昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~ 作:大回転スカイミサイル
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―――後は簡単な話であった。
「蝙蝠男、サラセニアン……貴様らの攻撃は何一つ私には通用しない。さあ、どうする……どうするんだ?人間の残骸どもめ」
私は―――後ろから襲いかかろうとしたサラセニアンに―――そのまま回し蹴りを食らわせてやった。
もちろん、全力の。渾身の一撃を。
ブォン!
空気が吹き飛んでいくような旋回で、グランザイラスの足がサラセニアンの胴を薙ぎ払う。
『エケエケエケエケ―――ッ!?』
断末魔を残し、ジュウジュウとサラセニアンは溶けてなくなっていく。
あ、これ……仮面ライダーカブトのライダーキックだわ。
自分の中の何処かがそんな脳天気な思考を紡ぐが、それもただの一瞬。
『き、キキキキキ!』
仲間が殺された怒りか、あるいは自分がこれから殺される焦りなのか。
蝙蝠男は翼を私へ全力でぶつけてくるが―――しかし。
ガシィッ!
その翼は無惨にも我が兵器の如き腕に阻まれてしまった。
「じゃあまた会おう。どこかでな」
私はどうせ再生されてくるそれに、憐憫の眼差しを向けて。
今度は直蹴りを蝙蝠男の胴へと突き刺した。
『キェェェーーーーッ!!』
断末魔を上げて、蝙蝠男は吹き飛ばされて空中で血霧となって消えていく。
その様子に、私は嘆息してそして―――本郷さんの姿を、不意に、当て所無く探してしまうのであった。
そしてその頃、仮面ライダーは―――
戦闘員から奪ったサーベルで、彼らを薙ぎ払っていた。
剣道三倍段というが、本当の強者はナイフをもっただけで強くなるものだ。
そのとおりに同じ武器を使っているとはとても思えないほどの圧倒的な差で、仮面ライダーは戦闘員たちを沈黙させていた。
ドスリッ!
「ギーッ!?」
またひとり戦闘員が、その胸をサーベルで突かれて絶命した。
ハインリッヒ博士が拳銃で援護を図っていたが、すでに投げられたサーベルで腕を―――前世世界の作品では拳銃だったが―――貫かれて木に張り付けられてしまっていた。
―――やがて戦場には仮面ライダーと―――カメレオン男以外に誰もいなくなった。
『ひ、ヒヒヒヒ……』
遂に追い詰められたカメレオン男。
仮面ライダーは片腕を曲げて胸の前に、もう片腕はまっすぐに伸ばして、手先をピンと伸ばす。
ライダーパワーの構えである。
すでに何度も致命の打撃を受けている死神は、もはや青息吐息。
すぐにも死を迎えんとしていた。
『な、ナチスの宝は……あったのか……?あったのか、仮面ライダー!』
「あった!あったとも!だが、しかし、我等の手ですべて太平洋に捨てた!あんな、人間に悪の心を産ます汚れた宝などは!!」
「そ、そうか……!」
前の世界の物語よりも怒りと遣る瀬無さがその言葉にこもっていたのは、グランザイラスの怒りに当てられていたからであろうか。
「トォォォ!!ライダーキック!!」『ギェェェェーッ!?』
カメレオン男に必殺のライダーキックが突き刺さり―――そして。
仮面ライダーはその腕を空手の構えへ移行させて、カメレオンを睨めつける。
後は―――そのままだ。
「ライダーチョップ!!」
ガシャァァーーーン!
ガラスの割れるが如き轟音が響き、そしてカメレオン男は真っ二つになって溶け消える。
仮面ライダーの勝利であった。
「……」
仮面ライダーはその姿を本郷猛へと戻しながら沈黙する。
「ナチス。ショッカー……」
いつまで戦いは続く?
ショッカーの巨大な組織に、たったひとりで戦えるのだろうか。
再びその疑問が本郷の胸中を満たしていた。
「―――それでも、友を、故郷を守らねばならないだろう、本郷猛」
ザシッ、ザシッ……
枯れ草を踏み、焼きながら。
空気を陽炎のごとくに揺らしながらグランザイラスが現れる。
「……グランザイラス」
「私は100%君そのものの味方であるとはいえない。だが、私は君の正義の味方であろう。仮面ライダーの正義に味方をしよう。それだけは覚えておいてほしい」
その声には、抑えきれない感情が載っていると本郷猛は感じる。
「……ああ。わかった。だが、君は一体……」
「いずれ、時が来れば明かそう。明かすとも」
僅かな躊躇いと己に向ける怒りが、空気を焦がしていく。
「さらばだ」
最強怪人を自称するそれは、そうして火の玉と化して空を飛んでいった。
「……グランザイラス。わかった。私は。俺は……信じよう」
その言葉は虚空に溶け消えて―――
どこかから『3』という音が聞こえた。
―――大阪万博跡地で眠っている玻璃を、本郷が回収するのはそれから1時間ほど後のことであった。
地面をえぐるように踏みしめ、私は当て所なく本郷さんの姿を探す。
見れば戦闘員たちは総て倒され、地面に僅かなシミを残して消え去っている。
―――ハインリッヒ博士もまた、サーベルで木に縫い付けられているかと思えば、血痕を残してすでに姿を消していた。
……前世世界のストーリーではこの後に一切出てこないことを考えると、処刑されたのだろうな、と思えばわずかに憐憫の情も湧くものだが……
きっと奴はあの汚れた宝に関わっていたのであろう、と思えば、逆にざまあみろという清々した感情も湧く。
……こういうところが駄目だ。
私ではヒーローにはなれない。
だから、決意したことがある。
私はヒーローになれない、ならない。
ならば私は正義の味方となるのだ。
―――誰かの正義の味方に。
HERO OF JUSTICEではない。
SUPPORTER OF JUSTICEだ。
そうであるべきだと決意する。
ヒーローでは躊躇するようなことでも私はしなければならない。
何故なら。
あの汚れた宝が、前世世界ではなかったディテールをこの現実世界で与えられていたのならば。
ゆっくりと林の奥へと歩みを進めながら。
私には―――もっともこの世界で警戒せざるをえない「敵」がいるのであるから。
「……そう。あの白塗りの総統が率いるあの軍団に」
知らずつぶやく。
大首領の率いる組織は大首領という愉悦を優先する存在がコントロールしているため、ある種の安全が保たれていると言える部分がある。
だが、あの組織は。あの組織だけは。
私はいずれの対決を確信し、そのために決意するのだ。
―――そんな事を考えながら。
見つけた。
「ナチス。ショッカー……」
どこか力なく、物憂げにつぶやいたその言葉に、私は自然に話しかけていた。
「―――それでも、友を、故郷を守らねばならないだろう、本郷猛」
ザシッ、ザシッ……
枯れ草を踏み、焼きながら。
蜉蝣のような儚さを讃える本郷さんに私は近づいていく。
「……グランザイラス」
「私は100%君そのものの味方であるとはいえない。だが、私は君の正義の味方であろう。仮面ライダーの正義に味方をしよう。それだけは覚えておいてほしい」
たとえあなたが敗れようとも、その亡骸に土をかけねばならない日が来るとしても。
私の言葉に、本郷さんはしばし逡巡し。
「……ああ。わかった。だが、君は一体……」
しっかとした声音で私へと質問する。
……答えることはできる。
できるが、それは今じゃない。
「いずれ、時が来れば明かそう。明かすとも」
僅かな躊躇いと己に向ける怒りが、空気を焦がしていく。
「さらばだ」
短くそう残して私は飛び立った。
空へ駆け上る背中へ、小さな声が届く―――
「……グランザイラス。わかった。私は。俺は……信じよう」
それは何よりの言葉で、そして私は。
『3』とつぶやくように数字を数える何者かの声を、このとき初めて聞いたのであった。
―――事件は何事もなく終結を迎える。
太陽の塔の下で気絶していた私は、東京へ帰還後に城南大学附属病院で検査を受けて何事もなく退院し、そして砂田元少佐の娘さんのルミちゃんの誕生パーティーが、アミーゴを舞台にささやかに執り行われていた。
「死んだかと思ったわよ、ハリちゃん」
ルリ子さんがそうして私のグラスにオレンジジュースを注ぎながらそう声を掛けてくる。
「仮面ライダーが来てくれなかったら、私も本郷さんも死んでました」
そう返して、私はオレンジジュースを一口含んだ。
見回せば本郷さんが柔和な笑みを浮かべてルミちゃんを見下ろしていた。
「良かったね、パパが帰ってきて」
私はルリ子さんのセリフを取ってしまう形で、少女に声をかける。
彼女はニコリと笑いかけてくれて、「それもこれも本郷のお兄ちゃんのおかげね!」と言って彼女は周囲を見回す。
しかし、そこに本郷さんの姿はない。
―――さっき、一瞬のスキを突くかのように彼は外へ出ていったのだ。
そうだ。
「あれ?お兄ちゃん?」
「猛さん……?」
……ルミちゃんとルリ子さんが訝しげに周りを見回すが、しかしそこに彼はいない……
私の口から自然に声が出る。
「ちょっと探してきます」と言って、引き止められるのも構わずに店の外に出た。
そして少し歩くと―――
そこには墓地で白と黒の子犬と戯れている本郷さんの姿があった。
彼は子犬を抱きかかえると、毅然と前を向いて歩いていく。
―――そういう男なのだ。
それが本郷猛という男なのだ。
荒野に唯一人挑み、その果てを目指すもの。
その瞳はどこまでもストイックに地平線の先を見つめる。
―――それが本郷猛という男なのだ。
私がしばし声をかけるのをためらっていると、本郷さんはこちらに気づき笑いかけてくる。
……ああ、どうか、どうか彼の未来に救いあれ。
私はいるかどうかもわからない神様へと向けて、小さく祈りを捧げるのであった。
仮面ライダー、本郷猛は改造人間である!
彼を改造したショッカーは世界制覇を企む悪の秘密結社である!
仮面ライダーは人類の自由のために、ショッカーと戦うのだ!!
モグラ獣人とかがんがんじいとかあの辺のポジションを狙う最強怪人。