昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~   作:大回転スカイミサイル

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第2話「転生者、桃山玻璃は―――」②

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「どうすればいいんだこれ」

 

私は徐々に変身が解けていく自分の肉体を見ながら呆然としていた。

 

徐々に、徐々にもとに戻り―――そして自分の体が一糸まとわぬ姿であることに気づく。

 

「響鬼方式かよ……」

 

私は落胆して膝を地面に落とすが、その瞬間からじわじわと体から滲み出るように青いワンピースが再形成されていくのをはっきりと知覚した。

 

「もうちょっと早く再生しろよ……」

 

自分でも意味が分からないが、2分もするとワンピースは再生し、少なくとも生まれたままの姿ではなくなった少女がそこにはいた。

 

「……どうしてこんなことに?」

 

私はそう自問自答するかのように、カーブミラーに映る街灯に照らし出された自分を見据えた。

 

肌は白く、髪も病的なまでに白く、そして青いワンピース。

 

瞳は赤く、自分がアルビノであることを示していた。

 

「……昭和ライダー世界にいていい顔じゃねえぞ……幻魔大戦でも始まるんじゃねえのか……」

 

はぁ、とため息をついて私は立ち上がる。

 

周囲を見れば―――まだ新しい、しかし確実に自分の目からは古ぼけて見える昭和の団地マンションの群れ。

 

そこで仮面ライダーと蝙蝠男が戦ったんだなあ、と先刻の闘いの残響を思い浮かべる。

 

「……リアルだと怖いもんだな……ってか、ここは……」

 

私はそう胡乱な思考をまとめながら、何故転寝をしていたはずなのにここにいるのか。

 

それも見覚えのないこの顔でいるのか思い出そうとする。

 

「……石油ストーブ焚きっぱで寝たんだっけ……」

 

自分の間抜けさに愕然とすることを思い出し、吐き気がした。

 

(あぁ~~もう~~!アレほど気をつけてたのに~~!うっかり転寝して一酸化炭素中毒で死ぬとかぁ~~~!)

 

深夜の路地裏で身悶える自分の姿に、私はもう心の中で叫ぶしかない。

 

しかし、こんな安易な転生などして良いものだろうか。

 

―――しかもどう考えても昭和ライダー世界、百歩譲ってもコンパチヒーローかスーパーヒーロー烈伝かなんかの世界に転生するとは……

 

私、ただの特撮好きの―――男だよ?

 

平成令和ライダーより昭和ライダーが好きなだけの男だよ?

 

どうして幼女に生まれ変わってんだ???

 

「……考えてても仕方ない。それより考えなきゃならないのは」

 

自分が最強怪人グランザイラスに変身できるということである。

 

最強怪人グランザイラス。

 

仮面ライダーBLACK RX最終盤に登場し、仮面ライダーBLACK RXのあらゆる攻撃を力技で押し切った最強怪人。

 

しかも直後に登場した10人ライダーのライダーパンチを受けても無傷、リボルケインすら腹に刺さる前に素手で受け止めたほどだ。

 

結局倒すにはRXバイオライダー決死の体内侵入による内部破壊しかなかったのだ。

 

客演の経緯が経緯だけに、あの10人ライダーを本物とは思いたくない派ではあるが、ぶっちゃけ今の時期の仮面ライダー1号より遥かに強いのは言うまでもないだろう。

 

パワーバランスが無茶苦茶だ。

 

どう考えても自分はイレギュラーである。

 

しかも身内も身寄りも全く思い出せない。

 

つまり―――詰みである。

 

このままではグランザイラスの力を悪用して強盗でもするしかなくなるのでは……?

 

ここが昭和ライダー世界―――で、初代仮面ライダーの活躍が始まった序盤も序盤とするなら、ここは1971年である。

 

幼女の虐待描写がやたらきつかった某なんとかがなく夏の話より12年も前である。

 

この時期の施設だの孤児院だのがどんな環境かはよくわからないが、勘弁していただきたい。

 

このどう見てもアルビノな見た目ではガキどもにいじめられてしまうのではないか。

 

唇をへの字に曲げてウンウン唸る私になんの落ち度もないだろう。

 

それであっても。

 

お腹はすくものであった。

 

グウ。

 

「うっ……腹へった……」

 

腹が鳴った途端に空腹を自覚し、それは瞬時に意識を刈り取るほどに強くなり―――

 

くらっ。

 

「め、まい……ね、むい……おなかすいた……ね、む、い―――」

 

視界がゆがむ。

 

―――おい、大丈夫か!おい!!

 

その瞬間、どこかから声がした気がした。

 

どこかで聞いたような、馴染みの深い声。

 

―――誰の声だったのか、今の私には思い出せず。

 

私の意識はすぐさまに闇の中へと落ちていったのであった。

 

 

 

薄明の中で立花藤兵衛は、一人去っていった本郷猛の代わりに緑川ルリ子を自宅まで送るため自動車のハンドルを握っていた。

 

「……私、とんでもない誤解をしていたのね」

 

「気にするな。ショッカー一味の超常現象みたいな殺人だったんだ。奴らは跡も残さないんだから、疑うのは当たり前さ」

 

紫煙をくゆらせならがハンドルを握る藤兵衛は、助手席のルリ子へとそう慰めの言葉をかける。

 

本郷猛をショッカーに推薦した緑川博士の娘・緑川ルリ子は、本郷が緑川博士を殺害したと思いこんでいたのだった。

 

しかし、それはショッカー怪人・蜘蛛男による暗殺。

 

緑川博士は死体も残さずに消され、そして今回の蝙蝠男吸血ビールス作戦によってその誤解は解けたのである。

 

そうして藤兵衛の車が細い路地をゆっくりと進んでいたときのことであった。

 

「マスター!止めてください!アレ!!」

 

「うおっ!?ってなんだなんだ―――子供が倒れてるじゃないか」

 

藤兵衛は車を止め、倒れている少女に声をかける。

 

「おい!大丈夫か!おい!!」

 

何度か呼びかけるが、少女は青い顔で完全に意識を失っていた。

 

「こうしちゃいられん―――っと、あれは」

 

ブォォォォォン!

 

バイク音が路地の奥からやってくる。

 

それに乗っていたのは、紛れもなく先程去っていったはずの本郷猛であった。

 

キキィッ!

 

ブレーキを掛けて止まったバイクから、本郷が声を掛けてくる。

 

「立花さん!その子は?」

 

「おお、本郷。もしかしてこの子供を探していたのか?」

 

「ええ。仮面ライダーが蝙蝠男を追い詰めた時、この子が団地の屋上にいたようなんです。それで探していたんですが」

 

本郷は安堵して、藤兵衛に抱き上げられている少女の髪を撫ぜた。

 

「猛さん、この子は……?」

 

白い髪、白い肌に助手席から降りてきたルリ子も心配そうに話に混ざってくる。

 

「わからない。だが、この子はショッカーに狙われていると思う」

 

仮面ライダーの正体を知らないルリ子には詳しくは語ることはできない。

 

本郷はそうして「この子のことを頼みます。僕は大学に向かわなければ」と再びバイクに跨り去っていった。

 

「全くせっかちなやつだ。行こう、ルリ子さん。早くにやってる病院を探さないといかん」

 

藤兵衛は子供を後部座席を倒して横たわらせ、ルリ子がシートベルトをしたことを確認すると車を飛ばす。

 

―――太陽が今や大地を照らしていた。

 

 

 

―――夢だ。欠けた夢だ。

 

私は誰だ?

 

ここはどこだ?

 

―――あなたは、だぁれ?

 

浮遊する感覚。

 

浮かび、落ちて、流されていく。

 

ここは最果て。

 

―――最果ての中で、浮かび上がる。

 

そうだ。

 

私が何者だったのか、ようやくにして思い出していく。

 

私は―――前世の世界で、特撮好きで、独身で、それなりの仕事をして、四十路になり、人生の展望も見えきったと高をくくっていた愚かな男であった。

 

全くの不注意で死亡し、おそらくはそうしてこの浮遊する空間にいるのである。

 

「生まれ変わるというのであれば、すぐさま生まれ変わりたいものだ」

 

できうるならば、今度は刹那に生きる虫や小さな獣になり、すぐに人生を終えたいものである。

 

憧れたヒーローは世界になく、世界は、ヒーローを嘲るかのように残酷であり続けたのだから。

 

自分は幸運にして日本という平和で豊かな国に生まれることに成功したから、のんべんだらりと生きて死ぬことが出来た。

 

こうして魂があり、蘇るのであれば、次はそんなに甘い世界ではあるまい。

 

ならば―――

 

「いいよ。そんな世界に生き返らせてあげる」

 

そんな軽い声が聞こえた。

 

「だいたい君が生きた世界と同じような歴史を歩んでいる世界に行かせてあげたいんだけど―――僕が作った世界には君は適合しないみたいだから、僕の大切な仕事仲間が作った世界に生まれ変わらせてあげるよ」

 

脳裏に、紫色の鳥が。

 

いや、軽薄そうなピアスを付けた青年が?

 

「でも、彼は世界から去って長いし、気難しいところがあったから、大変かもしれないね。でも、その世界も大切な世界のひとつなんだ。楽しんでおいで。僕も一部、彼が作った世界を請け負っているけど、その世界の要素もあるから安心して」

 

なんだか不安になるようなことを一方的に言いながら、声は遠ざかっていく。

 

その声は「やれやれ。迷い込んできたものを然るべき場所に送る仕事も大変だ」と疲れた、しかし楽しそうな声を上げて含み笑いをしていた。

 

きっと私は、その声に邂逅することは二度とないだろうと確信して―――落ちていく。

 

「おやすみ。君にふさわしい姿で、楽しんでおいで」

 

意識も体も落ちていく。

 

―――気がつけば、私は少女の姿で頼もしい背中を眺めていたのであった。

 

 




ゼンカイジャー超面白かったですわ!ですわ!!
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