昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~   作:大回転スカイミサイル

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不定期なんです。


第3話「転生者、桃山玻璃は―――」③

 

-3-

 

「ヴぁぁぁぁぁあぁぁっ!?」

 

「うおっ!なんて声出してるんだ」

 

―――飛び起きた私の前に、小林昭二がいた。

 

「こ、こば、小林昭二さん!?死んだはずじゃあ!?25年も前に!?!?!」

 

「誰だそれは。俺は立花藤兵衛ってんだ。それより平気か?君は道端で倒れていたんだぞ?さ、まだ寝ていなさい」

 

うろたえる私に、その背広の男―――どう見ても小林昭二にしか見えないが、どう見ても立花藤兵衛は口をへの字に曲げて、私の肩を掴んでベッドに寝かせてくる。

 

「……あ、すいません。勘違いでした……こ、ここは……?」

 

そうして天井の模様を見て、私は心を落ち着けて立花藤兵衛―――間違いなく立花藤兵衛へと謝罪した。

 

「あー。構わん構わん。ここは城南大学附属病院さ。ただの栄養失調で本当に良かった」

 

藤兵衛さんがこちらを子供だから侮ることなく、きちんと今の場所を教えてくれたことに私は安堵して彼を見た。

 

……あ、やべ。涙出てきた。

 

小林昭二さんはもう私が高校くらいの頃に亡くなったからな……別人、いや、本物?だとわかってもなんか涙が出てくる。

 

「おい、大丈夫か?どこか痛いのか?」

 

心配そうに聞いてくる藤兵衛さんに、私は「なんでもないです……」と答えて、涙を拭って、ベッド脇のティッシュで鼻をかんだ。

 

チーン!と鼻をスッキリさせると、ようやく周囲がよく観えてきて、私はしばし呆然とする。

 

そんな私に気づいたのか、藤兵衛さんが話しかけてくれた。

 

「君、名前はなんていうんだい?お父さんやお母さんと住んでる家は?」

 

「えっと……」

 

まずい。

 

前世の自分の名前は、男として結構なごつい名前をしていて、どう贔屓目に聞いても女の名前にゃ聞こえないやつだ。

 

しかも、今の自分は前歴が全くわからない。

 

まるでこの体で、そのまま生まれてきたように。

 

しばし、しばし考え―――しかし、するりと名乗るべき名前だけは脳から染み出すように口をついてくれた。

 

「桃山、桃山玻璃です。家は……わかりません。というか、名前以外何もわかりません……」

 

名前が今とっさに思いついたものと言うことを除けば全く嘘ではない。

 

この世界に私は完全な根無し草なのだ、と気づいて慄然としたが、もはやそれは関係なかった。

 

「記憶喪失……ちょっと待て。医者や看護婦さんを呼ぼう」

 

そうして立花藤兵衛はベッドの脇のナースコールを押して立ち上がった。

 

やがておっとり刀で看護師……否、この時代では看護婦と呼ぶのが正確だろう。

 

白いナース服を着た若い看護婦が一人入ってくる。

 

一瞬、彼女が―――仮面ライダー番組初期に何度か登場した女戦闘員なのではないかと疑うが、それは杞憂で終わったようで。

 

「まぁ、意識が戻ったんですね。じゃあ、体温を測りましょうね」と柔和な笑みを浮かべて私の脇に水銀体温計を挟んでくれた。

 

(水銀体温計かあ……前世の時代ではもう見なくなってたな……確か、去年……ってのも変か?製造も輸出入も禁止になったんだよな)

 

心のなかでそう思って、私は5分ほどおとなしく看護婦さんや藤兵衛さんと話しながら待つ。

 

「36.5度……うん、大丈夫。それにしてもなんでそんな深刻な顔をしてらっしゃるのかしら」

 

「うーん、なんと言えば良いんでしょうか。名前以外何も思い出せないんです」

 

私が一言それだけいうと、看護婦は顔色を変えて「先生を呼んできます」と立ち上がって去っていった。

 

それからおっとり刀で医者の先生がやってきて、各種検査をして……結局、何も異常は見つからなかった。

 

数日後、その問題こそ残れど退院という話になっていった時、藤兵衛が「行くところがないなら、しばらくうちに来るか」と言ってくれたのは幸いなことだったけども……

 

「ふぅーむ……まあそうすると戸籍なんかもないことになるか……」

 

藤兵衛のそんなつぶやきが聞こえてくる。

 

しかしながら、今の時代……1971年という時代では、結婚していない人間が子供を養子にするわけには行かないはずだ。

 

某なんとかがなく頃にのやたら細かい児童虐待の描写の中での話なので、ぶっちゃけ曖昧で信用はできないんだが。

 

そうすると自分の立ち位置が曖昧になってしまうが……

 

「そんな不安な顔するな!俺がなんとかしてやる!」

 

藤兵衛が力強くそう言ったことに、私は深い安心を得てしまう。

 

―――そんな私達を何者かが見てることなど、この時点では全く気づいていなかったのだ。

 

 

 

スナック・アミーゴ。

 

そこで藤兵衛と本郷猛は、桃山玻璃と名乗った少女について話していた。

 

いつもいるバーテン見習いのシローもいないし、ルリ子やその友人たちも今はいない。

 

二人っきりである。

 

「……記憶喪失ですか」

 

本郷は藤兵衛から、城南大学附属病院で起きた出来事を詳しく聞いていた。

 

「ああ。しかも異常な何にも見つからなかったんだ」

 

「ええ、それは僕も懇意にしている病院の関係者から聞きました。やはりショッカーや、あの蝙蝠男を倒した後に現れた謎の怪人と関係があるに違いない」

 

猛はそう言って、藤兵衛の入れたコーヒーを砂糖を入れずに口に含んだ。

 

「うまい」

 

「そりゃそうだ。俺が入れたんだぞ。砂糖も入れてみろ、もっとうまいぞ」

 

藤兵衛がそうしてコーヒーを勧め、しばし本郷はゆっくりした顔つきになるが、すぐに表情を引き締める。

 

「あの子がそうだとすると……」

 

「ええ。警察や施設に預けるわけにはいかないでしょう。我々で保護しなければ」

 

藤兵衛と本郷は顔を見合わせ頷きあう。

 

そして藤兵衛はパイプを取り出すと、それに煙草を入れて火をつけた。

 

「何よりあの特徴的な髪と目だ。嫌でも目立っちまう」

 

外国人ですら、この時代ではまだ市井では珍しいのだ。

 

1979年にリリースされた久保田早紀の歌、「異邦人-シルクロードのテーマ-」はそんな時代の雰囲気をよく表した歌である。

 

「戸籍だのなんだってのは、どうにかなるだろうが……あの子を長いことここに置いておくには、どうするべきか……」

 

「まずは彼女の正体を探るべきなんでしょうが、僕も立花さんもそこまで手が空いているわけではない……」

 

二人はしばし考えて、そして……

 

「よし、そこは俺がどうにか考えてやる。なぁに、伝手の一つや二つないわけじゃないんだ」

 

藤兵衛はニッと笑って、そして「おっと、そろそろ行くか……お前の身体能力が今どうなってるか、テストをしたいんだったな」と腕時計を見て思い出す。

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

そうして二人はアミーゴを出て荒野へと向かう―――

 

これが第三の怪人、さそり男との戦い―――本郷猛にとって悲しいひとつの出来事の幕が上がった合図であった。

 

 

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