姿。

 

見覚えのあるその姿に驚愕して、絶句する。

 

「待てい!貴様何者だ!」

 

後ろから誰かの声が聴こえる。

 

―――それは紛れもなく尊敬すべき、仮面ライダー第1号の声だ。

 

混乱する自らの思考が急速にまとまっていくのを感じる。

 

そして、ついて出た言葉は―――流暢な嘘だった。

 

『我が名は最強怪人グランザイラス―――ショッカー如きの怪人と一緒にするんじゃあないぞ―――いずれまた見えよう』

 

自然に体は動き、自分は高温の竜巻となっていく。

 

「待て!ショッカーではないというのか!?」

 

『そのとおりだ!さらばだ、仮面ライダー1号!ショッカー如きに敗れることは許さぬぞ!』

 

そう捨て台詞と、溶けていく戦闘員の死体と、それから仮面ライダー1号を残して私は空へと駆け上がっていく。

 

一体何が起きているのか、何もわからないままに。

 

 

 

仮面ライダー本郷猛は、蝙蝠男との最後の戦いの最中、屋上に佇む少女を発見した。

 

白い髪、白い肌、そしてそれを包む青いワンピースドレス。

 

歳は6つか7つというところだろう。

 

見た瞬間に彼女を守らねばという気持ちが仮面ライダーの中に湧いた。

 

「か、仮面ライダー……1号?な、なんで……?」

 

―――驚くべき言葉が少女の口から出たのは、その瞬間であった。

 

「貴様、仮面ライダーを知っているだとぉ!?」

 

蝙蝠男の怒りすら籠もった詰問の声が虚空を揺らす。

 

「え?蝙蝠男?どうして?」

 

なんと少女は蝙蝠男までを知っている!

 

明らかにショッカーの関係者だと判断した仮面ライダーは、彼女に危害を加えさせまいと彼女を庇うように前に立った。

 

「仮面ライダーだけではなく儂の名前まで知っているとは、貴様何者だ!ヒヒヒヒヒヒヒ……」

 

「いや、そんなん特撮クラスタなら常識だし……って……は?」

 

怯えて後退る少女は、自らを見て何やら驚いているようだったが、そんなことは蝙蝠男にはなんの関係もない。

 

「は?ではないわ!ショッカーを知るものを生かしてはおけん!儂の吸血ビールスを喰らえ!」

 

「させん!早く逃げるんだ!」

 

仮面ライダーは雄々しくそう少女に逃げるように指示をすると、蝙蝠男の突き出した腕を蹴り上げる。

 

少女が一目散に逃げ出したことを確認した仮面ライダーは、そうして「これが最後の勝負だな!」と拳を全力で蝙蝠男に叩きつけた!

 

ガゴォン!ドゴォ!

 

何発も、何発も骨も砕けよと殴り抜ける、

 

戦闘員たちを倒し、蝙蝠男を追い詰め、そうして遂に決着のときは訪れた。

 

「トォ!」「ヒヒィ!」

 

二人の超人は、空中で揉み合い、そして力比べの軍配は仮面ライダーに上がる。

 

バッタの姿の超人は、コウモリの姿の超人を易々と地面へ投げ飛ばさんと背負い、事実そうなった。

 

「ライダー投げ!!」「ヒィヒヒィ―――!?」

 

残響を残した蝙蝠男は、重力加速度の何倍もの加速で地面へと投げ出され、そして激突し―――

 

肉塊と血溜まりとなって溶け消えた。

 

既に人々を吸血鬼へと変えた殺人ビールスの治療ワクチンは仮面ライダーの手中である。

 

後は……あの少女を迎え、そしてマンションの住人と―――彼にとって大切な人物の一人である緑川ルリ子を救うのみである。

 

―――そこまで思考した時、周囲の空気が―――

 

否、時空が!

 

例えようもない重さに変化していくのを感じた。

 

「……なんだこれは!?」

 

それは恐るべき気配。

 

どこかで知っているような、いや、これから知ることがまるでわかっているような戦慄。

 

その畏れにも似た感覚に、自然仮面ライダーは、否、本郷猛は走り出していた。

 

そして、少女が逃げ出していった階段で見たもの、それは―――

 

「待てい!貴様、何者だ!?」

 

自然の声が出ていた。

 

目の前にいる、青と銀の異形は―――威容とも言える異容に本郷猛は叫んだ。

 

無論、目の前の怪人の驚異ではなく。

 

逃げたはずの少女をどうしたのか、という意味合いを多分に含む言葉だった。

 

ゆっくりと機械と生物の混じった怪物は、その筋肉とも装甲ともつかぬ胸を反らせて叫ぶがごとくに笑い出した。

 

『我が名は最強怪人グランザイラス―――ショッカー如きの怪人と一緒にするんじゃあないぞ―――いずれまた見えよう』

 

それはひとしきり嘲笑うがごとくに呵呵と笑うと、そうして体を炎の竜巻へと変えていく。

 

「待て!ショッカーではないというのか!?」

 

『そのとおりだ!さらばだ、仮面ライダー1号!ショッカー如きに敗れることは許さぬぞ!』

 

仮面ライダーの質問を振り切るかのごとく、青い怪人は通路を―――まるで壊さないように注意しながら――― 一直線に闇に開いた穴のように見える夜へ向けて飛び立っていった。

 

「……アレは一体。新たな敵とでもいうのか……?」

 

仮面ライダーは変身を解き、本郷猛の姿を取り戻すと天を睨んで拳を握りしめる。

 

「―――今はルリ子さんと団地の住民を助けることを考えなければ」

 

握った拳はそのままに、本郷猛は踵を返して走り去る。

 

―――明けない夜はない。

 

ショッカー怪人蝙蝠男のもたらした夜は、今や疑いようもなく明けようとしていたのだった。

 

 




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