昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~   作:大回転スカイミサイル

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第17話「仮面ライダー編その一 本郷猛という男」⑫

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―――というわけで。

 

「ここだな……」

 

私は大山博士が開けた時に見たあの地図の記憶―――否、記録と、記憶している原作の映像を頼りに、その墓地までやってきていた。

 

勿論その姿は―――

 

ブロロロロロッ、キキィッ!

 

先程別れた爆音と、こうして再会を果たした私はその音が響いた方向を仰ぎ見る。

 

「貴様、グランザイラス……」

 

「また会ったな、仮面ライダー。私もナチスの秘宝とやらに興味があってね……どういうものか確認したら、太平洋にでも捨てようかと思ってここへ来たんだ」

 

私はシニカルに、諦めたような口調で異形の姿を仮面ライダーへ晒した。

 

「……金には興味はない。どうせここに眠っているものは、連中が欧州中を引っ掻き回して手に入れた汚れた金だからな」

 

―――しばし沈黙が流れる。

 

「本当にナチスの宝には興味がないというのか?」

 

「くどい。私は金は―――個人が文明的で文化的な生活を享受できる程度あれば良いと思うし、何より金は自らの手か頭を働かせねば手中に収まらぬと考えている」

 

仮面ライダーの質問に、私はそう冗談めかして答えて「さあ、どうするね」と返した。

 

「……時間がない。奴らが来る前にナチスの宝をどうにかしなければ」

 

仮面ライダーは……本郷さんはそう当たり前で、真っ当な答えをひねり出す。

 

きっと常人の何倍も考えてその答えを出したのだろう。

 

慎重に私から距離を取り、そして墓地の一角のみすぼらしい木の十字架を引き抜いた。

 

そしてそのまま地面を素手で掘ろうとするので、私はあらかじめ確保していた、墓地の脇の方に置いてあったちょっと大きめのスコップを拝借し、彼に手渡そうとする。

 

「使いたまえ」

 

私がつき出すと、まだそれが何かの罠ではないかと考えているようだったので「……君にそういう無様な格好で穴掘りをさせたとなると、私は色々なところから怒られてしまうだろう」とまた冗談めかした回答をして、含み笑いをした。

 

「色々なところだと?」

 

「ああ、真面目に捉える必要はないんだ。私にも事情というものがあってね、これ以上言うことはできない」

 

第4の壁の向こうにいるかも知れないちびっ子や元ちびっ子って意味だけど、それを彼に言っても仕方がない。

 

軽口叩いたせいで時間が過ぎてしまうのは嫌だな、と私もまたスコップを持った。

 

「さぁ、掘ろうか」

 

「ああ……」

 

二人は無言で土を掘る。

 

人外の膂力を持つ二人が掘れば、それはすぐにも地表へ姿を現した。

 

ザッザッ……

 

出土した棺には、確かにハーケンクロイツがある……

 

そして、その蓋を開けると、そこには……

 

「……ハッチ……のようだな」

 

「うむ。ショッカーはこれは数十兆円にもなる宝だ、と言っていた。つまり―――」

 

そう、棺1個分で数十兆円の宝などありえない。

 

宝のありかは別にあるか、あるいは地下に何かがあるのではないか、というのは中学の頃に仮面ライダーを見返して以来の疑問であったが、この世界ではこの地下になにかがあるようである。

 

「トゥ!」

 

バギィッ!

 

ハッチを力任せに仮面ライダーは引きはがす。

 

そこにぽっかりと開いた穴へ、私たちはお互いに頷きあった後に飛び込んだのであった。

 

 

 

―――潜っていった先にあったものは、それは。

 

箱、函、匣の群れ……

 

その中には恐るべき数の財宝が―――

 

「ナチスがユダヤ人や占領地から収奪したものがここにある……か」

 

歴史的な価値はありそうだが、これを今の日本政府に渡しても混乱を招くだけだろう。

 

「まだベトナムの戦乱は治まったとは言えないからな……」

 

私は時代のことを思い返す。

 

1955年から続くベトナム戦争は、未だ終わりが見えない時期。

 

パリ和平条約締結は確か来年か再来年だったはずだし、その後の南ベトナム崩壊もあと何年か後のはずだ。

 

日本ではべ平連など空想的な平和主義を掲げる団体が日本政府や在日米軍を批判しまくっている時期だった、と記憶している。

 

来年には確かあさま山荘事件も起きたりするはずだし、ショッカー云々を除く歴史がそのままであれば、ショッカーなどより余程普通の人間の方が人間を殺している時代と言えた。

 

そんな時期に、である。

 

かつての末期戦が行われていた時勢に、大日本帝国の潜水艦が秘密裏にナチスの財宝という名の収奪品の群れをこうして―――地下壕にいっぱい持ってきていたなど公表などできるはずもない。

 

そんなことをすれば、ショッカーやダークに利するだけだ。

 

今の日本政府が―――否、この世界の日本政府がどう史実と異なる動きを取ろうと、それは混乱を招き、彼ら暗黒組織の跳梁を招くのは確実と言えた。

 

私は、箱に詰まった細々とした銀や金や宝石の群れを見つめながら、そんなことを考えながら冷たい怒りに燃えている。

 

誰かの指から奪われた指輪。

 

誰かの首から引きちぎられた首飾り。

 

―――誰かの口の中から引き抜かれた金歯、銀歯。

 

誰かの。誰かの。誰かの。誰かの。

 

誰かの幸せが、誰かによって、恐るべき誰かのために無惨に引き裂かれたことの正しい証拠を見つめて。

 

「……本郷猛。私は、これほど怒りに震えたことは生まれてから一度もないよ」

 

私は静かに本心を述べて、仮面ライダーを振り返った。

 

「ああ。私もだ。ショッカーとナチスの関係……やはりただ事ではないらしい」

 

―――秘められた燃料が燃え上がるようだ、と思った。

 

私は、怒りに沈みながら、彼が私と同じことに怒っていることに一瞬嬉しくなったが、そんな気持ちをかき消して私は―――

 

「あれが見えるか、仮面ライダー」

 

私はある場所を指差す。

 

「―――あれは。もしや!」

 

「ああ、そうだ。自爆スイッチか、或いはこの財宝を確実に隠蔽するための方法だろう。ふ、ふふふふふ」

 

私は怒りが過ぎておかしくなってしまったのか、笑うことしかできなかった。

 

「何がおかしい?!」

 

「さてな。それはあのスイッチを押してみればわかることだろう。きっと私の予想通りだと思うがね……」

 

私はツカツカとそのスイッチのところへと歩んでいく―――ああ、間違いない。

 

きっと間違いない。

 

「―――その予想とはなんだ?」

 

「きっと―――これが大日本帝国政府の良心だということだよ」

 

私はためらわずにそのスイッチ押して―――すぐさま地響きがなり始めた。

 

「これは!?」

 

「曲がりなりにもここは大阪―――ま、海は近いというものだ。我が国のかつての為政者たちは、ナチスのようなゴミクズどもに頭の底まで加担する気はなかったようだよ」

 

ドドドドドドドドド……

 

轟音とともに、海水が奥から侵入してくる。

 

即ち、何かあれば海水を引き込んでこの場所を洗い流し―――おそらくは太平洋に捨ててしまうのだろう。

 

「なるほど……そういう仕掛けだったということか。確かに太平洋戦争末期にこんな凝った仕掛けを作るのは、良心と言えなくもない、か……」

 

本郷さんは瞬時に理解したようで、もし私がいなくても―――最初から答えを予想していた自分より早く結論を出していたろう。

 

私は静かに「ふふふ、もうここには用はなさそうだ。外へ出ようじゃないか」と提案した。

 

しばし仮面ライダーは沈黙し……膝ほどまで海水が来たところで、「うむ……」と小さく肯いた。

 

こんな汚れた宝に用はない。

 

いつか大いなる海で浄化されて、再び地上に出るものもあるかもしれないが―――

 

今はただ、水底へと葬るばかりである。

 

私は一瞬、海に汚れたものを捨てられることを厭って仮面ライダー―――仮面ライダーBLACKの命を救った怪人のことを思い出し、内心で小さく謝るのであった。

 

 




書き溜めが尽きたので、完全不定期に戻ります。
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