昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~   作:大回転スカイミサイル

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第10話「仮面ライダー編その一 本郷猛という男」⑤

-10-

 

―――本郷さんが出ていった時、私はどういう気持ちだったろうか。

 

不甲斐ない。

 

役に立たない。

 

使えない。

 

自分に対する無力感だらけで、とにかく頭が鈍く感じる。

 

「……やっぱり、私も行かなきゃあ」

 

鈍い頭のままで私は裏口へ向けて歩き出し、そして外に出たところで―――

 

「おお、どうしたハリ。そんな浮かない顔で」

 

そこには買い出しから戻った立花さんがいたのだった。

 

なら言うべきことはひとつ。

 

「立花さん!おかえりなさい!本郷さんが、幼馴染の地震学者の人のところに行ったんです!ショッカーに襲われてるかもしれないからって!」

 

「何っ!?こうしちゃおれん!その幼馴染ってのはどこにいるんだ!」

 

私の言葉に、立花さんは乱暴に買い物袋―――紙袋や買い物かごを―――地面に落として、外へ出ていこうとする。

 

「中央地震研究所にいるはずです!お願いします!」

 

私が叫ぶと、「よし来た!」と言って立花さんは中央地震研究所へと向かった。

 

もちろん私のことは置いていく。当たり前のことだ。

 

だから―――私は。

 

立花さんが去れば、また私は無力感に苛まれる。

 

苛むものから逃げ出すにはどうすれば良い?

 

苛むものを倒してしまえばよいのだ。

 

私の心に怒りが渦巻いていく。

 

怒りは、やがて私を異形へと変貌させることだろう。

 

ふつふつと滾る怒りを抑えて、立花さんが置いていった食べ物とか飲み物とか、そういったものを冷蔵庫へ収めていく。

 

冷たい業務用の冷蔵庫へものを収めていくたびに、逆に自分の心は燃え上がっていく。

 

そして冷凍庫にアイスを放り込んだ私は、シローさんに気づかれないようにそっと裏口から外へ出ていった。

 

―――そうして、私の体は一個の火炎旋風となって空を飛んでいく。

 

最強怪人、グランザイラスとして。

 

 

 

「というわけでやってきました、中央地震研究所……普通に警備員とかいますねえ……」

 

なにがというわけか自分でもわからないが、私は空飛ぶ火の玉状態のまま、上空から下の研究所を監視していた。

 

「―――とっとと中に突入するべきだな、これは……そろそろ夜になるし、警備員がいるってのに、誰も退勤してくる人がいないし……」

 

そう判断して、私は体を火炎旋風から通常状態へと戻して降下していく。

 

おそらくあの警備員たちはショッカー戦闘員が扮しているに違いない。

 

上空から見た限り、ほんの少しだけ普通人よりも熱量が多いように感じられたからだ。

 

ちか子さんがもし脱出してきたなら、間違いなく偽警備員たちに捕まってしまうだろう。

 

「―――外からスキャニングした感じでは死人のたぐいはいない……目撃者を恐れていない?まあ、それもそうか……」

 

ショッカーは謎の技術で日本各地の震源地になりうる場所の大深度に核爆弾を設置し、それによって引き起こされた人工の大地震で大都市を一挙に殲滅する予定なのだ。

 

多少見られてもかまわないということなのだろう。

 

―――そしてふと見れば。

 

あれはっ!

 

そこには研究所から研究員と思われる人間を運び出そうとしている10人余りの戦闘員たちがいた。

 

指揮を取っているのは―――あれは!

 

六角形の複眼を3つ持つ蜘蛛をモチーフにした改造人間―――蜘蛛男であった。

 

(まさか、もう再生されている?というか、研究員を運び出してるってことは……)

 

白戦闘員を補充する目的なのか、それとも原作よりも人工地震計画が大規模なのか。

 

そこはわからないが、研究所そのものがターゲットになっているのだということがわかる。

 

それに蜘蛛男はEDで2号と一緒に川に落ちるシーンがあるから、本編外で何度も再生されていたのかもしれない。

 

だったら、やるべきことは一つだ。

 

ズシャッ……ズシャッ……

 

重い歩行音を立てながら、私はその連中……

 

ショッカーの怪人と戦闘員の前へと姿を表すのであった。

 

「そこで何をしている貴様ら」

 

左手をかざし、怒りに満ちた声で私は蜘蛛男へと声をかける。

 

『ムォォーッ!?き、貴様は!そうか、貴様が……』

 

「やはり私を知っているようだな……そこの研究員たちを置いて帰れ。でなければ私の質問に答えて死ね」

 

かなり理不尽なことを言っているが、そもそもショッカー自体が理不尽そのものだ。

 

日常を侵食する悪魔たちに、理不尽返しをしてやるのは市民として当然の権利だな、と意味不明なことを考えながら近づいていく。

 

『ぐくっ!首領の言っていた怪人が貴様だな!』

 

うーん、この通り一遍のセリフ……確かにショッカーの怪人だって感じがする。

 

「答える義務はない。私の要求は伝えた―――ここからは実力行使となる」

 

私は研究員を抱えている戦闘員へと、右腕を向けて―――最小の力で火炎弾を放った。

 

ドォン!

 

「ヒィーッ!?」

 

一瞬でそれは研究員をうまく避けて、戦闘員の体に大穴を開ける。

 

大穴を開けられた戦闘員は、そのままドロドロと解けて地面に吸われて消えていく……怖いが、仕方ない。

 

……原作でのかまきり男付の戦闘員は、死ぬと人型に整形された糸が解けていく映像が挿入されていたが、本当にそのように解けていく。

 

私は、知らず吐き気をもよおしていた。

 

「……私は貴様らをすぐにも鏖殺できる。研究員たちを気にしなければ、だ。そして私は研究員たちをどうしても置いていく気がないというのなら、必ずや君たちを皆殺しにするだろう。さあ、どちらがいい?」

 

―――研究員たちを殺すつもりはないが、しかし彼ら戦闘員や怪人はもう人間ではない。

 

獣を撃つと思って、斃す。

 

その覚悟くらいは……出来ていると思う。思いたい。でなければ―――

 

ズシャリ、と砂を踏みつけて一歩前へ。

 

『ふん!ショッカーを知るなら、ショッカーの掟くらいは知っていよう!敗北者には死!それのみよ!!』

 

その蜘蛛男の言葉を私はどこかで予想していたのだろうか。

 

―――研究員を拘束する戦闘員の前にダッシュして―――その戦闘員の頭を殴り砕いた。

 

ゴシャア!

 

何かが潰れ破砕する音!

 

認めたくない、認めたくはないが―――これが私の初の能動的な殺人行為なのだ。

 

その事実に、私のどこか奥のほうが痛みを感じる―――が。

 

それ以上に私が感じていたのは、怒りだ。

 

人間の自由を簡単に奪っていく。

 

その事実に怒りを禁じえない。

 

ドンッ!ドンッ!ドンッッ!

 

再び私の手から放たれた火炎弾は、戦闘員の致命の部分を打ち砕いていく。

 

戦闘員の数は、すでに2名にまで減っている。

 

―――この数では、こんなものか。

 

私は冷たい気持ちでそう考えて、「さあ、どうする?置いて帰るか、全員死ぬか、だ」と再び蜘蛛男へと質問を投げかけた。

 

『ぬぅ!この俺が相手だぁ!ムォォーッ!』

 

蜘蛛男は、そうしてシュルシュルと伸縮自在の糸を飛ばしてくるが―――遅い。

 

蜘蛛男は拉致誘拐、暗殺を主眼とした改造人間のため、その能力は蝙蝠男以降の改造人間と比しても低いとされる。

 

改造直後で能力もまだきちんと把握できていなかったであろう時期の仮面ライダーに苦もなくやられてしまう程度でしかないのだ。

 

ならば、問題はない。

 

私は右手で残った戦闘員のうち、一人の鳩尾を貫く。

 

返す刀で―――もう一人の頭蓋を砕いた。

 

戦闘員がいなければ、この人数の研究員を拉致することは出来まい。

 

『貴様ぁ!』

 

「貴様もへったくれもない。藁のように死ね」

 

私はそうして、ふわりと空へ体を浮かせた。

 

ヒュン!ヒュン!ヒュヒュッ!

 

蜘蛛男は毒針を四本私へと向けて放ったが、それは―――

 

カキン、カキンッキンキンッ!

 

私の―――グランザイラスの装甲を貫くことは出来ず、金属音を立てて弾かれ、地面へと落ちていった。

 

『くっ……!?』

 

「―――終わりだ、ショッカー怪人・蜘蛛男」

 

私は自分の体の態勢を―――子供の頃から憧れたヒーローの。

 

つまり、つまりはだ。

 

仮面ライダーの、ライダーキックの形へ変えて。

 

「さらば!」

 

しかし、その名を口にすることはなく、空中で急加速した。

 

『お、おのれーッ!!』

 

ガドゥン!

 

爆発音のような衝突音を残して、蜘蛛男は吹き飛び、そして―――

 

『ぎゃああああああ!!』

 

断末魔を残して、空中で溶けて消えてなくなっていった。、

 

「……勝った」

 

私は、少し安堵する。

 

この姿の戦闘力は、たしかにグランザイラスそのものと言えるとわかったからだ。

 

再生怪人とは言え蜘蛛男の攻撃は私に何の痛痒を与えることもなく、逆に私は軽く戦ったつもりでも彼には致命の一撃となったのだ。

 

「だとしても、気分は―――最悪だな」

 

私は思わずに独り言ちる。

 

人を潰し、砕き、破壊する感触―――こんなものか。

 

こんなものなのか、と気持ちが悪くなる。

 

だが、まだ倒れる訳にはいかない。

 

そろそろ立花さんが来るはずだ。

 

その前に、撤収しなければ。

 

キキィッ!

 

噂をすれば影だ。

 

研究所の入り口に立花さんの車―――車は詳しくないからわからないけど、多分トヨタ車が横付けするのがこの目には見える。

 

「さあて、研究員を端っこに寝かせたし私は撤収するか……」

 

私はそう独り言ちて、火の玉になるべく歩き出し―――

 

そこに。

 

「誰か助けて!猛さんが!!」と叫ぶ女性が、研究所から飛び出してきた。

 

あれは――ー間違いなく、雨宮ちか子さんだ。

 

その叫ぶ言葉、つまり―――

 

まさか!まだ中で本郷さんはかまきり男と戦ってるってでも言うのか!?

 

私は知らず走り出す。

 

あの怪人は、もしかすると原作にて本郷猛を爆殺しようとした時に持っていた、彼曰く「とびきり上等の」爆弾を持っているかもしれない。

 

原作では―――その爆発力を利用して変身した本郷さんだが、それがここで使われでもしたら?

 

いや、持っていない可能性もあるが、閉所での立ち回りは変身してない本郷さんよりかまきり男のほうが強いはず。

 

こうしてはいられない。

 

ちか子さんが私を見て仰天するのも、後ろから立花さんが叫んでいるのも私は無視して研究所の中へと飛び込んでいったのだった―――

 

 

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