昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~ 作:大回転スカイミサイル
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本郷さんは神妙な顔つきで、立花さんに「やはりグランザイラスは、彼女と何か関係があるのは間違いないでしょう」と言って、コーヒーを啜った。
「あの研究所に突っ込んでった怪人か……そいつがショッカーのアジトの場所を教えたのか……」
立花さんはそう言ってパイプから煙をくゆらせる。
―――私はその間で、所在なげに椅子に座っていた。
あの後、研究所の方は立花さんが警察に通報し、事なきを得たらしい。
ちか子さんはアミーゴの中の休憩室で今は横になっているのだという。
「周囲の僅かな痕跡から、グランザイラスは言葉通りにショッカーの別働隊を全滅させていたようです」
本郷さんはそうして、カウンターの上に本当に少しの糸らしきものを置いた。
「これはおそらく……蜘蛛男のものでしょう」
「お前をさらって、緑川博士を殺したやつか……ってことは、生き返ったってのかそいつは!」
……これだよ。
ショッカーっていうか、悪の組織ってこういうところ雑に証拠を残すんだよな。
蜘蛛男の糸なんで残しておいちゃダメでしょ……
とはいえ、あのように雑に私にぶっ殺されるとか思ってなかったんだろうし仕方ないか。
それに、多分、これは本当に専門の科学者にでも見せないとわからないものだろうし。
今はまだ1971年。
誰しもが007のスパイ七つ道具の何十倍も性能がいいスマホを持ってるような時代じゃない。
露見することはほぼありえないだろう。
私は小さく嘆息して、「それで、私どうすればいいですか……?」となるべく不安げに二人に話しかける。
「ん……今はいいさ。どっちにしろそのグランなんとかやショッカーには狙われているんだ。このままここにいればいいさ。しかしだな……」
立花さんはそう言って、「このままアミーゴに泊めておくにはちょっと危ないだろ」と本郷さんを見た。
「そうですね。僕かルリ子さんが預かるのがいいんでしょうが」
そう言えば、本郷さんは数少ない自宅が作中で判明している昭和ライダーである。
第5話……先ほどスピード解決したかまきり男の事件で、ちか子さんを休ませていた場所である。
いや、それは嬉しいけど、まずいんじゃないか、と少し思うが……
「そうだな。俺んところ男やもめで散らかってるからな。お前らが預かってくれるなら安心だ」
立花さんはそう言って笑うので、わずかにぎょっとする―――が、そう言えば今は昭和だったな、とその辺ガバガバなんだと思いなおした。
イケメンがほぼ初対面の少女の家に上がり込んでご飯までごちそうになるくらいはこの時代は許される……はず。
宇宙刑事シャリバンでそういうの見た!
「……ふむ。しかし僕は留守にしていることも多い。だとすると、やはりルリ子さんに頼むのが一番だろうか」
本郷さんは顎の手を当てて黙り込む……
そうなのである。
本郷さんはマンションを借りての一人暮らしだが、ぶっちゃけ後2か月か3か月かもすれば欧州へショッカーの陰謀を追っていってしまうのだ。
勿論ルリ子さんもである。
……やっぱり立花さんのところがいいな。
なぜかと言われれば簡単な話で、立花さんは少なくともずっと国内に居住しているからである。
そろそろ現れるはずの滝さんはショッカー、ゲルショッカーが壊滅すればアメリカに帰っちゃうのは間違いないし、一文字さんは家があるのかどうかも怪しいし……
ライダーガールズや石倉五郎くん、シローさんの家など論外である。
そうなるとどう考えても、国内にずっといる立花さんをあてにするのが一番だろう。
「あの、だったら私、立花さんの家が良いです。立花さんが私を学校に通わせてくれてるんですし……」
静かに、懇願するように立花さんの目を見据えてそう言うと、本郷さんが「なるほど……ルリ子さんは女性だ。襲われた時に対応がしにくいかもしれない」と言ってくれた。
「……うーむ、それなら仕方ないか。たしかにそうだものな。子供を完全に一人にしておくわけにはいかん」
立花さんは先程の言を翻して、私を預かってくれそうな言葉を発している。
「それじゃあ……」
「少し散らかってるが、俺の家に来るか?」
「はい!」
元気な返事をした私に、立花さんは「まあ本当に散らかってるんだがな。何しろ、ろくに掃除も出来てない」と照れくさそうに笑う。
それは……まぁまぁ予想済のことである。
立花藤兵衛、初期設定42歳。
現在の東映公式では、後の劇場版仮面ライダー1号との整合性を取るためか年齢不詳になっているが……
そんなふうに媒体によって設定は異なるが、わかっていることがいくつかある。
すがやみつる漫画版や仮面ライダーEVEでは学徒出陣した元特攻隊員で妻を早くに亡くしているとされ、また元オートレーサーで彼のレースを見るためにやってきた家族が事故で亡くなったともされる。
そんな立花さんに、この世界での境遇を自分から聞く気にはならないが……少なくとも確実なことは一つ。
立花さんはおそらく結構な資産家である。
そもそもぶっちゃけて言えば、そうでもなきゃスナック→オートバイ屋→スポーツ用品店→喫茶店とコロコロ商売替えしたり、ジープで長期間放浪の旅をしていたり、なんだか高そうな通信機材やらライダー隊の装備やらを揃えられるはずがない。
滝和也経由でFBIが予算を出している説もあるにはあるが、おそらくその線はないだろう。
なぜなら、少年ライダー隊のあの奇抜な装備にFBIが金を出すなど少しも思えないからである。
まあ、そうしたもろもろは置いておいて、立花さんの家に私は行くことになる……
その前に、である。
「やはりハリちゃんからは目を離すべきではない……」
「とは言っても、常に張り付いてるわけにゃいかんぞ」
話が変な方向へと走り始めそうだったので止めねばならないが、ぶっちゃけこれを止めるすべを私は持ち得ない。
しかし、阻止しなければならないことだ。
常に本郷さんや立花さんと一緒にいては、変身もできないし何より本郷さんが変身しづらくてピンチになる。
―――なら、これしかない。
「だ、大丈夫です!私、頑丈ですし!それに―――」
私は目を伏せて、「お二人には大事な使命があると知ってますから」と握った拳を太ももの上で震わせた。
必殺!無根拠な子供の説得攻撃!!
いや、マジでこれ以外に思いつくことが何もない!
「……ハリちゃん。だけど、これも……」
「私と一緒にずっといたら……いけないです。本郷さんも立花さんも、多くの人が必要としてるんですから」
心配して言ってくれてるんだろうなというのが痛いほどわかる本郷さんの声音に、私は瞳をうるませてそう返す。
卑怯だって良いじゃない。
だって、私、見た目は子供、頭脳は大人!名探偵じゃないけど!!
内心でそんな混乱をしながら本郷さんの瞳を見返す。
見返された本郷さんは、しばらくそうすると……「わかった。だが、危険なことは禁止だし、ある程度誰かに見てもらうことはするよ」と私の瞳をじっと睨めつけるように覗き込む。
「……わかりました」
そう返した私は、ニコリと微笑んで。
「いや、そんな深刻に考える必要はないだろう。俺も本郷もいない時なら、ルリ子さんやシロー、後なんといったかルリ子さんの友人もいたろう」
そう立花さんに話の腰を折られた。
いや、そうですけど!そうですけど!
ルリ子さんはともかく、ライダーガールズ1号とも言えるルリ子さんの友人の野原ひろみさんや、気が弱くすぐに気絶するシローさんではあんまり意味ないんじゃないだろうか!!
口に出す訳にはいかない。
訳にはいかないのだが、どうしよう……
私には某名探偵コナンみたいな麻酔針発射時計なんかないし、どうすれば……
「まぁ今は深夜だ。その話は朝になってシローたちが店に出てきてからだな」
そこで藤兵衛さんは話を打ち切り、そして私に「じゃあ今から俺の家に行こう」と手を伸ばしてくる。
私はどうしようもなく、しかしどうにでもなれ、なる、と心を決めてその手を取るのであった。