昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~   作:大回転スカイミサイル

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第23話「仮面ライダー編その二 三人の男、二人のライダー」④

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―――それから私は、震える武彦くんをお姫様抱っこしたまま、とにかく逃げ回っていた。

 

キャアキャアとわめきながら逃げる私を本郷さんが捕捉するのはいつであろう。

 

自分の迂闊な行動に臍を噛みながら、叫んでは逃げ、追い詰められては姑息に立ち回る。

 

「もうだめだよぉ!捕まっちゃうよぅ!」

 

「捕まったらおしまいです!あんな怪物に捕まったら、赤マントよりひどい目に合いますよ!多分!」

 

私はトイレの怪談で定番の赤マント―――トイレで待ち伏せ子供を殺害する怪人の名を出して少年を叱咤した。

 

とはいえ、このままでは捕まるのは明白である。

 

いくら私が大人よりも体力がある状態とは言えど、相手は人間の何十倍もの能力を持つ怪人と、設定上常人の何倍もの能力を持つ戦闘員なのだ。

 

『どうやらここまでのようだな……!俺の牙の在り処を吐いてもらおうか!』

 

「そんなの知らないよぅ!!」

 

コブラ男の詰問に武彦くんが悲鳴を上げる……

 

―――万事休す、か。私が怪人だとバレてもここは……!

 

そうして武彦くん地面に下ろそうとした、その時。

 

ガゴンッ!

 

『ギッ!?』

 

戦闘員の頭に拳大の石が直撃し、昏倒したのだ。

 

「本郷さん!?」

 

「いいから逃げろ!」

 

本郷さんではない。

 

だが、どこかで確実に聞いた声が逃げるように促してくる。

 

気配をレーダーで探るも、既にいなくなったのか近くには見当たらない―――

 

―――ええい、ままよ!

 

私は0.7秒で逡巡を終え、倒れ伏した戦闘員のいた方向へと全力で走る。

 

『ま、待てい!』

 

「誰が待つものですか!鬼さんこちら!手の鳴る方へぇ!助けて本郷さーーーーーん!!!」

 

必死である。

 

もう必死も必死である。

 

このままどうにも出来ないよりあの謎の声に賭けるしかなぁぁい!!

 

溶け消えた戦闘員の作った液溜まりを踏み越え、草むらをかき分け、とにかくもう逃げることしか頭になく―――

 

そして。

 

走り抜けた先は。

 

『ここまでだな……!』

 

―――崖。

 

下は採石場―――

 

「あっ、終わった」

 

私が絶望に顔を青くして、しかし怪人の力を解き放とうと武彦くんを地面に下ろす―――

 

そこに、コブラ男と一名数を減らした戦闘員が現れたのだった。

 

「お、お姉ちゃん……怖い!」

 

ここまで立ち回った私を年上と認めたのか、武彦くんはそうして私にしがみついてくる―――

 

今度こそ万事休す、か。今度こそ。戦うしかないか。

 

そこまで考えて。

 

―――その時。

 

ブォォォォォオオオオオォォォォンッ!

 

爆音が高く響き渡る―――

 

回る銀輪が、白い車体が、緑の仮面が!

 

採石場をこちらに一直線に駆けてくるではないか!

 

「仮面ライダー!!」

 

「トォ!」

 

ヒュヒュヒュヒュン―――タッ!

 

叫んだ私の声に合わせたかのようにジャンプ一閃、赤いマフラーの男は私たちと怪人共の間に降り立ったのであった。

 

「待てぃ!ショッカーの怪人!」

 

『くっ……仮面ライダー!なぜここに!』

 

「彼女の悲鳴を聞いた!ふたりとも私に掴まるんだ!」

 

その頼もしい声に私は武彦くんに「この人は味方です!さあ!」と促して仮面ライダーにひっついた。

 

「う、うん……」

 

武彦くんも逡巡こそあったが、同じようにしてくれた。

 

「よぉし、しっかり捕まっていてくれ!」

 

仮面ライダーは私と武彦くんを両脇に抱えるとそのまま「ライダージャンプ!」と叫んで崖下へと飛び降りる。

 

「わーーーー!?」

 

「大丈夫!仮面ライダーだから!」

 

何の根拠もないようだけど、60メートルからあるエキスポタワーの中頃から一緒に叩き落ちた身としては、なにか間違いがない限り安全であると太鼓判を押す以外にすることはない。

 

スタッと何の衝撃もなく私たちは地面にたどり着く。

 

「さぁ、乗って」

 

仮面ライダーは短くそう言うと、ハンドル中央のスイッチを操作する。

 

サイクロン号に搭載された自動操縦装置を起動したのだ。

 

「はい!武彦くんも!」

 

そう言って促せば、武彦くんは「うん!」と言って私の後ろにひっついてくれた。

 

「安全な場所まで送っていってくれる。そこにいてくれ」と仮面ライダーが言って、そして私は深く深く頷いた。

 

「ありがとうございます、ライダー!」

 

その言葉を残すと、サイクロン号はゆっくりと発進し、そして仮面ライダーはコブラ男たちを睨めつける。

 

『おのれぇぇぇ仮面ライダー!』

 

「子供を捕まえてどうしようと言うんだ!子供に罪はないっ!」

 

『子供には用があるのだ……ヒヒヒヒヒヒヒ……!』

 

そんな二人の改造人間の声が聴こえる。

 

彼らが格闘戦を始めたことを耳朶に捉え、私たちは安全な場所まで走り去るのであった……

 

 

 

そこから遠く離れた場所で、双眼鏡で戦場を見つめている男が一人いたことに、玻璃も本郷も気づくことはなかった。

 

「本郷のやつめ。間に合ったか」

 

世話を焼かせやがる、と言って後ろを振り向き男は去っていく。

 

「んじゃ、また今度会おうな、ふたりとも」

 

そう風に言葉を残して……

 

 

 

―――それから。

 

サイクロン号のもとへやってきた仮面ライダーは変身を解かないまま「コブラ男は倒した」と言葉少なに私へと告げた。

 

人質もなく、溶解液も使えないコブラ男が仮面ライダーに叶う道理はない。

 

地面を掘って逃げるかもしれないと思っていた私の予想は外れて、コブラ男は仮面ライダーの前に爆発四散したのだ。

 

私はホッとして胸をなでおろす。

 

「そうですか……これ、武彦くんの飼っていた犬のダミーちゃんのお墓にあったものです」

 

私はそうしてポケットから、電子回路の付いた牙のようなものを仮面ライダーに渡した。

 

「そうか……そんなところにコブラ男の牙はあったんだな」

 

「年老いているのに改造人間へと立ち向かって、寿命を縮めてしまったんでしょうね……ダミーちゃんはすごい子です」

 

私はそうして武彦くんの頭をなでながら、向こうから立花さんとルリ子さんがやってくるのを見つめていた。

 

「つまり……ダミーの仇を取ってくれたんだね、仮面ライダー!」

 

武彦くんはそうして手放しに喜んで、わーいわーいとバンザイをしている。

 

今はこれでいい……とにかく本郷さんが再改造されるような事態にならなくて本当に良かった。

 

―――結果として本郷さんにルリ子さんが渡した発信機は役には立たなかったのだが―――それが後々役に立つことを、私はまだ知らないのだ。

 

ライダーは武彦くんにガッツポーズを返して、そしてサイクロンに跨って走り去っていく。

 

私は爆音とともに小さくなっていくその背中を見ながら、「あの声は……もしかして?」と石を投げて助けてくれた声に思いを馳せるのであった。

 

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