昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~ 作:大回転スカイミサイル
-7-
―――結論から言えば、次の人食いサラセニアンとの闘いでは私が介入することはなかった。
当然のように私は8歳設定なのであるからして、小学校への転入などイベント目白押しだったからである。
小学校については言うまでもなく、この髪や眼のことでだいぶ奇異な目で見られたが、昭和46年の小学生も教師もこんなもんだろうと諦めきっていたので特に気にすることもなかった。
……ただ、なんか取られたりしそうだったから毎日お道具箱は家というか、アミーゴの居住スペースに持って帰ってきていたが。
「色鉛筆とかクレヨンとか安いもんでもねーしなー」
私はお道具箱―――やっぱり中身はグランザイラスなのか、やたら軽く感じるそれを振りながら家路を歩く。
まだクーピーペンシルがない頃なので、クレヨンで手が汚れるのが地味にきっつい……
そんなことを思いつつもすでに転校して3日ほど。
話しかけてくれる女子は多かったが、まだこれと言って仲のいい友達は出来ていなかった。
むしろこの割と不気味な髪と眼を見て話してくれるだけでも僥倖ではあるのだが……
「むしろ仲のいい友達が出来たら、事件フラグのような気がする……」
たとえこの世界がリアルであろうと、仮面ライダー脚本陣を侮るわけには行かない。
リアルだからこそ、無慈悲なことが起きることは十分に考えられる。
……通りすがりの人間が、怪人の実験台で白骨にされたり跡形もなく溶かされたりなんてこの世界ではよくあることなのだ。
「少なくともクラスに石倉五郎くんとかはいないし、とりままだ変なフラグはたってないはずなんだが……」
アミーゴについた私は、椅子に座ってブラブラと足を揺らす。
「おーい、もう少ししたらお客さんが来るんだから君は奥に引っ込んでてくれよ」
そう声を掛けてきたのは、バーテンのシローである。
仮面ライダー初期、確か2号編開始くらいの頃にお店を辞めたのか画面に顔を見せなくなった男であった。
「はーい」
私は素直にそう返して奥へ引っ込んだ。
シローさんはなんかぶつくさ文句言ってたが、私は特別なにか迷惑をかけているわけではない……
いや、小学校の手配とか、戸籍とか、随分立花さんには迷惑を掛けているが、子供らしい迷惑はかけてはいない。
こう見えて中身は40代のおっさんなのだ。
そのくらいの分別は心得ている。
―――んー……
私は自分の手を見つめる。
とりあえずグランザイラスへの変身についてはわかったことがいくつか。
あの青いワンピースは私の一部だ。
出すも消すも自由だけど、変身して解除するとその部分は消滅し、それから1分から2分ほどで再生する。
そして脱いでしまうと変身はできない。
消している状態なら変身可能である。
つまり今は身につけていない青いワンピースこそ、私の変身ベルトなのだ。
ついでに左腕か右腕かどちらかは自在に変身できるようになった。
私は左腕をグランザイラスのものに変えて、すぐにもとに戻す。
大きさまでは変化させなかったので、元から着ていた女児用のシャツのほうは全く無事であった。
そして、最初に変身した時ほどではないが、変身するとお腹が空くことがわかった……
グランザイラスという強大な怪人に変身するには巨大なエネルギーが必要なのだろう。
エネルギー供給が外付け、風力で賄っている仮面ライダーと比べると大層燃費が悪いのだけは間違いがない。
「……栄養失調でぶっ倒れないようにしないとね」
私はランドセルを置いて、中からわら半紙に印刷された宿題のプリントを出して宿題を始める。
……わら半紙、つまり木綿ウェスや藁、あるいは木材パルプなどを加工して作られた半紙風の洋紙である。
90年代に入り、みんなワープロやパソコンを使うようになると印刷機で紙詰まりを起こすという理由で急速に消えていったが、前世の私が中学くらい……つまり、90年代なかばまではかなり色んな所で使われていた紙である。
ザラザラで鉛筆とか消しゴムとか引っかかるし破れやすいしあんまり今見ると利点はないが、ぶっちゃけ製造コストが安かったんだろうなあ……
いくらかの時代までは消費者物価指数の指標品としても使われたとかなんとか。
そんなことを思いながら机に向かうと、宿題は……まぁ10分もかからずに終わってくれた。
小学3年生の算数だから当然だよね……
2桁3桁の掛け算なんか、普通にできるってやつだ。
これが漢字の書き取りだと時間がかかる。
パソコンとスマホに慣れきって、私の筆記能力は壊滅的だからである。
令和人あるあるだが、少し情けなかった。
それはそれとして……
(昨日、昨日だ。本郷さんとルリ子さんが帰ってきて、ショッカーの怪人と遭遇していたことを話していたのは)
―――私には、積極的には聞かせないが、私がもうショッカーを知っているということはわかっているのかその話を隠すことはない。
どうやら仮面ライダーは無事サラセニア人間を倒すことに成功したようであった。
「……さそり男の事件から10日……話の中で時間が経つことが多いからか、だいぶスパンは短いな……」
私はそう呟くと、宿題のプリントとノートをランドセルにしまう。
次は―――かまきり男、死神カメレオン、蜂女、コブラ男……そしてゲバコンドル、ヤモゲラス、トカゲロンと続く。
―――介入すべきか、せざるか。
特にトカゲロンに改造された野本など改造人間になる前に劇中で拉致されている人は、助けることも出来るはずだ。
果たしてそれがどのようなバタフライエフェクトを起こすかは未知数。
未知数だから……
「1……2……3……4……」
唐突に私は腕立て伏せを始めた。
体を少しは鍛えておかないと、怪人としての力を十全に発揮できないかもしれないからだ。
とはいえ私は幼児の身、あんまり筋トレしすぎるのも発育に悪いらしいが……
「ぶっちゃけ外で走り回って遊ぶ相手もいないし、そのぶんってことで仕方ないよねえ」と腕立てを100ほどこなしたところで起き上がる。
やはり通常の体力ではないらしく、前世の小学校の頃でも30回もやったらグロッキーになっていた腕立て伏せを100回やっても疲れることはない体に少しだけ感謝する。
「さて、汗を拭いて着替えよう……」
と思ったけど、やめた。
自分の小学校時代の頃を思い出してみれば、割とみんな帰ってきたから着替えるとかしてなかったと思う。
いや、女子がどうしていたかなんか全くわからないけど。
でも変に洗濯物増やすのは、立花さんに負担をかけるのでちょっと遠慮しようと思って、椅子に座ると―――