昭和石ノ森特撮世界転生~最強怪人を添えて~ 作:大回転スカイミサイル
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―――本郷猛はその不思議な少女の一挙一動を注意深く見ていた。
机に頭をぶつけそうになっていた少女を椅子に座らせると、彼女は「ラジオつけてもいいですか?」と本郷に聞いてきた。
本郷はそれを快諾し、そしてじっと彼女を観察する。
髪と瞳が普通と異なるだけで、彼女は人間のはずである。
しかしながら、彼女は不可思議な場所に2度も現れ、そしてそこには2度ともにあの「グランザイラス」と名乗る怪人が現れた。
(ショッカーではない、か。だとすればこの世界にはショッカーの他にも人類の自由を脅かす恐るべき組織が存在することになる)
それは正しく由々しき事態である。
仮面ライダーたった一人で戦えるのだろうか。
元来、真面目で何にでも真剣に取り組む―――本来は一つの遊戯でしかないはずのオートレースも、科学者を目指す傍ら本気でそちらの道を目指しているように―――
そんな男である。
目の前の少女のことも、深く、静かに、何よりも真剣に考えていた。
そんな少女が―――
『マサチューセッツ工科大の光明寺博士が我が国に帰国して2年が……』
と、ニュースが聞こえた瞬間、目に見えてうろたえだした。
「むう……光明寺博士か」
本郷がそういうと、顔色すら真っ青にして。
ただでさえ人形のような白磁の肌が、更に人形のように血が引いていくのが本郷の眼には見て取れる。
「どうしたい?顔色が悪いぞ」
「あ、あの……光明寺博士って……ラジオで言ってましたよね……」
「ああ、マサチューセッツ工科大卒でロボット工学の世界的な権威さ。日本に帰ってきてもう長いんだが、もしかしたらショッカーに狙われるかもしれない……」
本郷は率直な感想を述べる―――その瞬間、玻璃は頭を抱えて机に突っ伏した。
「本当に大丈夫かい?!もしかして、記憶を……」
心配した本郷は、即座に彼女に声をかけるが、「い、いえそうじゃないんですけども!ただちょっと嫌な予感がしただけでして!」と誤魔化すような態度を見せる。
そして、その青ざめた疲労が見え隠れする表情に、自然に彼は『―――すまん、許してくれ本郷くん』と恩師・緑川博士と交わした最後の悔恨の篭もった言葉を脳裏に浮かべた。
―――そうか。彼女は。
「……自分ではどうしようもないことがあるんだね、ハリちゃん」
この顔は、そうだと思った。
自分では何ほどにもどうしようもない、天地を動かすようなことに直面したなにか。
おそらくは先程の嫌な予感というのは、嘘だ。
彼女ははっきりと何かを思い出したのだ。
だからこそ、ここまでうろたえ、青ざめ、恩師と同じ顔をしている。
―――守らなければ。今度こそ。
本郷猛は心にそう誓うと、彼女の瞳を見た。
「……もし幼馴染の方で気になる人がいたなら、どうか、助けに行ってあげてください」
彼女は本郷の瞳に何を感じたのか、そう言って目を伏せた。
「幼馴染……ふむ……」
その言葉、そして先程の地震。
―――本郷ははっとする。
嫌な予感、予知、彼女の思い出したなにか。
瞬時、猛烈な嫌な予感がした。
本郷猛には幼馴染、それも地震に関わる幼馴染がいるのだ。
「……よし、わかった。僕の幼馴染に、地震学者の雨宮ちか子という人がいるんだ。すぐに連絡を取ってみることにしよう」
本郷猛は、そうして中央地震研究所の電話番号を電話機に入力し始め―――そして電話は果たして通じた。
しかし、1分ほど掛け続けても全く受話器が取られる気配はなく―――
「……出ないな。まだ業務中の時間のはずだ」
わからないほどにかすかな焦りの粒子をにじませて、本郷はそういうとチラと玻璃を見る。
先ほどと同じ顔。
否、更には自分に対してなにか祈るような目を送ってくる彼女に本郷は決断した。
「ハリちゃん。立花さんが帰ってきたら、事情を伝えてくれ。僕はちかこさんのところへ行ったとね」
そうして彼は走り出す。
―――ドアを抜け、自分に声をかけるシローを無視して、一路幼馴染の。
雨宮ちか子の下へと。
バイクを飛ばし、風を巻いて、本郷猛は急ぐ。
そして―――
「キャーッ!!」
中央地震研究所にたどり着いたその時、甲高い女の悲鳴が響いた。
それは―――連れ出されようとする彼の幼馴染、雨宮ちか子であった。
「ちか子さん!」
「た、猛さん!?助けて!怪物が!!」
ドアの向こうから絶叫の如き助けを求める悲鳴がこだまする。
「今行きます!トォ!!」
本郷はそうして、目の前の扉をその膂力で蹴り開ける。
施錠もなんのその、彼の脚力は一瞬でドアを破壊した。
「ギェギェッギェー!?どうしてここにいる、本郷猛!」
「教えてくれた人がいたんだ!ちか子さんから離れろ!」
本郷はそう叫んでその怪物―――そう、巨大な鎌を腕に持つ怪人かまきり男を見据えた。
―――本来、雨宮ちか子を拉致する予定だった時間は深夜である。
原作である仮面ライダー劇中において、雨宮ちか子は深夜と思われる時間帯に拉致された。
しかし、今は夕方―――だというのに、研究所の中には人っ子一人見当たらない。
それは一体どういうことなのかは―――
ちか子とかまきり男の間に素早く割り込んだ本郷は、「さあ!早く逃げて!」と叫ぶ。
「ギェーギェッギェッ!今の貴様だけで俺に勝てるつもりか本郷猛!」
逃げ出すちか子を背にする本郷猛に、かまきり男は嘲りの声を上げる。
だが―――それでも。
「だとしても私はお前には負けん!」
本郷猛は、そうしてかまきり男へと躍りかかる―――戦いの始まりであった。