昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~   作:大回転スカイミサイル

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第22話「仮面ライダー編その二 三人の男、二人のライダー」③

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それから数日後。

 

―――野っ原の端っこの方の雑木林に、ダミーの墓と書かれた一本の杭が立っている。

 

それは主人を守りコブラ男に立ち向かって、その毒の牙……首領曰く、半年以上製造にかかる強力なアイテムを奪って撤退させた勇気ある老犬ダミーが眠っている場所だ。

 

飼い主であった武彦少年は、その墓に花を捧げると合掌をしてうつむいた。

 

「かわいそうなダミー……天国へ行くんだよ……」

 

悲しみを湛えた瞳に涙を宿し、少年はその涙を拭うと家路へ向かうために歩き出した。

 

とぼとぼと足を動かし、うなだれて悲しみを隠すこともない。

 

―――その姿を後ろから隠れてみていたのは、一人の美少女であった。

 

銀髪と赤い瞳、白磁の肌を持ち青いワンピースを身に着けた少女。

 

本郷猛の後をつけグランザイラスとして飛んでいた彼女は、偶然から武彦少年がダミーの墓参りをしているところに出くわしたのであった。

 

(うっひゃー……我ながら豪運~……)

 

消沈して歩む少年を見て、玻璃はふうっと言って汗を拭う。

 

このまま彼を放置すれば、間違いなくコブラ男に捕まってしまう。

 

それが仮面ライダーが捕まるフラグになるのだから、放置しておくわけにもいかないのだ。

 

「っし。なるべく自然な感じで話しかけてみましょう」

 

玻璃は小さくガッツポーズをすると、少年に後ろから近づいていく……

 

気配を消すようなことはしていない。

 

気づかれたなら好都合である、と彼女は思ったからである。

 

鬼が出るか蛇が出るか。

 

それもまだわからないままに、玻璃は渦中へと飛び込んでいったのだった。

 

 

 

私は彼の歩いてきた道から、ダミーの墓のおおよその場所を割り出し、逃げる方向については見定めていた。

 

ダミーの墓に例のコブラ男の牙はある……はずだ。

 

そちらを優先しようとも思ったのだが、しかし。

 

……まずは武彦くんの拉致を阻止せねば。

 

私はそう思い足を少し早める。

 

本来の展開……いや、現実であるこの世界ではもう歴史と言ってよいだろう……では、目の前の武彦くんはコブラ男に拉致されて謎の液体で燃やされそうになって、それをやめさせるために本郷さんは捕まってしまうのだ。

 

私は気配を隠さず、なんでもないように近づいていく。

 

年の頃は8歳か9歳くらいだろうか。

 

私はその背に後5メートルほどのところまで近づいて、そのまま……

 

その時であった。

 

(……これは!)

 

私の人ならざる目は、複数の熱源……おそらくは怪人と戦闘員たちの、人間ではありえない熱量を感知したのだ。

 

「ちょっとそこの君!」

 

私は、武彦少年の肩を叩く……見た目としては私のほうが幼いからだろうか、少年は「なんだい君は?」と訝しげに、しかし躾の良さを思わせる丁寧な口調で返してきてくれた。

 

「ここで遊んでいて今からおうちに帰るところなんですけど、あっちのほうに何か怪しい人たちがいるので、こっちからいきましょうよ」

 

そうして私は野原の向こうを指差すと、草むらに隠れて顔に迷彩をペイントした戦闘員たちの姿があった。

 

(あっぶねー……後5秒声かけるの遅かったら……)

 

私が内心で戦慄していると、少年も奴らを視認したらしい。

 

「えっ……なにあの人たち」

 

「多分誘拐犯とかですよ。さあ、こっちへ」

 

私は半ば強引に彼の手を引っ張って、ダミーの墓の方へと歩き出した。

 

「わ、わっ?」「あっちからなら近道があるから、行きましょう」

 

気づかれる前に、だ。

 

ここに来る間にグランザイラスに変身して草むらを軽く焼いて道を作っておいてよかった。

 

―――そうして10秒ほどして、武彦くんが道を変えたのを悟ったのか、戦闘員たちの足音がこちらを指向してきたのが私の耳には聞こえてきた。

 

「急ぎましょ」「う、うん。でもあいつらなんなんだい?」

 

私はちょっとだけ逡巡し、しかしはっきりと「君か私のことを狙っているんですね、きっと」と答えて足を早めた。

 

そうしてダミーの墓―――小高い丘の野原の真ん中に生える小さな林。

 

そこはゴミ捨て場にでもなっているのか、周囲には瓦礫などが積んである穴があった。

 

そんな木のたもとに立つ杭の近くまで来て、そして……

 

武彦少年に気づかれないように、金属反応を持つ小さな何かを拾い上げてポケットに入れた。

 

「ん?今、何か拾った?」

 

「ううん?気の所為ですよ」

 

どうも武彦くんは目が良かったらしく、私が拾ったそれを一瞬見咎めたようである。

 

しかし、私は逃げ出すほうが先だとばかりに少年が痛がらない程度に強く彼の手を引っ張った。

 

「それより早く」「うん……!」

 

ダミーの墓を超え、草が焼けて道になっている方へと歩いていき……そして数分程歩いたところで。

 

「くっ……」

 

『アッアアァアァァアァ……!』

 

唐突に地面から、それは生えてきた。

 

蛇の意匠を持つ仮面に顔を包むそれは見間違えるはずもない……

 

怪人コブラ男。

 

強力な毒液を持つ怪人だが、今はその能力は使えないただの強力な人間にすぎない……だが。

 

「あっ、怪物!?」

 

「逃げますよ、君!」

 

私はとっさに武彦くんを抱えると、そのまま後ろに向かって全力で走り出した。

 

「わぁっ!?」「舌を噛むからしゃべらないで!」

 

彼をお姫様抱っこの格好で走り出した私に、後ろから罵声が聞こえる。

 

『ぬぅっ!あれがヤツと一緒にいたメスのガキか!追えッ!』

 

コブラ男の一声あるや、後ろからも前からも戦闘員がわらわらと現れる。

 

……まずいな。

 

さっき拾ったのは失敗だったか……

 

私はポケットに入れたもののことで独り言つ。

 

そのポケットに入れたのは、そう……

 

ダミーの墓にあったコブラ男の牙そのものである。

 

元の流れではコブラ男を倒した仮面ライダーが発見して破壊したそれを、私は今持っているのであった。

 

万が一にも取られるわけにはいかないものだ。

 

最悪、武彦くんを逃して私がここで戦うしかないか、とも思う。

 

コブラ男のジャンプ力は、仮面ライダーに匹敵するほどだろう。

 

逃げ回る武彦少年の前に、ジャンプ一閃出現して追い詰める、という前世作品のシーンが思い浮かんだ。

 

シュンシュンシュン……

 

空気を切る音が聞こえる。

 

やはりもう追いつかれてしまう。

 

スタリ、と地面に、私達の目の前にコブラ男は現れたのであった。

 

『アッアアァアァァアァ……!』

 

「か、怪物……!」

 

武彦くんが怯えた声で私にしがみついてきた。

 

「大丈夫、大丈夫ですよ……」

 

そんな私達を無視するかのように不気味にこちらへにじり寄るコブラ男と戦闘員。

 

このままだとおポッケの中のコブラ男の牙まで奪われて本来の流れよりひどくなってしまう!

 

だから、私は―――ためらうことなく。

 

今の自分の体が出せる最大の音量で叫んだ!

 

「キャーーーーーーッ!!助けて本郷さぁぁぁぁぁぁぁぁんッッッ!!!」

 

もうなりふりかまっていられない。

 

もし前の世界の作品通りならば、この声を聴取可能な場所まで本郷さんは近づいているはずだ。

 

本来であれば武彦少年の悲鳴を聞いて気づくであろう本郷さんは、きっと私の悲鳴でも気づいてくれるはず!

 

それを考えれば、武彦くんに正体を見せずにどうにかするにはもはやこの方法しかない!

 

『ぬぅっ!?』

 

子供の声とも思えない大音量。

 

―――私の推定怪魔ロボットだか怪魔獣人だかのパワーがこもった、普通の幼女なら絶対出せない大音量である。

 

「うわぁ!?」

 

『イーッ!』

 

あまりの音量にびっくりしたのか、戦闘員や武彦少年まで怯んでいる……

 

即ち、チャ~~ンス!である。

 

今だ!とばかりに私は駆け出した。

 

『こ、小癪な……追えッ!追えぇっ!なんとしても俺の牙を取り戻すのだッ!!』

 

そうして追跡が始まったわけなのだが―――

 

そんな逃げ回る私たちを見つめる影があったことに、私は全く気づいていなかったのである。

 

 

 

『キャーーーーーーッ!!助けて本郷さぁぁぁぁぁぁぁぁんッッッ!!!』

 

―――その少女の悲鳴は乗用車に乗っていたその男にも正しく聞こえていた。

 

「……助けを求める声……しかも、本郷だと?」

 

短髪で浅黒い肌を持つその男は、ぐるりと周りを見渡して「なにかあるな、これは……」と呟くと、声の聞こえてきた方へとハンドルを切った。

 

その乗用車はエンジン音を響かせて走り去る。

 

少女の悲鳴を探して……

 

ハンドルを切るその男の名は……

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